巻けば尊し白百合の花(前編)
ー/ー タワーへの初出勤の日。
仕事が始まるのは日没からだが、モチコは余裕を持って、まだ日が高いうちに向かうことにした。
魔動トロッコをタワーの最寄り駅で降りて、海のほうへ歩いていく。
海岸線まで着くと、海に浮かぶ島が見えた。
「いつ見ても、亀みたいでかわいいな」
島のシルエットは、海に浮かんだ大きな亀のようだ。
ちょうど甲羅のてっぺんに灯台が乗っかっていた。
島へ渡るための、大きな橋がある。
空を飛べる魔女以外は、この橋を渡ってタワーへ向かうのだ。
タワーのある島の頂上までは、たくさんの階段を上る必要があるが、仕事の準備運動だと思えばちょうどいい感じだった。
「ふう、やっと着いた」
頂上に着くと、2階建ての大きな建物が見えた。
その建物から、にょきっとタワーが生えているような設計になっている。
建物の入口にあるプレートには、白鳥のエンブレムとともに『シグナス』と刻まれていた。
シグナスとは、夏の星座のひとつである、白鳥座を表す言葉だ。
そして、この街で台風と戦う組織の名称でもある。
白鳥座の名のとおり、台風シーズンの初夏から晩秋にかけて空に輝き、この街を守るのだ。
「こんにちは! シグナスへようこそ。本日はどのようなご用件ですか?」
建物に入ると、すぐに受付のお姉さんがさわやかな声で尋ねてきた。
モチコはちょっと緊張しながら言葉を返す。
「あ、あの。今日からこちらで働くことになった、モチコ・カザミモリという者なのですが……」
「はい、伺っております。あちらへどうぞ!」
さわやかに手で示された方に目を向けると、知っている顔があった。
「やほ〜。モッチー、こっちだよお〜」
モチコは、そこで待っていたシズゥに駆け寄る。
「おシズさん、よろしくお願いします」
「はいよろしく〜。じゃ、とりあえず待機室にいこか〜」
シズゥはそう言うと、シグナスの建物の中を歩きだした。
モチコもあとについて歩く。
中は広いオフィスになっていて、たくさんの人が色々な仕事をしているようだった。
「このへんが気象データをまとめてるチーム。あっちは設備とか備品を管理するチーム。あの奥は予算管理してる人たちね〜」
シズゥの説明を聞きながら、モチコも右へ左へと首を動かす。
「ちょっとずつ覚えていけばいいから〜。んで、ここが私たちの待機室だよ〜」
建物のいちばん奥、ちょうどタワーの真下にあたる部分が、待機室になっていた。
ドアを開けて中に入ると、いくつかのテーブルとイスが並んでいる。
そのひとつに、リサが座って書類に目を通していた。
「モッチーが来たよ〜」
シズゥの声かけに、リサが顔を上げる。
「モチコちゃん、いらっしゃい」
「リサさん、よろしくお願いします」
リサに促されて、モチコはリサの向かいの席に座る。
待機室はそこそこの広さがあった。
並んでいるテーブルとイスは固定席ではなく、そのとき空いている席を使うスタイルのようだ。
部屋の中央にはタワーへと登っていく螺旋階段がある。
奥の方にはシャワーや仮眠室もあるようだった。
待機室の中を見回したあと、モチコは尋ねる。
「先輩……えっと、ミライア先輩は、まだ来てないですか?」
「そのうち来ると思うわ。いつも時間ギリギリに入って来るから」
リサはそう答えると、手に持っていた書類をテーブルに置いて、モチコの方を見た。
「仕事まで時間もあるし、今のうちに、モチコちゃんに色々と説明しておきましょうか」
「はい。ぜひお願いします」
「私は必要なものを取ってくるねえ〜」
シズゥはそう言うと部屋の奥へと消えていった。
「あらためて。モチコちゃん、シグナスへようこそ」
「はい、今日からがんばります」
「知っていると思うけれど、シグナスは、台風からこの街を守るために作られた組織なの」
「はい」
「普段は天気を観測したり、街の防災活動を行っているわ。台風が接近したときには、台風警告信号の発令と、台風への攻撃を行うの」
モチコは、先日ミライアのホウキに乗った時のことを思い出した。
あれがまさに台風への攻撃だ。
