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エンジョイしよう!

ー/ー



 男性とその友達が、喫茶店に到着し、キョロキョロと店内を見渡して指定された席へと向かうと、そこにはエリシアがすでに座って待っていた。彼女は優雅にコーヒーを飲みながら、目を爛々と輝かせて二人を出迎えた。



「待ってましたわよ〜」



 エリシアの横顔は微笑んでいるが、二人の視線は彼女の隣に座る異様な男に釘付けだった。



 全身がメタリックシルバーの異常な男が、まるで違和感など微塵も感じていないかのように、サングラス越しに二人をチラリと見ると、不気味な笑みを浮かべながら無言でパフェを食べている。



 男性と友達は、一瞬視線を交わし、再びメタリックな男に目を戻した。男の存在は異質そのもので、場の空気に重苦しい緊張感が漂う。エリシアは何食わぬ顔で、コーヒーをもう一口飲んでいた。



 二人が席に座るや否や、エリシアは楽しげに話し始めた。



「あら、お友達?いいですわね〜。」

 彼女はにこやかに二人を見渡し、軽く頷く。

「大学生ですの?やっぱり!顔に書いてありましたわよ〜。」

 エリシアの口調はどこか親しげで、二人を試すような、興味津々といった様子だ。

 その隣で、メタリックシルバーの男がパフェのスプーンを口に運びながら、無言でじっと二人を見ている。彼の不気味な笑みが一層際立ち、喫茶店の空気が奇妙に張り詰めていた。

 エリシアはそんな空気を全く気に留めることなく、さらに話を続ける気満々の様子だった。

 エリシアは微笑みながら話を続ける。



「最近贅沢してますの?」



 彼女はそう問いかけたかと思うと、相手の返事を聞くまでもなく、次の言葉を畳みかけるように続けた。



「——え?物価が高い……。そうですわね。なかなか贅沢できませんものね〜。それは辛いですわね〜。」



 エリシアの同情とも取れる口調に、男性とその友達は返答のタイミングをつかめず、ただ頷くばかりだった。その横で、メタリックシルバーの男はスプーンを口から外し、再び無言でパフェを一口食べる。

 エリシアは、そんな二人の様子を楽しんでいるかのように笑顔を浮かべ、まるで対話がすべて自分の掌の中にあるかのような態度を崩さなかった。

 エリシアは急に周囲を見渡して、声をひそめた。彼女の顔には一瞬の真剣さがよぎる。





「……ところで、もし……、月5万円で豪邸に住めてご飯も食べられるっていう物件があったらどうします?」





 その提案に、男性と友達は思わず顔を見合わせる。



 あまりに魅力的な条件だが、何か裏がありそうな気配もする。



 エリシアは、相変わらず爛々とした目で二人を見つめ、さらに言葉を続ける気配を見せた。隣のメタリックシルバーの男は、相変わらず無言でパフェを食べつつ、怪しげな雰囲気を漂わせている。

 この奇妙な提案に、果たしてどんな意図があるのか。エリシアの口からどんな話が続くのか、二人は息を飲みながら耳を傾けた。

 エリシアはスマホを取り出し、にっこりと微笑みながら二人に写真を見せた。



「この子、今は卒業したんですけど……大学3年生からで……、浮いたお金でこれに乗ってますわよ」



 写真には、メルセデスベンツW204の前でピースサインをする若者が写っていた。

 車は光沢のあるボディが輝き、背後には豪邸らしき建物が写り込んでいる。エリシアは何気ない様子でスマホを見せつけているが、その目はどこか挑発的だ。

「月5万で贅沢できちゃうんですのよ。興味ないですか?」

 彼女の提案はますます怪しげだが、魅力的でもあった。

 男性と友達は、エリシアの話がどこに向かうのか、ますます気になっていた。隣でメタリックシルバーの男が微かに笑みを浮かべ、興味深そうに二人を見つめている。



 二人が疑わしげに顔を見合わせていると、隣に座っていたメタリックシルバーの男、ヴァイが突然大袈裟に声を張り上げた。



「おい!エリシア!怪しがってんぜぇ〜!?」



 その声に、周囲の客が一瞬こちらをちらりと見たが、エリシアはまるで気にする様子もなく、あっさりと答える。



「いやいや、これはちゃんと合法なんですわよ!私はただ格安の物件をお勧めしてるだけですわよ〜」



 エリシアの言葉は妙に自信満々で、微笑みながら二人に再び視線を戻した。彼女の態度はいたって軽やかで、まるでとんでもなくお得な情報を教えてあげているだけといった様子だ。

