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SCENE101 どうやら話はついたみたい

ー/ー



 僕のダンジョンに、久しぶりに高志さんがやって来た。どうやら、またセイレーンさんから頼まれごとをしてきたみたいだ。
 ただ、ラティナさんが姿を見せてから、なんだか様子がおかしいみたいだ。一体どうしたんだろう。

「高志さん、とりあえず紅茶でも飲んで落ち着かれますか?」

「あ、えっと。そうさせてもらいます」

 僕が話し掛けても、反応が一瞬遅かった。本当にどうしちゃったんだろう。
 僕は首をひねりながらも、とりあえず谷地さんと日下さんがやってくるまでどうにか間を持たせていた。

「あっ、谷地様と日下様がいらしたようですよ」

 ボス部屋にあるショートカット用の扉が開き、二人を連れてバトラーが戻ってきた。その様子を見ていたラティナさんが、思わず叫んでしまっていた。
 その瞬間、高志さんがびくっと体を跳ねさせたように見えたんだけど、気のせいかな。なんだか表情も硬いし、本当にどうしちゃったんだろ。

「お待たせしました。どうなさったんですか、急に呼び出すだなんて」

「会議中だったので、抜け出すのに苦労しましたよ」

「あ、えっと、それはごめんなさい。僕たちの方も急な話だったものですから、つい……」

 谷地さんと日下さんの話を聞いて、僕はつい謝ってしまう。

「すみません。俺が急にやって来たのが原因みたいでして。お仕事の邪魔をして本当に申し訳ありません」

「おやっ、君は確か……」

「えっと?」

 高志さんが謝罪をしていると、谷地さんがなにやら考え込んでいる。
 おかしいな。二人は面識がなかったと思うんだけど。

「ああ、横浜にある監理局から話が回ってきていた探索者だね。確か、横浜ダンジョンのボスドロップを持ってきたとか噂になってたよ」

「わわっ、管理局の中では話が出回ってるんですか?!」

 谷地さんが話した内容に、高志さんが慌てふためいている。

「そりゃねえ。基本的には守秘義務にあたるんだが、さすがに攻略のなされていないボスドロップとなれば、取引のためにも情報が出てしまうんだ」

「うう、あんまり目立ちたくないんだけどな……」

「管理局以外で知る者はいないと思うから安心してくれ。それと、横浜ダンジョンでは面白いことが行われるようだね」

「えっ?」

 谷地さんの言葉に、高志さんは態度がころころと変わっている。いろんな話をぶつけられているからしょうがないよね。

「君が驚いてどうするのかね。仲介役をしたのは君ではないか」

「は、はい。確かにそうですけれど、ほぼセイレーンさんから無理やりですよ」

 谷地さんに言われて、高志さんは目を逸らしながら答えている。もっと胸張ってもいいんじゃないかなとは思うけど、高志さんって自信を持てないタイプなのかな。

「それで、どうして君はここに来ているのかしら」

 今度は日下さんが話しかけている。

「えっと、セイレーンさんから頼まれて、用意した育成スペースを探索者に実際に探索してもらいたいそうです。ダンジョン全体に復活システムが働いているので、死んでも大丈夫だそうですよ」

「なるほどね。つまり君は、セイレーンというダンジョンボスの手先というわけだね」

「ま、まあ、そんな感じなんですかね。セイレーンさん自体は、ウィンクさんに対抗意識を燃やして、俺をいいように使いたいだけみたいですけど」

「えっ、僕?」

 話の流れの中で僕の名前が出てきたので、思わずびっくりしちゃったよ。一体どういうことなの。

「セイレーン様は、異界の公爵家の令嬢です。さすがに王女殿下よりは下になりますが、自分が一番でないと気が済まないような方なのです」

「ダンジョンポイントの稼ぎのことで、急に伸びている新人ダンジョンマスターのプリンセスに対抗意識を燃やすのは、まあ当然のことでしょう」

「ああ、あの話かぁ」

 以前に話していた内容を思い出して、僕はとても納得がいっていた。
 直に話をした時に、そんなことを言っていたもんなぁ。

「ですから、こちらの世界における人気も、ウィンク様に負けたくないということですね」

「本当に、自分が一番がいい人なんだなぁ。なんだかうらやましく感じるよ」

「プリンセスはそういうところには無欲ですからなぁ」

「僕はただ、死にたくないだけですからね。バトラー、責任取ってよね」

「もちろんですとも。生涯、プリンセスにお仕えいたしますとも」

 僕は半分冗談で言ったんだけど、バトラーは間髪入れずに答えて来たよ。これは本気だね。

「それはそうと。なんで体験用のスペースを別に用意したんだろ」

「セイレーンさんが仰るには、初心者の方を普通のダンジョンに招き入れて訓練させると、普通の探索者の邪魔になるだろうから、だそうです」

「さすがはセイレーン様ですわ。ちゃんとそんなところにまで配慮なされているなんて。ああ、そのままでしたら間違いなく王太子妃になられていたでしょうに。ダンジョンマスターにされるだなんて、もったいないです」

「な、なんか、規模の大きな話だね」

 話を聞いていたラティナさんが、セイレーンさんに陶酔するような動きをしていた。やっぱり、異界で仲が良かったというのは事実みたいだ。
 そんなこんなと話をしているうちに、ダンジョン管理局の方でテスターとなる探索者を集めてくれることになったらしい。その連絡は高志さんに入れられることに決まって、高志さんがガチガチに固まっていた。

 あれ、結局僕のところに来る必要なかったんじゃないか?
 僕はそう思ってバトラーを見る。バトラーは僕の表情を見て悟ったらしく、首を左右に振っていた。
 なんにしても、無事に横浜ダンジョンの新スペースのテスター探索者が派遣されることに決まって、話は丸く収まったみたいだった。