その後のリサの説明によると、シグナスは営利目的ではなく街の防災に関わる組織のため、運営資金は主に税金と、街の貴族からの寄付金、それに北の王都からの交付金だという。
「北の王都からも資金が出ているんですね」
「もし台風が強いままこの街を通り過ぎて、王都まで行ってしまったら、確実に甚大な被害が出るわ。王都を守るのも、私たちのミッションなの」
確かに、人口が桁違いに多い王都に台風が直撃すれば、大変なことになる。
この街はちょうど台風の通り道になっているので、この街と北の王都を守るためには、シグナスの存在が必要不可欠だろう。
「私たちは4人1組のチームになっていて、各チームが交代で任務にあたっているわ」
「リサさんと、おシズさんと、ミライア先輩と、私……の4人チームですか?」
「そう。今は全部で6つのチームがあるの。そのうち5つが日勤で、私たちが唯一の夜勤チームよ」
「それだと、うちのチームが休みの日の夜勤はどうしてるんですか?」
「日勤チームのどれかが、交代で夜勤に入ることになっているわ」
「なるほど。夜勤専門は、私たちだけなんですね」
リサと話しているところに、のんびりした声が飛び込んできた。
「そうだよ〜。貴重な夜勤メンバーに加わってくれたモッチーは、我らの救世主だね〜」
シズゥはそう言いながら、何かを手に持って戻ってきた。
「救世主モッチーに、我らのメンバーである証を授けよう〜」
シズゥが持ってきたのは、シグナスの制服だった。
たたまれた制服がモチコに手渡される。
「服のサイズはバッチリ合わせておいたから〜」
「え? 私のサイズなんて教えましたっけ?」
「モッチーのことなら何でも知ってるよお〜。髪の色、目の色、メガネの度数、身長、体重、足の大きさ、あとスリーサイズとか〜」
「な、何で知ってるんですか……?」
「ん~? 私はいろいろ知ってるお姉さんだからだよ〜。ちなみにモッチーの下着の色は、み――」
「そ、それ以上言わなくていいです! 着替えてきます!」
「ほい〜。更衣室はあっちだよお〜」
モチコは話を強引に切り上げて更衣室へ向かう。
もらった制服に袖を通してみると、確かにぴったりのサイズだった。
おシズさんは、いったいどこから情報を仕入れているのだろう……。
シグナスの制服は紺色のセーラー服だ。
風が強い海の上を飛ぶので、船乗りと同じデザインにしたと聞いた。
セーラーカラーには白い線が1本入っていて、胸のスカーフ留めの部分に、白鳥のエンブレムが刺繍されている。
セーラーカラーの下には、二の腕が隠れるくらいの長さのケープも羽織る。
モチコは制服に着替えると、鏡の前でくるりと回転してみた。
「おおぅ。ばっちりグー」
プリーツが多めのスカートは、回転に合わせて控えめに揺れてかわいい。
気に入りました。
着替えを終えてリサとシズゥのところへ戻ると、2人は歓声を上げて迎えてくれた。
「わぁ、モチコちゃん。とっても似合うわ!」
「制服のモッチーもかわいいねえ〜」
「あ……ありがとうございます……」
2人に拍手までされてちょっと恥ずかしくなり、モチコは制服のスカートをつまみながらもじもじする。
「あ、そういえば、スカーフが無かったです」
シグナスのスタッフはみんな、制服の胸の部分にスカーフを留めている。
だが、渡された制服のなかに、スカーフは入っていなかった。
「あ〜。スカーフはねえ〜。後で来るから〜」
「ふふふ。モチコちゃん、楽しみにしておいてね」
「え……? は、はい……?」
2人の言っている意味がよく分からなかったが、まあいいか。
後で来るみたいだし。
「さて、次はうちのチームの役割分担について、説明しておくわね」
リサが説明を始めたので、モチコはイスに座って続きを聞く。
「私は『ナビゲーター』といって、台風を観測しながら指示を出す係よ。台風警戒信号のアナウンスも私が担当するわ」
「私は『ディスパッチャー』だよ〜。飛行スケジュールを調整したり、必要な人や物を手配する係だね〜」
「ふむふむ。ナビゲーターと、ディスパッチャーですね」
モチコはうなずきながらメモを取った。
リサが説明を続ける。
「そして、ミライアとモチコちゃんは――」
――バッコォーン!!
