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第16話:今後の方針会議

ー/ー



「・・・なるほどな。ウソみたいな話だが本当なんだろうな。この水晶の中にメイドがいたとはね・・・何だそりゃ?」

桐生は海人から事情を聞いたがあまりに現実離れした内容にうなっていた。

「桐生でも知らなかったのか?この島には長くいるんだろ?」

「知るかよ。滝の裏にこんな空間があるなんて、気づきもしなかったぞ」

「私は意図的に封印されていたのでしょう。平和な時代に、私のような存在は不要ですから」

「そういえばゼロ、お前のことは何も聞いてなかったな。あの水晶に、どれくらい封じられてたんだ?」

「……そうですね、およそ200年ほどでしょうか」

「「200年!?」」

「……おい、ババアじゃ――ゴフッ!」

不用意な一言を放った桐生の腹に、ゼロの鋭い蹴りが突き刺さる。
あまりの速度に避けることもできず、桐生はその場に蹲った。

「何かおっしゃいましたか、ジジイ?残り少ない寿命を削って差し上げましょうか?」

「……悪かった。完全に俺が悪かった」

「理解いただけたなら、結構です」

「ま、まぁ。それはさておき……なぜメイド服なんだ?」

「創造主の趣味です」

「……」

「……」

2人はそれ以上踏み込まないことにした。余計なことを言えば、再び蹴られる気がしてならなかった。そして、ゼロを創った人物が相当な変態だったことは、二人とも察した。

「さて、二人には先に伝えておきたい。俺は、三ヶ月間この島で生き抜けば外に出られる契約なんだ。一緒に来てくれないか?」

「私は当然、マスターにお供します」

「……俺もか?この島の暮らし、結構気に入ってるんだがな」

「桐生、力を貸してくれ。俺が一族に戻れば、ある女の護衛になる予定だ。戦力は、一人でも多い方がいい」

焔木一族にどれだけ力をつけて戻ろうとも、すんなり受け入れてもらえるとは思っていなかった。海人は最初から、約束など信用していない。

「逃げるという手もあるぞ?今のお前なら、それもできるだろう」

「……約束したんだ、“戻る”って。俺は、逃げ続ける人生にはしたくない」

「……復讐か?」

「……いや、それも考えた。でも俺が本当に望んでいるのは、“屈服”だ。俺を認めなかった連中を、自分の力で黙らせて、本当の自由を掴みたい」

瑞穂が「当主になったら海人を解放する」と言った約束も、彼は信じていない。裏切られたら、そのときは一族すべてを敵に回す覚悟すらあった。

「……怖い目をしてやがる。だが面白い。いいだろう、一緒に行ってやる」

桐生は不敵に笑い、同行を快諾した。戦いを求めるこの男にとって、相手が焔木一族であろうと関係はなかった。

「残りは一ヶ月少々。それまでの間、お前と修行を重ね、頃合いを見て島の中央部へ向かう」

「言ってたよな。あの辺りの魔獣は桁違いだと」

「ああ。だからこそ、最後の修行場にふさわしい」

(この島の強力な魔獣の氣を喰らい尽くす。倒すたびに、俺はさらに強くなる)

海人の脳裏に、かつて出会った焔木の人間たちの顔が浮かぶ。
あいつらはもう、自分のことを死んだと思っているかもしれない。

だが――力を手に入れて戻ったら、どんな顔をするだろう。

瑞穂は、刹那は……笑うのか、それとも――。

「さあ、始めるぞ。時間は限られている。頼むぞ、桐生」

「おう。ただし、俺は口で教えるのが苦手だ。戦いながら覚えろ」

「それが一番性に合ってる。よろしく頼む」

こうして、桐生との修行が始まった。
まず取り組んだのは“氣の制御”――桐生は無駄なく氣を扱うのに対し、海人はその大半を垂れ流す未熟な状態だった。

だが、戦いながら徐々に氣を抑え、操る術を学んでいく。
森では定期的に魔獣狩りも行い、氣を奪っては力とした。
ゼロは食事や生活全般を完璧にサポートしてくれ、日々は驚くほど快適だった。

そして、あっという間に一ヶ月が過ぎた。

「迎えが来るまで、あと一週間か。……いよいよ中央部に向かうぞ」

「お前には教えられることは全部教えた。あとは磨くだけだ」

「準備は整っております、マスター。出発しましょう」

「ああ、行こう。二人とも」

3人は、島の中心――最強の魔獣たちがひしめく地へと足を踏み出した。
海人の全身には、もはや“氣”というよりも“圧”に近い力が纏われていた。
魔獣たちは本能でその存在を察知し、遠巻きにする。

