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2話 賢い弟子を持つと何故か捕まる

ー/ー




「あ、私ブラックで角砂糖2つお願いします。」

「ぼ、僕はホットミルク、お願いします!」


「お待たせしました。」


「うわっ…思ってたよりにが……」

「魔女様、ブラックを飲めるなんて凄いですね!僕は苦くてとても…」

「えぇ、そうよ。にがっ……この苦さがいいのよねぇ(砂糖ドバババ)」

さて、私達はいつもの街のカフェでゆっくりしている訳だが…

「なんで旅に出たというのにいつもの場所にいるのかって…そう聞きたそうだね、モチ。」

『…まぁ、そうだな。』

「これは立派な作戦…いや、計画なんだよ。私はノープランで動くような馬鹿じゃないからね。」

「流石です魔女様!」

ドヤァ…と、渾身のドヤ顔をモチに見せつけるとものすごく腹立たしそうな顔をされた。

『…寝る。宿に着いたら起こせよ。』

投げやりにそう言うと私の帽子の中へ戻っていく。あ、しれっと砂糖持っていきやがったこいつ!

「まぁ、いっか。まずは旅の目的地を決めなきゃだからね。」

今はまだ目的地すら決まっていないのだ。それを決めるための情報がいるのだ。

「ルカ、情報を集めるよ。困ってそうな人とか探してきて!」

「はい!であります!」

ミルクをゴキュゴキュと一気に飲むとルカはさっさと動き出した。相も変わらず素直でいい子だ。

「…もう少しゆっくりしてから…私も動こうかな。」

うわ、にがっ……もう二度とカッコつけない。



***
***
***


私は路地裏にてとある人物と再開した。

「というわけで、私達旅に出ることにしたの。」

「おや?そうなんだ。頑張ってね。」

格好、仕草、物言い全てが怪しい老人はカラカラと笑いながら手を振る。
なんかさぁ…

「あ、いや別に、欲しい訳じゃないんだけどさ、その〜なんか、私に対して餞別というかさ、一応貴方の言葉で私、旅に出ることになったというかなんというか…」

「何?旅の行く末を占って欲しいの?」

「まぁ、そうとも言わなくは無いといいますか…」

……いや、あそこまで的確に当てられると…ね。それに私が情報収集するよりもルカの方が100倍早くやってくれるからね。これは所謂適材適所で…
私、誰に言い訳してるんだろ。

「はいはい。じゃあ座ってね。」

「はい。」

「今日はそうね~…これにしようかな。」

ジジイが取り出したのはタロットカードの束。シャッシャッと混ぜて、私の前に差し出した。引けということだろうか?

「はい、これ。」

特に迷う要素が無いため適当に真ん中のカードを手にする。裏向きにして絵柄を確認すると、そこには…
雷に打たれて崩壊する塔が描かれていた。でもカードが上下逆になっていて、塔の上に巨大な翼の影が逆さに浮かんでいる。

ジジイにカードを手渡すと、一瞬で顔色が変わった。まるで信じられないものを見るかのように。

「むむ…これは…」

「なんですか~…また死相が出てるとか?」

「いんや、違うのよ。ちゃんとした予言だね。」

占いジジイは立ち上がり、眼を瞑って…その結果を口にした。
まるで本当に神様が予言を告げるかのように。

「汝、翼を持つ者に出会いたまえ。さすれば道は開かれよう。」

「え…?」

「ふぅ……今日はもう店仕舞いね。疲れたから帰るのよん。」

「えぇ…?」

困惑する私を置き去りにして、占いジジイは店を閉める準備を始めた。
もう何も答えてくれそうな雰囲気は無い。

「どういうことぉ…?」

私は再び与えられた予言に頭を抱えるのだった。

あんのジジイ…!