リサが話している途中で、いきなり待機室のドアが激しい音を立てて開いた。
「ミライア様に相方ができたって本当ですかぁぁぁぁーっ!!」
(中編へ続く)
仕事が始まるのは日没からだが、モチコは余裕を持って、まだ日が高いうちに向かうことにした。
魔動トロッコをタワーの最寄り駅で降りて、海のほうへ歩いていく。
海岸線まで着くと、海に浮かぶ島が見えた。
「いつ見ても、亀みたいでかわいいな」
島のシルエットは、海に浮かんだ大きな亀のようだ。
ちょうど甲羅のてっぺんに灯台が乗っかっていた。
島へ渡るための、大きな橋がある。
空を飛べる魔女以外は、この橋を渡ってタワーへ向かうのだ。
タワーのある島の頂上までは、たくさんの階段を上る必要があるが、仕事の準備運動だと思えばちょうどいい感じだった。
「ふう、やっと着いた」
頂上に着くと、2階建ての大きな建物が見えた。
その建物から、にょきっとタワーが生えているような設計になっている。
建物の入口にあるプレートには、白鳥のエンブレムとともに『シグナス』と刻まれていた。
シグナスとは、夏の星座のひとつである、白鳥座を表す言葉だ。
そして、この街で台風と戦う組織の名称でもある。
白鳥座の名のとおり、台風シーズンの初夏から晩秋にかけて空に輝き、この街を守るのだ。
「こんにちは! シグナスへようこそ。本日はどのようなご用件ですか?」
建物に入ると、すぐに受付のお姉さんがさわやかな声で尋ねてきた。
モチコはちょっと緊張しながら言葉を返す。
「あ、あの。今日からこちらで働くことになった、モチコ・カザミモリという者なのですが……」
「はい、伺っております。あちらへどうぞ!」
さわやかに手で示された方に目を向けると、知っている顔があった。
「やほ〜。モッチー、こっちだよお〜」
モチコは、そこで待っていたシズゥに駆け寄る。
「おシズさん、よろしくお願いします」
「はいよろしく〜。じゃ、とりあえず待機室にいこか〜」
シズゥはそう言うと、シグナスの建物の中を歩きだした。
モチコもあとについて歩く。
中は広いオフィスになっていて、たくさんの人が色々な仕事をしているようだった。
「このへんが気象データをまとめてるチーム。あっちは設備とか備品を管理するチーム。あの奥は予算管理してる人たちね〜」
シズゥの説明を聞きながら、モチコも右へ左へと首を動かす。
「ちょっとずつ覚えていけばいいから〜。んで、ここが私たちの待機室だよ〜」
建物のいちばん奥、ちょうどタワーの真下にあたる部分が、待機室になっていた。
ドアを開けて中に入ると、いくつかのテーブルとイスが並んでいる。
そのひとつに、リサが座って書類に目を通していた。
「モッチーが来たよ〜」
シズゥの声かけに、リサが顔を上げる。
「モチコちゃん、いらっしゃい」
「リサさん、よろしくお願いします」
リサに促されて、モチコはリサの向かいの席に座る。
待機室はそこそこの広さがあった。
並んでいるテーブルとイスは固定席ではなく、そのとき空いている席を使うスタイルのようだ。
部屋の中央にはタワーへと登っていく螺旋階段がある。
奥の方にはシャワーや仮眠室もあるようだった。
待機室の中を見回したあと、モチコは尋ねる。
「先輩……えっと、ミライア先輩は、まだ来てないですか?」
「そのうち来ると思うわ。いつも時間ギリギリに入って来るから」
リサはそう答えると、手に持っていた書類をテーブルに置いて、モチコの方を見た。
「仕事まで時間もあるし、今のうちに、モチコちゃんに色々と説明しておきましょうか」
「はい。ぜひお願いします」
「私は必要なものを取ってくるねえ〜」
シズゥはそう言うと部屋の奥へと消えていった。
「あらためて。モチコちゃん、シグナスへようこそ」
「はい、今日からがんばります」
「知っていると思うけれど、シグナスは、台風からこの街を守るために作られた組織なの」
「はい」
「普段は天気を観測したり、街の防災活動を行っているわ。台風が接近したときには、台風警告信号の発令と、台風への攻撃を行うの」
モチコは、先日ミライアのホウキに乗った時のことを思い出した。
あれがまさに台風への攻撃だ。
