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第2話:ダンジョンの主と戦闘

ー/ー



レオンたちパーティーは、ダンジョンを探索し最下層へとたどり着いた。その先にたたずむ壁は荒れて魔力を感じさせる壁面。その向こうには、大きな鎖のかけられた重たげな門。そこには、ダンジョンマスターの部屋があると確信させるに十分だった。

「みんな注意して。このダンジョン、置いてあった罠も多かったし、出てきた魔物も手ごわいのあるやつばっかりだった。ボスの魔人も、きっとレベルが高いはずだよ。」

「確かに。魔王軍の生き残りがいる可能性だって否定できません。」

「魔王軍ね…そんなもの、本当にまだ存在するのかね」

「もはや滅んだと聞いましたけど。それに、これは人類の全体認識でしょうね。」

ダンジョンは一つ一つ独立した魔人が管理しているが、かつて魔王軍はそれらを従え戦略的に効率の良い継続戦力としていた。

「確か魔王が倒れ、魔王軍も自然に滅んだはずだけど…」

レオンは手を止めた。門の前で、皆を見回す。

「門の中に入る前に食事にした方がいい。中に何がいるかわからない」

「何をノンキな事を言ってるんだ! ダンジョンマスターの部屋の前でメシなんか食ってる場合か!!」

ロイドが怒鳴るように言い放った。

レオンは静かにロイドを見返し、淡々と答える。

「ノンキじゃないよ。ちゃんと考えてる。胃に何も入ってない状態で集中力を欠いたら、全滅する可能性だってある。短時間で栄養と魔力を補える、戦闘用の調理食だ。…準備してある」

そう言ってレオンは、革袋から小さな包みを取り出す。魔物の肉を干し、特製のスパイスと薬草で漬け込んだ保存食――仲間たちには内緒だがこの食事には身体強化効果がある。

「……ほんと、あなたって変わってるわね」

ティアナが呆れたように吐き捨てるが、レオンは気にせず包みを配り始めた。

「今のうちに力を整えておいた方がいい。敵は間違いなく強いから」

レイナは無言で受け取り、一口かじる。「……悪くない」とだけ呟く。
ノエルは肩をすくめながらも素直に受け取った。

「理には適ってる。じゃあ、いただこうか」

フローラは少し迷ったあとで、うっすら微笑んで頷いた。

「レオンの料理だもん。安心して食べられる」

ティアナとロイドは見向きもしなかったが、仲間たちが静かに食べ始めるのを見て、バツが悪そうに黙り込んだ。

「……ふん。少しだけなら、まあ……」

「……そうですね」

そうぼそりと呟きながら、ロイドとティアナも一口だけかじる。
レオンはそれを見て小さく微笑む。

「(これでみんなの強化はできた)」

ロイドは腕を組み、門の前に立ったレオンを睨みつけるように見下ろした。

「おいレオン、お前が扉を開けろ」

「……え?」

「飯だなんだと足止めたんだ。時間を無駄にした分くらい、体張って償えよ。どうせ最弱職なんだ、盾くらいにはなるだろ」

周囲が一瞬、空気を凍らせる。だがレオンは反論せず、静かに頷く。

「……わかった。もし門を開けて罠が発動したら、被害を最小に押さえられるのは、傷を負っても問題のない人間だ。それは…僕だろうね。」

「待って!レオンが行くなら私も行くわ…」

「フローラ、ありがとう。僕なら大丈夫だよ。」

 レオンは重い門をそっと押し開ける。

門の向こうには、魔力の深淵が切り続けるまっくろな室内。その奥、銀色の粉塵のような空気の中に、精神的な幅を感じさせる魔人が座っていた。

その人型は小さくはない。頭に角を生やし、肌は緑色であり、両手に銭切りのような銭を持っている。

「よくぞ我が居城まで足を込んだな。久々の来客を歓迎しよう。」

その声に、レイナが戦闘態勢をとる。ロイドも静かに剣を抜いた。

「戦うのか。なら問答は無用だ。」

彼らの方へ、魔人が静かに走み出す。部屋全体に響く重い足音が響く。
魔人は静かに立ち上がる。身長は五メートルを超え、筋肉の塊のような巨体に、禍々しい魔力のうねりがまとわりついていた。

