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SCENE130 セイレーンの浮上

ー/ー



 下僕が帰ってからも、あたしはずっと考え込んでいましたわ。
 雷の魔物を扱うことといい、現地の特徴に合わせた魔物を配置することといい、どうにもあたしの知っている方が頭に思い浮かびますもの。

「セイレーン様。やはり、気になっておいでですかね」

「ええ、シードラゴン。下僕の言うことが事実とするならば、やはり、話にあったシャボテンダンジョンは、あたしたちの面識ある方がいらっしゃるとみていいのですわ」

「確かにそうでしょうなぁ。向こうにいる間も、我々はあの一族は苦手としていましたからね。ダンジョンマスターとなって顔を合わせずに済むと安心しておりましたが、こうも近い場所にいるとは、これも切っても切れぬ腐れ縁というものでしょうか」

 シードラゴンの言葉に、あたしはつい苦笑いをしてしまいますわ。
 シャボテンダンジョンのマスターがあいつであるなら、あたしはちょっと安心ですわね。婚約者にされかかったことがありますから、本当に苦手ですもの。

「はあ、シャボテンダンジョンを調べることはできますかしらね。ダンジョンマスターの情報とか」

「現時点では不明のようですな。数年前に一度攻略したとの情報も出たそうですが、ダンジョンが残っているために誤情報として取り消されたようです」

「そうなのですわね。……ますますあいつらっぽくて嫌ですわね」

「ですなぁ……」

 あたしは嫌な顔をすると、シードラゴンも同じように困った顔をしていますわ。そのくらい、あたしたちの想像する相手というのは嫌な相手なのですわよ。
 しばらく黙り込んでいますと、あたしの携帯電話が鳴りだしますわ。下僕から献上してもらった携帯電話は、あたしにとって重要な外の情報の収集道具ですわよ。

「セイレーン様、お出になられますか?」

「ええ、あたしが直接出ますわ。相手はダンジョン管理局の方のようですからね」

「承知致しました」

 あたしは電話に出る。
 話の内容は、探索者育成のための空間の進捗の確認でしたわ。
 もちろん、抜かりはありませんわ。
 育成空間は全部で三階層にしましたわよ。偽のボス部屋を設置して、そこを突破すると、入口まで転送されるように設定しましたわ。
 ダンジョンポイントはかなり消費しますけれど、配信によるファンの獲得によって、結構ポイントが入ってきますから問題はありませんわよ。
 あたしの魅力にかかれば、このくらいは造作もありませんわね。おーっほっほっほっ。

 管理局との通話を終えて、あたしは育成空間の軽い紹介を始めることに決めましたわ。
 一階層だけであればという条件で、管理局からも了解を取り付けましたし、早速始めることとしましょうか。
 このダンジョンには、あたしとシードラゴンだけが使える、マスター用の転送設備がございますのよ。これも一か所につき10万ポイントという消費がありますけれど、今となってはどうしても必要ですから安い出費ですわ。
 転送設備によって、あたしは育成空間の一階層へとやってくる。そこから入口の方を見れば、ダンジョンに入るための自動改札機が見える。ちなみに自動改札というのは、下僕とウィンクさんに教えていただきましたわ。
 道具も、あたしたちが触れていることで持ち運びが可能。なので、下僕から預かった、配信どろーんとやらも一緒に運んでこれますのよ。
 あたしは早速、探索者育成のためのスペースの紹介配信をすることにしましたわ。
 と思ったのですが、まぁ、なんとも間の悪いことですわね。

「あっ、モンスターがいるぞ」

「倒せ、倒せ!」

 探索者が入り込んできて、あたしに向かって攻撃を仕掛けようとしてきましたのよ。
 まあ、なんて野蛮な連中なのかしらね。
 ですが、あたしは異界の公爵令嬢。この程度で慌てることなどありませんわ。

「セイレーン様、我にお任せを」

「頼みますわよ、シードラゴン」

「はっ!」

 あたし直々ふっ飛ばしてやろうかと思いましたけれど、シードラゴンが忠義によって飛び出してきましたので、任せることにしましたわ。

「海竜衝!」

「ぶへあっ!」

「おがあぢゃーんっ!」

 シードラゴンが一発掌底を放ちますと、探索者たちはあっという間に水の藻屑となりましたわ。
 すぐそこで復活できますから、どうせすぐまたやってくるでしょうね。

「くそっ、なんて強さだ」

「もう一度だ!」

「やめておきなさい。リスポーンしているのですから、能力が低下しておりますわよ。万全の状態で勝ち目がないのであるのなら、ますます勝ち目はありませんわ。命を粗末にするのはよろしくありませんわよ」

 戦おうとする探索者たちをあたしは制止する。
 あたしの声に、探索者たちがぴたりと動きを止めた。

「なっ……。このモンスター、言葉を喋るぞ」

「しかも、ちゃんと会話が成立している」

 まったく、あたしをそこんじゅそこらのモンスターと一緒にしてくれては困りますわね。
 あたしは探索者たちの反応に呆れておりましたけれど、ちょうどいいことを思いつきましたわ。

「そうですわ。今から配信をしたいと思いますので、よろしければ参加なさってくださいませんこと?」

 あたしの呼び掛けに探索者たちは戸惑っていますわね。
 ですが、あたしが配信どろーんを取り出しますと、戸惑った様子を見せていますわね。
 あたしはにこやかな笑顔を向けたまま、探索者の反応を待つことにしましたわ。


