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助けて!エリシア!

ー/ー



 戦士風の男たちは、醜悪なゴブリンを弄んでいた。



 ゴブリンはボール代わりに蹴られたり、逆さまに吊るされたりと、彼らの遊び道具にされていた。ゴブリンはクッソ汚い声で喚き散らし、必死に抵抗しようとするが、力の差は明らかだった。



 その時、突然空気が変わった。



「お待ちなさい!」



 透き通るような凛とした声が響き、戦士たちは一瞬動きを止めた。エリシアが姿を現し、その美しい佇まいと冷ややかな視線で男たちを見下ろした。



「そろそろ、止めていただけます?」



 エリシアは穏やかながらも有無を言わせぬ態度で男たちに近づき、軽く肩に手を置いて押し出した。



「じゃあこの辺で」



 そう言いながら、彼女は男たちを優雅に送り出す。戦士たちはなぜか抵抗することなく、静かに去っていった。



 帰り際、エリシアは軽く手を振りながら、「後で電話しますわ」と言い残した。



 その言葉に、ゴブリンは首をかしげるが、意味が全く分からないまま、ただ呆然とする。



 エリシアはゴブリンの傍に寄り、ベンチに座った。



 しばらくの間、二人は黙って座っていたが、エリシアはそのまま静かにゴブリンと時間を共有するように、柔らかい表情で景色を見つめていた。

 ゴブリンはしばらくエリシアと一緒にベンチに座り、落ち着きを取り戻した。



 そして、エリシアの方を見上げて感謝の気持ちを口にした。



「お、俺を助けてくれて…ありがとよ…。あんた、強そうだな。」



 エリシアは微笑みを浮かべ、ゴブリンの言葉を静かに受け止めた。



「どういたしまして。」



 ゴブリンはふと興味を持ち、エリシアが持っているカバンを指差して尋ねた。



「それで、そのカバンに何が入ってるんだ?」



 エリシアは一瞬考え込み、少し照れたような表情を浮かべながら答えた。



「……パンシロン。」



 その答えを聞いたゴブリンは、一瞬呆然とした後、再び首をかしげる。



 エリシアの言葉の意味はゴブリンにはまるで理解できなかったが、彼女の優しさと落ち着いた態度に、再び感謝の気持ちが胸に湧き上がった。

 ゴブリンはエリシアとベンチに座ったまま、しばらく沈黙していたが、やがて悩みを打ち明けるように口を開いた。



「俺たちゴブリンは、いつも人間にいじめられてばっかりなんだ…。どうしてこんなに弱いんだろう…。もう疲れちまったよ。」



 ゴブリンの声には、深い疲労と絶望が滲んでいた。エリシアはゴブリンの言葉を聞きながらも、どこか興味なさそうな表情を崩さないまま、軽く肩をすくめた。



「魔物らしくないんですわ。もっと筋トレでもしたら?」



 彼女は淡々とそう言い、空を眺めながら軽く手を振る。エリシアの言葉に特別な感情は込められておらず、アドバイスというよりはただの提案に過ぎなかった。

 ゴブリンはその答えを受けて、しばらく考え込むような素振りを見せたが、エリシアのあっさりとした態度に少し拍子抜けした様子だった。



 ゴブリンはエリシアの提案をしばらく考えた後、ふと目を輝かせて、エリシアが持っていた大きな杖に目を留めた。



「手っ取り早く強くなりたいんだ。俺もあんなのがあれば…」



 ゴブリンはエリシアの杖を指差し、憧れの眼差しを向けた。

 杖は立派で重厚なデザインで、いかにも強力な魔力を秘めていそうな雰囲気を漂わせていた。



 エリシアはその言葉に少し困ったような表情を浮かべ、口をモゴモゴさせながら答えた。



「これは……まあ、セカストで買ったやつやし。」



 その言葉に、ゴブリンは一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに強そうに見える杖に再び目を奪われた。

 彼にとって「セカスト」という言葉の意味は全く分からなかったが、エリシアが持つその杖は、ゴブリンには途方もなく強力なものに思えた。

 ゴブリンはただ、それが自分にも手に入るかのように、憧れの目でエリシアを見つめていた。



 エリシアはゴブリンの熱い視線を感じ取り、ふと何かを思いついたように微笑んだ。



「そうですわね、この杖、あなたに譲ってあげてもいいですわ。」



 ゴブリンは驚いて目を見開いた。

「えっ、本当に!?俺に?」



 エリシアは軽く頷きながら、杖を見つめた。



「まあ、本当は100,000Gで買ったものなんですけどね。でも、もう黄ばんでるし、5,000Gでいいですわよ。」



 エリシアは淡々とした調子で言い放つと、再び視線をゴブリンに戻した。ゴブリンはその言葉に驚きながらも、少しの間考え込み、ポケットから古びた財布を取り出した。



「5,000Gか……でも、強くなれるなら……」



 ゴブリンは小さな財布を開いて、中にあるわずかな金額を数えながら悩んでいた。彼にとって5,000Gは決して安くない額だが、エリシアの杖が持つ力に魅了され、どうするべきか決めかねていた。