***
***
***


ひとまず今日はいつもの街にて宿を取ることにした。一日目だしこんなもんだよ、うん。決して占いに頭を悩ませすぎて気付けば夜になってたとかじゃないよ。
そもそも森から一番近いというだけで距離自体は飛行魔法を使っても1時間近くかかるくらい遠いのだ。

「…翼……鳥…?…お腹空いたなぁ…揚げ焼きにしたのがいいな…」

『なぁに言ってんだ、お前。』

宿の机に突っ伏して、昼間の予言について考える。翼を持つ者…ってなんだろ。この世界、色んな種族がいるけど…獣人族とか?うーん…一応そっち側に面識ある子はいるけど…

「なんか翼を持つ人に会わなきゃなんだって。」

『なんだそりゃ…?』

「それがね――」

説明しようとしていると、部屋のドアが控えめにコンコン、と叩かれた。
情報収集に出向いていたルカが帰ってきたのかな?

「ルカ、合鍵渡したでしょ―――」

「どうも、私、冒険者ギルド職員の者で…」

瞬時に私は動いた。普段の運動神経が嘘のようにモチを回収して部屋の窓をブチ破り外に出て飛行魔術を展開する。
聞き間違いじゃなかったら今…「冒険者ギルド」って言ったよね…!

『おい、なんだ急に…!』

「色々とめんどくさいの!逃げるよ。ルカには魔術で伝えるから…」

「やはり、師匠のお弟子さんだったんですね。」

「…!?」

肩にポン、と手が置かれる。…おっかしいなぁ…これでも私、常人の飛行魔術じゃ着いていけないような速度だしたはずなんだけど…
というか今の声…それに師匠って…

「どうも、お久しぶりです。師匠。お弟子さんが困っていらっしゃいますよ。」

振り向けば…私の8番目の弟子、エマが笑顔で浮かんでいた。…なぁんかこの笑顔、見たことあるなぁ…

あ、怒ってるときのやつじゃん。



***
***
***



時は昼間まで遡り…

「うぅ…人が多いであります…」

尊敬する魔女様のお役に立とうと奮起し、人通りの多い露店街へとルカはやってきた。
だがやってきたはいいものの、人の多さに体格の小さいルカは流され続け気付けば弾き出されていた。

「魔女様のため、であります…!」

苦労は多いが魔女様はいつも自分のことを褒めてくれるのだ。だから今日も、頑張りたい。
そう思って諦めず人波へと突っ込み…

「あうぅ!?」

またもいつの間にか押し出されていた。というかここはどこだろうか?流されていく中気付けば見知らぬ場所まで出てきていた。
ルカがキョロキョロと辺りを見回しながら歩いていると、ぼふっ…と、顔面から壁に激突した。

「あいたっ!」

その柔らかい反動で、ルカの軽い身体は跳ね返り、尻餅をつく。

「あら…?ごめんなさい。大丈夫…?」

「はっ、はい!大丈夫、であります!ごめんなさい!」

どうやら自分は人にぶつかったらしい。
自分の不注意なのだと、反省しルカはぶつかってしまったらしい薄オレンジ髪の若い女性へ謝る。

「そう。ならよかった。…それで、こんなところで何か用?それとも、迷子?」

なんと女性はさらに自分の心配までしてくれた。なんて優しいのだと感激しつつ、首を横に振り自身の要件を告げた。そこまでお世話になるのは申し訳なさもあったがこれ以上お師匠様に迷惑をかけるわけにもいかない。