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 僕のダンジョンに、久しぶりに高志さんがやって来た。どうやら、またセイレーンさんから頼まれごとをしてきたみたいだ。
 ただ、ラティナさんが姿を見せてから、なんだか様子がおかしいみたいだ。一体どうしたんだろう。
「高志さん、とりあえず紅茶でも飲んで落ち着かれますか?」
「あ、えっと。そうさせてもらいます」
 僕が話し掛けても、反応が一瞬遅かった。本当にどうしちゃったんだろう。
 僕は首をひねりながらも、とりあえず谷地さんと日下さんがやってくるまでどうにか間を持たせていた。
「あっ、谷地様と日下様がいらしたようですよ」
 ボス部屋にあるショートカット用の扉が開き、二人を連れてバトラーが戻ってきた。その様子を見ていたラティナさんが、思わず叫んでしまっていた。
 その瞬間、高志さんがびくっと体を跳ねさせたように見えたんだけど、気のせいかな。なんだか表情も硬いし、本当にどうしちゃったんだろ。
「お待たせしました。どうなさったんですか、急に呼び出すだなんて」
「会議中だったので、抜け出すのに苦労しましたよ」
「あ、えっと、それはごめんなさい。僕たちの方も急な話だったものですから、つい……」
 谷地さんと日下さんの話を聞いて、僕はつい謝ってしまう。
「すみません。俺が急にやって来たのが原因みたいでして。お仕事の邪魔をして本当に申し訳ありません」
「おやっ、君は確か……」
「えっと?」
 高志さんが謝罪をしていると、谷地さんがなにやら考え込んでいる。
 おかしいな。二人は面識がなかったと思うんだけど。
「ああ、横浜にある監理局から話が回ってきていた探索者だね。確か、横浜ダンジョンのボスドロップを持ってきたとか噂になってたよ」
「わわっ、管理局の中では話が出回ってるんですか?!」
 谷地さんが話した内容に、高志さんが慌てふためいている。
「そりゃねえ。基本的には守秘義務にあたるんだが、さすがに攻略のなされていないボスドロップとなれば、取引のためにも情報が出てしまうんだ」
「うう、あんまり目立ちたくないんだけどな……」
「管理局以外で知る者はいないと思うから安心してくれ。それと、横浜ダンジョンでは面白いことが行われるようだね」
「えっ?」
 谷地さんの言葉に、高志さんは態度がころころと変わっている。いろんな話をぶつけられているからしょうがないよね。
「君が驚いてどうするのかね。仲介役をしたのは君ではないか」
「は、はい。確かにそうですけれど、ほぼセイレーンさんから無理やりですよ」
 谷地さんに言われて、高志さんは目を逸らしながら答えている。もっと胸張ってもいいんじゃないかなとは思うけど、高志さんって自信を持てないタイプなのかな。
「それで、どうして君はここに来ているのかしら」
 今度は日下さんが話しかけている。
「えっと、セイレーンさんから頼まれて、用意した育成スペースを探索者に実際に探索してもらいたいそうです。ダンジョン全体に復活システムが働いているので、死んでも大丈夫だそうですよ」
「なるほどね。つまり君は、セイレーンというダンジョンボスの手先というわけだね」
「ま、まあ、そんな感じなんですかね。セイレーンさん自体は、ウィンクさんに対抗意識を燃やして、俺をいいように使いたいだけみたいですけど」
「えっ、僕?」
 話の流れの中で僕の名前が出てきたので、思わずびっくりしちゃったよ。一体どういうことなの。
「セイレーン様は、異界の公爵家の令嬢です。さすがに王女殿下よりは下になりますが、自分が一番でないと気が済まないような方なのです」
「ダンジョンポイントの稼ぎのことで、急に伸びている新人ダンジョンマスターのプリンセスに対抗意識を燃やすのは、まあ当然のことでしょう」
「ああ、あの話かぁ」
 以前に話していた内容を思い出して、僕はとても納得がいっていた。
 直に話をした時に、そんなことを言っていたもんなぁ。
「ですから、こちらの世界における人気も、ウィンク様に負けたくないということですね」
「本当に、自分が一番がいい人なんだなぁ。なんだかうらやましく感じるよ」
「プリンセスはそういうところには無欲ですからなぁ」
「僕はただ、死にたくないだけですからね。バトラー、責任取ってよね」
「もちろんですとも。生涯、プリンセスにお仕えいたしますとも」
 僕は半分冗談で言ったんだけど、バトラーは間髪入れずに答えて来たよ。これは本気だね。
「それはそうと。なんで体験用のスペースを別に用意したんだろ」
「セイレーンさんが仰るには、初心者の方を普通のダンジョンに招き入れて訓練させると、普通の探索者の邪魔になるだろうから、だそうです」
「さすがはセイレーン様ですわ。ちゃんとそんなところにまで配慮なされているなんて。ああ、そのままでしたら間違いなく王太子妃になられていたでしょうに。ダンジョンマスターにされるだなんて、もったいないです」
「な、なんか、規模の大きな話だね」
 話を聞いていたラティナさんが、セイレーンさんに陶酔するような動きをしていた。やっぱり、異界で仲が良かったというのは事実みたいだ。
 そんなこんなと話をしているうちに、ダンジョン管理局の方でテスターとなる探索者を集めてくれることになったらしい。その連絡は高志さんに入れられることに決まって、高志さんがガチガチに固まっていた。
 あれ、結局僕のところに来る必要なかったんじゃないか?
 僕はそう思ってバトラーを見る。バトラーは僕の表情を見て悟ったらしく、首を左右に振っていた。
 なんにしても、無事に横浜ダンジョンの新スペースのテスター探索者が派遣されることに決まって、話は丸く収まったみたいだった。