その後のリサの説明によると、シグナスは営利目的ではなく街の防災に関わる組織のため、運営資金は主に税金と、街の貴族からの寄付金、それに北の王都からの交付金だという。
「北の王都からも資金が出ているんですね」
「もし台風が強いままこの街を通り過ぎて、王都まで行ってしまったら、確実に甚大な被害が出るわ。王都を守るのも、私たちのミッションなの」
確かに、人口が桁違いに多い王都に台風が直撃すれば、大変なことになる。
この街はちょうど台風の通り道になっているので、この街と北の王都を守るためには、シグナスの存在が必要不可欠だろう。
「私たちは4人1組のチームになっていて、各チームが交代で任務にあたっているわ」
「リサさんと、おシズさんと、ミライア先輩と、私……の4人チームですか?」
「そう。今は全部で6つのチームがあるの。そのうち5つが日勤で、私たちが唯一の夜勤チームよ」
「それだと、うちのチームが休みの日の夜勤はどうしてるんですか?」
「日勤チームのどれかが、交代で夜勤に入ることになっているわ」
「なるほど。夜勤専門は、私たちだけなんですね」
リサと話しているところに、のんびりした声が飛び込んできた。
「そうだよ〜。貴重な夜勤メンバーに加わってくれたモッチーは、我らの救世主だね〜」
シズゥはそう言いながら、何かを手に持って戻ってきた。
「救世主モッチーに、我らのメンバーである証を授けよう〜」
シズゥが持ってきたのは、シグナスの制服だった。
たたまれた制服がモチコに手渡される。
「服のサイズはバッチリ合わせておいたから〜」
「え? 私のサイズなんて教えましたっけ?」
「モッチーのことなら何でも知ってるよお〜。髪の色、目の色、メガネの度数、身長、体重、足の大きさ、あとスリーサイズとか〜」
「な、何で知ってるんですか……?」
「ん~? 私はいろいろ知ってるお姉さんだからだよ〜。ちなみにモッチーの下着の色は、み――」
「そ、それ以上言わなくていいです! 着替えてきます!」
「ほい〜。更衣室はあっちだよお〜」
モチコは話を強引に切り上げて更衣室へ向かう。
もらった制服に袖を通してみると、確かにぴったりのサイズだった。
おシズさんは、いったいどこから情報を仕入れているのだろう……。
シグナスの制服は紺色のセーラー服だ。
風が強い海の上を飛ぶので、船乗りと同じデザインにしたと聞いた。
セーラーカラーには白い線が1本入っていて、胸のスカーフ留めの部分に、白鳥のエンブレムが刺繍されている。
セーラーカラーの下には、二の腕が隠れるくらいの長さのケープも羽織る。
モチコは制服に着替えると、鏡の前でくるりと回転してみた。
「おおぅ。ばっちりグー」
プリーツが多めのスカートは、回転に合わせて控えめに揺れてかわいい。
気に入りました。
着替えを終えてリサとシズゥのところへ戻ると、2人は歓声を上げて迎えてくれた。
「わぁ、モチコちゃん。とっても似合うわ!」
「制服のモッチーもかわいいねえ〜」
「あ……ありがとうございます……」
2人に拍手までされてちょっと恥ずかしくなり、モチコは制服のスカートをつまみながらもじもじする。
「あ、そういえば、スカーフが無かったです」
シグナスのスタッフはみんな、制服の胸の部分にスカーフを留めている。
だが、渡された制服のなかに、スカーフは入っていなかった。
「あ〜。スカーフはねえ〜。後で来るから〜」
「ふふふ。モチコちゃん、楽しみにしておいてね」
「え……? は、はい……?」
2人の言っている意味がよく分からなかったが、まあいいか。
後で来るみたいだし。
「さて、次はうちのチームの役割分担について、説明しておくわね」
リサが説明を始めたので、モチコはイスに座って続きを聞く。
「私は『ナビゲーター』といって、台風を観測しながら指示を出す係よ。台風警戒信号のアナウンスも私が担当するわ」
「私は『ディスパッチャー』だよ〜。飛行スケジュールを調整したり、必要な人や物を手配する係だね〜」
「ふむふむ。ナビゲーターと、ディスパッチャーですね」
モチコはうなずきながらメモを取った。
リサが説明を続ける。
「そして、ミライアとモチコちゃんは――」
――バッコォーン!!
