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SCENE115 キーアイテム

ー/ー



 セイレーンの下僕くんを連れて、私は瞬のダンジョンまでやって来ていた。
 ダンジョンの入口には職員と一緒に冒険者が立っている。どうやらこの冒険者が雇った護衛のようだな。

「これは、衣織さん。どうしてこちらに?」

「瞬に用事があって来たんだ。それで、入っても大丈夫か?」

「はい。衣織さんでしたら安心ですからね。ささっ、どうぞお通り下さい」

「悪いな」

 私は職員にあっさりと通してもらう。だが、この時、私の隣には下僕くんがいたんだが、隠密が発動しているために誰も気が付かなかった。私はうっすら気配を感じているのだが、さすがスキルレベルが高いだけあるな。
 途中にいるキラーアントも、私がひと睨みを利かせれば襲ってこない。レベル差というものがあるからだろう。いちいち睨むのもだるいが、こうしないと襲い掛かってくるんだよ。あのモンスターは頭が悪いからな。
 そうして、私たちは無事にボス部屋へと到着した。

「あっ、衣織お姉さん」

「こんにちはです、衣織様」

 ボス部屋に入ると、瞬とラティナの二人が出迎えてくれた。うん、相変わらず可愛いな。

「よっ、元気そうでなによりだ。ところで、バトラーはどこにいる?」

「こちらにおりますぞ、衣織殿」

 私が奥の方を見ると、テーブルやら椅子やらをセッティングしているバトラーの姿があった。私たちが来たと分かって準備をしていたようだな。

「おや、ちゃんと椅子が四脚あるな」

「はい。高志殿が来られておるのも、重々把握しておりますからね」

「えっ、高志さんが来てるの? どこどこ?」

 バトラーとの会話を聞いていた瞬が、あちこちを見ている。
 いや、この下僕くんの隠密は強力だな。瞬はもちろんだが、ラティナにも通じている。
 レベル差がありすぎると、見破ることはどうにも不可能らしい。バトラーには通じてないようだし、私もうっすらとながら気配を感じ取れるようになっている。
 バトラーたちに見えるレベルというのは、一体いくらくらいなんだろうな。実に興味があるな。
 だが、今日の訪問の目的はそれじゃない。一刻でも早くパラダイスを潰すために、ラティナの協力を仰がねばな。

「とりあえずおかけになって下さい。プリンセスはとにかくレベルを上げて下され」

「はぁい……」

 バトラーは私たちに着席するように勧めると同時に、瞬に対して強くなるようにとお小言を言っていた。
 普段ならバトラーに対して文句を言うところだろうが、今回ばかりは意見が一致する。なので、素直に頷いておこう。

 私たちは用意された椅子に座る。
 ラティナの岩石まみれの体でも壊れないくらい、この異界の椅子は頑丈だ。これなら探索者として強くなりすぎた剛力さんたちでも使えそうだな。だが、私はくれというつもりはない。
 普通に考えれば、異界の連中は侵略者だからな。それを考えると、物をねだるのは正直気が進まないというものだ。
 だが、今回ラティナに強力を取りつけるのは、瞬やラティナたちの安全を守るためでもある。私は声をかけるタイミングを計っていた。

「ねえ、衣織お姉さんたちはどうして今日はここに来たの?」

 本題に入ろうとすると、瞬が単刀直入に質問を飛ばしてきた。さすが瞬、空気を読まずにストレートにくるな。この時ばかりは、この瞬の性格にお礼が言いたいものだ。

「実はな。先日ここに押し入ってきた連中の所属するギルドを処罰しようという流れになってな。元々疑いの多いギルドだったが、瞬たちに危害を加えようとしたことでダンジョン管理局からも見限られたようだ」

