告発

ー/ー



 謎の金髪少女の襲撃を受けたマルクエンとラミッタ。

 なんとか撃退し、拘束魔法を掛けた少女は「早く殺せ」と抑揚のない声で言うだけだった。

「殺せってどういう事かしら?」

「話すことはない、殺せ」

 マルクエンとラミッタは顔を見合わせた。

「アンタ、死ぬのが怖くないの?」

 相手の返事はない。ラミッタは剣先を少女の喉元に突き付けてもう一度言う。

「答えなさい」

「殺すなら殺せ」

 ラミッタはふぅーっと息を吐いて、剣を下ろす。

「コイツには『自白の魔法』を使うしかないわね」

 ラミッタが聞いた事のない魔法を言うので、マルクエンは聞き返した。

「自白の……、魔法?」

「えぇ、この世界にはあるのよ。私は使えないけど」

「じゃあ使える人は……」

 マルクエンが言うと、ラミッタはため息を吐く。

「そうね。人の心を操るのは、かなり上級の魔法だから。裁判所や大きな治安維持部隊の駐在所に行けば使える人はいるでしょうけど」

 その言葉を踏まえたうえでマルクエンは話した。

「それじゃ、さっきの街に……」

「ダメよ、あの街は」

 ラミッタの言葉を聞いてマルクエンは疑問が浮かんだ。

「どうしてだ?」

「女の勘よ」

「そうか、信じよう」

 ラミッタの言う事だ、何かがあるに違いないとマルクエンは思い、剣を収める。

「じゃあ、スナドリの街へ行くか」

「えぇ、そうね」

 ラミッタとマルクエンの会話を横目に、そろりそろりと逃げようとする黒髪盗賊の少女シオ。

 それを察して、少女の方を見ないまま声を出すラミッタ。

「あぁ、そうそう。逃げるのは自由だけど、逃げたらアンタ、命ないわよ」

 ぎくりとしてその場で固まるシオ。はぁっとため息をつきながら謎の金髪少女を指さす。

「コイツの狙いはアンタだった。アンタ、相当恨み買っているんじゃない?」

「あー……。あのー……」

 何やら言いにくそうにしているシオに、マルクエンはしゃがんで話しかける。

「私の名はマルクエン・クライス。君の名前は?」

「えっ!? あーえと、シオ……」

「シオか、君の事は私が守る。何か隠している事があったら言ってほしい」

 マルクエンにじっと見つめられ、赤面し顔を背けるシオ。

 ラミッタもシオに言う。

「アンタ、隠し事があるなら言いなさい」

「えっと、その……。でも……」

 なんだか言いにくそうにしているシオだったが、マルクエンとラミッタは大人しく言葉を待つ。

「上納金……」

 ポツリとシオが言った言葉を、ラミッタは聞き返す。

「えっ? 上納金?」

「そうだ、あの街で盗みをするには、ボスと治安維持部隊にカネを払うんだよ」

 その言葉にマルクエンは驚く。

「その話は本当か!?」

 ラミッタは片目を閉じてふぅっと息を吐く。

「珍しい話じゃないわよ。組織なんて末端は腐敗していてもおかしくないわ」

 スナドリのとある会議室。

 そこに、マルクエンとラミッタ。盗賊のシオと暗殺者の金髪少女という珍妙な面々と、スナドリの治安維持部隊長、冒険者ギルドマスターが集まった。

 治安維持部隊長がマルクエンの方を向いて話す。

「勇者様、エナハの街で一体なにが……」

「まず、単刀直入に言います。エナハの街では治安維持部隊が犯罪者と繋がっています」

 マルクエンの言葉に意外にもスナドリの治安維持部隊長とギルドマスターは動じなかった。

 そして、部隊長が言う。

「やはりですか、いえ、エナハの黒い噂は聞いていましたが……」

 その反応でマルクエンも頷いた。

「そうでしたか」

 部隊長は続けて言う。

「ですが、告発には確実な証拠が必要です」

 ラミッタが片目を閉じて話し出す。

「私達を襲った暗殺者に自白をさせるのはどうでしょうか?」

「えぇ。勇者様の証言と、その者の自白があれば……」

 だが、部隊長は険しい顔をする。

「ですが、お恥ずかしながら、この街の治安維持部隊には『自白の魔法』を使える者がおりません」

 ギルドマスターもため息をついて言う。

「冒険者ギルドにもです」

 また、部隊長が話し始める。