 しかし、ヴァイの不気味な笑みと彼の存在感が、何か裏がありそうな空気を漂わせている。エリシアの提案の真意が何なのか、二人はますます混乱しつつ、次の言葉を待つしかなかった。

 エリシアはじっと二人を見つめ、話を続けた。



「大学生でしたわね。さぞ優秀なんでしょう。ということは……これには裏があると考えたくなるもの。」



 そう言うと、彼女は身を乗り出して声をひそめる。



「えぇ、確かに裏はありますわ。」



 二人は一瞬で緊張感を高め、生唾を飲み込んだ。もしかすると、かなりヤバい話なのかもしれない――。だが、ヴァイの異様な存在感が気になって、席を立つわけにもいかない。



「実は、ただの物件ではないんですのよ。これには特別な条件があって……」



 エリシアの目は怪しげに輝いている。

 ヴァイは隣でニヤリと笑みを浮かべながら、二人の反応を楽しんでいる様子だ。二人は身動きできず、エリシアの次の言葉に意識を集中させるしかなかった。



 突然、ヴァイが勢いよく立ち上がって手を上げた!



 その動きに二人は驚き、思わずびくりと体を震わせる。

 すぐに店員が駆け寄ってきた。ヴァイはお構いなしに大声で注文する。



「シロノワール!あと、苦いコーヒー!」



 ヴァイの強烈な声が店内に響き渡り、他の客たちも一瞬だけこちらに視線を向けるが、すぐにそっぽを向く。緊張した空気に包まれながらも、エリシアは涼しげな表情を崩さずに笑っていた。ヴァイが席に戻ると、二人の視線は自然とエリシアに戻る。彼女は話を続ける気満々だった。



 エリシアは、一瞬間を置いてからゆっくりと話し始めた。

「実は条件があって——」

 二人は緊張に耐えながら息をのむ。ゴクリと唾を飲み込み、今にも飛び出す準備をしている。

「なんと」

 エリシアが一拍置いて、真剣な顔をしながら話を続ける。





「毎日、お掃除や洗濯とか、家事をしていただく。それだけ!」





 二人は呆気に取られた。

 そんなことなのか――いや、それがすべてだというわけではないのかもしれない、と二人は疑念を抱きつつも、エリシアの予想外の答えにどこか拍子抜けしたような表情を浮かべる。

 隣でヴァイがシロノワールが届くのを楽しみにしながら、不敵な笑みを浮かべているのがまた妙に不安をかき立てるのだった。

 エリシアはますます勢いを増し、さらに声をひそめて捲し立てた。

「しかもなんと——」

 そして、周囲に聞こえないように小声で強調する。



「お給料も貰えちゃう……」



 その言葉に、二人は思わず身を乗り出したが、次の瞬間――



「えええええぇ!?何だってええええ!?」



 突然のヴァイの強烈な叫びに、二人は驚いて椅子から転げ落ちそうになった!

 店内の他の客も一瞬そちらに注目し、騒ぎがひとしきり静まるとエリシアは得意げにニヤリと微笑んでいる。ヴァイは驚きを演出したつもりなのか、楽しそうに笑っていたが、二人にはますますこの提案が妙に思えて仕方がなかった。



 エリシアはさらに熱を帯びて話し続けた。



「ですから、もしお給料がね……10万円だったとしますわよ〜。あ、あくまで例え話ですわよ。」



 そう言うやいなや、エリシアはいきなりカバンからフリップボードを取り出し、素早くマジックペンで計算を描き始めた。



 10-5=5



 そして勢いよく——バンッ!とフリップを見せつける。

「ね!5万円はそっくりそのままあなたの儲け!」

 エリシアは得意げな笑顔で二人を見つめる。

 あたかも目の前に飛び込むような好機があるかのように、彼女の瞳は輝いていた。二人はその計算の単純さに若干の違和感を感じつつも、その目の前で掲げられた数字に圧倒されるばかりだった。