リサが話している途中で、いきなり待機室のドアが激しい音を立てて開いた。
「ミライア様に相方ができたって本当ですかぁぁぁぁーっ!!」
(中編へ続く)
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
タワーへの初出勤の日。
仕事が始まるのは日没からだが、モチコは余裕を持って、まだ日が高いうちに向かうことにした。
仕事が始まるのは日没からだが、モチコは余裕を持って、まだ日が高いうちに向かうことにした。
魔動トロッコをタワーの最寄り駅で降りて、海のほうへ歩いていく。
海岸線まで着くと、海に浮かぶ島が見えた。
海岸線まで着くと、海に浮かぶ島が見えた。
「いつ見ても、亀みたいでかわいいな」
島のシルエットは、海に浮かんだ大きな亀のようだ。
ちょうど甲羅のてっぺんに|灯台《タワー》が乗っかっていた。
ちょうど甲羅のてっぺんに|灯台《タワー》が乗っかっていた。
島へ渡るための、大きな橋がある。
空を飛べる魔女以外は、この橋を渡ってタワーへ向かうのだ。
タワーのある島の頂上までは、たくさんの階段を上る必要があるが、仕事の準備運動だと思えばちょうどいい感じだった。
空を飛べる魔女以外は、この橋を渡ってタワーへ向かうのだ。
タワーのある島の頂上までは、たくさんの階段を上る必要があるが、仕事の準備運動だと思えばちょうどいい感じだった。
「ふう、やっと着いた」
頂上に着くと、2階建ての大きな建物が見えた。
その建物から、にょきっとタワーが生えているような設計になっている。
建物の入口にあるプレートには、白鳥のエンブレムとともに『シグナス』と刻まれていた。
その建物から、にょきっとタワーが生えているような設計になっている。
建物の入口にあるプレートには、白鳥のエンブレムとともに『シグナス』と刻まれていた。
シグナスとは、夏の星座のひとつである、白鳥座を表す言葉だ。
そして、この街で台風と戦う組織の名称でもある。
|白鳥座《シグナス》の名のとおり、台風シーズンの初夏から晩秋にかけて空に輝き、この街を守るのだ。
そして、この街で台風と戦う組織の名称でもある。
|白鳥座《シグナス》の名のとおり、台風シーズンの初夏から晩秋にかけて空に輝き、この街を守るのだ。
「こんにちは! シグナスへようこそ。本日はどのようなご用件ですか?」
建物に入ると、すぐに受付のお姉さんがさわやかな声で尋ねてきた。
モチコはちょっと緊張しながら言葉を返す。
モチコはちょっと緊張しながら言葉を返す。
「あ、あの。今日からこちらで働くことになった、モチコ・カザミモリという者なのですが……」
「はい、伺っております。あちらへどうぞ!」
「はい、伺っております。あちらへどうぞ!」
さわやかに手で示された方に目を向けると、知っている顔があった。
「やほ〜。モッチー、こっちだよお〜」
モチコは、そこで待っていたシズゥに駆け寄る。
「おシズさん、よろしくお願いします」
「はいよろしく〜。じゃ、とりあえず|待機室《ラウンジ》にいこか〜」
「はいよろしく〜。じゃ、とりあえず|待機室《ラウンジ》にいこか〜」
シズゥはそう言うと、シグナスの建物の中を歩きだした。
モチコもあとについて歩く。
中は広いオフィスになっていて、たくさんの人が色々な仕事をしているようだった。
モチコもあとについて歩く。
中は広いオフィスになっていて、たくさんの人が色々な仕事をしているようだった。
「このへんが気象データをまとめてるチーム。あっちは設備とか備品を管理するチーム。あの奥は予算管理してる人たちね〜」
シズゥの説明を聞きながら、モチコも右へ左へと首を動かす。
「ちょっとずつ覚えていけばいいから〜。んで、ここが私たちの|待機室《ラウンジ》だよ〜」
建物のいちばん奥、ちょうどタワーの真下にあたる部分が、|待機室《ラウンジ》になっていた。
ドアを開けて中に入ると、いくつかのテーブルとイスが並んでいる。
そのひとつに、リサが座って書類に目を通していた。
ドアを開けて中に入ると、いくつかのテーブルとイスが並んでいる。
そのひとつに、リサが座って書類に目を通していた。
「モッチーが来たよ〜」
シズゥの声かけに、リサが顔を上げる。
「モチコちゃん、いらっしