第23話:父親との再会
ー/ー海人は、ゼロと桐生を伴って当主との正式な面談に向かう途中だった。
案内の者の言葉も上の空で、心は静かに燃えている。
焔木のすべてと、ようやく対峙するその時。だが、その直前――
「……久しいな、海人」
その声に、海人の足がぴたりと止まった。
低く、落ち着いた声。しかし、かつて何度も背中越しに聞いたその声を、彼は忘れていなかった。
ゆっくりと振り返ると、そこには一人の男が立っていた。
威厳ある姿、灰混じりの黒髪。
焔木宗家の重鎮にして、かつて当主補佐を務めた男――
焔木厳山。
海人の実の父だった。
「……何か用でしょうか厳山殿?」
「この場では“父”とは呼ばないのか」
「血は繋がっているが、それだけだ。……他に何か用か?」
海人の声には怒りも憎しみもなかった。ただ、凍えるほど冷たい。
厳山は目を細め、苦笑を浮かべる。
「お前が生きて帰ったと聞いて……私は耳を疑ったよ。まさか、あの地獄の島で力を得て戻ってくるとは」
「望んで幽閉したのは、あんたもだろう。俺に期待なんてしてなかったんじゃないのか?」
厳山の目がわずかに揺れた。
「……あの時、私にはどうすることもできなかった。だが、今は違う」
「何が違う?」
海人の口元が歪んだ。
怒気ではなく、呆れと失望だった。
「結局、あんたも焔木を選んだだけだろ。俺じゃなく、この家を守ることを選んだ」
「それが私の役目だった。だが、お前には、そんな枷はもうない」
「……なら余計な口出しするな。今さら父親ヅラするつもりなら、笑えない冗談だ」
ゼロと桐生は、一歩後ろで黙ってそのやり取りを見守っていた。
空気が張り詰め、まるで一触即発のような重圧が廊下を満たす。
厳山は一歩前に出た。だが、すぐに止まり、静かに言った。
「……今から当主と話すのだろう。なら覚えておけ。焔木一族は、力を持った者を恐れ、そして――利用しようとする」
「知ってる。だから、利用される前にこっちが使う。それだけの話だ」
「……お前が何を選ぼうと構わない。ただ、私は……それでも、父として――」
「黙れ」
海人ははっきりとした声で言った。
「父を名乗るなら、俺を護らなかったあの時、言うべきだった。今さら言葉を並べるだけなら、もう何も聞く気はない」
厳山の肩が、わずかに沈んだ。
「……そうか」
それだけを呟くと、彼は静かに背を向けて歩き去っていった。
その背を、海人は一度も振り返ることなく見送った。
ゼロがぽつりと漏らす。
「……あれが、マスターの父親」
桐生は目を細めた。
「アイツ、内心じゃボロボロだったな……親ってのも楽じゃねぇ」
「……行くぞ。今さら何を言われても、俺の歩く道は変わらない」
海人は静かに歩を進めた。
向かう先――焔木宗真とその一族との、因縁の対面が待っている。
案内の者の言葉も上の空で、心は静かに燃えている。
焔木のすべてと、ようやく対峙するその時。だが、その直前――
「……久しいな、海人」
その声に、海人の足がぴたりと止まった。
低く、落ち着いた声。しかし、かつて何度も背中越しに聞いたその声を、彼は忘れていなかった。
ゆっくりと振り返ると、そこには一人の男が立っていた。
威厳ある姿、灰混じりの黒髪。
焔木宗家の重鎮にして、かつて当主補佐を務めた男――
焔木厳山。
海人の実の父だった。
「……何か用でしょうか厳山殿?」
「この場では“父”とは呼ばないのか」
「血は繋がっているが、それだけだ。……他に何か用か?」
海人の声には怒りも憎しみもなかった。ただ、凍えるほど冷たい。
厳山は目を細め、苦笑を浮かべる。
「お前が生きて帰ったと聞いて……私は耳を疑ったよ。まさか、あの地獄の島で力を得て戻ってくるとは」
「望んで幽閉したのは、あんたもだろう。俺に期待なんてしてなかったんじゃないのか?」
厳山の目がわずかに揺れた。
「……あの時、私にはどうすることもできなかった。だが、今は違う」
「何が違う?」
海人の口元が歪んだ。
怒気ではなく、呆れと失望だった。
「結局、あんたも焔木を選んだだけだろ。俺じゃなく、この家を守ることを選んだ」
「それが私の役目だった。だが、お前には、そんな枷はもうない」
「……なら余計な口出しするな。今さら父親ヅラするつもりなら、笑えない冗談だ」
ゼロと桐生は、一歩後ろで黙ってそのやり取りを見守っていた。
空気が張り詰め、まるで一触即発のような重圧が廊下を満たす。
厳山は一歩前に出た。だが、すぐに止まり、静かに言った。
「……今から当主と話すのだろう。なら覚えておけ。焔木一族は、力を持った者を恐れ、そして――利用しようとする」
「知ってる。だから、利用される前にこっちが使う。それだけの話だ」
「……お前が何を選ぼうと構わない。ただ、私は……それでも、父として――」
「黙れ」
海人ははっきりとした声で言った。
「父を名乗るなら、俺を護らなかったあの時、言うべきだった。今さら言葉を並べるだけなら、もう何も聞く気はない」
厳山の肩が、わずかに沈んだ。
「……そうか」
それだけを呟くと、彼は静かに背を向けて歩き去っていった。
その背を、海人は一度も振り返ることなく見送った。
ゼロがぽつりと漏らす。
「……あれが、マスターの父親」
桐生は目を細めた。
「アイツ、内心じゃボロボロだったな……親ってのも楽じゃねぇ」
「……行くぞ。今さら何を言われても、俺の歩く道は変わらない」
海人は静かに歩を進めた。
向かう先――焔木宗真とその一族との、因縁の対面が待っている。
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