「我が名はオークリア。この地を統べる者。侵入者どもよ覚悟するが良い」

穏やかな口調とは裏腹に、空気がびりびりと震える。オークリアの足が一歩床を踏みしめるたびに、床石が砕け振動がパーティーの足元を襲った。

だが、パーティーの誰一人として動じる者はいなかった。

「行くぞ!」

ノエルが先陣を切る。加速する踏み込み、迷いのない拳――その一撃がオークリアの顎を撃ち抜き、巨体がぐらりと傾く。

「その隙、もらった」

 レイナが背後へ回り込み、関節を正確に斬り裂く。
 刃がめり込み、オークリアの膝が砕けて崩れ落ちる。

 聖なる光が瞬き、ティアナの魔法が直撃。
 魔人の体表を焼き、動きをさらに鈍らせた。
 その光景を、レオンは後方で静かに見守っていた。

 さらにフローラの魔法が炸裂する。ノエルの拳、レイナの剣、ティアナの光――
 それぞれが迷いなく連携し、オークリアをまるで“狩る”ように圧倒していく。

「動きが遅いな」「もう終わりかしら」「押し切る!」

 誰もが自分たちの力を疑わず、自然に勝利へ向かって進んでいた。
 そして。

「とどめだっ!」

 ノエルとレイナの同時攻撃が決まり、オークリアは断末魔を上げて崩れ落ちた。
 誰も気づかない。
 戦闘前に食べた料理がとんでもないレベルに上昇させていたことを。

 レオンは少しだけ微笑んで、小さく呟いた。

「うん、今日の料理の効果は抜群だったようだね」


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レオンたちパーティーは、ダンジョンを探索し最下層へとたどり着いた。その先にたたずむ壁は荒れて魔力を感じさせる壁面。その向こうには、大きな鎖のかけられた重たげな門。そこには、ダンジョンマスターの部屋があると確信させるに十分だった。
「みんな注意して。このダンジョン、置いてあった罠も多かったし、出てきた魔物も手ごわいのあるやつばっかりだった。ボスの魔人も、きっとレベルが高いはずだよ。」
「確かに。魔王軍の生き残りがいる可能性だって否定できません。」
「魔王軍ね…そんなもの、本当にまだ存在するのかね」
「もはや滅んだと聞いましたけど。それに、これは人類の全体認識でしょうね。」
ダンジョンは一つ一つ独立した魔人が管理しているが、かつて魔王軍はそれらを従え戦略的に効率の良い継続戦力としていた。
「確か魔王が倒れ、魔王軍も自然に滅んだはずだけど…」
レオンは手を止めた。門の前で、皆を見回す。
「門の中に入る前に食事にした方がいい。中に何がいるかわからない」
「何をノンキな事を言ってるんだ! ダンジョンマスターの部屋の前でメシなんか食ってる場合か!!」
ロイドが怒鳴るように言い放った。
レオンは静かにロイドを見返し、淡々と答える。
「ノンキじゃないよ。ちゃんと考えてる。胃に何も入ってない状態で集中力を欠いたら、全滅する可能性だってある。短時間で栄養と魔力を補える、戦闘用の調理食だ。…準備してある」
そう言ってレオンは、革袋から小さな包みを取り出す。魔物の肉を干し、特製のスパイスと薬草で漬け込んだ保存食――仲間たちには内緒だがこの食事には身体強化効果がある。
「……ほんと、あなたって変わってるわね」
ティアナが呆れたように吐き捨てるが、レオンは気にせず包みを配り始めた。
「今のうちに力を整えておいた方がいい。敵は間違いなく強いから」
