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ep.19 ゲームより君がいい

ー/ー



 翌日、歩き疲れた千寿流たちは近くの公園で靴を放り出し足を水につけ、向かいで走る元気な子供たちをぼーっと眺めながら水浴びをする。
 時計の針は正午を刻もうとしていた。

「はぅ、足の裏が気持ちいい~」

「シャルルも シャルルも!」

 シャルはスカートの裾を両手に持ち、水の中をパシャパシャと音立て走り回る。

「わっぷ! シャルちゃんはしゃぎ過ぎだよっ! 水が顔に掛かっちゃうっ」

 端的に言って途方に暮れていた。歩き回って誰に尋ねるも帰ってくるのは「知らない」「わからない」ばかり。
 それも当たり前の事かもしれない。現実的な話、有名な芸能人ならいざ知らず、特定の誰かを歩き回って探すなど荒唐無稽ともいえる。
 お世辞にも頭が良いとはいえない二人は探し続ければ何とかなるだろうと楽観的に考えていたが、川崎でのクラマ捜索一日目の正午、早くも諦めムードが漂っていた。

「うん、考えてたんだけどね。やっぱりゲーセン行こ、シャルちゃん。あたしたちにも遊びは大切だよ! あたし最近入った格ゲーやりたいっ」

 考え抜いて出した答えは間の抜けた提案。多少大袈裟かもしれないが、一種の現実逃避ともいえるだろう。いずれにしても捜索初日でこれでは先が思いやられるわけだが。

「シャルル パズルゲームのほうが すきだけどいいよ! ちずる まけても なかないでよね!」

「えひひ、言ったね? じゃあ、勝った方が……うーんと、まあ、なんでもいっか! 行こ、シャルちゃん!」

 真昼間の公園に少女達の声が響く。なんとも底抜けに能天気な二人だった。

 ガヤガヤとゲームセンターの環境音が響く。店内には有線から流行りの楽曲も流れており、筐体からの音や、客の会話など様々な音と混じり合っている。
 何処かの専門家がゲームセンターの環境は発育に影響を及ぼすと唱えてから数百年。禁煙化が推奨されたり、流行りの病などで多少の対策は行われたものの基本的には何の進歩もない。それはきっと必要が無いから。
 子供への影響はあれども、家族、友人が集って世代の隔たり無く楽しむことが出来る遊びの場に、無粋な事なのかもしれない。

 新作の筐体が幾つか入ったこともあり、学校が長期休暇期間に入っていることも相まって、ゲームセンターの中は子供で溢れかえっていた。
 掲示板で見かけたのは、ヘッドギアを使用せず、脳波を読み取って臨場感とキャラクターを疑似体験できると謳われている、VRを取り入れた格闘ゲーム。

「ん、順番待ちだね。運よく二人で対戦、は出来ないっぽいね。どうしよっかシャルちゃん」

「シャルルはいいから ちずるだけで たのしんできなよ! フルーツオレ かってきてあげる」

 そう言うとシャルは自販機に向かって駆けていく。

「うーん、せっかくだから二人で遊びたかったんだけどな」

 つまらなさそうにぽつりとつぶやく千寿流。

 ゲーム好きの千寿流にとって、新作の格ゲーは興味を惹くものではあったが、それは誰よりも強くなりたいといったような高邁なものではなく、ただ友だちと楽しむものとしてのツールでしかない。
 込み合っているとはいえ作品によって人気の有無は当然ある。千寿流は広いゲームセンターの中を歩き回りながら、二人で出来そうなものを探して回るのだった。

