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第14話 クソゲーのリザルト報酬

ー/ー



俺は亀の甲羅に乗っていた。

「わーお! すごいじゃない、コウくん! イワガメに乗るなんてめったにない経験よ。さすがね!」

サティアのはしゃいだ声で、逆に事態のヤバさを思い出した。

そうだ爆発を避けなきゃ。
おれは落ちないようにしがみつきながら、爆発しそうな場所に対して、山なりになった甲羅自体を遮蔽物にするように移動した。

ドオオン!

爆風が頭上と足元を吹き抜けた。耳が聞こえなくなる。
更に、土の塊や小石が亀の甲羅に当たる振動が伝わってきた。
俺は必死にしがみついていた。

しかし、亀の方はまともに爆風をくらったらしい。吹き飛ばされることはなかったが、いきなり手足と頭と尻尾を引っ込めた。

4本足で立っている状態からいきなりそんなことをすれば……当然胴体が地面に落ちる。
数トンの質量を持つ胴体が、四本足の高さからいきなり地面に自由落下した。

「ぐはっ!」

俺はその衝撃で甲羅から弾き飛ばされた。

幸い、落ちた先は柔らかい土の上だった。
怪我はない。胸が痛いだけだ。
だが、辺りは爆風の影響で草がちぎれ飛び、無残なハゲ山のようになっている。

「……あ」
俺は目を見開いた。

周囲の丈の長い草が吹き飛ばされたことで、地面がむき出しになっている。
そして、そこには……爆風に耐え抜いたリクロータスの花が、あちこちに誇らしげに咲き誇っていた。

柔らかい土から、長い茎がすっくと立ち上がっている。今まで高い草に隠れていた、小ぶりだが質の良さそうな花まで、すべてが丸見えだ。
リクロータスの花畑、と言ってもいいほどの収穫ポイントが、俺の目の前に広がっていた。

それは道すがら俺が思い描いていた光景そのものだった。

「ふうん。コウくんが思い描いたのがこんな風景だったから、宇宙はガス爆発を計画してくれたのね」

サティアの言葉に、俺は反論しようとして、思い直した。

確かに、この爆発は地質学的な必然だ。メタンガスの内圧が臨界点を超えれば噴出するのは当たり前だ。

……だが、あまりにもタイミングが良すぎないか?
俺がその「最悪」の状況とその裏側にある「結果」をイメージした直後に、世界がこのプロセスを選択したのだとしたら。

俺は、泥だらけの掌を見つめた。
スピリチュアルなんて言葉は認めない。……だが、もし。

もし俺の『悲観的シミュレーション』が、この世界の物理法則を歪める『入力コマンド』になっているのだとしたら?

「……フン。笑わせるな。地中のメタンガスの膨張係数と、イワガメの自重による圧力変化。それらを考慮すれば、このタイミングで爆発が起きるのは……あー、その、確率論的にあり得る話だ。計算の範囲内だ」

「えー? 今の、思いっきり『想定外だ!』って顔してたじゃない」

「……もし、この出鱈目な現象に『再現性』があるのだとしたら、それはもはやオカルトじゃない。ただの致命的なバグだ。……検証してやるよ。このクソゲーの仕様をな」

サティアは「素直じゃないわねえ」と呆れているが、俺は今までにない不快な、だが無視できない「予感」に突き動かされていた。
この世界が、俺の思考を餌に現実を書き換えているのだとしたら。

……ハックしてやる。
スピリチュアルという名のうさんくさいシステムで動くこの世界というクソゲーを、論理という名のデバッグで丸裸にしてやる。

俺は、収穫しやすくなったリクロータスを、クソゲーのリザルト報酬として手際よく刈り取り始めた。
鎌を振る度に、先程圧迫された胸が痛い。

「……痛たた。……物理的なフィードバックが強すぎるのが、検証上の課題だな」
俺は心の中で毒づきながら、ギルドで借りた袋にリクロータスを詰め込んでいった。

依頼書に付属していた説明では、リクロータスは背の高い草に紛れて咲くため、背の高い個体じゃないと簡単に見つけることはできないし、草をかきわけて根本から刈らないといけないので、手間のかかる作業ということだった。

昨日この世界に来たばかりの俺にとって、この植物の生態なんて知る由もないが、草をかき分けて探したり刈ったりする手間が省けたことだけは確かだ。
メタンガスの爆発という名の物理的な草刈りが行われたおかげで、隠れていた若い個体までもが露わになっている。

俺は、依頼された20本という数字を優に超え、袋がはち切れんばかりにリクロータスを詰め込んだ。
これだけあれば、過剰納品によるボーナスが期待できる。
最新の不運理論によれば、運が悪ければ悪いほど、その後の揺り戻しによる利得は最大化されるはずなのだ。