 ゴブリンが悩みながら財布の中を覗き込んでいると、エリシアはその様子を見て、待ちきれない様子でさっと手を伸ばした。



 彼の手に握られていたお札を、もぎ取るようにして引っ張ると、満足げに頷きながら杖をゴブリンの前に置いた。



「これでお取引成立ですわね。どうぞ、大切にお使いなさい。」



 エリシアはそう言いながら、杖をそのままゴブリンに押しつけると、特に何も言わずにくるりと身を翻して、その場をさっさと後にした。



 ゴブリンは、エリシアが去っていくのを呆然と見つめながら、手に残った杖を見下ろした。



 彼は自分が本当に強くなれるのかどうか半信半疑だったが、手にした杖の重みとエリシアの自信に満ちた態度に、少し期待を抱いていた。



 次の日、ゴブリンは再び戦士たちに絡まれていた。



 しかし、今回は違った。彼は意気揚々とあの杖を掲げ、戦士たちに向かって叫んだ。



「今までの俺とは思うなよ!」



 そう言いながら、ゴブリンは勢いよく杖を振り下ろした。



 だが、次の瞬間、杖は脆くも粉々に砕け散った。



 紫外線で劣化したプラスチック製の杖は、ゴブリンの期待を裏切り、あっという間に使い物にならなくなってしまったのだ。



 戦士たちは一瞬呆気に取られたが、すぐに笑いながらゴブリンを逆さ吊りにした。ゴブリンは結局、またいつものようにいじめられる羽目になった。

 その光景を通りすがりに見たエリシアは、半笑いを浮かべながら眺めていた。



「ふっ、ふふ……」



 彼女は特に助けるでもなく、その場を通り過ぎていった。ゴブリンは虚しくも逆さ吊りになりながら、自分の運命を嘆くしかなかった。


次のエピソードへ進む 街を守れ


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 戦士風の男たちは、醜悪なゴブリンを弄んでいた。
 ゴブリンはボール代わりに蹴られたり、逆さまに吊るされたりと、彼らの遊び道具にされていた。ゴブリンはクッソ汚い声で喚き散らし、必死に抵抗しようとするが、力の差は明らかだった。
 その時、突然空気が変わった。
「お待ちなさい!」
 透き通るような凛とした声が響き、戦士たちは一瞬動きを止めた。エリシアが姿を現し、その美しい佇まいと冷ややかな視線で男たちを見下ろした。
「そろそろ、止めていただけます?」
 エリシアは穏やかながらも有無を言わせぬ態度で男たちに近づき、軽く肩に手を置いて押し出した。
「じゃあこの辺で」
 そう言いながら、彼女は男たちを優雅に送り出す。戦士たちはなぜか抵抗することなく、静かに去っていった。
 帰り際、エリシアは軽く手を振りながら、「後で電話しますわ」と言い残した。
 その言葉に、ゴブリンは首をかしげるが、意味が全く分からないまま、ただ呆然とする。
 エリシアはゴブリンの傍に寄り、ベンチに座った。
 しばらくの間、二人は黙って座っていたが、エリシアはそのまま静かにゴブリンと時間を共有するように、柔らかい表情で景色を見つめていた。
 ゴブリンはしばらくエリシアと一緒にベンチに座り、落ち着きを取り戻した。
 そして、エリシアの方を見上げて感謝の気持ちを口にした。
「お、俺を助けてくれて…ありがとよ…。あんた、強そうだな。」
 エリシアは微笑みを浮かべ、ゴブリンの言葉を静かに受け止めた。
「どういたしまして。」
 ゴブリンはふと興味を持ち、エリシアが持っているカバンを指差して尋ねた。
「それで、そのカバンに何が入ってるんだ?」
 エリシアは一瞬考え込み、少し照れたような表情を浮かべながら答えた。
「……パンシロン。」
 その答えを聞いたゴブリンは、一瞬呆然とした後、再び首をかしげる。
 エリシアの言葉の意味はゴブリンにはまるで理解できなかったが、彼女の優しさと落ち着いた態度に、再び感謝の気持ちが胸に湧き上がった。
 ゴブリンはエリシアとベンチに座ったまま、しばらく沈黙していたが、やがて悩みを打ち明けるように口を開いた。
「俺たちゴブリンは、いつも人間にいじめられてばっかりなんだ…。どうしてこんなに弱いんだろう…。もう疲れちまったよ。」
