第12話:苛烈なる修行
ー/ー「心氣顕現が使える、だと?……本当にか?」
海人の問いに、ゼロは当然のように頷いた。
「はい、当然です。……まさか、マスターは使えないのですか? 無能ですね」
「……ッ!」
ピキ、と海人の額に青筋が浮かぶ。
無能――幾度も浴びせられてきたその言葉。
慣れたはずの侮辱も、初対面の機械仕掛けの女に言われると妙に腹立たしい。
「悪かったな。俺は氣のコントロールができないんだ」
「ええ、でしょうね。あなたの氣量は異常ですから。通常の術者に比べて、遥かに制御が難しいでしょうね」
「氣量の……数値? お前、そんなもん測れるのか?」
「はい。私はとっても優秀ですので、その程度は朝飯前です」
澄ました顔で言い切るゼロに、海人はため息をついた。
(こいつ、毒舌すぎる……)
「では、さっそくですが――基礎能力測定を開始します」
「えっ……何を……」
ゼロが淡々とそう言った瞬間、海人の足元が爆ぜた。
「うわっ!?」
ドン、と突風のような衝撃が広がり、気づけばゼロの姿がかき消えていた。
(どこだ!? 今の動き……っ!)
次の瞬間、背後から鋭い声が響く。
「反応速度、1.3秒。戦闘訓練未経験の対人ではまず回避不可能。
では次――“近接格闘基礎強度”、確認」
「お、おいちょっ――」
ガンッ!
回避する間もなく、ゼロの掌底が海人の腹部に突き刺さった。
しかし、直撃寸前にゼロが力を緩めてくれていたのか、致命的なダメージには至らなかった。
「……反射神経は上等。体幹のブレも少ない。戦闘経験による積み重ねが見られます。 だが、氣の出力制御は未熟。現状のあなたは、例えるなら“超高圧の水鉄砲”。出せるが、狙えない」
「例えが雑すぎるだろ……!」
海人は腹をさすりながら地面に膝をつく。
「言葉より、体で覚えていただきます。
本日より、心氣顕現――戦闘実技を交えた“実戦式制御修行”に入ります」
「……お前、手加減は?」
「はい。しません」
「だよなあ!!!」
ゼロの訓練は、苛烈だった。
彼女は戦闘用に設計されているだけあり、技のひとつひとつが無駄なく洗練されていた。重力制御、衝撃分散、瞬間加速――
すべてが人間離れしていた。
「氣の放出は流すではなく収束させて放つものです。
あなたはそれを暴発として使っているにすぎません」
「ぐっ……言い返せないのが悔しいな……!」
「では再度、顕現訓練に移ります。イメージは斬るではなく形を得初めて斬れる。
順番を間違えないことです」
ゼロの指導は明確だった。
単なる感覚や気合ではなく、構築と論理――そして制御。
海人は、初めて自分の氣が技術として扱えることを感じはじめていた。
(――わかる。氣の流れが……以前とは違う)
数日後。
海人の手に、刀の形をした氣が再び宿る。
前回とは違い、氣の震えはほとんどない。
「……できた」
「いえ、半顕現です。まだ、氣の中核が安定していません」
「そこまでわかるのか……お前のセンサー、すごいな……」
「はい、最新型ですので」
サラッととんでもない発言をしてくる彼女に、海人はついていくのに必死だった。
だが確かに――修行の密度が、今までとはまるで違っていた。
(この女、めちゃくちゃだけど……間違いなく本物だ)
夜。洞窟の奥に小さな焚き火が灯る。
「……にしてもさ。なんであんなところに閉じ込められてたんだ?」
「記録は一部破損していますが、私が封印対象になったのは200年前のようです」
「……は?」
「前大戦期、焔木家が危険存在として封印した、という記録が一部に残っています」
「おい待て、それヤバくない!?」
「ご安心を。現在は修復済み」
(いや安心できねぇ……!)
