表示設定
表示設定
目次 目次




SCENE117 シャボテンダンジョン

ー/ー



 シャボテンダンジョンの一階層は特に問題はなく進んでいく。
 さすがに俺の直感スキルのおかげで、うまく敵の索敵範囲から逃れて、目の前には第二階層への階段が見えている。

「へっ、すげえな。エンカウント0で一階層を抜けたぞ」

「ふん。俺様が強いから、敵が恐れをなしたんだ。さあ、この調子でどんどんと進んでいくぞ!」

「おうーっ!」

 俺の後ろではギルド『パラダイス』の連中が騒いでいる。
 そんなに騒がれたんじゃ、せっかく回避してきた意味がなくなるじゃないか。こいつら、なんでこれまでダンジョンを無事にやり過ごすことができたんだよ。
 あまりの状況に、俺は疑問がふつふつと湧いてくる。

「おらぁっ! ぼっとしてんじゃねえ。さっさと進みやがれ!」

「は、はい……」

 パラダイスのギルドマスターが俺のお尻を蹴飛ばしてくる。なんて連中だ。
 くそっ。管理局からの頼みじゃなきゃ、俺はとっとと隠密で逃げ出してたぞ。
 俺はお尻を擦りながら、二階層へと降りていく。

 第二階層からは、海に突き出した半島らしく、水辺の要素が入ってくる。
 あちこちから水が湧き出し、なんとも癒されそうな不思議な空間になっている。

「かーっ、ここの水はうめえなぁ」

「生き返りやすね、兄貴!」

「ごくごくごくごく……」

 パラダイスの連中ときたら、俺が案内している後ろで好き勝手にやっている。俺が危険がないように道を選びながら慎重に進んでいるというのに、なんだってこうも警戒がなさすぎるんだ。
 モンスターが徘徊するダンジョンの中では、どこに危険があるのか分かったもんじゃない。そんな場所でこんな不用意な行動を取ること自体、危険極まりない。そんな基本すら守れてないのか。

「そこの水は確かに安全ですけれど、あまり飲み過ぎないで下さいね」

「なんだと?! この俺様に命令する気か?」

「不用心で心配だからですよ」

「なんだっ、その顔は!」

 俺が心配しているっていうのに、こいつらときたら威圧と暴力を振るってくる。

「ぐ……ぬ……」

「へっ。ノロマの分際でうぜえな」

「おい、さっさと案内を続けろ。もういっぺんしばかれてえか?」

「わ、分かりましたよ……」

 俺は痛みをどうにかこらえながら、足を動かしていた。

 本当はラティナさんからもらった護石を持っているから、ダメージは受けないはずだ。
 でも、ここでは演技をしなければならないので、ラティナさんから使い方を聞いて、効力を弱めていた。だけど、弱めすぎたのかダメージが痛すぎる。歩くのがやっとという状態だよ。
 俺は護石の力を元に戻して、案内を続けている。
 第二階層、第三階層を抜けて、いよいよ第四階層だ。
 作戦では、この階層で問題を起こすことになっている。
 ここまでは俺の直感スキルでモンスターとはまったく遭遇していない。それなのに、こいつらときたら自分たちが強いからだと勘違いをしている。傲慢にもほどがあるというものだ。
 ダンジョンを進み続けていると、俺の直感スキルにとんでもない反応が現れる。

「そろそろモンスターの一匹でもぶっ飛ばしてえな」

「へい。兄貴の巧みな武器捌きを見てみてえもんでさぁ」

 俺の後ろでは、パラダイスの連中がのんきなことを言い続けている。
 だが、これはいい合図だった。
 こいつらから戦いたいって言葉が出たので、俺は直感スキルに現れた反応に向かって歩を進めていく。
 戦いたいんなら、戦わせてあげるよ。
 俺はぐっと歯を食いしばりながら、どんどん遠くへと進んでいく。

 いよいよ問題の地点に近付いてきた。
 次の角を曲がれば、モンスターがいるはずだ。

「ガルルルルルル……」

 そこにいたのは、雷をまとった大きな犬だった。
 サンダーウルフだ。
 俺がとても敵う相手じゃない。俺の足ががくがくと震え始めている。
 これは逃げなきゃ。俺が振り返ろうとしたその時だった。

「えっ……?」

 俺の体が勢いよく吹き飛ばされた。
 何が起きたのか分からない中、俺は地面に叩きつけられていた。

「よう、俺たちが戦いやすいように、そいつの気を引いていてくれ」

「な、何をするんだ!」

「質問するんじゃねえ! とっととそいつの気を引けって言ってるんだ!」

 俺が質問を投げかけても、あいつらは俺の質問に答えることはなかった。それどころか、俺にモンスターと戦えという声ばかりをぶつけてきやがる。
 なんてこった。
 こいつらがダンジョンを突破してこれたのは、俺のように他の冒険者を捨て石にしてきたからだったってわけか。
 くそっ。ここで俺は死ぬわけにはいかないんだ。

「ガアアアッ!」

 サンダーウルフが俺目がけて襲い掛かろうとしている。
 こうなったら、もうやるしかない。
 俺はサンダーウルフの攻撃を躱そうと横っ飛びをする。その瞬間、俺のもう一つのスキルを発動する。

「ガルッ?!」

 サンダーウルフはびっくりしているようだ。
 そりゃそうだよな。俺の姿も気配も、目の前から突然消えたんだからな。
 さあ、俺を見失ったサンダーウルフがどうするか楽しみだ。
 俺は姿を消して退避するとともに、その辺に転がっていた石を拾い上げる。

(さあ、反撃の時間だ!)

