表示設定
表示設定
目次 目次




ちがうでござるよ

ー/ー




 エリシアは新しい冒険の拠点として借りた物件で一息ついていた。






 古びた木造の家だが、外敵から身を守るには十分な場所だと思っていた。しかし、夜になると天井裏から奇妙な音が響いてきた。






「カサカサ……ゴトッ……」






 エリシアはその音に眉をひそめ、天井を見上げる。


「何かいる……?」






 不安に駆られつつも、冷静に魔術師としての準備を整える。






 だが次の瞬間、天井板がいきなりバキッと割れて、何者かが真っ逆さまに落ちてきた。






「どわああああっ!」






 エリシアは驚いて後ろに跳ねる。床に激突したのは、全身黒装束に身を包んだ、覆面を被った人間。まさに忍者そのものだ。






「なんなのよ、あなた!」






 忍者は痛そうに頭をさすりながら立ち上がり、深々とお辞儀をした。


「いや、拙者は忍者ではござらんよ」






 しかし、天井からはさらに手裏剣やロープ、煙玉など、典型的な忍者道具が次々と降り注いでくる。エリシアは冷静にそれらを避け、男を疑いの目で睨む。






「ちょっと、どう見ても忍者ですわよ!」






 忍者は慌てて手を振り、必死に弁解する。






「い、いえ、拙者は違うでござる!これはただの……その……」






「忍者以外の何者ですの!?手裏剣まで持ってるじゃありませんこと!」






 男はどこか居心地悪そうにしながらも、断固として主張を繰り返す。






「忍者ではござらん!ただの……あ、アクション好きの者でござる!」






 エリシアは呆れ顔で男を見つめた。どう見ても怪しい男の言い訳を信じる気にはなれないが、突っ込むのも面倒くさいとばかりに、彼を無視して部屋の掃除を再開することにした。






 ——その後。






 エリシアはご飯を作り終えて、食器を棚に戻そうとしていた。丁寧に洗い上げた皿を棚の奥に戻すため、棚の扉を開けたその瞬間——。






 ガラガラッ!






 棚の中から何かが飛び出してきた。






「うわっ!」






 驚いて飛び退いたエリシアの目の前に現れたのは、またしても全身黒装束に身を包んだ男、そう、忍者だった。






「何でこんなところにいるんですの!?」






 男は冷静に一歩前に出て、深々と頭を下げた。


「いや、拙者は忍者ではござらぬ」






 エリシアは目を見開いて男を睨みつけた。さっきも似たようなことを言っていたような……。






「いやいや、どこからどう見ても忍者ですわよ!棚に隠れている時点で十分怪しいですし!」






 男はその言葉に怯むことなく、きっぱりと否定する。






「棚が少し狭かったでござるが……拙者は忍者ではござらん。これはただの偶然でござる!」






 エリシアは呆れ返りつつ、ため息をついた。






「もう、忍者でもなんでもいいですわ。とにかくここから出て行きなさい!食器を戻せませんの!」






 男は恐縮したように、手裏剣や忍者道具を手早く片付けると、またもや深々と頭を下げて棚から姿を消した。






 エリシアは、棚をじっと見つめ、慎重に食器を棚に戻した。男の姿はもう見えなかったが、妙な違和感が残る。忍者ではないと言い張るその男、いったい何者なのだろうか……。






 エリシアは夕食を終えて、テレビの前でくつろいでいた。






 テレビ台の上にはいくつかのDVDが並んでおり、その中でも特にお気に入りの「めっちゃええ感じvol2」を見ようと決めた。






「さあ、これでも見てリラックスしますわ」






 彼女はテレビ台の引き出しに手を伸ばし、DVDを取り出そうとした。






 ガラガラ!