 「ええええぇ!?じゃあ一年ってことはよぉ!?」



 ヴァイが突然横槍を入れてきて、興奮気味に問いかける。エリシアはまるで待ってましたと言わんばかりに、何食わぬ顔でフリップに数字を書き加える。



 ——キュッキュッとマジックペンを走らせて、5万円に12を掛けた計算式を描く。



「5 × 12 = 60万円!」

 エリシアがそう告げると、ヴァイがさらに興奮して叫んだ。



「ウッヒョおおおおおおおおおお!」



 ヴァイのテンションが異常に高まり、目がギラギラと輝いている。

 二人はその様子にますます不安を覚え、背筋に冷や汗を感じつつ、エリシアの話を聞き続けるしかなかった。ヴァイの様子はまるで、今にも飛び上がりそうな勢いで、尋常ではない興奮が伝わってきた。

 エリシアは得意げに続ける。



「ね?一日中バイトして、嫌味な店長や客に文句を言われながら狭いワンルームで過ごすか、それともこの豪邸でエンジョイするか、どっちがいいですの?」



 彼女はまたスマホを取り出して、いくつかの写真を二人に見せ始めた。

 バーベキューを楽しむ場面、ビリヤード台で遊んでいる瞬間、そしてバンドの招待で華やかに盛り上がる様子——どれも煌びやかで豪奢な場面ばかりだ。

 二人は写真に映るリッチなライフスタイルを目にして、思わず目を奪われる。



「こんな楽しい生活が待ってるんですのよ〜!」



 エリシアはまるで全てが完璧な選択肢かのように微笑みかける。

 隣のヴァイも、何やら満足そうにうなずきながら二人を見つめている。二人は夢のようなシーンを目の前にして、心の中で不安と興奮が入り混じるのを感じていた。



 「——え?結局これはなんだって?」



 二人がようやく冷静さを取り戻し、エリシアに問いかける。エリシアは、少しだけ間を置き、満面の笑みで答えた。





「私の召使いですわ。」





 その瞬間、ガシャーン!



