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SCENE094 行動は衝動的に

ー/ー



 衣織お姉さんと話した僕は、あまりポイントを使い過ぎないように気をつけながら、部屋を継ぎ足してみることにした。
 ボス部屋の手前に、ラティナさんからヒントを得た、採掘場のようなものを足してみることにした。ただし、僕は適性外なのであんまりいいものは用意できないみたいだった。

「何をされたのですか、ウィンク様」

「うん、採掘場のようなものを用意してみたんだ。見習いの人以外が使えるような空間をね」

「ほほう、それは面白そうでございますな」

 バトラーがかなり興味ありげに反応していた。

「ですが、プリンセスではあまりいいものはご用意できませんでしょうね。鉱石や宝石の多くはロックウェル伯爵家が押さえておりますからね。それこそ、安物の金属や宝石くらいしか採れないでしょうな」

「みたいだね。鉄と銅、それとガラスくらいかぁ。全然なんにも珍しくもないものばかりじゃないか」

「仕方ありませんな。ですが、うまく採掘ポイントを当てませんと掘り出すことはできませんから、宝探しのようで楽しむことはできるのではないしょうかね」

「まぁ、しょうがないね。えっと、自動採掘補充は800ポイントかぁ」

 僕はダンジョンコアの表示する情報を改めて見てみる。
 採掘場は普通の部屋作成に比べて四倍くらい高いけれど、アトラクションのようなものだとすればこのくらいの投資もしていいのかな。

「まあ、安物の金属や宝石とはいっても、ダンジョン産はマナを含んでおります。それこそ普通のものに比べると利用価値が高いですから、ありといえばありでしょうな」

「バトラーにそう言ってもらえるなら、追加するだけの価値は十分あるね」

「ですな」

「ふええ……。ダンジョンの運営って大変なのですね」

 僕たちの会話を聞いていたラティナさんは、驚いているようだった。
 父親であるロックウェル伯爵様の行動を、本当にまったく見ていなかったってことだよね。一緒の部屋にいたはずなのに、本当にすごいなぁ。

「ですが、プリンセス」

「なに、バトラー」

「さすがに安全に掘り放題にするのでありましたら、何か対価をいただいた方がよいかと思われますぞ。これでは探索者たちが一方的に恩恵を受けてしまいます。対価としてステータスのひとつにデバフがかかるようにした方がよいかと思います」

「あっ、そうか。ダンジョンポイントだよね」

「そうですぞ」

 バトラーの説明を聞いて、僕は思い出していた。
 そうだよ、ダンジョンポイントがなくちゃ、最終的に僕たちは活動できなくなっちゃうものね。それに、復活系のシステムを手に入れるためには500万ポイントも必要だから、なるべく減らすだけというのは避けなくちゃいけないわけだもん。
 そんなわけで、採掘場に入る時に、ステータスの一種類にデバフがかかるように調整しておく。これは探索者限定の機能なので、谷地さんや日下さんにも同じようにかかってしまう。まっ、これはしょうがないかな。
 他のダンジョンへ向かう探索者のことを考えて、持続時間は六時間に設定して部屋は完成した。

「谷地さんたちに報告した後、配信でみんなにお知らせかな?」

「ですな。プリンセスの人気を考えれば、きっと多くの人が来てくれるでしょうな」

「あ、うん。そうだね」

 バトラーが言った「多くの人が来る」という言葉に、僕はちょっと身構えてしまった。
 探索者見習いたちが来る時は、谷地さんに日下さん、それと衣織お姉さんがいるから平気なんだけど、僕は基本的にはコミュ障だから、たくさんの人が来るのはちょっとね……。
 ちらりとラティナさんを見ると、ラティナさんもなんだか緊張した様子だった。

「ら、ラティナさん?」

「あ、いえ。別に怖くないですから。ええ、怖くありませんから……」

 何も言っていないのに、ラティナさんは縮こまりながらぼそぼそと話している。うん、明らかに他人と会うのを警戒しているみたいだね。分かるよ、その気持ち。

 僕たちが話をしていると、僕の携帯電話が鳴り始める。
 なんだろうと覗き込んでみると、衣織お姉さんからだった。

「もしもし、衣織お姉さん?」

『おお、瞬か。今、入口まで管理局の人たちを連れてきている。迎えに来てくれないか?』

 えっ、もう来てるの?
 衣織お姉さんに相談したのは昨日なんだけど……。本当に僕のこととなると行動が早いなぁ。

「分かったよ。僕一人で迎えに行くから待ってて」

『ああ、私がいるから安心して来てくれ』

 ぷつりと通話を終えると、僕は大きなため息をついた。

「衣織殿ですな」

「衣織様ですね」

 バトラーとラティナさんが口を揃えているよ。僕が相手の名前を口走ったこともあるけど、僕の反応で二人とも確証したらしい。分かりやすすぎるんだろうなぁ、うん。
 とりあえず、僕は二人にボス部屋に留まってもらって、一人で衣織お姉さんたちを出迎えに行くことにした。あのショートカットを使うから危険はないしね。
 そんなわけで、行動力の塊な衣織お姉さんを迎えに行く。
 今回は管理局の人たちとどんな話ができるんだろうな。
 新しい部屋を作ったばかりとあって、僕はちょっと心躍らせながらダンジョンの入口に向かっていったよ。