「じょ、情報取集であります!師匠様に頼まれて…」

「そう。なら冒険者ギルドがおすすめよ。一緒に行く?」

「いいでありますか!?助かります!おねーさん、優しいです!」

「ふふ…いい子ね。ほら…はぐれないように、ね?」

手が差し伸べられる。手を繋げという意味だと解釈し、ぎゅっと握る。
お姉さんは微笑んでから、歩みだす。当然のように、ルカの歩幅に合わせて。



***
***
***



「着いたわ。ここよ。」

「わぁ…!」

冒険者ギルドは街の外れにある、木造建てかつ三階建ての建物だ。
扉を開けるとまず、肉の焼ける匂いやお酒の匂い、様々な匂いの混ざった「生活臭」が鼻をつく。
上を見上げれば吹き抜けの天井まで届く巨大な丸太梁がむき出しで、そこには誰かが彫ったと思しき「俺の初恋はオークだった」の落書き。
床はもう何年も酒をこぼし続けたせいで、どこを踏んでもベタベタという愛らしい音がする。
壁一面の依頼板は羊皮紙が雪崩を起こしそうなくらい貼られていて、床にまで垂れ下がっている。
受付兼酒場のカウンターでは、胸の谷間がこぼれそうなお姉さんが片手でビールジョッキを注ぎながら、もう片手で依頼書に判子を押していた。

ルカとお姉さんが足を踏み入れると、何やら辺りが少し騒がしくなった。辺りの注目が隣のお姉さんに向けられているように見えた。

「ごめんね、ちょっと目立つけど。」

「は、はい!」

少し落ち着かない足取りで着いていく。やがて、カウンターの前でお姉さんは立ち止まった。

「今大丈夫?」

「おっ、エマじゃない。その顔は…?」

「ふふ。依頼達成よ。はい、証明書。」

「流石ね!」

受付嬢のお姉さんが興奮気味にエマと呼ばれたお姉さんの肩を叩く。

「これで今月50件目。うち3件は最高難易度。流石うちのエースね〜。いっそこの街に住んでくれればいいのに。」

「ごめんなさい。偶にしか来れなくって…」

「いいのよ!自由が一番の職業なんだから!……そこのチビはどうしたの?」

ようやく自分の存在が視線に入ったらしく、問われる。ルカが答えようとしたがそれより先にお姉さんが受付嬢の耳元でひそひそと何かを言った。

「この子────」

「本当!?」

何か、驚いている。不思議に思いルカが首を傾げていると受付嬢のお姉さんは1度落ち着いて咳払いをした。

「えっと、情報が欲しいのね?何が知りたいの?」

「え、あ、はい!えっと、えっとですね───」

さっきのは何だったのだろうか。ルカには知る由もなく…

「ありがとね。師匠の居所を教えてくれて。」

1人の、弟子が動き出したのだった。



***
***
***



「と、言うわけで師匠は前々から冒険者ギルドを避けていたので職員を向かわせれば当然空へ逃げる…そう考えたわけです。」

「う……誰にも言ってないのに…」

エマの説明に項垂れるしか無かった。あまりにもスマートに身柄を確保されてしまった。
今はがっちりと手を握られ私を引き摺るようにギルドの方まで進んでいる。

「別に逃げることないじゃないですか。」

「だってぇ…」

追われる理由は幾らでも思い浮かぶ。
私は少し前、暇つぶし基収入を得るために冒険者をやっていたのだ。それで…めちゃくちゃ、やらかした。
依頼達成報告をするも証明書を忘れて帰ったり。
ギルドの建物壊したり。(主にナンパしてきた馬鹿が悪い。)
挙句の果てには何も言わず消息不明。
それが50年である。

「…師匠、ギルドで伝説になっていますよ。いつの間にか皆がクリアできないような高難易度の依頼をクリアしていたかと思えば依頼料も受け取らず、名も名乗らず去っていた人が居たって…」

「うぐぅ…」

…ひと仕事した後に書類貰うのって、忘れるくない?

「…だから、その人がこの街に来てるかもって言って協力してもらったんです。さ、顔見せついでに迷子のお弟子さんを回収してあげてください。」

…そういえばそんなこと言ってたね…どの道行くしか無かったかぁ…
でも、心の準備はさせて欲しかったな。

「着きました。正面口からだと目立つので職員口まで行きますよ。」

「えぇ…大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。誰かさんの教えが役に立ったので、私は今ここのギルドのエースです。多少は融通が効くんです。」

「マジィ…?」

でもそれ、多分私の教えのおかげというより…元々の才能のせいなんだよなぁ…


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次のエピソードへ進む 3話 弟子が怖いんですけど!?