「えっ、そんなことになってるんですか?」

 私が話をすると、瞬は思いっきり驚いていた。自分のやったことを自覚していないようだな。

「やはり、あれは配信して正解でしたな。まったく、品のない無礼な連中でございました。我のプリンセスを手にかけようとは、万死に値しますぞ」

「うん、そうだね」

 なんだ、あの配信にはバトラーの発言も関わっていたのか。だが、瞬は私のものであってお前のものじゃないぞ。そこは認めないからな。
 まあ、それは今は置いておこう。張り合って話が長引いてしまうのはよくないからな。

「ここだけの話なのだが、パラダイスの連中を罠にかけようという話が出てな。そこで、この下僕くんのスキルに頼ることになったのだが、そこに保険をかけようと思ってここに来たんだ」

「保険を?」

「ああ、そうだ」

 瞬が首を傾げるものだから、私は強く念押しをしておく。

「瞬に押し付けられた三人がいるだろう。その三人に渡したものと同様のものをこの下僕くんにも持たせたいのだ」

「ラティナさんの護石か。もしかして、スキル封じを警戒してるってこと?」

「さすが瞬だな。その通りだ」

 そう、この作戦の成否は、この下僕くんの隠密スキルにかかっている。ターゲットになっていても隠密スキルは発動できることが分かっているわけだし、この作戦がうまくいかない理由があるとすれば、隠密スキルの不発だ。それを防ぐために、ラティナの力を借りに来たというわけだ。