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次のエピソードへ進む SCENE095 管理局にお披露目だ


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 衣織お姉さんと話した僕は、あまりポイントを使い過ぎないように気をつけながら、部屋を継ぎ足してみることにした。
 ボス部屋の手前に、ラティナさんからヒントを得た、採掘場のようなものを足してみることにした。ただし、僕は適性外なのであんまりいいものは用意できないみたいだった。
「何をされたのですか、ウィンク様」
「うん、採掘場のようなものを用意してみたんだ。見習いの人以外が使えるような空間をね」
「ほほう、それは面白そうでございますな」
 バトラーがかなり興味ありげに反応していた。
「ですが、プリンセスではあまりいいものはご用意できませんでしょうね。鉱石や宝石の多くはロックウェル伯爵家が押さえておりますからね。それこそ、安物の金属や宝石くらいしか採れないでしょうな」
「みたいだね。鉄と銅、それとガラスくらいかぁ。全然なんにも珍しくもないものばかりじゃないか」
「仕方ありませんな。ですが、うまく採掘ポイントを当てませんと掘り出すことはできませんから、宝探しのようで楽しむことはできるのではないしょうかね」
「まぁ、しょうがないね。えっと、自動採掘補充は800ポイントかぁ」
 僕はダンジョンコアの表示する情報を改めて見てみる。
 採掘場は普通の部屋作成に比べて四倍くらい高いけれど、アトラクションのようなものだとすればこのくらいの投資もしていいのかな。
「まあ、安物の金属や宝石とはいっても、ダンジョン産はマナを含んでおります。それこそ普通のものに比べると利用価値が高いですから、ありといえばありでしょうな」
「バトラーにそう言ってもらえるなら、追加するだけの価値は十分あるね」
「ですな」
「ふええ……。ダンジョンの運営って大変なのですね」
 僕たちの会話を聞いていたラティナさんは、驚いているようだった。
 父親であるロックウェル伯爵様の行動を、本当にまったく見ていなかったってことだよね。一緒の部屋にいたはずなのに、本当にすごいなぁ。
「ですが、プリンセス」
「なに、バトラー」
「さすがに安全に掘り放題にするのでありましたら、何か対価をいただいた方がよいかと思われますぞ。これでは探索者たちが一方的に恩恵を受けてしまいます。対価としてステータスのひとつにデバフがかかるようにした方がよいかと思います」
「あっ、そうか。ダンジョンポイントだよね」
「そうですぞ」
 バトラーの説明を聞いて、僕は思い出していた。
 そうだよ、ダンジョンポイントがなくちゃ、最終的に僕たちは活動できなくなっちゃうものね。それに、復活系のシステムを手に入れるためには500万ポイントも必要だから、なるべく減らすだけというのは避けなくちゃいけないわけだもん。
 そんなわけで、採掘場に入る時に、ステータスの一種類にデバフがかかるように調整しておく。これは探索者限定の機能なので、谷地さんや日下さんにも同じようにかかってしまう。まっ、これはしょうがないかな。
 他のダンジョンへ向かう探索者のことを考えて、持続時間は六時間に設定して部屋は完成した。
「谷地さんたちに報告した後、配信でみんなにお知らせかな?」
「ですな。プリンセスの人気を考えれば、きっと多くの人が来てくれるでしょうな」
「あ、うん。そうだね」
 バトラーが言った「多くの人が来る」という言葉に、僕はちょっと身構えてしまった。
 探索者見習いたちが来る時は、谷地さんに日下さん、それと衣織お姉さんがいるから平気なんだけど、僕は基本的にはコミュ障だから、たくさんの人が来るのはちょっとね……。
 ちらりとラティナさんを見ると、ラティナさんもなんだか緊張した様子だった。
「ら、ラティナさん?」
「あ、いえ。別に怖くないですから。ええ、怖くありませんから……」
 何も言っていないのに、ラティナさんは縮こまりながらぼそぼそと話している。うん、明らかに他人と会うのを警戒しているみたいだね。分かるよ、その気持ち。
 僕たちが話をしていると、僕の携帯電話が鳴り始める。
 なんだろうと覗き込んでみると、衣織お姉さんからだった。
「もしもし、衣織お姉さん?」
『おお、瞬か。今、入口まで管理局の人たちを連れてきている。迎えに来てくれないか?』
 えっ、もう来てるの?
 衣織お姉さんに相談したのは昨日なんだけど……。本当に僕のこととなると行動が早いなぁ。
「分かったよ。僕一人で迎えに行くから待ってて」
『ああ、私がいるから安心して来てくれ』
 ぷつりと通話を終えると、僕は大きなため息をついた。
「衣織殿ですな」
「衣織様ですね」
 バトラーとラティナさんが口を揃えているよ。僕が相手の名前を口走ったこともあるけど、僕の反応で二人とも確証したらしい。分かりやすすぎるんだろうなぁ、うん。
 とりあえず、僕は二人にボス部屋に留まってもらって、一人で衣織お姉さんたちを出迎えに行くことにした。あのショートカットを使うから危険はないしね。
 そんなわけで、行動力の塊な衣織お姉さんを迎えに行く。
 今回は管理局の人たちとどんな話ができるんだろうな。
 新しい部屋を作ったばかりとあって、僕はちょっと心躍らせながらダンジョンの入口に向かっていったよ。