 二人は驚きのあまり、椅子ごとずっこけた。

 周囲の客も一瞬驚いて振り向くが、エリシアとヴァイは気にする様子もなく、二人のリアクションを楽しんでいる。

 喫茶店に奇妙な静寂が訪れ、ヴァイはニヤニヤとしたままシロノワールを食べ続けている。



次のエピソードへ進む 一杯のかけそば


みんなのリアクション

 男性とその友達が、喫茶店に到着し、キョロキョロと店内を見渡して指定された席へと向かうと、そこにはエリシアがすでに座って待っていた。彼女は優雅にコーヒーを飲みながら、目を爛々と輝かせて二人を出迎えた。
「待ってましたわよ〜」
 エリシアの横顔は微笑んでいるが、二人の視線は彼女の隣に座る異様な男に釘付けだった。
 全身がメタリックシルバーの異常な男が、まるで違和感など微塵も感じていないかのように、サングラス越しに二人をチラリと見ると、不気味な笑みを浮かべながら無言でパフェを食べている。
 男性と友達は、一瞬視線を交わし、再びメタリックな男に目を戻した。男の存在は異質そのもので、場の空気に重苦しい緊張感が漂う。エリシアは何食わぬ顔で、コーヒーをもう一口飲んでいた。
 二人が席に座るや否や、エリシアは楽しげに話し始めた。
「あら、お友達?いいですわね〜。」
 彼女はにこやかに二人を見渡し、軽く頷く。
「大学生ですの?やっぱり!顔に書いてありましたわよ〜。」
 エリシアの口調はどこか親しげで、二人を試すような、興味津々といった様子だ。
 その隣で、メタリックシルバーの男がパフェのスプーンを口に運びながら、無言でじっと二人を見ている。彼の不気味な笑みが一層際立ち、喫茶店の空気が奇妙に張り詰めていた。
 エリシアはそんな空気を全く気に留めることなく、さらに話を続ける気満々の様子だった。
 エリシアは微笑みながら話を続ける。
「最近贅沢してますの?」
 彼女はそう問いかけたかと思うと、相手の返事を聞くまでもなく、次の言葉を畳みかけるように続けた。
「——え?物価が高い……。そうですわね。なかなか贅沢できませんものね〜。それは辛いですわね〜。」
 エリシアの同情とも取れる口調に、男性とその友達は返答のタイミングをつかめず、ただ頷くばかりだった。その横で、メタリックシルバーの男はスプーンを口から外し、再び無言でパフェを一口食べる。
 エリシアは、そんな二人の様子を楽しんでいるかのように笑顔を浮かべ、まるで対話がすべて自分の掌の中にあるかのような態度を崩さなかった。
 エリシアは急に周囲を見渡して、声をひそめた。彼女の顔には一瞬の真剣さがよぎる。
「……ところで、もし……、月5万円で豪邸に住めてご飯も食べられるっていう物件があったらどうします?」
 その提案に、男性と友達は思わず顔を見合わせる。
 あまりに魅力的な条件だが、何か裏がありそうな気配もする。
 エリシアは、相変わらず爛々とした目で二人を見つめ、さらに言葉を続ける気配を見せた。隣のメタリックシルバーの男は、相変わらず無言でパフェを食べつつ、怪しげな雰囲気を漂わせている。
 この奇妙な提案に、果たしてどんな意図があるのか。エリシアの口からどんな話が続くのか、二人は息を飲みながら耳を傾けた。
 エリシアはスマホを取り出し、にっこりと微笑みながら二人に写真を見せた。
「この子、今は卒業したんですけど……大学3年生からで……、浮いたお金でこれに乗ってますわよ」
 写真には、メルセデスベンツW204の前でピースサインをする若者が写っていた。
 車は光沢のあるボディが輝き、背後には豪邸らしき建物が写り込んでいる。エリシアは何気ない様子でスマホを見せつけているが、その目はどこか挑発的だ。
「月5万で贅沢できちゃうんですのよ。興味ないですか?」
 彼女の提案はますます怪しげだが、魅力的でもあった。
 男性と友達は、エリシアの話がどこに向かうのか、ますます気になっていた。隣でメタリックシルバーの男が微かに笑みを浮かべ、興味深そうに二人を見つめている。
 二人が疑わしげに顔を見合わせていると、隣に座っていたメタリックシルバーの男、ヴァイが突然大袈裟に声を張り上げた。
「おい!エリシア!怪しがってんぜぇ〜!?」
 その声に、周囲の客が一瞬こちらをちらりと見たが、エリシアはまるで気にする様子もなく、あっさりと答える。
「いやいや、これはちゃんと合法なんですわよ!私はただ格安の物件をお勧めしてるだけですわよ〜」
 エリシアの言葉は妙に自信満々で、微笑みながら二人に再び視線を戻した。彼女の態度はいたって軽やかで、まるでとんでもなくお得な情報を教えてあげているだけといった様子だ。
 しかし、ヴァイの不気味な笑みと彼の存在感が、何か裏がありそうな空気を漂わせている。エリシアの提案の真意が何なのか、二人はますます混乱しつつ、次の言葉を待つしかなかった。
 エリシアはじっと二人を見つめ、話を続けた。
「大学生でしたわね。さぞ優秀なんでしょう。ということは……これには裏があると考えたくなるもの。」
 そう言うと、彼女は身を乗り出して声をひそめる。
「えぇ、確かに裏はありますわ。」
 二人は一瞬で緊張感を高め、生唾を飲み込んだ。もしかすると、かなりヤバい話なのかもしれない――。だが、ヴァイの異様な存在感が気になって、席を立つわけにもいかない。
