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異世界転生

ー/ー




 ――2022年8月13日。
 20歳になったばかりの夏の日。お盆休みを利用し、四国にある田舎に帰省した……そう、あれはセミが元気に鳴く暑い夏の日だった。
「ミーンミンミンミーン……」

 ――15時過ぎ、実家に帰るとすでに親戚達が集まり、賑やかにまだ昼ご飯を食べている。
 僕は仏壇に線香を上げ手を合わせると、親戚の叔父や叔母に挨拶を済ませた。
 酔っぱらいが苦手な僕はわざと昼の時間をずらして帰って来たのだが、酒の入った叔父達は宴会を始めており、どうにも終わりそうにない。
 そこで先にお墓参りに行くことにしたのだった。
「母さん、ちょっと先にお墓参りに行って来る」
春斗(ハルト)、夕方から雨らしいんよ。早めに戻りなさいね!」
「わかった。行って来ます――」
「それと車にはくれぐれも気をつけなさ……もぅ!また聞いてないわっ!」
 お墓は家から徒歩10分程、ちょっと遠回りし、寄り道をして行く事にした。
 15歳まで住んでいた田舎の町を散策し風景を懐かしみながら歩いていると、いつの間にか母校の小学校が見えてくる。
 小学校は既に廃校で、コンクリートの壁からは草が生え窓ガラスは割れ、まるで心霊スポットの様になっていて、校舎の周りを歩いていると当時の記憶が徐々に蘇る……。
「懐かしいなぁ……」
 するといつの間にかポツポツと雨が降り出し、顔に雨粒が当たる。
「もう降ってきた……母さんが夕方から雨って言ってたのが当たったな」
 少し駆け足で僕は小学校の正面玄関へと向かい、屋根の下で少し雨宿りをする事にした。
【夢希望小学校】
 校舎にかけられていたであろう学校の表札が地面に転がっている。
 ポツポツポツ……サァァァ……ザァァァァァァ……!
 雨は止むどころか段々と強くなり、校舎の軒先でも雨が散り服を濡らし、僕はスマホを取り出すと雨雲レーダーを確認した。
「これは……止みそうにないな。雨雲レーダーは……え、しばらく降るのか。ちょっと傘がないか探してみようか……」
 僕は校舎の中に入って傘を探してみることにした。玄関には鍵がかかっていたが、ガラスが割れていて校内には入れそうだ。
「……何年ぶりかな」
 ガラスの隙間から体をくねらせ校舎へと入ると、遠くで雷も鳴り始め、雨も増々強くなってくる。
 薄暗い校舎の中をスマホのライトを点け、記憶をたよりに廊下を歩く。
 ゴロゴロゴロ……!
「傘、傘……」
 廃墟となった校舎を歩いていて懐かしさと寂しさが混ざり、複雑な気持ちになった。そして廊下の突き当りの教室の前で足が止まる。
「……ここであの子と出会ったんだ」
 そう言えばあの事故の時見たあの子は夢だったんだろうか?
 ザァァァァァァ……ピカッ!!ゴロゴロゴロ……!
「うわっ……雷近いな。はぁ……迎えを呼ぶか?でもまた母さんが怒るな……」
 迎えを呼ぶかどうか考えながら傘を探していると、1階ホール横の放送室に目が止まる。中からうっすら光が漏れているのだ。
「あれ?電気が点いてる?」
 ピカッ!!ゴロゴロゴロゴロ……ビュゥゥゥゥ……!!
 雷の音と共に、割れた窓から冷たい風が入ってくる。嫌な予感がしながらも僕は放送室のドアをゆっくりと開けた……。
「!?」
 中に何かいるっ!!
 息を殺し、ドアの隙間からじっとその物体を見ると、そこには青白い透明の女の子が座っていた。髪は短く金色で可愛らしい顔立ちだ。女の子はこちらに気付くと何か言いたそうな顔をした。
 見てはいけないものを見てしまった!一瞬で体が硬直し、恐怖に包まれ、背中に冷や汗が流れる。
 足の震えを抑えながら、静かにゆっくりとその場から目を反らそうとすると……女の子が話しかけてきた。
「へぇ……この人が……ねぇ……」
「!@?♯?☓!?」
「……ねぇ……さ……」
「お、お前は誰だっ!!」
 ピカッ!!ゴロゴロゴロゴロッッ!!!
 突然、雷が頭上で鳴り響き、その音に驚くと同時にスマホを落とし、真っ暗になる。
 その時だった!!
 背後に気配を感じ振り向こうとした瞬間!雷の激しい稲光と同時に背中に激痛が走った!
 ピカッ!!ゴロゴロゴロゴロッッ!!!
「ぐっ!痛っ!!」
 背中が痛くて熱い!何かを刺されたのだろうか。血が背中を流れていく感覚がある。
「だ、誰か……助け……」
 体から血が抜ける様にだんだんと僕の意識は遠くなり、ついにはその場に倒れこむ。
「……他に方法がなかった。許せ」
 そう聞こえたか思うとまばゆい光が目の前に広がった。
「ぼ、僕は死ぬの……か……?」
 記憶の中の幼かったあの頃の映像が急に脳裏に浮かぶ。