たまに襲いかかってくる魔物も、ひと太刀で沈み、何事もなかったかのように進み続ける。

――その先に、彼の運命が待っているとも知らずに。


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次のエピソードへ進む 第17話:島での生活の最後


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「・・・なるほどな。ウソみたいな話だが本当なんだろうな。この水晶の中にメイドがいたとはね・・・何だそりゃ?」
桐生は海人から事情を聞いたがあまりに現実離れした内容にうなっていた。
「桐生でも知らなかったのか?この島には長くいるんだろ?」
「知るかよ。滝の裏にこんな空間があるなんて、気づきもしなかったぞ」
「私は意図的に封印されていたのでしょう。平和な時代に、私のような存在は不要ですから」
「そういえばゼロ、お前のことは何も聞いてなかったな。あの水晶に、どれくらい封じられてたんだ?」
「……そうですね、およそ200年ほどでしょうか」
「「200年!?」」
「……おい、ババアじゃ――ゴフッ!」
不用意な一言を放った桐生の腹に、ゼロの鋭い蹴りが突き刺さる。
あまりの速度に避けることもできず、桐生はその場に蹲った。
「何かおっしゃいましたか、ジジイ?残り少ない寿命を削って差し上げましょうか?」
「……悪かった。完全に俺が悪かった」
「理解いただけたなら、結構です」
「ま、まぁ。それはさておき……なぜメイド服なんだ?」
「創造主の趣味です」
「……」
「……」
2人はそれ以上踏み込まないことにした。余計なことを言えば、再び蹴られる気がしてならなかった。そして、ゼロを創った人物が相当な変態だったことは、二人とも察した。
「さて、二人には先に伝えておきたい。俺は、三ヶ月間この島で生き抜けば外に出られる契約なんだ。一緒に来てくれないか?」
「私は当然、マスターにお供します」
「……俺もか?この島の暮らし、結構気に入ってるんだがな」
「桐生、力を貸してくれ。俺が一族に戻れば、ある女の護衛になる予定だ。戦力は、一人でも多い方がいい」
焔木一族にどれだけ力をつけて戻ろうとも、すんなり受け入れてもらえるとは思っていなかった。海人は最初から、約束など信用していない。
「逃げるという手もあるぞ?今のお前なら、それもできるだろう」
「……約束したんだ、“戻る”って。俺は、逃げ続ける人生にはしたくない」
「……復讐か?」
「……いや、それも考えた。でも俺が本当に望んでいるのは、“屈服”だ。俺を認めなかった連中を、自分の力で黙らせて、本当の自由を掴みたい」
瑞穂が「当主になったら海人を解放する」と言った約束も、彼は信じていない。裏切られたら、そのときは一族すべてを敵に回す覚悟すらあった。
「……怖い目をしてやがる。だが面白い。いいだろう、一緒に行ってやる」
桐生は不敵に笑い、同行を快諾した。戦いを求めるこの男にとって、相手が焔木一族であろうと関係はなかった。
「残りは一ヶ月少々。それまでの間、お前と修行を重ね、頃合いを見て島の中央部へ向かう」
「言ってたよな。あの辺りの魔獣は桁違いだと」
「ああ。だからこそ、最後の修行場にふさわしい」
(この島の強力な魔獣の氣を喰らい尽くす。倒すたびに、俺はさらに強くなる)
海人の脳裏に、かつて出会った焔木の人間たちの顔が浮かぶ。
あいつらはもう、自分のことを死んだと思っているかもしれない。
だが――力を手に入れて戻ったら、どんな顔をするだろう。
瑞穂は、刹那は……笑うのか、それとも――。
「さあ、始めるぞ。時間は限られている。頼むぞ、桐生」
「おう。ただし、俺は口で教えるのが苦手だ。戦いながら覚えろ」
「それが一番性に合ってる。よろしく頼む」
こうして、桐生との修行が始まった。
まず取り組んだのは“氣の制御”――桐生は無駄なく氣を扱うのに対し、海人はその大半を垂れ流す未熟な状態だった。
だが、戦いながら徐々に氣を抑え、操る術を学んでいく。
森では定期的に魔獣狩りも行い、氣を奪っては力とした。
ゼロは食事や生活全般を完璧にサポートしてくれ、日々は驚くほど快適だった。
そして、あっという間に一ヶ月が過ぎた。
「迎えが来るまで、あと一週間か。……いよいよ中央部に向かうぞ」
「お前には教えられることは全部教えた。あとは磨くだけだ」
「準備は整っております、マスター。出発しましょう」
「ああ、行こう。二人とも」
3人は、島の中心――最強の魔獣たちがひしめく地へと足を踏み出した。
海人の全身には、もはや“氣”というよりも“圧”に近い力が纏われていた。
魔獣たちは本能でその存在を察知し、遠巻きにする。
たまに襲いかかってくる魔物も、ひと太刀で沈み、何事もなかったかのように進み続ける。
――その先に、彼の運命が待っているとも知らずに。