「コウくん、そんなに欲張って大丈夫? 欲の波動がリクロータスの香りと混ざって、なんだかスパイシーな感じになってるわよ」

「欲じゃない。これは損失補填だ。亀から突き落とされた精神的苦痛と、泥まみれになった衣服のクリーニング代を考えれば、これくらい回収しないと帳尻が合わない」

俺はサティアの揶揄を鼻で笑い飛ばし、イケリアの街へと戻った。



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俺は亀の甲羅に乗っていた。
「わーお! すごいじゃない、コウくん! イワガメに乗るなんてめったにない経験よ。さすがね!」
サティアのはしゃいだ声で、逆に事態のヤバさを思い出した。
そうだ爆発を避けなきゃ。
おれは落ちないようにしがみつきながら、爆発しそうな場所に対して、山なりになった甲羅自体を遮蔽物にするように移動した。
ドオオン!
爆風が頭上と足元を吹き抜けた。耳が聞こえなくなる。
更に、土の塊や小石が亀の甲羅に当たる振動が伝わってきた。
俺は必死にしがみついていた。
しかし、亀の方はまともに爆風をくらったらしい。吹き飛ばされることはなかったが、いきなり手足と頭と尻尾を引っ込めた。
4本足で立っている状態からいきなりそんなことをすれば……当然胴体が地面に落ちる。
数トンの質量を持つ胴体が、四本足の高さからいきなり地面に自由落下した。
「ぐはっ!」
俺はその衝撃で甲羅から弾き飛ばされた。
幸い、落ちた先は柔らかい土の上だった。
怪我はない。胸が痛いだけだ。
だが、辺りは爆風の影響で草がちぎれ飛び、無残なハゲ山のようになっている。
「……あ」
俺は目を見開いた。
周囲の丈の長い草が吹き飛ばされたことで、地面がむき出しになっている。
そして、そこには……爆風に耐え抜いたリクロータスの花が、あちこちに誇らしげに咲き誇っていた。
柔らかい土から、長い茎がすっくと立ち上がっている。今まで高い草に隠れていた、小ぶりだが質の良さそうな花まで、すべてが丸見えだ。
リクロータスの花畑、と言ってもいいほどの収穫ポイントが、俺の目の前に広がっていた。
それは道すがら俺が思い描いていた光景そのものだった。
「ふうん。コウくんが思い描いたのがこんな風景だったから、宇宙はガス爆発を計画してくれたのね」
サティアの言葉に、俺は反論しようとして、思い直した。
確かに、この爆発は地質学的な必然だ。メタンガスの内圧が臨界点を超えれば噴出するのは当たり前だ。
……だが、あまりにもタイミングが良すぎないか?
俺がその「最悪」の状況とその裏側にある「結果」をイメージした直後に、世界がこのプロセスを選択したのだとしたら。
俺は、泥だらけの掌を見つめた。
スピリチュアルなんて言葉は認めない。……だが、もし。
もし俺の『悲観的シミュレーション』が、この世界の物理法則を歪める『入力コマンド』になっているのだとしたら?
「……フン。笑わせるな。地中のメタンガスの膨張係数と、イワガメの自重による圧力変化。それらを考慮すれば、このタイミングで爆発が起きるのは……あー、その、確率論的にあり得る話だ。計算の範囲内だ」
「えー? 今の、思いっきり『想定外だ!』って顔してたじゃない」
「……もし、この出鱈目な現象に『再現性』があるのだとしたら、それはもはやオカルトじゃない。ただの致命的なバグだ。……検証してやるよ。このクソゲーの仕様をな」
サティアは「素直じゃないわねえ」と呆れているが、俺は今までにない不快な、だが無視できない「予感」に突き動かされていた。
この世界が、俺の思考を餌に現実を書き換えているのだとしたら。
……ハックしてやる。
スピリチュアルという名のうさんくさいシステムで動くこの世界というクソゲーを、論理という名のデバッグで丸裸にしてやる。
俺は、収穫しやすくなったリクロータスを、クソゲーのリザルト報酬として手際よく刈り取り始めた。
鎌を振る度に、先程圧迫された胸が痛い。
「……痛たた。……物理的なフィードバックが強すぎるのが、検証上の課題だな」
俺は心の中で毒づきながら、ギルドで借りた袋にリクロータスを詰め込んでいった。
依頼書に付属していた説明では、リクロータスは背の高い草に紛れて咲くため、背の高い個体じゃないと簡単に見つけることはできないし、草をかきわけて根本から刈らないといけないので、手間のかかる作業ということだった。
昨日この世界に来たばかりの俺にとって、この植物の生態なんて知る由もないが、草をかき分けて探したり刈ったりする手間が省けたことだけは確かだ。
メタンガスの爆発という名の物理的な草刈りが行われたおかげで、隠れていた若い個体までもが露わになっている。
俺は、依頼された20本という数字を優に超え、袋がはち切れんばかりにリクロータスを詰め込んだ。
これだけあれば、過剰納品によるボーナスが期待できる。
最新の不運理論によれば、運が悪ければ悪いほど、その後の揺り戻しによる利得は最大化されるはずなのだ。
「コウくん、そんなに欲張って大丈夫? 欲の波動がリクロータスの香りと混ざって、なんだかスパイシーな感じになってるわよ」
「欲じゃない。これは損失補填だ。亀から突き落とされた精神的苦痛と、泥まみれになった衣服のクリーニング代を考えれば、これくらい回収しないと帳尻が合わない」
俺はサティアの揶揄を鼻で笑い飛ばし、イケリアの街へと戻った。