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かしましガールズ買い出し紀行(後編)

ー/ー



「マルシャちゃん真剣だね! 誰か可愛い下着を見せたい人でもいたりして!」

 チャンチャルが声をかけると、マルシャの動きが一瞬とまった。
 お? もしかして恋バナか?

 と、モチコは思ったりもしたが。
 マルシャの返事は意外なものだった。

「誰かのために可愛くなんてしないわよ」

 マルシャは不敵な笑みを見せながら続ける。

「可愛くするのはわたしのため。私はわたしとして、強く可愛くなるのよ」
「……わお! マルシャちゃん、カッコいい!」

 チャンチャルの称賛に、モチコも同意だった。

 そのあとのマルシャは、悩んだ末に赤い下着をチョイスした。
 あとで聞いたところによると、あの下着はマルシャが推しているファッションモデルの人がデザインしたものらしい。
 本来は王都に行かないと買えないのだが、数量限定でこの街にも入荷されたとかなんとか。

 マルシャがやたら真剣に選んでいた理由が分かったのだった。
 ちなみに、ミライアのことも尊敬する魔女として心から推しており、どちらがより好きか、などと比べるものではないそうだ。


 店から出ると、ちょうどランチタイム。
 お昼は、チャンチャルがおすすめするお店に行くことになっていた。

「モチコちゃん、マルシャちゃん! このお店だよ!」

 案内されて入ったのは、温かみのあるカフェレストランといった感じのお店だった。
 ラタン編みのイスやソファー、アンティークっぽいチークのテーブルが並んでいる。

 お昼どきで混んでいたが、運よく空いていたソファー席に案内してもらえた。
 チャンチャルのおすすめ情報も参考にしながら、それぞれ注文を選ぶ。

 みんなの食事が届くと、いただきます、と食べ始めた。

「おお。中に野菜がいっぱいだ」

 モチコが頼んだのは生春巻き。
 野菜がぎっしりと詰まっていて、見た目より食べごたえがあった。
 生ハム入り、ひき肉と春雨入り、アボカドとチーズ入りなんてのもあって、どれも美味しい。

「モチコちゃん! ちょっと交換しよ!」

 チャンチャルが提案してきたので、生春巻きをいくつか取り皿に分けて渡してあげた。
 代わりに、小鉢に分けられたカオソーイがモチコの前に置かれる。
 さっそくひとくち食べてみた。

「うわー。これ、美味しい」

 カオソーイは、ココナッツミルクの入ったカレースープに、麺を入れた料理だ。
 ミルクカレー麺、とでも言えばいいだろうか。

 口に入れると、ココナッツの甘い香りがしたあとで、じわりと辛いスパイスの旨さが追いかけてくる。
 もちもちのたまご麺がとろけて、良い感じにスープと一体化していた。
 うわー、と口に出てしまうほど美味しい。

 麺の上に乗っかっている、揚げたパリパリ麺とパクチーも、辛味の中でいいアクセントだ。
 スパイスが効いて身体が熱くなってきた。

「モチコちゃん! これと一緒に食べてもおいしいよ!」

 チャンチャルがそう言って渡してきたのは、付け合わせの紫タマネギ。

 刻んだ紫タマネギのシャキシャキが、甘さと辛さのあいだでちょうどいい清涼感になって、どんどん箸が進む。
 甘さと辛さが交互に……というか同時に来て、脳が混乱する旨さだ。

「あとこれも! いっぱい入れるといいよ!」

 チャンチャルがパクチーを手でわしづかみにして、モチコのカオソーイの上に盛りつけた。
 よくみると、ちーちゃんの手元に、巨大な皿に乗った超山盛りパクチーがある。
 なにそれ特注?

