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【少しこわい話】善行

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 野原の隅に、杭が刺さっていた。その杭は、尖った方が上を向いていた。ある夏の日、少年がそこを通りかかった。杭の先端に、一匹のトンボがとまっていた。少年は近づいた。そしてトンボの目の前で指をぐるぐる回した。トンボは目を回した。少年はトンボを捕まえた。こんな所に杭があるなんて知らなかった。トンボ捕りの穴場だ。少年は喜んだ。それから少年は、そこでたくさんトンボを捕まえた。杭が何のための杭なのかはわからなかったが、少年はあまり気にしなかった。ある秋の日、いつものように少年はその杭のところに行った。しかし、いつもとは様子が違う。杭に、生首が刺さっていた。年老いた男の生首だった。そしてその生首の頭頂部に、トンボがとまっていた。少年は迷った挙句、トンボを捕らずに立ち去った。トンボは捕まえたかったが、生首には触れたくなかった。こうしてこのトンボは、生首のおかげで命拾いをした。


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 野原の隅に、杭が刺さっていた。その杭は、尖った方が上を向いていた。ある夏の日、少年がそこを通りかかった。杭の先端に、一匹のトンボがとまっていた。少年は近づいた。そしてトンボの目の前で指をぐるぐる回した。トンボは目を回した。少年はトンボを捕まえた。こんな所に杭があるなんて知らなかった。トンボ捕りの穴場だ。少年は喜んだ。それから少年は、そこでたくさんトンボを捕まえた。杭が何のための杭なのかはわからなかったが、少年はあまり気にしなかった。ある秋の日、いつものように少年はその杭のところに行った。しかし、いつもとは様子が違う。杭に、生首が刺さっていた。年老いた男の生首だった。そしてその生首の頭頂部に、トンボがとまっていた。少年は迷った挙句、トンボを捕らずに立ち去った。トンボは捕まえたかったが、生首には触れたくなかった。こうしてこのトンボは、生首のおかげで命拾いをした。