レイナは無言で受け取り、一口かじる。「……悪くない」とだけ呟く。
ノエルは肩をすくめながらも素直に受け取った。
「理には適ってる。じゃあ、いただこうか」
フローラは少し迷ったあとで、うっすら微笑んで頷いた。
「レオンの料理だもん。安心して食べられる」
ティアナとロイドは見向きもしなかったが、仲間たちが静かに食べ始めるのを見て、バツが悪そうに黙り込んだ。
「……ふん。少しだけなら、まあ……」
「……そうですね」
そうぼそりと呟きながら、ロイドとティアナも一口だけかじる。
レオンはそれを見て小さく微笑む。
「(これでみんなの強化はできた)」
ロイドは腕を組み、門の前に立ったレオンを睨みつけるように見下ろした。
「おいレオン、お前が扉を開けろ」
「……え?」
「飯だなんだと足止めたんだ。時間を無駄にした分くらい、体張って償えよ。どうせ最弱職なんだ、盾くらいにはなるだろ」
周囲が一瞬、空気を凍らせる。だがレオンは反論せず、静かに頷く。
「……わかった。もし門を開けて罠が発動したら、被害を最小に押さえられるのは、傷を負っても問題のない人間だ。それは…僕だろうね。」
「待って!レオンが行くなら私も行くわ…」
「フローラ、ありがとう。僕なら大丈夫だよ。」
 レオンは重い門をそっと押し開ける。
門の向こうには、魔力の深淵が切り続けるまっくろな室内。その奥、銀色の粉塵のような空気の中に、精神的な幅を感じさせる魔人が座っていた。
その人型は小さくはない。頭に角を生やし、肌は緑色であり、両手に銭切りのような銭を持っている。
「よくぞ我が居城まで足を込んだな。久々の来客を歓迎しよう。」
その声に、レイナが戦闘態勢をとる。ロイドも静かに剣を抜いた。
「戦うのか。なら問答は無用だ。」
彼らの方へ、魔人が静かに走み出す。部屋全体に響く重い足音が響く。
魔人は静かに立ち上がる。身長は五メートルを超え、筋肉の塊のような巨体に、禍々しい魔力のうねりがまとわりついていた。
「我が名はオークリア。この地を統べる者。侵入者どもよ覚悟するが良い」
穏やかな口調とは裏腹に、空気がびりびりと震える。オークリアの足が一歩床を踏みしめるたびに、床石が砕け振動がパーティーの足元を襲った。
だが、パーティーの誰一人として動じる者はいなかった。
「行くぞ!」
ノエルが先陣を切る。加速する踏み込み、迷いのない拳――その一撃がオークリアの顎を撃ち抜き、巨体がぐらりと傾く。
「その隙、もらった」
 レイナが背後へ回り込み、関節を正確に斬り裂く。
 刃がめり込み、オークリアの膝が砕けて崩れ落ちる。
 聖なる光が瞬き、ティアナの魔法が直撃。
 魔人の体表を焼き、動きをさらに鈍らせた。
 その光景を、レオンは後方で静かに見守っていた。
 さらにフローラの魔法が炸裂する。ノエルの拳、レイナの剣、ティアナの光――
 それぞれが迷いなく連携し、オークリアをまるで“狩る”ように圧倒していく。
「動きが遅いな」「もう終わりかしら」「押し切る!」
 誰もが自分たちの力を疑わず、自然に勝利へ向かって進んでいた。
 そして。
「とどめだっ!」
 ノエルとレイナの同時攻撃が決まり、オークリアは断末魔を上げて崩れ落ちた。
 誰も気づかない。
 戦闘前に食べた料理がとんでもないレベルに上昇させていたことを。
 レオンは少しだけ微笑んで、小さく呟いた。
「うん、今日の料理の効果は抜群だったようだね」