「ちずる おまたせ! なんか クレープも うってたから いっしょに かってきちゃった!」

 シャルはそう言いながら苺とリンゴ、二つのクレープとフルーツオレを千寿流に手渡す。

「クレープ、昨日も食べたのに……っていうか二つも食べられないよ、シャルちゃん!」

「ちずるは しょうしょく なんだよね! だから もっといっぱいたべて! おっきくなれないよ?」

「う……」

 だからといってクレープばかり食べるのは違うんじゃないかと思いつつも、どことは言わないが大きくなりたい千寿流は二つのクレープをしぶしぶ受け取るのだった。


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 翌日、歩き疲れた千寿流たちは近くの公園で靴を放り出し足を水につけ、向かいで走る元気な子供たちをぼーっと眺めながら水浴びをする。
 時計の針は正午を刻もうとしていた。
「はぅ、足の裏が気持ちいい~」
「シャルルも シャルルも!」
 シャルはスカートの裾を両手に持ち、水の中をパシャパシャと音立て走り回る。
「わっぷ! シャルちゃんはしゃぎ過ぎだよっ! 水が顔に掛かっちゃうっ」
 端的に言って途方に暮れていた。歩き回って誰に尋ねるも帰ってくるのは「知らない」「わからない」ばかり。
 それも当たり前の事かもしれない。現実的な話、有名な芸能人ならいざ知らず、特定の誰かを歩き回って探すなど荒唐無稽ともいえる。
 お世辞にも頭が良いとはいえない二人は探し続ければ何とかなるだろうと楽観的に考えていたが、川崎でのクラマ捜索一日目の正午、早くも諦めムードが漂っていた。
「うん、考えてたんだけどね。やっぱりゲーセン行こ、シャルちゃん。あたしたちにも遊びは大切だよ! あたし最近入った格ゲーやりたいっ」
 考え抜いて出した答えは間の抜けた提案。多少大袈裟かもしれないが、一種の現実逃避ともいえるだろう。いずれにしても捜索初日でこれでは先が思いやられるわけだが。
「シャルル パズルゲームのほうが すきだけどいいよ! ちずる まけても なかないでよね!」
「えひひ、言ったね? じゃあ、勝った方が……うーんと、まあ、なんでもいっか! 行こ、シャルちゃん!」
 真昼間の公園に少女達の声が響く。なんとも底抜けに能天気な二人だった。
 ガヤガヤとゲームセンターの環境音が響く。店内には有線から流行りの楽曲も流れており、筐体からの音や、客の会話など様々な音と混じり合っている。
 何処かの専門家がゲームセンターの環境は発育に影響を及ぼすと唱えてから数百年。禁煙化が推奨されたり、流行りの病などで多少の対策は行われたものの基本的には何の進歩もない。それはきっと必要が無いから。
 子供への影響はあれども、家族、友人が集って世代の隔たり無く楽しむことが出来る遊びの場に、無粋な事なのかもしれない。
 新作の筐体が幾つか入ったこともあり、学校が長期休暇期間に入っていることも相まって、ゲームセンターの中は子供で溢れかえっていた。
 掲示板で見かけたのは、ヘッドギアを使用せず、脳波を読み取って臨場感とキャラクターを疑似体験できると謳われている、VRを取り入れた格闘ゲーム。
「ん、順番待ちだね。運よく二人で対戦、は出来ないっぽいね。どうしよっかシャルちゃん」
「シャルルはいいから ちずるだけで たのしんできなよ! フルーツオレ かってきてあげる」
 そう言うとシャルは自販機に向かって駆けていく。
「うーん、せっかくだから二人で遊びたかったんだけどな」
 つまらなさそうにぽつりとつぶやく千寿流。
 ゲーム好きの千寿流にとって、新作の格ゲーは興味を惹くものではあったが、それは誰よりも強くなりたいといったような高邁なものではなく、ただ友だちと楽しむものとしてのツールでしかない。
 込み合っているとはいえ作品によって人気の有無は当然ある。千寿流は広いゲームセンターの中を歩き回りながら、二人で出来そうなものを探して回るのだった。
「ちずる おまたせ! なんか クレープも うってたから いっしょに かってきちゃった!」
 シャルはそう言いながら苺とリンゴ、二つのクレープとフルーツオレを千寿流に手渡す。
「クレープ、昨日も食べたのに……っていうか二つも食べられないよ、シャルちゃん!」
「ちずるは しょうしょく なんだよね! だから もっといっぱいたべて! おっきくなれないよ?」
「う……」
 だからといってクレープばかり食べるのは違うんじゃないかと思いつつも、どことは言わないが大きくなりたい千寿流は二つのクレープをしぶしぶ受け取るのだった。