「実は、ただの物件ではないんですのよ。これには特別な条件があって……」
 エリシアの目は怪しげに輝いている。
 ヴァイは隣でニヤリと笑みを浮かべながら、二人の反応を楽しんでいる様子だ。二人は身動きできず、エリシアの次の言葉に意識を集中させるしかなかった。
 突然、ヴァイが勢いよく立ち上がって手を上げた!
 その動きに二人は驚き、思わずびくりと体を震わせる。
 すぐに店員が駆け寄ってきた。ヴァイはお構いなしに大声で注文する。
「シロノワール!あと、苦いコーヒー!」
 ヴァイの強烈な声が店内に響き渡り、他の客たちも一瞬だけこちらに視線を向けるが、すぐにそっぽを向く。緊張した空気に包まれながらも、エリシアは涼しげな表情を崩さずに笑っていた。ヴァイが席に戻ると、二人の視線は自然とエリシアに戻る。彼女は話を続ける気満々だった。
 エリシアは、一瞬間を置いてからゆっくりと話し始めた。
「実は条件があって——」
 二人は緊張に耐えながら息をのむ。ゴクリと唾を飲み込み、今にも飛び出す準備をしている。
「なんと」
 エリシアが一拍置いて、真剣な顔をしながら話を続ける。
「毎日、お掃除や洗濯とか、家事をしていただく。それだけ!」
 二人は呆気に取られた。
 そんなことなのか――いや、それがすべてだというわけではないのかもしれない、と二人は疑念を抱きつつも、エリシアの予想外の答えにどこか拍子抜けしたような表情を浮かべる。
 隣でヴァイがシロノワールが届くのを楽しみにしながら、不敵な笑みを浮かべているのがまた妙に不安をかき立てるのだった。
 エリシアはますます勢いを増し、さらに声をひそめて捲し立てた。
「しかもなんと——」
 そして、周囲に聞こえないように小声で強調する。
「お給料も貰えちゃう……」
 その言葉に、二人は思わず身を乗り出したが、次の瞬間――
「えええええぇ!?何だってええええ!?」
 突然のヴァイの強烈な叫びに、二人は驚いて椅子から転げ落ちそうになった!
 店内の他の客も一瞬そちらに注目し、騒ぎがひとしきり静まるとエリシアは得意げにニヤリと微笑んでいる。ヴァイは驚きを演出したつもりなのか、楽しそうに笑っていたが、二人にはますますこの提案が妙に思えて仕方がなかった。
 エリシアはさらに熱を帯びて話し続けた。
「ですから、もしお給料がね……10万円だったとしますわよ〜。あ、あくまで例え話ですわよ。」
 そう言うやいなや、エリシアはいきなりカバンからフリップボードを取り出し、素早くマジックペンで計算を描き始めた。
 10-5=5
 そして勢いよく——バンッ!とフリップを見せつける。
「ね!5万円はそっくりそのままあなたの儲け!」
 エリシアは得意げな笑顔で二人を見つめる。
 あたかも目の前に飛び込むような好機があるかのように、彼女の瞳は輝いていた。二人はその計算の単純さに若干の違和感を感じつつも、その目の前で掲げられた数字に圧倒されるばかりだった。
 「ええええぇ!?じゃあ一年ってことはよぉ!?」
 ヴァイが突然横槍を入れてきて、興奮気味に問いかける。エリシアはまるで待ってましたと言わんばかりに、何食わぬ顔でフリップに数字を書き加える。
 ——キュッキュッとマジックペンを走らせて、5万円に12を掛けた計算式を描く。
「5 × 12 = 60万円!」
 エリシアがそう告げると、ヴァイがさらに興奮して叫んだ。
「ウッヒョおおおおおおおおおお!」
 ヴァイのテンションが異常に高まり、目がギラギラと輝いている。
 二人はその様子にますます不安を覚え、背筋に冷や汗を感じつつ、エリシアの話を聞き続けるしかなかった。ヴァイの様子はまるで、今にも飛び上がりそうな勢いで、尋常ではない興奮が伝わってきた。
 エリシアは得意げに続ける。
「ね?一日中バイトして、嫌味な店長や客に文句を言われながら狭いワンルームで過ごすか、それともこの豪邸でエンジョイするか、どっちがいいですの?」
 彼女はまたスマホを取り出して、いくつかの写真を二人に見せ始めた。
 バーベキューを楽しむ場面、ビリヤード台で遊んでいる瞬間、そしてバンドの招待で華やかに盛り上がる様子——どれも煌びやかで豪奢な場面ばかりだ。
 二人は写真に映るリッチなライフスタイルを目にして、思わず目を奪われる。
「こんな楽しい生活が待ってるんですのよ〜!」
 エリシアはまるで全てが完璧な選択肢かのように微笑みかける。
 隣のヴァイも、何やら満足そうにうなずきながら二人を見つめている。二人は夢のようなシーンを目の前にして、心の中で不安と興奮が入り混じるのを感じていた。
 「——え?結局これはなんだって?」
 二人がようやく冷静さを取り戻し、エリシアに問いかける。エリシアは、少しだけ間を置き、満面の笑みで答えた。
「私の召使いですわ。」
 その瞬間、ガシャーン!
 二人は驚きのあまり、椅子ごとずっこけた。
 周囲の客も一瞬驚いて振り向くが、エリシアとヴァイは気にする様子もなく、二人のリアクションを楽しんでいる。
 喫茶店に奇妙な静寂が訪れ、ヴァイはニヤニヤとしたままシロノワールを食べ続けている。