 俺は拾い上げた石を思いっきり放り投げた。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む SCENE118 サンダーウルフ


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 シャボテンダンジョンの一階層は特に問題はなく進んでいく。
 さすがに俺の直感スキルのおかげで、うまく敵の索敵範囲から逃れて、目の前には第二階層への階段が見えている。
「へっ、すげえな。エンカウント0で一階層を抜けたぞ」
「ふん。俺様が強いから、敵が恐れをなしたんだ。さあ、この調子でどんどんと進んでいくぞ!」
「おうーっ!」
 俺の後ろではギルド『パラダイス』の連中が騒いでいる。
 そんなに騒がれたんじゃ、せっかく回避してきた意味がなくなるじゃないか。こいつら、なんでこれまでダンジョンを無事にやり過ごすことができたんだよ。
 あまりの状況に、俺は疑問がふつふつと湧いてくる。
「おらぁっ! ぼっとしてんじゃねえ。さっさと進みやがれ!」
「は、はい……」
 パラダイスのギルドマスターが俺のお尻を蹴飛ばしてくる。なんて連中だ。
 くそっ。管理局からの頼みじゃなきゃ、俺はとっとと隠密で逃げ出してたぞ。
 俺はお尻を擦りながら、二階層へと降りていく。
 第二階層からは、海に突き出した半島らしく、水辺の要素が入ってくる。
 あちこちから水が湧き出し、なんとも癒されそうな不思議な空間になっている。
「かーっ、ここの水はうめえなぁ」
「生き返りやすね、兄貴!」
「ごくごくごくごく……」
 パラダイスの連中ときたら、俺が案内している後ろで好き勝手にやっている。俺が危険がないように道を選びながら慎重に進んでいるというのに、なんだってこうも警戒がなさすぎるんだ。
 モンスターが徘徊するダンジョンの中では、どこに危険があるのか分かったもんじゃない。そんな場所でこんな不用意な行動を取ること自体、危険極まりない。そんな基本すら守れてないのか。
「そこの水は確かに安全ですけれど、あまり飲み過ぎないで下さいね」
「なんだと?! この俺様に命令する気か?」
「不用心で心配だからですよ」
「なんだっ、その顔は!」
 俺が心配しているっていうのに、こいつらときたら威圧と暴力を振るってくる。
「ぐ……ぬ……」
「へっ。ノロマの分際でうぜえな」
「おい、さっさと案内を続けろ。もういっぺんしばかれてえか?」
「わ、分かりましたよ……」
 俺は痛みをどうにかこらえながら、足を動かしていた。
 本当はラティナさんからもらった護石を持っているから、ダメージは受けないはずだ。
 でも、ここでは演技をしなければならないので、ラティナさんから使い方を聞いて、効力を弱めていた。だけど、弱めすぎたのかダメージが痛すぎる。歩くのがやっとという状態だよ。
 俺は護石の力を元に戻して、案内を続けている。
 第二階層、第三階層を抜けて、いよいよ第四階層だ。
 作戦では、この階層で問題を起こすことになっている。
 ここまでは俺の直感スキルでモンスターとはまったく遭遇していない。それなのに、こいつらときたら自分たちが強いからだと勘違いをしている。傲慢にもほどがあるというものだ。
 ダンジョンを進み続けていると、俺の直感スキルにとんでもない反応が現れる。
「そろそろモンスターの一匹でもぶっ飛ばしてえな」
「へい。兄貴の巧みな武器捌きを見てみてえもんでさぁ」
 俺の後ろでは、パラダイスの連中がのんきなことを言い続けている。
 だが、これはいい合図だった。
 こいつらから戦いたいって言葉が出たので、俺は直感スキルに現れた反応に向かって歩を進めていく。
 戦いたいんなら、戦わせてあげるよ。
 俺はぐっと歯を食いしばりながら、どんどん遠くへと進んでいく。
 いよいよ問題の地点に近付いてきた。
 次の角を曲がれば、モンスターがいるはずだ。
「ガルルルルルル……」
 そこにいたのは、雷をまとった大きな犬だった。
 サンダーウルフだ。
 俺がとても敵う相手じゃない。俺の足ががくがくと震え始めている。
 これは逃げなきゃ。俺が振り返ろうとしたその時だった。
「えっ……?」
 俺の体が勢いよく吹き飛ばされた。
 何が起きたのか分からない中、俺は地面に叩きつけられていた。
「よう、俺たちが戦いやすいように、そいつの気を引いていてくれ」
「な、何をするんだ!」
「質問するんじゃねえ! とっととそいつの気を引けって言ってるんだ!」
 俺が質問を投げかけても、あいつらは俺の質問に答えることはなかった。それどころか、俺にモンスターと戦えという声ばかりをぶつけてきやがる。
 なんてこった。
 こいつらがダンジョンを突破してこれたのは、俺のように他の冒険者を捨て石にしてきたからだったってわけか。
 くそっ。ここで俺は死ぬわけにはいかないんだ。
「ガアアアッ!」
 サンダーウルフが俺目がけて襲い掛かろうとしている。
 こうなったら、もうやるしかない。
 俺はサンダーウルフの攻撃を躱そうと横っ飛びをする。その瞬間、俺のもう一つのスキルを発動する。
「ガルッ?!」
 サンダーウルフはびっくりしているようだ。
 そりゃそうだよな。俺の姿も気配も、目の前から突然消えたんだからな。
 さあ、俺を見失ったサンダーウルフがどうするか楽しみだ。
 俺は姿を消して退避するとともに、その辺に転がっていた石を拾い上げる。
(さあ、反撃の時間だ!)
 俺は拾い上げた石を思いっきり放り投げた。