 引き出しの中から、またもや黒装束の男が現れた。






 狭い引き出しの中から、何とかして身を潜めていたらしい。






「またですの!?」






 男は少し戸惑った様子で、再び頭を下げた。


「拙者は忍者では……」






 しかし、言い終わる前にエリシアが勢いよく声を張り上げた。






「ええねん!もう!出ていってくださいまし!」






 男は驚いた表情を見せながら、またしても頭を下げ、静かに引き出しから出て行った。


 エリシアは肩をすくめ、ため息をつきながら、ようやく「めっちゃええ感じvol2」のDVDを手に取った。






「なんなんですの、この家……」






 エリシアは、忍者が潜んでいないか警戒しつつ、DVDを再生してソファに腰を下ろした。テレビ画面に映る映像に目を向けながら、今度こそリラックスしようと心に決めた。






 エリシアは、気を取り直してビールでも飲んでリラックスしようと冷蔵庫に向かった。






 冷蔵庫の扉を開けると、冷たい空気がキッチンに漂い、彼女は目を細めた。






「さあ、ビールを……」






 パタン……






 冷蔵庫の中から、不自然な音がした。






「え……?」






 その瞬間、冷蔵庫の棚の間に身を潜めていた忍者が、全身を震わせながら姿を現した。






 寒さで歯がカチカチと鳴り、顔色も青ざめている。






「せ、せせ拙者はははは……に、ににに忍者じゃじゃでででではごごごご」






 エリシアはあまりの状況に一瞬絶句したが、すぐに呆れた顔で冷蔵庫を指差した。






「はよでろや!凍死しかかってますわよ!」






 忍者は震えながら冷蔵庫から這い出し、エリシアの言葉に従うように急いでその場を去った。






「ったく、次は冷凍庫にでもいるんじゃありませんの……?」






 エリシアはため息をつきながら、ようやくビールを取り出し、一口飲んで気を取り直した。






 エリシアは、ようやく一息ついて風呂に入ろうと浴室に向かった。






 疲れた体を癒そうと湯船を眺めると、湯の表面から一本の竹の筒が突き出ているのを発見した。






「……モロバレですわよ」






 呆れたエリシアは、湯船に手を突っ込んで忍者を引き上げようとしたが、予想外のことに誰もいなかった。






 湯の中にあるのは竹の筒だけで、忍者の姿はどこにも見当たらない。筒だけがポツリと浮かび、しばらくそのまま静かに揺れていた。






「えぇ……?」






 エリシアは風呂から上がり、髪をタオルで拭きながらリビングに戻ると、机の上に置いた賃貸契約書が目に入った。


 ふと気になり、契約書を手に取り内容を再確認する。






「セキュリティ万全……ですわね」






 そう書かれた文言に安心しつつ、視線を下へと移していくと、契約書の一番下に小さく何かが書かれているのに気がついた。エリシアは目を細めてその文字を読み取る。






「……事故物件?」






 その言葉を口にした瞬間、エリシアは不意に背筋に寒気を感じた。


「な、なんですのこれ……」






 エリシアは、その一言が頭から離れず、思わず部屋を見回すが、特に変わった様子はない。しかし、どこか得体の知れない不安が心に残り、エリシアは不安げに賃貸契約書を見つめたまま、その場に立ち尽くした。