「マルシャちゃんも!」

 チャンチャルはパクチーをつかむと、今度はマルシャのガパオライスの上へ投下しようとした。
 するとマルシャが突然、勢いよく立ち上がる。

「ノーォォォォォ! パクチィィィィィイイイ!!!」

 たいへんよく響く大きな声に、店中の人が振り返る。
 マルシャはガパオライスのお皿を空中へ持ち上げ、パクチーを回避していた。

 一瞬の静寂のあと、チャンチャルはパクチーを自分のお皿に戻す。

「ごめん! マルシャちゃん、パクチーは無し!」
「マルシャ、パクチー苦手なの? こんなにおいしいのに」

 モチコは自分のお皿に投下されたパクチーを食べながら、マルシャに尋ねる。

「ノーパクチーね。私が好きなのはこっち」

 マルシャはガパオライスの上に乗っている目玉焼きを丁寧に箸で割って、小さい口でぱく、と食べた。
 黄身が半熟でとろけて、おいしそうだ。

「目玉焼きが好きなの?」

 マルシャはしばし咀嚼したあと、飲み込んでから口を開く。

「卵料理なら全部好きね。煮ても焼いてもお菓子にしても美味しい。卵は最強よ」
「なるほど」

 そのあとは3人で雑談をしながら、ランチを美味しく平らげた。
 ランチサービスの温かいジャスミン茶も飲み終えてから、お店を出る。

 午後からは、いよいよ今日いちばんの目的である、恋愛小説を買いに行く。
 3人は午後の日差しを浴びながら、本屋へと向かって歩きだした。


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「マルシャちゃん真剣だね! 誰か可愛い下着を見せたい人でもいたりして!」
 チャンチャルが声をかけると、マルシャの動きが一瞬とまった。
 お? もしかして恋バナか?
 と、モチコは思ったりもしたが。
 マルシャの返事は意外なものだった。
「誰かのために可愛くなんてしないわよ」
 マルシャは不敵な笑みを見せながら続ける。
「可愛くするのはわたしのため。私はわたしとして、強く可愛くなるのよ」
「……わお! マルシャちゃん、カッコいい!」
 チャンチャルの称賛に、モチコも同意だった。
 そのあとのマルシャは、悩んだ末に赤い下着をチョイスした。
 あとで聞いたところによると、あの下着はマルシャが推しているファッションモデルの人がデザインしたものらしい。
 本来は王都に行かないと買えないのだが、数量限定でこの街にも入荷されたとかなんとか。
 マルシャがやたら真剣に選んでいた理由が分かったのだった。
 ちなみに、ミライアのことも尊敬する魔女として心から推しており、どちらがより好きか、などと比べるものではないそうだ。
 店から出ると、ちょうどランチタイム。
 お昼は、チャンチャルがおすすめするお店に行くことになっていた。
「モチコちゃん、マルシャちゃん! このお店だよ!」
 案内されて入ったのは、温かみのあるカフェレストランといった感じのお店だった。
 ラタン編みのイスやソファー、アンティークっぽいチークのテーブルが並んでいる。
 お昼どきで混んでいたが、運よく空いていたソファー席に案内してもらえた。
 チャンチャルのおすすめ情報も参考にしながら、それぞれ注文を選ぶ。
 みんなの食事が届くと、いただきます、と食べ始めた。
「おお。中に野菜がいっぱいだ」
 モチコが頼んだのは生春巻き。
 野菜がぎっしりと詰まっていて、見た目より食べごたえがあった。
 生ハム入り、ひき肉と春雨入り、アボカドとチーズ入りなんてのもあって、どれも美味しい。
「モチコちゃん! ちょっと交換しよ!」
 チャンチャルが提案してきたので、生春巻きをいくつか取り皿に分けて渡してあげた。
 代わりに、小鉢に分けられたカオソーイがモチコの前に置かれる。
 さっそくひとくち食べてみた。
「うわー。これ、美味しい」
 カオソーイは、ココナッツミルクの入ったカレースープに、麺を入れた料理だ。
 ミルクカレー麺、とでも言えばいいだろうか。
 口に入れると、ココナッツの甘い香りがしたあとで、じわりと辛いスパイスの旨さが追いかけてくる。
 もちもちのたまご麺がとろけて、良い感じにスープと一体化していた。
 うわー、と口に出てしまうほど美味しい。
 麺の上に乗っかっている、揚げたパリパリ麺とパクチーも、辛味の中でいいアクセントだ。
 スパイスが効いて身体が熱くなってきた。
「モチコちゃん! これと一緒に食べてもおいしいよ!」
 チャンチャルがそう言って渡してきたのは、付け合わせの紫タマネギ。
 刻んだ紫タマネギのシャキシャキが、甘さと辛さのあいだでちょうどいい清涼感になって、どんどん箸が進む。
 甘さと辛さが交互に……というか同時に来て、脳が混乱する旨さだ。
「あとこれも! いっぱい入れるといいよ!」
 チャンチャルがパクチーを手でわしづかみにして、モチコのカオソーイの上に盛りつけた。
 よくみると、ちーちゃんの手元に、巨大な皿に乗った超山盛りパクチーがある。
 なにそれ特注?
「マルシャちゃんも!」
 チャンチャルはパクチーをつかむと、今度はマルシャのガパオライスの上へ投下しようとした。
 するとマルシャが突然、勢いよく立ち上がる。
「ノーォォォォォ! パクチィィィィィイイイ!!!」
 たいへんよく響く大きな声に、店中の人が振り返る。
 マルシャはガパオライスのお皿を空中へ持ち上げ、パクチーを回避していた。
 一瞬の静寂のあと、チャンチャルはパクチーを自分のお皿に戻す。
「ごめん! マルシャちゃん、パクチーは無し!」
「マルシャ、パクチー苦手なの? こんなにおいしいのに」
 モチコは自分のお皿に投下されたパクチーを食べながら、マルシャに尋ねる。
「ノーパクチーね。私が好きなのはこっち」
 マルシャはガパオライスの上に乗っている目玉焼きを丁寧に箸で割って、小さい口でぱく、と食べた。
 黄身が半熟でとろけて、おいしそうだ。
「目玉焼きが好きなの?」
 マルシャはしばし咀嚼したあと、飲み込んでから口を開く。
「卵料理なら全部好きね。煮ても焼いてもお菓子にしても美味しい。卵は最強よ」
「なるほど」
 そのあとは3人で雑談をしながら、ランチを美味しく平らげた。
 ランチサービスの温かいジャスミン茶も飲み終えてから、お店を出る。
 午後からは、いよいよ今日いちばんの目的である、恋愛小説を買いに行く。
 3人は午後の日差しを浴びながら、本屋へと向かって歩きだした。