ep.4 幽霊屋敷は誰もいない2
ー/ー
薄暗い通路を戻る。来た道を戻りながら、まだ行ったことのない部屋を散策する。
しかし、そのほとんどの扉に鍵がかかっていて中を伺うことが出来なかった。
「ん……ぜんぜんダメじゃん。どっこも開かないよ。コンセントさえあればケーブル持ってるから充電できるのにっ」
そう誰ともなしに言いながら確認もかねて、可愛いクマのデザインの小さなポシェットからケーブルとACアダプタ、そしてこれまた可愛い猫のデザインの充電器を取り出す。
エアポケット。通称エアポケ。小型の収納バッグの様なもので、形は千寿流が持っているような小さなポシェット型から、竹刀袋ような形状のものまで様々。
元漫画家、宇崎陽星による異能 超重複『Duplicate reflection』による物質屈折変態現象を取り入れて造られたそれは、ドラえもんの四次元ポケットの様な機構となっていて、入り口を通るのであればキャパシティはあるものの、様々なものを収納できるようになっている。
ちなみに本人が詳しく語らない為定義は曖昧だが、基本的に人を害するような物は収納できないようになっている。
売れない漫画家でもあった彼はその力で大金を得ることに成功したのだが、安価なものでも数千万はくだらない非常に高価なもので、使い方次第では悪用も出来る為、一般市場に出回ることはほとんど無い。
そんなものを十歳になったばかりの少女、千寿流が持っていること自体おかしな話ではあるのだが、当の本人はその価値を微塵も理解できていないようだった。
(はぁ、もしかしたらって思ったけどやっぱり電池切れ。スマホも充電器も電池切れ。やっぱりコンセントを探さないとダメなのかな?)
気落ちしながらエアポケにケーブルとACアダプタ、充電器をしまい込むと、再びコンセントを求めて屋敷内を歩き回ることにした。
うぅ………わぁ………ん………
「うぇ!?ななな、なにっ、今の声っ!?」
どこからか声が聴こえる。遠くない。この屋敷の中から聴こえる。そう直感した。
く……ぁ……ど……
(……)
今度は耳を澄ましてみる。自分の心臓の音がやけにうるさかったが声の発生源は何となく理解できた。問題はその声のする方へ向かうべきなのか、否か。
逡巡すること数分、バクバクとうるさい音が鳴りやむのを待って決心を固め、その声のする方に向かうことにした。
「あぁあぁぁぁッ!!」
声を荒げて精いっぱい威嚇しながら扉を開ける。どうやらこの部屋だけは鍵が掛かっていないようだった。
「あぁあぁぁぁぁあぁ……ぁれ?んと、誰もいない?」
薄暗い部屋の中をキョロキョロと見渡してみる。しかし、人影はない。
「とりあえず電気つけよ。暗くて良く分かんないし……怖いし」
明るくなった室内を再度見渡す。そこは数人が集まって寛げる談話スペースのような場所だった。
しかし、人影の様なものはどこにもない。
(何にもない。落ちてるのは何かの紙切れと割れたワインの瓶?かな)
「……え……ふ……ろく?」
千切れた紙切れにはカタカナで文字が書いてあったが、辛うじて数文字読めただけで何が書いてあったのかは全く分からない。
この部屋から繋がる扉は今入ってきた入り口の他に二つ。これまた瀟洒な給湯室と鍵の掛かった扉。そして、壁の隅の方にあるのは配線用差込接続器。要するに。
「コンセントっ!」
ぱぁっと顔色が明るくなる。嬉々としてポシェットからケーブルと充電器を取り出し充電を試みる。
「ん?」
充電はできなかった。どれだけ待っても反応なし。部屋の電気は点くので電気が通ってないという事は無いはずだが、なぜだか一向に充電器は反応を示さなかった。
(ん、充電器が壊れちゃってる。んだよね、たぶん。はぁ)
小さくため息を吐き、もう一度部屋を見渡してみる。
(もしかして音の正体はあの鍵の掛かった扉の先なのかな?)