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次のエピソードへ進む SCENE131 さあ、お披露目配信ですわ


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 下僕が帰ってからも、あたしはずっと考え込んでいましたわ。
 雷の魔物を扱うことといい、現地の特徴に合わせた魔物を配置することといい、どうにもあたしの知っている方が頭に思い浮かびますもの。
「セイレーン様。やはり、気になっておいでですかね」
「ええ、シードラゴン。下僕の言うことが事実とするならば、やはり、話にあったシャボテンダンジョンは、あたしたちの面識ある方がいらっしゃるとみていいのですわ」
「確かにそうでしょうなぁ。向こうにいる間も、我々はあの一族は苦手としていましたからね。ダンジョンマスターとなって顔を合わせずに済むと安心しておりましたが、こうも近い場所にいるとは、これも切っても切れぬ腐れ縁というものでしょうか」
 シードラゴンの言葉に、あたしはつい苦笑いをしてしまいますわ。
 シャボテンダンジョンのマスターがあいつであるなら、あたしはちょっと安心ですわね。婚約者にされかかったことがありますから、本当に苦手ですもの。
「はあ、シャボテンダンジョンを調べることはできますかしらね。ダンジョンマスターの情報とか」
「現時点では不明のようですな。数年前に一度攻略したとの情報も出たそうですが、ダンジョンが残っているために誤情報として取り消されたようです」
「そうなのですわね。……ますますあいつらっぽくて嫌ですわね」
「ですなぁ……」
 あたしは嫌な顔をすると、シードラゴンも同じように困った顔をしていますわ。そのくらい、あたしたちの想像する相手というのは嫌な相手なのですわよ。
 しばらく黙り込んでいますと、あたしの携帯電話が鳴りだしますわ。下僕から献上してもらった携帯電話は、あたしにとって重要な外の情報の収集道具ですわよ。
「セイレーン様、お出になられますか?」
「ええ、あたしが直接出ますわ。相手はダンジョン管理局の方のようですからね」
「承知致しました」
 あたしは電話に出る。
 話の内容は、探索者育成のための空間の進捗の確認でしたわ。
 もちろん、抜かりはありませんわ。
 育成空間は全部で三階層にしましたわよ。偽のボス部屋を設置して、そこを突破すると、入口まで転送されるように設定しましたわ。
 ダンジョンポイントはかなり消費しますけれど、配信によるファンの獲得によって、結構ポイントが入ってきますから問題はありませんわよ。
 あたしの魅力にかかれば、このくらいは造作もありませんわね。おーっほっほっほっ。
 管理局との通話を終えて、あたしは育成空間の軽い紹介を始めることに決めましたわ。
 一階層だけであればという条件で、管理局からも了解を取り付けましたし、早速始めることとしましょうか。
 このダンジョンには、あたしとシードラゴンだけが使える、マスター用の転送設備がございますのよ。これも一か所につき10万ポイントという消費がありますけれど、今となってはどうしても必要ですから安い出費ですわ。
 転送設備によって、あたしは育成空間の一階層へとやってくる。そこから入口の方を見れば、ダンジョンに入るための自動改札機が見える。ちなみに自動改札というのは、下僕とウィンクさんに教えていただきましたわ。
 道具も、あたしたちが触れていることで持ち運びが可能。なので、下僕から預かった、配信どろーんとやらも一緒に運んでこれますのよ。
 あたしは早速、探索者育成のためのスペースの紹介配信をすることにしましたわ。
 と思ったのですが、まぁ、なんとも間の悪いことですわね。
「あっ、モンスターがいるぞ」
「倒せ、倒せ!」
 探索者が入り込んできて、あたしに向かって攻撃を仕掛けようとしてきましたのよ。
 まあ、なんて野蛮な連中なのかしらね。
 ですが、あたしは異界の公爵令嬢。この程度で慌てることなどありませんわ。
「セイレーン様、我にお任せを」
「頼みますわよ、シードラゴン」
「はっ!」
 あたし直々ふっ飛ばしてやろうかと思いましたけれど、シードラゴンが忠義によって飛び出してきましたので、任せることにしましたわ。
「海竜衝!」
「ぶへあっ!」
「おがあぢゃーんっ!」
 シードラゴンが一発掌底を放ちますと、探索者たちはあっという間に水の藻屑となりましたわ。
 すぐそこで復活できますから、どうせすぐまたやってくるでしょうね。
「くそっ、なんて強さだ」
「もう一度だ!」
「やめておきなさい。リスポーンしているのですから、能力が低下しておりますわよ。万全の状態で勝ち目がないのであるのなら、ますます勝ち目はありませんわ。命を粗末にするのはよろしくありませんわよ」
 戦おうとする探索者たちをあたしは制止する。
 あたしの声に、探索者たちがぴたりと動きを止めた。
「なっ……。このモンスター、言葉を喋るぞ」
「しかも、ちゃんと会話が成立している」
 まったく、あたしをそこんじゅそこらのモンスターと一緒にしてくれては困りますわね。
 あたしは探索者たちの反応に呆れておりましたけれど、ちょうどいいことを思いつきましたわ。
「そうですわ。今から配信をしたいと思いますので、よろしければ参加なさってくださいませんこと?」
 あたしの呼び掛けに探索者たちは戸惑っていますわね。
 ですが、あたしが配信どろーんを取り出しますと、戸惑った様子を見せていますわね。
 あたしはにこやかな笑顔を向けたまま、探索者の反応を待つことにしましたわ。