 ゴブリンの声には、深い疲労と絶望が滲んでいた。エリシアはゴブリンの言葉を聞きながらも、どこか興味なさそうな表情を崩さないまま、軽く肩をすくめた。
「魔物らしくないんですわ。もっと筋トレでもしたら?」
 彼女は淡々とそう言い、空を眺めながら軽く手を振る。エリシアの言葉に特別な感情は込められておらず、アドバイスというよりはただの提案に過ぎなかった。
 ゴブリンはその答えを受けて、しばらく考え込むような素振りを見せたが、エリシアのあっさりとした態度に少し拍子抜けした様子だった。
 ゴブリンはエリシアの提案をしばらく考えた後、ふと目を輝かせて、エリシアが持っていた大きな杖に目を留めた。
「手っ取り早く強くなりたいんだ。俺もあんなのがあれば…」
 ゴブリンはエリシアの杖を指差し、憧れの眼差しを向けた。
 杖は立派で重厚なデザインで、いかにも強力な魔力を秘めていそうな雰囲気を漂わせていた。
 エリシアはその言葉に少し困ったような表情を浮かべ、口をモゴモゴさせながら答えた。
「これは……まあ、セカストで買ったやつやし。」
 その言葉に、ゴブリンは一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに強そうに見える杖に再び目を奪われた。
 彼にとって「セカスト」という言葉の意味は全く分からなかったが、エリシアが持つその杖は、ゴブリンには途方もなく強力なものに思えた。
 ゴブリンはただ、それが自分にも手に入るかのように、憧れの目でエリシアを見つめていた。
 エリシアはゴブリンの熱い視線を感じ取り、ふと何かを思いついたように微笑んだ。
「そうですわね、この杖、あなたに譲ってあげてもいいですわ。」
 ゴブリンは驚いて目を見開いた。
「えっ、本当に!?俺に?」
 エリシアは軽く頷きながら、杖を見つめた。
「まあ、本当は100,000Gで買ったものなんですけどね。でも、もう黄ばんでるし、5,000Gでいいですわよ。」
 エリシアは淡々とした調子で言い放つと、再び視線をゴブリンに戻した。ゴブリンはその言葉に驚きながらも、少しの間考え込み、ポケットから古びた財布を取り出した。
「5,000Gか……でも、強くなれるなら……」
 ゴブリンは小さな財布を開いて、中にあるわずかな金額を数えながら悩んでいた。彼にとって5,000Gは決して安くない額だが、エリシアの杖が持つ力に魅了され、どうするべきか決めかねていた。
 ゴブリンが悩みながら財布の中を覗き込んでいると、エリシアはその様子を見て、待ちきれない様子でさっと手を伸ばした。
 彼の手に握られていたお札を、もぎ取るようにして引っ張ると、満足げに頷きながら杖をゴブリンの前に置いた。
「これでお取引成立ですわね。どうぞ、大切にお使いなさい。」
 エリシアはそう言いながら、杖をそのままゴブリンに押しつけると、特に何も言わずにくるりと身を翻して、その場をさっさと後にした。
 ゴブリンは、エリシアが去っていくのを呆然と見つめながら、手に残った杖を見下ろした。
 彼は自分が本当に強くなれるのかどうか半信半疑だったが、手にした杖の重みとエリシアの自信に満ちた態度に、少し期待を抱いていた。
 次の日、ゴブリンは再び戦士たちに絡まれていた。
 しかし、今回は違った。彼は意気揚々とあの杖を掲げ、戦士たちに向かって叫んだ。
「今までの俺とは思うなよ!」
 そう言いながら、ゴブリンは勢いよく杖を振り下ろした。
 だが、次の瞬間、杖は脆くも粉々に砕け散った。
 紫外線で劣化したプラスチック製の杖は、ゴブリンの期待を裏切り、あっという間に使い物にならなくなってしまったのだ。
 戦士たちは一瞬呆気に取られたが、すぐに笑いながらゴブリンを逆さ吊りにした。ゴブリンは結局、またいつものようにいじめられる羽目になった。
 その光景を通りすがりに見たエリシアは、半笑いを浮かべながら眺めていた。
「ふっ、ふふ……」
 彼女は特に助けるでもなく、その場を通り過ぎていった。ゴブリンは虚しくも逆さ吊りになりながら、自分の運命を嘆くしかなかった。