「それと、大きな告発となると、裁判所のある街へ行くのが得策ですが、それならば王都へお戻りになられた方が、ここからですと一番早いかと」

 それしかないか、とマルクエンは目を閉じて考えた。

「わかりました。向かいましょう」

 マルクエンの言葉に、部隊長はうなずく。

「私はこの街にまだ勇者様がいらっしゃる事にして足止めをしましょう」

 その案にギルドマスターも同調する。

「私も、そういたしましょう」

 次に、部隊長が申し訳なさそうな顔をして、マルクエンとラミッタに話す。

「では、王都には連絡を入れておきます。お二方には急かすようで申し訳ございませんが、エナハの偵察が来る前に出発した方がよろしいかと……」

 マルクエンは席を立ち上がった。

「えぇ、それでは……」

 勇者の二人は部屋を出て、衛兵の案内で治安維持部隊の牢へ向かう。

「なんで私まで捕まってんだ!!」

 牢の中では盗賊のシオが叫んでいた。

 ラミッタは軽く笑いながら言う。

「あんた、仮にも盗賊なんだから当たり前でしょ」

 マルクエンは苦笑いをしてシオに話しかけた。

「すまないね、ここが安全だからな。キミとそっちのキミも証人として王都に来てもらう」

 シオと隣の牢に居る金髪の暗殺者に声を掛ける。金髪の少女は身動きを拘束されており、声しか出せなかった。

「なにか言いたい事でもあるのか?」

 金髪少女はマルクエンをじっと見つめている。

「……」

「何か言いたい事があれば、言ってくれ」

 ずっと無言の少女に優しくマルクエンは語り掛けた。

「……れ」

「ん?」

「……トイレ」

 言葉を頭の中で一周させ、マルクエンはあっと気付いた。

「そ、そうだな! すまない、ずっと拘束していたもんな!」

「……もれる」

「ら、ラミッタ!!」

 マルクエンはラミッタの名を呼ぶが、ラミッタは訝しげな様子だ。

「でも、そいつ拘束解いたら舌噛むわよ?」

「と、とりあえず!! トイレに座らせてやってくれ!」

 ラミッタは、はぁっとため息をついて牢の鍵を受け取ると、金髪少女のもとへ歩いた。

「あんたは出て行きなさい宿敵」

「あ、あぁ。そうだな」


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 謎の金髪少女の襲撃を受けたマルクエンとラミッタ。
 なんとか撃退し、拘束魔法を掛けた少女は「早く殺せ」と抑揚のない声で言うだけだった。
「殺せってどういう事かしら?」
「話すことはない、殺せ」
 マルクエンとラミッタは顔を見合わせた。
「アンタ、死ぬのが怖くないの?」
 相手の返事はない。ラミッタは剣先を少女の喉元に突き付けてもう一度言う。
「答えなさい」
「殺すなら殺せ」
 ラミッタはふぅーっと息を吐いて、剣を下ろす。
「コイツには『自白の魔法』を使うしかないわね」
 ラミッタが聞いた事のない魔法を言うので、マルクエンは聞き返した。
「自白の……、魔法?」
「えぇ、この世界にはあるのよ。私は使えないけど」
「じゃあ使える人は……」
 マルクエンが言うと、ラミッタはため息を吐く。
「そうね。人の心を操るのは、かなり上級の魔法だから。裁判所や大きな治安維持部隊の駐在所に行けば使える人はいるでしょうけど」
 その言葉を踏まえたうえでマルクエンは話した。
「それじゃ、さっきの街に……」
「ダメよ、あの街は」
 ラミッタの言葉を聞いてマルクエンは疑問が浮かんだ。
「どうしてだ?」
「女の勘よ」
「そうか、信じよう」
 ラミッタの言う事だ、何かがあるに違いないとマルクエンは思い、剣を収める。
「じゃあ、スナドリの街へ行くか」
「えぇ、そうね」
 ラミッタとマルクエンの会話を横目に、そろりそろりと逃げようとする黒髪盗賊の少女シオ。
 それを察して、少女の方を見ないまま声を出すラミッタ。
「あぁ、そうそう。逃げるのは自由だけど、逃げたらアンタ、命ないわよ」
 ぎくりとしてその場で固まるシオ。はぁっとため息をつきながら謎の金髪少女を指さす。
「コイツの狙いはアンタだった。アンタ、相当恨み買っているんじゃない?」
「あー……。あのー……」
 何やら言いにくそうにしているシオに、マルクエンはしゃがんで話しかける。