とはいえ、彼女おかげで心氣顕現の完成に近づいているのも――ゼロのおかげだった。
「ゼロ」
「はい?」
「ありがとな。お前がいてくれて……助かってる」
ゼロは一瞬だけ表情を変えた気がした。
「……その言葉、記録しておきます。マスター」
微かな笑みが、青白い焔に照らされて――夜が、静かに更けていった。
海人の問いに、ゼロは当然のように頷いた。
「はい、当然です。……まさか、マスターは使えないのですか? 無能ですね」
「……ッ!」
ピキ、と海人の額に青筋が浮かぶ。
無能――幾度も浴びせられてきたその言葉。
慣れたはずの侮辱も、初対面の機械仕掛けの女に言われると妙に腹立たしい。
「悪かったな。俺は氣のコントロールができないんだ」
「ええ、でしょうね。あなたの氣量は異常ですから。通常の術者に比べて、遥かに制御が難しいでしょうね」
「氣量の……数値? お前、そんなもん測れるのか?」
「はい。私はとっても優秀ですので、その程度は朝飯前です」
澄ました顔で言い切るゼロに、海人はため息をついた。
(こいつ、毒舌すぎる……)
「では、さっそくですが――基礎能力測定を開始します」
「えっ……何を……」
ゼロが淡々とそう言った瞬間、海人の足元が爆ぜた。
「うわっ!?」
ドン、と突風のような衝撃が広がり、気づけばゼロの姿がかき消えていた。
(どこだ!? 今の動き……っ!)
次の瞬間、背後から鋭い声が響く。
「反応速度、1.3秒。戦闘訓練未経験の対人ではまず回避不可能。
では次――“近接格闘基礎強度”、確認」
「お、おいちょっ――」
ガンッ!
回避する間もなく、ゼロの掌底が海人の腹部に突き刺さった。
しかし、直撃寸前にゼロが力を緩めてくれていたのか、致命的なダメージには至らなかった。
「……反射神経は上等。体幹のブレも少ない。戦闘経験による積み重ねが見られます。 だが、氣の出力制御は未熟。現状のあなたは、例えるなら“超高圧の水鉄砲”。出せるが、狙えない」
「例えが雑すぎるだろ……!」
海人は腹をさすりながら地面に膝をつく。
「言葉より、体で覚えていただきます。
本日より、心氣顕現――戦闘実技を交えた“実戦式制御修行”に入ります」
「……お前、手加減は?」
「はい。しません」
「だよなあ!!!」
ゼロの訓練は、苛烈だった。
彼女は戦闘用に設計されているだけあり、技のひとつひとつが無駄なく洗練されていた。重力制御、衝撃分散、瞬間加速――
すべてが人間離れしていた。
「氣の放出は流すではなく収束させて放つものです。
あなたはそれを暴発として使っているにすぎません」
「ぐっ……言い返せないのが悔しいな……!」
「では再度、顕現訓練に移ります。イメージは斬るではなく形を得初めて斬れる。
順番を間違えないことです」
ゼロの指導は明確だった。
単なる感覚や気合ではなく、構築と論理――そして制御。
海人は、初めて自分の氣が技術として扱えることを感じはじめていた。
(――わかる。氣の流れが……以前とは違う)
数日後。
海人の手に、刀の形をした氣が再び宿る。
前回とは違い、氣の震えはほとんどない。
「……できた」
「いえ、半顕現です。まだ、氣の中核が安定していません」
「そこまでわかるのか……お前のセンサー、すごいな……」
「はい、最新型ですので」
サラッととんでもない発言をしてくる彼女に、海人はついていくのに必死だった。
だが確かに――修行の密度が、今までとはまるで違っていた。
(この女、めちゃくちゃだけど……間違いなく本物だ)
夜。洞窟の奥に小さな焚き火が灯る。
「……にしてもさ。なんであんなところに閉じ込められてたんだ?」
「記録は一部破損していますが、私が封印対象になったのは200年前のようです」
「……は?」
「前大戦期、焔木家が危険存在として封印した、という記録が一部に残っています」
「おい待て、それヤバくない!?」
「ご安心を。現在は修復済み」
(いや安心できねぇ……!)
とはいえ、彼女おかげで心氣顕現の完成に近づいているのも――ゼロのおかげだった。
「ゼロ」
「はい?」
「ありがとな。お前がいてくれて……助かってる」
ゼロは一瞬だけ表情を変えた気がした。
「……その言葉、記録しておきます。マスター」
微かな笑みが、青白い焔に照らされて――夜が、静かに更けていった。
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