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「お待たせしました。」
「うわっ…思ってたよりにが……」
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「えぇ、そうよ。にがっ……この苦さがいいのよねぇ(砂糖ドバババ)」
さて、私達はいつもの街のカフェでゆっくりしている訳だが…
「なんで旅に出たというのにいつもの場所にいるのかって…そう聞きたそうだね、モチ。」
『…まぁ、そうだな。』
「これは立派な作戦…いや、計画なんだよ。私はノープランで動くような馬鹿じゃないからね。」
「流石です魔女様!」
ドヤァ…と、渾身のドヤ顔をモチに見せつけるとものすごく腹立たしそうな顔をされた。
『…寝る。宿に着いたら起こせよ。』
投げやりにそう言うと私の帽子の中へ戻っていく。あ、しれっと砂糖持っていきやがったこいつ!
「まぁ、いっか。まずは旅の目的地を決めなきゃだからね。」
今はまだ目的地すら決まっていないのだ。それを決めるための情報がいるのだ。
「ルカ、情報を集めるよ。困ってそうな人とか探してきて!」
「はい!であります!」
ミルクをゴキュゴキュと一気に飲むとルカはさっさと動き出した。相も変わらず素直でいい子だ。
「…もう少しゆっくりしてから…私も動こうかな。」
うわ、にがっ……もう二度とカッコつけない。
***
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私は路地裏にてとある人物と再開した。
「というわけで、私達旅に出ることにしたの。」
「おや?そうなんだ。頑張ってね。」
格好、仕草、物言い全てが怪しい老人はカラカラと笑いながら手を振る。
なんかさぁ…
「あ、いや別に、欲しい訳じゃないんだけどさ、その〜なんか、私に対して餞別というかさ、一応貴方の言葉で私、旅に出ることになったというかなんというか…」
「何?旅の行く末を占って欲しいの?」
「まぁ、そうとも言わなくは無いといいますか…」
……いや、あそこまで的確に当てられると…ね。それに私が情報収集するよりもルカの方が100倍早くやってくれるからね。これは所謂適材適所で…
私、誰に言い訳してるんだろ。
「はいはい。じゃあ座ってね。」
「はい。」
「今日はそうね~…これにしようかな。」
ジジイが取り出したのはタロットカードの束。シャッシャッと混ぜて、私の前に差し出した。引けということだろうか?
「はい、これ。」
特に迷う要素が無いため適当に真ん中のカードを手にする。裏向きにして絵柄を確認すると、そこには…
雷に打たれて崩壊する塔が描かれていた。でもカードが上下逆になっていて、塔の上に巨大な翼の影が逆さに浮かんでいる。
ジジイにカードを手渡すと、一瞬で顔色が変わった。まるで信じられないものを見るかのように。
「むむ…これは…」
「なんですか~…また死相が出てるとか?」
「いんや、違うのよ。ちゃんとした予言だね。」
占いジジイは立ち上がり、眼を瞑って…その結果を口にした。
まるで本当に神様が予言を告げるかのように。
「汝、翼を持つ者に出会いたまえ。さすれば道は開かれよう。」
「え…?」
「ふぅ……今日はもう店仕舞いね。疲れたから帰るのよん。」
「えぇ…?」
困惑する私を置き去りにして、占いジジイは店を閉める準備を始めた。
もう何も答えてくれそうな雰囲気は無い。
「どういうことぉ…?」
私は再び与えられた予言に頭を抱えるのだった。
あんのジジイ…!
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ひとまず今日はいつもの街にて宿を取ることにした。一日目だしこんなもんだよ、うん。決して占いに頭を悩ませすぎて気付けば夜になってたとかじゃないよ。
