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SCENE105 配信中の急展開

ー/ー



 一生懸命採掘をするだけの光景は、実に地味な光景だった。

『採掘自体は普通なんだな』

「そうですね。地面に埋まっている鉱石をただ掘り出すだけですからね。ちなみにですが、地面だけじゃなくて壁や天井にも埋まっていますよ」

『いや、天井って・・・』

『一体誰が届くんだよwww』

 僕が部屋の鉱石の埋まっている場所を伝えると、みんなは素晴らしくらいの反応でツッコミを入れてくれていた。
 うん、こういうやり取りは実にいいね。
 もちろん、天井の採掘ポイントだって、掘る方法はいくらでもあるんだよね。

「ラティナさん、ちょっとお力を貸して頂いてもいいですか?」

「はい、ウィンク様」

 僕はラティナさんに耳打ちをして、島谷さんたちに伝える。

「すみません。三人の中で誰でもいいので、天井のあの辺りにスキルを放ってくれませんか?」

「スキル?」

 僕が伝えると、三人の手が止まって首を傾げていた。

『そういうことか』

『なるほど、それなら天井に手が届くな』

『とはいえ、天井に衝撃与えたら、そこだけが崩れるから気をつけないとな』

『たしかに』

 配信を見ている視聴者さんたちは何をするのか分かったみたいだ。さすが、僕の配信を長く見続けている人たちだよね。

『やたらめったらやられたら、死人すら出かねないからな』

『ウィンクちゃん、そこの対策よろしく』

「あっ、心配ないですよ。ごめんなさい、まずは適当にスキルを天井に撃ってみてください」

「あ、ああ。分かった」

 粕谷さんが反応して、手を止めて天井を見上げている。そして、持っているつるはしを天井に向けて投げつけた。

「どっせい!」

 投げつけたつるはしは天井に当たるものの、カーンという甲高い音が響いて床に降ってきた。
 音のした天井を見上げると、つるはしを思い切りぶつけられたというのに、傷ひとつついていなかった。

『どゆこと?!』

「採掘ポイント以外は衝撃を与えても崩れないようにしたんです。僕も最初は危ないなと思ったんですけど、採掘場の追加オプションで設定できたんですよ」

『なるほど、どういうことだってばよ』

 納得したように見えて、視聴者さんたちは混乱しているようだ。

「とりあえず、これで安心して採掘ができるというわけですね」

『ダンジョンって、やっぱりよく分からんな』

『出現から十年以上経過してるけど、未解明な部分が多すぎるからな・・・』

『とりあえず、ウィンクちゃんがちゃんと探索者たちのことを考えていることだけは分かった』

『せやな』

 視聴者さんたちは、目の前で起きていることがまったく分からなかったみたいだ。結果として、僕の評価だけしてくれたみたいだった。

「それじゃ、改めてあの辺りを狙って下さい」

「あの辺りって、ちょっと色が変わっているところか?」

「そうそう、そこです」

「分かった。とおっ!」

 改めて、僕が狙う場所を指定する。粕谷さんはそこ目がけて二回目のつるはし投擲を放っている。

「お、さっきと音が違うぞ?」

 粕谷さんが言ったとおり、今度はガリッという音が響いて、当たった場所が崩れ落ちてきた。
 ガラガラと散らばってきた石の中には、どうやら銅が含まれているようだった。

「へえ、天井は分かりやすいようにちょっと色が変わっているのか」

「何度もスキルを使わせるわけにはいきませんからね。ただでさえデバフの入る部屋なんですから」

「なるほどですね」

「でも、あの程度の色の違いは、よく見ないと分からないわよ?」

「そりゃそうですよ。こっちだってダンジョンを運営してるんです。そう簡単に掘り出されて困りますかっていうことですよ」

「な、なるほど……」

 三人の反応に、僕はそれぞれ返していく。
 ダンジョンポイントを稼ぐには、デバフをガンガン受けてもらわないと困るからね。だから、こうしてちょっとしたいたずらをしてみたってわけだよ。