「私の名はマルクエン・クライス。君の名前は?」
「えっ!? あーえと、シオ……」
「シオか、君の事は私が守る。何か隠している事があったら言ってほしい」
 マルクエンにじっと見つめられ、赤面し顔を背けるシオ。
 ラミッタもシオに言う。
「アンタ、隠し事があるなら言いなさい」
「えっと、その……。でも……」
 なんだか言いにくそうにしているシオだったが、マルクエンとラミッタは大人しく言葉を待つ。
「上納金……」
 ポツリとシオが言った言葉を、ラミッタは聞き返す。
「えっ? 上納金?」
「そうだ、あの街で盗みをするには、ボスと治安維持部隊にカネを払うんだよ」
 その言葉にマルクエンは驚く。
「その話は本当か!?」
 ラミッタは片目を閉じてふぅっと息を吐く。
「珍しい話じゃないわよ。組織なんて末端は腐敗していてもおかしくないわ」
 スナドリのとある会議室。
 そこに、マルクエンとラミッタ。盗賊のシオと暗殺者の金髪少女という珍妙な面々と、スナドリの治安維持部隊長、冒険者ギルドマスターが集まった。
 治安維持部隊長がマルクエンの方を向いて話す。
「勇者様、エナハの街で一体なにが……」
「まず、単刀直入に言います。エナハの街では治安維持部隊が犯罪者と繋がっています」
 マルクエンの言葉に意外にもスナドリの治安維持部隊長とギルドマスターは動じなかった。
 そして、部隊長が言う。
「やはりですか、いえ、エナハの黒い噂は聞いていましたが……」
 その反応でマルクエンも頷いた。
「そうでしたか」
 部隊長は続けて言う。
「ですが、告発には確実な証拠が必要です」
 ラミッタが片目を閉じて話し出す。
「私達を襲った暗殺者に自白をさせるのはどうでしょうか?」
「えぇ。勇者様の証言と、その者の自白があれば……」
 だが、部隊長は険しい顔をする。
「ですが、お恥ずかしながら、この街の治安維持部隊には『自白の魔法』を使える者がおりません」
 ギルドマスターもため息をついて言う。
「冒険者ギルドにもです」
 また、部隊長が話し始める。
「それと、大きな告発となると、裁判所のある街へ行くのが得策ですが、それならば王都へお戻りになられた方が、ここからですと一番早いかと」
 それしかないか、とマルクエンは目を閉じて考えた。
「わかりました。向かいましょう」
 マルクエンの言葉に、部隊長はうなずく。
「私はこの街にまだ勇者様がいらっしゃる事にして足止めをしましょう」
 その案にギルドマスターも同調する。
「私も、そういたしましょう」
 次に、部隊長が申し訳なさそうな顔をして、マルクエンとラミッタに話す。
「では、王都には連絡を入れておきます。お二方には急かすようで申し訳ございませんが、エナハの偵察が来る前に出発した方がよろしいかと……」
 マルクエンは席を立ち上がった。
「えぇ、それでは……」
 勇者の二人は部屋を出て、衛兵の案内で治安維持部隊の牢へ向かう。
「なんで私まで捕まってんだ!!」
 牢の中では盗賊のシオが叫んでいた。
 ラミッタは軽く笑いながら言う。
「あんた、仮にも盗賊なんだから当たり前でしょ」
 マルクエンは苦笑いをしてシオに話しかけた。
「すまないね、ここが安全だからな。キミとそっちのキミも証人として王都に来てもらう」
 シオと隣の牢に居る金髪の暗殺者に声を掛ける。金髪の少女は身動きを拘束されており、声しか出せなかった。
「なにか言いたい事でもあるのか?」
 金髪少女はマルクエンをじっと見つめている。
「……」
「何か言いたい事があれば、言ってくれ」
 ずっと無言の少女に優しくマルクエンは語り掛けた。
「……れ」
「ん?」
「……トイレ」
 言葉を頭の中で一周させ、マルクエンはあっと気付いた。
「そ、そうだな! すまない、ずっと拘束していたもんな!」
「……もれる」
「ら、ラミッタ!!」
 マルクエンはラミッタの名を呼ぶが、ラミッタは訝しげな様子だ。
「でも、そいつ拘束解いたら舌噛むわよ?」
「と、とりあえず!! トイレに座らせてやってくれ!」
 ラミッタは、はぁっとため息をついて牢の鍵を受け取ると、金髪少女のもとへ歩いた。
「あんたは出て行きなさい宿敵」
「あ、あぁ。そうだな」