そもそも森から一番近いというだけで距離自体は飛行魔法を使っても1時間近くかかるくらい遠いのだ。
「…翼……鳥…?…お腹空いたなぁ…揚げ焼きにしたのがいいな…」
『なぁに言ってんだ、お前。』
宿の机に突っ伏して、昼間の予言について考える。翼を持つ者…ってなんだろ。この世界、色んな種族がいるけど…獣人族とか?うーん…一応そっち側に面識ある子はいるけど…
「なんか翼を持つ人に会わなきゃなんだって。」
『なんだそりゃ…?』
「それがね――」
説明しようとしていると、部屋のドアが控えめにコンコン、と叩かれた。
情報収集に出向いていたルカが帰ってきたのかな?
「ルカ、合鍵渡したでしょ―――」
「どうも、私、冒険者ギルド職員の者で…」
瞬時に私は動いた。普段の運動神経が嘘のようにモチを回収して部屋の窓をブチ破り外に出て飛行魔術を展開する。
聞き間違いじゃなかったら今…「冒険者ギルド」って言ったよね…!
『おい、なんだ急に…!』
「色々とめんどくさいの!逃げるよ。ルカには魔術で伝えるから…」
「やはり、師匠のお弟子さんだったんですね。」
「…!?」
肩にポン、と手が置かれる。…おっかしいなぁ…これでも私、常人の飛行魔術じゃ着いていけないような速度だしたはずなんだけど…
というか今の声…それに師匠って…
「どうも、お久しぶりです。師匠。お弟子さんが困っていらっしゃいますよ。」
振り向けば…私の8番目の弟子、エマが笑顔で浮かんでいた。…なぁんかこの笑顔、見たことあるなぁ…
あ、怒ってるときのやつじゃん。
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時は昼間まで遡り…
「うぅ…人が多いであります…」
尊敬する魔女様のお役に立とうと奮起し、人通りの多い露店街へとルカはやってきた。
だがやってきたはいいものの、人の多さに体格の小さいルカは流され続け気付けば弾き出されていた。
「魔女様のため、であります…!」
苦労は多いが魔女様はいつも自分のことを褒めてくれるのだ。だから今日も、頑張りたい。
そう思って諦めず人波へと突っ込み…
「あうぅ!?」
またもいつの間にか押し出されていた。というかここはどこだろうか?流されていく中気付けば見知らぬ場所まで出てきていた。
ルカがキョロキョロと辺りを見回しながら歩いていると、ぼふっ…と、顔面から壁に激突した。
「あいたっ!」
その柔らかい反動で、ルカの軽い身体は跳ね返り、尻餅をつく。
「あら…?ごめんなさい。大丈夫…?」
「はっ、はい!大丈夫、であります!ごめんなさい!」
どうやら自分は人にぶつかったらしい。
自分の不注意なのだと、反省しルカはぶつかってしまったらしい薄オレンジ髪の若い女性へ謝る。
「そう。ならよかった。…それで、こんなところで何か用?それとも、迷子?」
なんと女性はさらに自分の心配までしてくれた。なんて優しいのだと感激しつつ、首を横に振り自身の要件を告げた。そこまでお世話になるのは申し訳なさもあったがこれ以上お師匠様に迷惑をかけるわけにもいかない。
「じょ、情報取集であります!師匠様に頼まれて…」
「そう。なら冒険者ギルドがおすすめよ。一緒に行く?」
「いいでありますか!?助かります!おねーさん、優しいです!」
「ふふ…いい子ね。ほら…はぐれないように、ね?」
手が差し伸べられる。手を繋げという意味だと解釈し、ぎゅっと握る。
お姉さんは微笑んでから、歩みだす。当然のように、ルカの歩幅に合わせて。
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「着いたわ。ここよ。」
「わぁ…!」
冒険者ギルドは街の外れにある、木造建てかつ三階建ての建物だ。
扉を開けるとまず、肉の焼ける匂いやお酒の匂い、様々な匂いの混ざった「生活臭」が鼻をつく。