「ラティナさん、用意できるかな?」

「はい、問題ないです。すぐにご用意できますので、少々お待ち下さい」

 瞬が話を振ると、ラティナは両手を握って力を込め始める。手の中から光を放つではなく、周囲から光が収束していくようにラティナの手の中に光が集まっていく。

「できました」

 ラティナがそう言って手を開くと、そこには確かに輝く石が転がっていた。

「悪いな。ダンジョンの平和と探索者の安全のためだ。これを十分に役立たせてもらうぞ」

「はい。どうぞ悪いお方を懲らしめて下さい」

 両手を握りしめて、ラティナは気合いたっぷりの表情で話している。
 目的のものを手に入れた私たちは、少しだけ話をしてから、瞬のダンジョンを後にしたのだった。


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次のエピソードへ進む SCENE116 作戦決行の日


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 セイレーンの下僕くんを連れて、私は瞬のダンジョンまでやって来ていた。
 ダンジョンの入口には職員と一緒に冒険者が立っている。どうやらこの冒険者が雇った護衛のようだな。
「これは、衣織さん。どうしてこちらに?」
「瞬に用事があって来たんだ。それで、入っても大丈夫か?」
「はい。衣織さんでしたら安心ですからね。ささっ、どうぞお通り下さい」
「悪いな」
 私は職員にあっさりと通してもらう。だが、この時、私の隣には下僕くんがいたんだが、隠密が発動しているために誰も気が付かなかった。私はうっすら気配を感じているのだが、さすがスキルレベルが高いだけあるな。
 途中にいるキラーアントも、私がひと睨みを利かせれば襲ってこない。レベル差というものがあるからだろう。いちいち睨むのもだるいが、こうしないと襲い掛かってくるんだよ。あのモンスターは頭が悪いからな。
 そうして、私たちは無事にボス部屋へと到着した。
「あっ、衣織お姉さん」
「こんにちはです、衣織様」
 ボス部屋に入ると、瞬とラティナの二人が出迎えてくれた。うん、相変わらず可愛いな。
「よっ、元気そうでなによりだ。ところで、バトラーはどこにいる?」
「こちらにおりますぞ、衣織殿」
 私が奥の方を見ると、テーブルやら椅子やらをセッティングしているバトラーの姿があった。私たちが来たと分かって準備をしていたようだな。
「おや、ちゃんと椅子が四脚あるな」
「はい。高志殿が来られておるのも、重々把握しておりますからね」
「えっ、高志さんが来てるの? どこどこ?」
 バトラーとの会話を聞いていた瞬が、あちこちを見ている。
 いや、この下僕くんの隠密は強力だな。瞬はもちろんだが、ラティナにも通じている。
 レベル差がありすぎると、見破ることはどうにも不可能らしい。バトラーには通じてないようだし、私もうっすらとながら気配を感じ取れるようになっている。
 バトラーたちに見えるレベルというのは、一体いくらくらいなんだろうな。実に興味があるな。
 だが、今日の訪問の目的はそれじゃない。一刻でも早くパラダイスを潰すために、ラティナの協力を仰がねばな。
「とりあえずおかけになって下さい。プリンセスはとにかくレベルを上げて下され」
「はぁい……」
 バトラーは私たちに着席するように勧めると同時に、瞬に対して強くなるようにとお小言を言っていた。
 普段ならバトラーに対して文句を言うところだろうが、今回ばかりは意見が一致する。なので、素直に頷いておこう。
 私たちは用意された椅子に座る。
 ラティナの岩石まみれの体でも壊れないくらい、この異界の椅子は頑丈だ。これなら探索者として強くなりすぎた剛力さんたちでも使えそうだな。だが、私はくれというつもりはない。
 普通に考えれば、異界の連中は侵略者だからな。それを考えると、物をねだるのは正直気が進まないというものだ。
 だが、今回ラティナに強力を取りつけるのは、瞬やラティナたちの安全を守るためでもある。私は声をかけるタイミングを計っていた。
「ねえ、衣織お姉さんたちはどうして今日はここに来たの?」
 本題に入ろうとすると、瞬が単刀直入に質問を飛ばしてきた。さすが瞬、空気を読まずにストレートにくるな。この時ばかりは、この瞬の性格にお礼が言いたいものだ。
「実はな。先日ここに押し入ってきた連中の所属するギルドを処罰しようという流れになってな。元々疑いの多いギルドだったが、瞬たちに危害を加えようとしたことでダンジョン管理局からも見限られたようだ」
「えっ、そんなことになってるんですか?」
 私が話をすると、瞬は思いっきり驚いていた。自分のやったことを自覚していないようだな。
「やはり、あれは配信して正解でしたな。まったく、品のない無礼な連中でございました。我のプリンセスを手にかけようとは、万死に値しますぞ」
「うん、そうだね」
 なんだ、あの配信にはバトラーの発言も関わっていたのか。だが、瞬は私のものであってお前のものじゃないぞ。そこは認めないからな。
 まあ、それは今は置いておこう。張り合って話が長引いてしまうのはよくないからな。
「ここだけの話なのだが、パラダイスの連中を罠にかけようという話が出てな。そこで、この下僕くんのスキルに頼ることになったのだが、そこに保険をかけようと思ってここに来たんだ」
「保険を?」
「ああ、そうだ」
 瞬が首を傾げるものだから、私は強く念押しをしておく。
「瞬に押し付けられた三人がいるだろう。その三人に渡したものと同様のものをこの下僕くんにも持たせたいのだ」
「ラティナさんの護石か。もしかして、スキル封じを警戒してるってこと?」
「さすが瞬だな。その通りだ」
 そう、この作戦の成否は、この下僕くんの隠密スキルにかかっている。ターゲットになっていても隠密スキルは発動できることが分かっているわけだし、この作戦がうまくいかない理由があるとすれば、隠密スキルの不発だ。それを防ぐために、ラティナの力を借りに来たというわけだ。
「ラティナさん、用意できるかな?」
「はい、問題ないです。すぐにご用意できますので、少々お待ち下さい」
 瞬が話を振ると、ラティナは両手を握って力を込め始める。手の中から光を放つではなく、周囲から光が収束していくようにラティナの手の中に光が集まっていく。
「できました」
 ラティナがそう言って手を開くと、そこには確かに輝く石が転がっていた。
「悪いな。ダンジョンの平和と探索者の安全のためだ。これを十分に役立たせてもらうぞ」
「はい。どうぞ悪いお方を懲らしめて下さい」
 両手を握りしめて、ラティナは気合いたっぷりの表情で話している。
 目的のものを手に入れた私たちは、少しだけ話をしてから、瞬のダンジョンを後にしたのだった。