「でも、ラティナさんは分かるみたいですね」

「はい、岩のゴーレムですからね。岩と調和することで、感知や看破と同じようなことができるようになります。対象は土や岩くらいに限られますけど」

『ほえ~、便利~』

『ラティナちゃん、すごい!』

 ラティナさんも、すっかりみんなに人気になっちゃったなぁ。なんか僕よりも人気がありそうで、ちょっとだけ嫉妬しちゃうな。
 そんなことを思いながら、僕は三人の方を見る。

「あれ? どうしたんですか?」

 僕はついそんなことを尋ねてしまう。

「私たち、決めました」

「ネームバリューだけでギルドに入りましたからね。今は実態を知っているので、ここはいっそのこと、俺たち三人で抜けて新しいギルドを設立しようと思います」

「ああ、このまま後ろめたい気持ちでいるのも嫌だからな」

『急展開だなぁ』

『本気か?』

『これは保護してもらわんといかんぞ』

 三人の話を聞いて驚いていると、視聴者さんたちの反応に僕はさらに驚かされた。

「あの、パラダイスってギルド、そんなにやばいんですか?」

『まあね』

『今は配信中だからコメントは差し控えておくが、ここまでの俺たちの反応から察してくれ』

「は、はあ。分かりました」

 なんだかよく分からないけれど、僕は三人の決意に素直に拍手を送っておくことにした。
 視聴者さんたちも同じように祝福するようなコメントをしていたけど、同時に心配するコメントも出ていた。やっぱり気になるなぁ。
 気にはなるけれど、僕の配信中なのでこれ以上は言及しない。
 ひと通りの採掘を終えたところで、僕は今回の配信を終了させる。
 心配になった僕は、ひとまず採掘場のデバフが切れるまでの間、入口近くの管理局の人たちがいる詰所に泊まってもらうことにしたのだった。