上を見上げれば吹き抜けの天井まで届く巨大な丸太梁がむき出しで、そこには誰かが彫ったと思しき「俺の初恋はオークだった」の落書き。
床はもう何年も酒をこぼし続けたせいで、どこを踏んでもベタベタという愛らしい音がする。
壁一面の依頼板は羊皮紙が雪崩を起こしそうなくらい貼られていて、床にまで垂れ下がっている。
受付兼酒場のカウンターでは、胸の谷間がこぼれそうなお姉さんが片手でビールジョッキを注ぎながら、もう片手で依頼書に判子を押していた。
ルカとお姉さんが足を踏み入れると、何やら辺りが少し騒がしくなった。辺りの注目が隣のお姉さんに向けられているように見えた。
「ごめんね、ちょっと目立つけど。」
「は、はい!」
少し落ち着かない足取りで着いていく。やがて、カウンターの前でお姉さんは立ち止まった。
「今大丈夫?」
「おっ、エマじゃない。その顔は…?」
「ふふ。依頼達成よ。はい、証明書。」
「流石ね!」
受付嬢のお姉さんが興奮気味にエマと呼ばれたお姉さんの肩を叩く。
「これで今月50件目。うち3件は最高難易度。流石うちのエースね〜。いっそこの街に住んでくれればいいのに。」
「ごめんなさい。偶にしか来れなくって…」
「いいのよ!自由が一番の職業なんだから!……そこのチビはどうしたの?」
ようやく自分の存在が視線に入ったらしく、問われる。ルカが答えようとしたがそれより先にお姉さんが受付嬢の耳元でひそひそと何かを言った。
「この子────」
「本当!?」
何か、驚いている。不思議に思いルカが首を傾げていると受付嬢のお姉さんは1度落ち着いて咳払いをした。
「えっと、情報が欲しいのね?何が知りたいの?」
「え、あ、はい!えっと、えっとですね───」
さっきのは何だったのだろうか。ルカには知る由もなく…
「ありがとね。師匠の居所を教えてくれて。」
1人の、弟子が動き出したのだった。
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「と、言うわけで師匠は前々から冒険者ギルドを避けていたので職員を向かわせれば当然空へ逃げる…そう考えたわけです。」
「う……誰にも言ってないのに…」
エマの説明に項垂れるしか無かった。あまりにもスマートに身柄を確保されてしまった。
今はがっちりと手を握られ私を引き摺るようにギルドの方まで進んでいる。
「別に逃げることないじゃないですか。」
「だってぇ…」
追われる理由は幾らでも思い浮かぶ。
私は少し前、暇つぶし基収入を得るために冒険者をやっていたのだ。それで…めちゃくちゃ、やらかした。
依頼達成報告をするも証明書を忘れて帰ったり。
ギルドの建物壊したり。(主にナンパしてきた馬鹿が悪い。)
挙句の果てには何も言わず消息不明。
それが50年である。
「…師匠、ギルドで伝説になっていますよ。いつの間にか皆がクリアできないような高難易度の依頼をクリアしていたかと思えば依頼料も受け取らず、名も名乗らず去っていた人が居たって…」
「うぐぅ…」
…ひと仕事した後に書類貰うのって、忘れるくない?
「…だから、その人がこの街に来てるかもって言って協力してもらったんです。さ、顔見せついでに迷子のお弟子さんを回収してあげてください。」
…そういえばそんなこと言ってたね…どの道行くしか無かったかぁ…
でも、心の準備はさせて欲しかったな。
「着きました。正面口からだと目立つので職員口まで行きますよ。」
「えぇ…大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。誰かさんの教えが役に立ったので、私は今ここのギルドのエースです。多少は融通が効くんです。」
「マジィ…?」
でもそれ、多分私の教えのおかげというより…元々の才能のせいなんだよなぁ…