次のエピソードへ進む 究極と至高と


みんなのリアクション


 エリシアは新しい冒険の拠点として借りた物件で一息ついていた。
 古びた木造の家だが、外敵から身を守るには十分な場所だと思っていた。しかし、夜になると天井裏から奇妙な音が響いてきた。
「カサカサ……ゴトッ……」
 エリシアはその音に眉をひそめ、天井を見上げる。
「何かいる……?」
 不安に駆られつつも、冷静に魔術師としての準備を整える。
 だが次の瞬間、天井板がいきなりバキッと割れて、何者かが真っ逆さまに落ちてきた。
「どわああああっ!」
 エリシアは驚いて後ろに跳ねる。床に激突したのは、全身黒装束に身を包んだ、覆面を被った人間。まさに忍者そのものだ。
「なんなのよ、あなた!」
 忍者は痛そうに頭をさすりながら立ち上がり、深々とお辞儀をした。
「いや、拙者は忍者ではござらんよ」
 しかし、天井からはさらに手裏剣やロープ、煙玉など、典型的な忍者道具が次々と降り注いでくる。エリシアは冷静にそれらを避け、男を疑いの目で睨む。
「ちょっと、どう見ても忍者ですわよ!」
 忍者は慌てて手を振り、必死に弁解する。
「い、いえ、拙者は違うでござる!これはただの……その……」
「忍者以外の何者ですの!?手裏剣まで持ってるじゃありませんこと!」
 男はどこか居心地悪そうにしながらも、断固として主張を繰り返す。
「忍者ではござらん!ただの……あ、アクション好きの者でござる!」
 エリシアは呆れ顔で男を見つめた。どう見ても怪しい男の言い訳を信じる気にはなれないが、突っ込むのも面倒くさいとばかりに、彼を無視して部屋の掃除を再開することにした。
 ——その後。
 エリシアはご飯を作り終えて、食器を棚に戻そうとしていた。丁寧に洗い上げた皿を棚の奥に戻すため、棚の扉を開けたその瞬間——。
 ガラガラッ!
 棚の中から何かが飛び出してきた。
「うわっ!」
 驚いて飛び退いたエリシアの目の前に現れたのは、またしても全身黒装束に身を包んだ男、そう、忍者だった。
「何でこんなところにいるんですの!?」
 男は冷静に一歩前に出て、深々と頭を下げた。
「いや、拙者は忍者ではござらぬ」
 エリシアは目を見開いて男を睨みつけた。さっきも似たようなことを言っていたような……。
「いやいや、どこからどう見ても忍者ですわよ!棚に隠れている時点で十分怪しいですし!」
 男はその言葉に怯むことなく、きっぱりと否定する。
「棚が少し狭かったでござるが……拙者は忍者ではござらん。これはただの偶然でござる!」
 エリシアは呆れ返りつつ、ため息をついた。
「もう、忍者でもなんでもいいですわ。とにかくここから出て行きなさい!食器を戻せませんの!」
 男は恐縮したように、手裏剣や忍者道具を手早く片付けると、またもや深々と頭を下げて棚から姿を消した。
 エリシアは、棚をじっと見つめ、慎重に食器を棚に戻した。男の姿はもう見えなかったが、妙な違和感が残る。忍者ではないと言い張るその男、いったい何者なのだろうか……。
 エリシアは夕食を終えて、テレビの前でくつろいでいた。
 テレビ台の上にはいくつかのDVDが並んでおり、その中でも特にお気に入りの「めっちゃええ感じvol2」を見ようと決めた。
「さあ、これでも見てリラックスしますわ」
 彼女はテレビ台の引き出しに手を伸ばし、DVDを取り出そうとした。
 ガラガラ!
 引き出しの中から、またもや黒装束の男が現れた。
 狭い引き出しの中から、何とかして身を潜めていたらしい。
「またですの!?」
 男は少し戸惑った様子で、再び頭を下げた。
「拙者は忍者では……」
 しかし、言い終わる前にエリシアが勢いよく声を張り上げた。
「ええねん!もう!出ていってくださいまし!」
 男は驚いた表情を見せながら、またしても頭を下げ、静かに引き出しから出て行った。
 エリシアは肩をすくめ、ため息をつきながら、ようやく「めっちゃええ感じvol2」のDVDを手に取った。
「なんなんですの、この家……」
 エリシアは、忍者が潜んでいないか警戒しつつ、DVDを再生してソファに腰を下ろした。テレビ画面に映る映像に目を向けながら、今度こそリラックスしようと心に決めた。
 エリシアは、気を取り直してビールでも飲んでリラックスしようと冷蔵庫に向かった。
 冷蔵庫の扉を開けると、冷たい空気がキッチンに漂い、彼女は目を細めた。
「さあ、ビールを……」
 パタン……
 冷蔵庫の中から、不自然な音がした。
「え……?」
 その瞬間、冷蔵庫の棚の間に身を潜めていた忍者が、全身を震わせながら姿を現した。
 寒さで歯がカチカチと鳴り、顔色も青ざめている。
「せ、せせ拙者はははは……に、ににに忍者じゃじゃでででではごごごご」
 エリシアはあまりの状況に一瞬絶句したが、すぐに呆れた顔で冷蔵庫を指差した。
「はよでろや!凍死しかかってますわよ!」
 忍者は震えながら冷蔵庫から這い出し、エリシアの言葉に従うように急いでその場を去った。
「ったく、次は冷凍庫にでもいるんじゃありませんの……?」
 エリシアはため息をつきながら、ようやくビールを取り出し、一口飲んで気を取り直した。
 エリシアは、ようやく一息ついて風呂に入ろうと浴室に向かった。
 疲れた体を癒そうと湯船を眺めると、湯の表面から一本の竹の筒が突き出ているのを発見した。
「……モロバレですわよ」
 呆れたエリシアは、湯船に手を突っ込んで忍者を引き上げようとしたが、予想外のことに誰もいなかった。
 湯の中にあるのは竹の筒だけで、忍者の姿はどこにも見当たらない。筒だけがポツリと浮かび、しばらくそのまま静かに揺れていた。
「えぇ……?」
 エリシアは風呂から上がり、髪をタオルで拭きながらリビングに戻ると、机の上に置いた賃貸契約書が目に入った。
 ふと気になり、契約書を手に取り内容を再確認する。
「セキュリティ万全……ですわね」
 そう書かれた文言に安心しつつ、視線を下へと移していくと、契約書の一番下に小さく何かが書かれているのに気がついた。エリシアは目を細めてその文字を読み取る。
「……事故物件?」
 その言葉を口にした瞬間、エリシアは不意に背筋に寒気を感じた。
「な、なんですのこれ……」
 エリシアは、その一言が頭から離れず、思わず部屋を見回すが、特に変わった様子はない。しかし、どこか得体の知れない不安が心に残り、エリシアは不安げに賃貸契約書を見つめたまま、その場に立ち尽くした。