 ――ザァァァァァ!
「忘れ物した!!……あれ?お前だれだ?」
「え?あたしは……あま……す……か……」
「はぁ?あます?ありすか?変な名前!学校閉まるぞ!早く帰ろう!」
 ――ザァァァァァ!

「あの子に……また会いたかっ……た……な……」
 ――こうして僕の意識は深い深い暗闇へと落ちていったのだった。

……
………

「うむ。これでしばらく肉体を保存できようぞ」
「ふふ。ねぇさまが人間に入れ込むなんてめずらしいですわ」
 神のイタズラなのか、きまぐれなのか……?僕の長い長い、冒険譚の始まりである。


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次のエピソードへ進む 第1話・アリス登場


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 ――2022年8月13日。
 20歳になったばかりの夏の日。お盆休みを利用し、四国にある田舎に帰省した……そう、あれはセミが元気に鳴く暑い夏の日だった。
「ミーンミンミンミーン……」
 ――15時過ぎ、実家に帰るとすでに親戚達が集まり、賑やかにまだ昼ご飯を食べている。
 僕は仏壇に線香を上げ手を合わせると、親戚の叔父や叔母に挨拶を済ませた。
 酔っぱらいが苦手な僕はわざと昼の時間をずらして帰って来たのだが、酒の入った叔父達は宴会を始めており、どうにも終わりそうにない。
 そこで先にお墓参りに行くことにしたのだった。
「母さん、ちょっと先にお墓参りに行って来る」
「|春斗《ハルト》、夕方から雨らしいんよ。早めに戻りなさいね!」
「わかった。行って来ます――」
「それと車にはくれぐれも気をつけなさ……もぅ!また聞いてないわっ!」
 お墓は家から徒歩10分程、ちょっと遠回りし、寄り道をして行く事にした。
 15歳まで住んでいた田舎の町を散策し風景を懐かしみながら歩いていると、いつの間にか母校の小学校が見えてくる。
 小学校は既に廃校で、コンクリートの壁からは草が生え窓ガラスは割れ、まるで心霊スポットの様になっていて、校舎の周りを歩いていると当時の記憶が徐々に蘇る……。
「懐かしいなぁ……」
 するといつの間にかポツポツと雨が降り出し、顔に雨粒が当たる。
「もう降ってきた……母さんが夕方から雨って言ってたのが当たったな」
 少し駆け足で僕は小学校の正面玄関へと向かい、屋根の下で少し雨宿りをする事にした。
【夢希望小学校】
 校舎にかけられていたであろう学校の表札が地面に転がっている。
 ポツポツポツ……サァァァ……ザァァァァァァ……!
 雨は止むどころか段々と強くなり、校舎の軒先でも雨が散り服を濡らし、僕はスマホを取り出すと雨雲レーダーを確認した。
「これは……止みそうにないな。雨雲レーダーは……え、しばらく降るのか。ちょっと傘がないか探してみようか……」
 僕は校舎の中に入って傘を探してみることにした。玄関には鍵がかかっていたが、ガラスが割れていて校内には入れそうだ。