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 一生懸命採掘をするだけの光景は、実に地味な光景だった。
『採掘自体は普通なんだな』
「そうですね。地面に埋まっている鉱石をただ掘り出すだけですからね。ちなみにですが、地面だけじゃなくて壁や天井にも埋まっていますよ」
『いや、天井って・・・』
『一体誰が届くんだよwww』
 僕が部屋の鉱石の埋まっている場所を伝えると、みんなは素晴らしくらいの反応でツッコミを入れてくれていた。
 うん、こういうやり取りは実にいいね。
 もちろん、天井の採掘ポイントだって、掘る方法はいくらでもあるんだよね。
「ラティナさん、ちょっとお力を貸して頂いてもいいですか?」
「はい、ウィンク様」
 僕はラティナさんに耳打ちをして、島谷さんたちに伝える。
「すみません。三人の中で誰でもいいので、天井のあの辺りにスキルを放ってくれませんか?」
「スキル?」
 僕が伝えると、三人の手が止まって首を傾げていた。
『そういうことか』
『なるほど、それなら天井に手が届くな』
『とはいえ、天井に衝撃与えたら、そこだけが崩れるから気をつけないとな』
『たしかに』
 配信を見ている視聴者さんたちは何をするのか分かったみたいだ。さすが、僕の配信を長く見続けている人たちだよね。
『やたらめったらやられたら、死人すら出かねないからな』
『ウィンクちゃん、そこの対策よろしく』
「あっ、心配ないですよ。ごめんなさい、まずは適当にスキルを天井に撃ってみてください」
「あ、ああ。分かった」
 粕谷さんが反応して、手を止めて天井を見上げている。そして、持っているつるはしを天井に向けて投げつけた。
「どっせい!」
 投げつけたつるはしは天井に当たるものの、カーンという甲高い音が響いて床に降ってきた。
 音のした天井を見上げると、つるはしを思い切りぶつけられたというのに、傷ひとつついていなかった。
『どゆこと?!』
「採掘ポイント以外は衝撃を与えても崩れないようにしたんです。僕も最初は危ないなと思ったんですけど、採掘場の追加オプションで設定できたんですよ」
『なるほど、どういうことだってばよ』
 納得したように見えて、視聴者さんたちは混乱しているようだ。
「とりあえず、これで安心して採掘ができるというわけですね」
『ダンジョンって、やっぱりよく分からんな』
『出現から十年以上経過してるけど、未解明な部分が多すぎるからな・・・』
『とりあえず、ウィンクちゃんがちゃんと探索者たちのことを考えていることだけは分かった』
『せやな』
 視聴者さんたちは、目の前で起きていることがまったく分からなかったみたいだ。結果として、僕の評価だけしてくれたみたいだった。
「それじゃ、改めてあの辺りを狙って下さい」
「あの辺りって、ちょっと色が変わっているところか?」
「そうそう、そこです」
「分かった。とおっ!」
 改めて、僕が狙う場所を指定する。粕谷さんはそこ目がけて二回目のつるはし投擲を放っている。
「お、さっきと音が違うぞ?」
 粕谷さんが言ったとおり、今度はガリッという音が響いて、当たった場所が崩れ落ちてきた。
 ガラガラと散らばってきた石の中には、どうやら銅が含まれているようだった。
「へえ、天井は分かりやすいようにちょっと色が変わっているのか」
「何度もスキルを使わせるわけにはいきませんからね。ただでさえデバフの入る部屋なんですから」
「なるほどですね」
「でも、あの程度の色の違いは、よく見ないと分からないわよ?」
「そりゃそうですよ。こっちだってダンジョンを運営してるんです。そう簡単に掘り出されて困りますかっていうことですよ」
「な、なるほど……」
 三人の反応に、僕はそれぞれ返していく。
 ダンジョンポイントを稼ぐには、デバフをガンガン受けてもらわないと困るからね。だから、こうしてちょっとしたいたずらをしてみたってわけだよ。
「でも、ラティナさんは分かるみたいですね」
「はい、岩のゴーレムですからね。岩と調和することで、感知や看破と同じようなことができるようになります。対象は土や岩くらいに限られますけど」
『ほえ~、便利~』
『ラティナちゃん、すごい!』
 ラティナさんも、すっかりみんなに人気になっちゃったなぁ。なんか僕よりも人気がありそうで、ちょっとだけ嫉妬しちゃうな。
 そんなことを思いながら、僕は三人の方を見る。
「あれ? どうしたんですか?」
 僕はついそんなことを尋ねてしまう。
「私たち、決めました」
「ネームバリューだけでギルドに入りましたからね。今は実態を知っているので、ここはいっそのこと、俺たち三人で抜けて新しいギルドを設立しようと思います」
「ああ、このまま後ろめたい気持ちでいるのも嫌だからな」
『急展開だなぁ』
『本気か?』
『これは保護してもらわんといかんぞ』
 三人の話を聞いて驚いていると、視聴者さんたちの反応に僕はさらに驚かされた。
「あの、パラダイスってギルド、そんなにやばいんですか?」
『まあね』
『今は配信中だからコメントは差し控えておくが、ここまでの俺たちの反応から察してくれ』
「は、はあ。分かりました」
 なんだかよく分からないけれど、僕は三人の決意に素直に拍手を送っておくことにした。
 視聴者さんたちも同じように祝福するようなコメントをしていたけど、同時に心配するコメントも出ていた。やっぱり気になるなぁ。
 気にはなるけれど、僕の配信中なのでこれ以上は言及しない。
 ひと通りの採掘を終えたところで、僕は今回の配信を終了させる。
 心配になった僕は、ひとまず採掘場のデバフが切れるまでの間、入口近くの管理局の人たちがいる詰所に泊まってもらうことにしたのだった。