第1話:チャンスを奪われた俺と、チャンスに乗った彼女
ー/ー
あれは1年前――
俺の中で、何かが音を立てて崩れた日の記憶だ。
場所は、辺境惑星オルディナ
植民都市の隅にある孤児院。
その裏庭で、俺とリアナは最後の会話を交わした。
「……カイ、聞いたわ。あなた、航行士適正試験に落ちたんですってね。」
リアナ。
かつては、俺にとってこの世で最も信頼していた存在だった。
同じ孤児として、泣いて、笑って、星を夢見て共に歩いてきたと思っていた。
「……驚いたわ。あなたのことだから、てっきり受かると思ってたのに。」
そう言いながらも、彼女の口調に同情はなかった。
むしろ、その目には安堵のような色さえ浮かんでいた。
「でもね、カイ。現実を見なきゃいけないのよ。私たちみたいな出自に難ありの人間は、どんなに頭が良くても、どんなに結果を出しても結局は上には上がらせてもらえないの」
――わかっていた。
俺は筆記で最高点を取った。
実技でも教官たちが舌を巻いた。
なのに、最終審査で“人格面に問題あり”という理由で不合格を言い渡された。
つまり、孤児にはふさわしくない――それが、本当の理由だった。
「そんな中で、私はチャンスを掴んだの。バルナ・グループのレイモンドさんが、私をパートナーに迎えたいって言ってくれたの。愛人として、そして将来的には事業の一部門を任せたいって。」
リアナは誇らしげに言った。
それは誇りというより、自分を納得させるための鎧のように見えた。
「……軽蔑してる?でもね、カイ。あなたがどれだけ優秀でも、現実が変わらないのなら、私は勝てるルートを選ぶしかなかったの。」
そして、彼女は少しだけ視線を伏せ、
少しだけ…懐かしさをにじませて言った。
「もし、私が本当に成功した、その時は、あなたを雇ってあげる。ちゃんと肩書きも、住む場所も用意してあげる。私の下で働くことになるけど、それでもあなたなら、ちゃんとやれるでしょ?」
その一言で、心の奥底に残っていた何かが凍りついた。
まるで憐れみという名のナイフで刺されたようだった。
「じゃあ、元気でね。カイ。あなたはあなたの現実を生きて。私は、私の現実で這い上がるから。」
リアナは、それきり一度もこちらを振り返らずに去っていった。
あの日、俺は確かに知った。
正しさでは救われない現実があることを。
だが同時に――
俺の中で、何かが静かに燃え始めたのも、あの日だった。
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「……カイ、聞いたわ。あなた、航行士適正試験に落ちたんですってね。」
リアナ。
かつては、俺にとってこの世で最も信頼していた存在だった。
同じ孤児として、泣いて、笑って、星を夢見て共に歩いてきたと思っていた。
「……驚いたわ。あなたのことだから、てっきり受かると思ってたのに。」
そう言いながらも、彼女の口調に同情はなかった。
むしろ、その目には安堵のような色さえ浮かんでいた。
「でもね、カイ。現実を見なきゃいけないのよ。私たちみたいな出自に難ありの人間は、どんなに頭が良くても、どんなに結果を出しても結局は上には上がらせてもらえないの」
――わかっていた。
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実技でも教官たちが舌を巻いた。
なのに、最終審査で“人格面に問題あり”という理由で不合格を言い渡された。
つまり、孤児にはふさわしくない――それが、本当の理由だった。
「そんな中で、私はチャンスを掴んだの。バルナ・グループのレイモンドさんが、私をパートナーに迎えたいって言ってくれたの。愛人として、そして将来的には事業の一部門を任せたいって。」
リアナは誇らしげに言った。
それは誇りというより、自分を納得させるための鎧のように見えた。
「……軽蔑してる?でもね、カイ。あなたがどれだけ優秀でも、現実が変わらないのなら、私は勝てるルートを選ぶしかなかったの。」
そして、彼女は少しだけ視線を伏せ、
少しだけ…懐かしさをにじませて言った。
「もし、私が本当に成功した、その時は、あなたを雇ってあげる。ちゃんと肩書きも、住む場所も用意してあげる。私の下で働くことになるけど、それでもあなたなら、ちゃんとやれるでしょ?」
その一言で、心の奥底に残っていた何かが凍りついた。
まるで憐れみという名のナイフで刺されたようだった。
「じゃあ、元気でね。カイ。あなたはあなたの現実を生きて。私は、私の現実で這い上がるから。」
リアナは、それきり一度もこちらを振り返らずに去っていった。
あの日、俺は確かに知った。
正しさでは救われない現実があることを。
だが同時に――
俺の中で、何かが静かに燃え始めたのも、あの日だった。