「誰かいませんかぁ~~!お~~~いっ!」
反応なし。
(うぅうぅうぅ~)
正体不明の音。外に逃げなきゃと思って逃げ回った。
結果はどんなに頑張っても庭園からは出られず、この空間に閉じ込められた。
スマホが繋がらない今、とにかく誰かに合って相談したい。いつの間にか“逃げ出したい”という恐怖は“一人でいたくない”という感情に変化していた。
じゃあ、とりあえずは目の前の扉をどうにかして開けなきゃいけない。鍵穴をどうにかこじ開ける、思い切り体当たりする、ドンドンと叩いてみる、やれそうなことを全部試してみた。
(ダメだぁ……どうやっても開かないよ。軋んだりもしないし、まるで鉄で出来た壁みたい)
ぉ……しゃ……る……
「!?」
後ろから声。千寿流は飛びずさるようにして振り返る。
ゴン!
「いったぁ~~ぃ!」
扉のノブに頭を強かに打ち付ける。脳内に飛ぶ星を払いながら頭を摩り、音のする方向に向き直る。
……だ……ぁ……た……
「……ん?」
どうやら音の正体は暖炉の中からのようだった。ごくりと生唾を飲み、暖炉に向けて少しづつ摺り足で向かう。震える手で暖炉の中を覗く。そこには誰もいない。しかし、扉が一つあった。
(もしかして、この先に誰かいるのかな?)
ゆっくりとノブに手をかけ、今日何度目かの湧き上がる恐怖を押し殺して思い切り扉を開ける。
ガチャガチャ
「ありゃ?開かない……あ、もしかして引くんだったかな?」
ガチャりと。
きィと音を立てる扉を引く。
「うぁああぁ~~~~んっ!」
「ごふぅッ!?にょげっ!」
扉を開いた途端、ものすごい速さで弾丸の様な物が突っ込んできて千寿流のお腹に直撃した。
「ぐぇえぇ……な、なにっ!?」
尻もちをつきながら後ろに後ずさると、顔面を涙や鼻水でぐちゃぐちゃに濡らした小さな少女と目が合った。数秒、千寿流は目を丸くして少女を見つめた後、目線を落としてその顔を歪ませる。
(ぅえ、服がべちょべちょ……最悪)
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薄暗い通路を戻る。来た道を戻りながら、まだ行ったことのない部屋を散策する。
しかし、そのほとんどの扉に鍵がかかっていて中を伺うことが出来なかった。
「ん……ぜんぜんダメじゃん。どっこも開かないよ。コンセントさえあればケーブル持ってるから充電できるのにっ」
そう誰ともなしに言いながら確認もかねて、可愛いクマのデザインの小さなポシェットからケーブルとACアダプタ、そしてこれまた可愛い猫のデザインの充電器を取り出す。
エアポケット。通称エアポケ。小型の収納バッグの様なもので、形は千寿流が持っているような小さなポシェット型から、竹刀袋ような形状のものまで様々。
元漫画家、|宇崎陽星《うざきひぼし》による|異能《アクト》 |超重複《ちょうじゅうふく》『Duplicate reflection』による物質屈折変態現象を取り入れて造られたそれは、ドラえもんの四次元ポケットの様な機構となっていて、入り口を通るのであればキャパシティはあるものの、様々なものを収納できるようになっている。
ちなみに本人が詳しく語らない為定義は曖昧だが、基本的に人を害するような物は収納できないようになっている。
売れない漫画家でもあった彼はその力で大金を得ることに成功したのだが、安価なものでも数千万はくだらない非常に高価なもので、使い方次第では悪用も出来る為、一般市場に出回ることはほとんど無い。
そんなものを十歳になったばかりの少女、千寿流が持っていること自体おかしな話ではあるのだが、当の本人はその価値を微塵も理解できていないようだった。
(はぁ、もしかしたらって思ったけどやっぱり電池切れ。スマホも充電器も電池切れ。やっぱりコンセントを探さないとダメなのかな?)