「……何年ぶりかな」
 ガラスの隙間から体をくねらせ校舎へと入ると、遠くで雷も鳴り始め、雨も増々強くなってくる。
 薄暗い校舎の中をスマホのライトを点け、記憶をたよりに廊下を歩く。
 ゴロゴロゴロ……!
「傘、傘……」
 廃墟となった校舎を歩いていて懐かしさと寂しさが混ざり、複雑な気持ちになった。そして廊下の突き当りの教室の前で足が止まる。
「……ここであの子と出会ったんだ」
 そう言えばあの事故の時見たあの子は夢だったんだろうか?
 ザァァァァァァ……ピカッ!!ゴロゴロゴロ……!
「うわっ……雷近いな。はぁ……迎えを呼ぶか?でもまた母さんが怒るな……」
 迎えを呼ぶかどうか考えながら傘を探していると、1階ホール横の放送室に目が止まる。中からうっすら光が漏れているのだ。
「あれ?電気が点いてる?」
 ピカッ!!ゴロゴロゴロゴロ……ビュゥゥゥゥ……!!
 雷の音と共に、割れた窓から冷たい風が入ってくる。嫌な予感がしながらも僕は放送室のドアをゆっくりと開けた……。
「!?」
 中に何かいるっ!!
 息を殺し、ドアの隙間からじっとその物体を見ると、そこには青白い透明の女の子が座っていた。髪は短く金色で可愛らしい顔立ちだ。女の子はこちらに気付くと何か言いたそうな顔をした。
 見てはいけないものを見てしまった!一瞬で体が硬直し、恐怖に包まれ、背中に冷や汗が流れる。
 足の震えを抑えながら、静かにゆっくりとその場から目を反らそうとすると……女の子が話しかけてきた。
「へぇ……この人が……ねぇ……」
「!@?♯?☓!?」
「……ねぇ……さ……」
「お、お前は誰だっ!!」
 ピカッ!!ゴロゴロゴロゴロッッ!!!
 突然、雷が頭上で鳴り響き、その音に驚くと同時にスマホを落とし、真っ暗になる。
 その時だった!!
 背後に気配を感じ振り向こうとした瞬間!雷の激しい稲光と同時に背中に激痛が走った!
 ピカッ!!ゴロゴロゴロゴロッッ!!!
「ぐっ!痛っ!!」
 背中が痛くて熱い!何かを刺されたのだろうか。血が背中を流れていく感覚がある。
「だ、誰か……助け……」
 体から血が抜ける様にだんだんと僕の意識は遠くなり、ついにはその場に倒れこむ。
「……他に方法がなかった。許せ」
 そう聞こえたか思うとまばゆい光が目の前に広がった。
「ぼ、僕は死ぬの……か……?」
 記憶の中の幼かったあの頃の映像が急に脳裏に浮かぶ。
 ――ザァァァァァ!
「忘れ物した!!……あれ?お前だれだ?」
「え?あたしは……あま……す……か……」
「はぁ?あます?ありすか?変な名前!学校閉まるぞ!早く帰ろう!」
 ――ザァァァァァ!
「あの子に……また会いたかっ……た……な……」
 ――こうして僕の意識は深い深い暗闇へと落ちていったのだった。
……
………
「うむ。これでしばらく肉体を保存できようぞ」
「ふふ。ねぇさまが人間に入れ込むなんてめずらしいですわ」
 神のイタズラなのか、きまぐれなのか……?僕の長い長い、冒険譚の始まりである。