気落ちしながらエアポケにケーブルとACアダプタ、充電器をしまい込むと、再びコンセントを求めて屋敷内を歩き回ることにした。
うぅ………わぁ………ん………
「うぇ!?ななな、なにっ、今の声っ!?」
どこからか声が聴こえる。遠くない。この屋敷の中から聴こえる。そう直感した。
く……ぁ……ど……
(……)
今度は耳を澄ましてみる。自分の心臓の音がやけにうるさかったが声の発生源は何となく理解できた。問題はその声のする方へ向かうべきなのか、否か。
逡巡すること数分、バクバクとうるさい音が鳴りやむのを待って決心を固め、その声のする方に向かうことにした。
「あぁあぁぁぁッ!!」
声を荒げて精いっぱい威嚇しながら扉を開ける。どうやらこの部屋だけは鍵が掛かっていないようだった。
「あぁあぁぁぁぁあぁ……ぁれ?んと、誰もいない?」
薄暗い部屋の中をキョロキョロと見渡してみる。しかし、人影はない。
「とりあえず電気つけよ。暗くて良く分かんないし……怖いし」
明るくなった室内を再度見渡す。そこは数人が集まって寛げる談話スペースのような場所だった。
しかし、人影の様なものはどこにもない。
(何にもない。落ちてるのは何かの紙切れと割れたワインの瓶?かな)
「……え……ふ……ろく?」
千切れた紙切れにはカタカナで文字が書いてあったが、辛うじて数文字読めただけで何が書いてあったのかは全く分からない。
この部屋から繋がる扉は今入ってきた入り口の他に二つ。これまた瀟洒な給湯室と鍵の掛かった扉。そして、壁の隅の方にあるのは配線用差込接続器。要するに。
「コンセントっ!」
ぱぁっと顔色が明るくなる。嬉々としてポシェットからケーブルと充電器を取り出し充電を試みる。
「ん?」
充電はできなかった。どれだけ待っても反応なし。部屋の電気は点くので電気が通ってないという事は無いはずだが、なぜだか一向に充電器は反応を示さなかった。
(ん、充電器が壊れちゃってる。んだよね、たぶん。はぁ)
小さくため息を吐き、もう一度部屋を見渡してみる。
(もしかして音の正体はあの鍵の掛かった扉の先なのかな?)
「誰かいませんかぁ~~!お~~~いっ!」
反応なし。
(うぅうぅうぅ~)
正体不明の音。外に逃げなきゃと思って逃げ回った。
結果はどんなに頑張っても庭園からは出られず、この空間に閉じ込められた。
スマホが繋がらない今、とにかく誰かに合って相談したい。いつの間にか“逃げ出したい”という恐怖は“一人でいたくない”という感情に変化していた。
じゃあ、とりあえずは目の前の扉をどうにかして開けなきゃいけない。鍵穴をどうにかこじ開ける、思い切り体当たりする、ドンドンと叩いてみる、やれそうなことを全部試してみた。
(ダメだぁ……どうやっても開かないよ。軋んだりもしないし、まるで鉄で出来た壁みたい)
ぉ……しゃ……る……
「!?」
後ろから声。千寿流は飛びずさるようにして振り返る。
ゴン!
「いったぁ~~ぃ!」
扉のノブに頭を強かに打ち付ける。脳内に飛ぶ星を払いながら頭を摩り、音のする方向に向き直る。
……だ……ぁ……た……
「……ん?」
どうやら音の正体は暖炉の中からのようだった。ごくりと生唾を飲み、暖炉に向けて少しづつ摺り足で向かう。震える手で暖炉の中を覗く。そこには誰もいない。しかし、扉が一つあった。
(もしかして、この先に誰かいるのかな?)
ゆっくりとノブに手をかけ、今日何度目かの湧き上がる恐怖を押し殺して思い切り扉を開ける。
ガチャガチャ
「ありゃ?開かない……あ、もしかして引くんだったかな?」
ガチャりと。
きィと音を立てる扉を引く。
「うぁああぁ~~~~んっ!」
「ごふぅッ!?にょげっ!」
扉を開いた途端、ものすごい速さで弾丸の様な物が突っ込んできて千寿流のお腹に直撃した。
「ぐぇえぇ……な、なにっ!?」
尻もちをつきながら後ろに後ずさると、顔面を涙や鼻水でぐちゃぐちゃに濡らした小さな少女と目が合った。数秒、千寿流は目を丸くして少女を見つめた後、目線を落としてその顔を歪ませる。
(ぅえ、服がべちょべちょ……最悪)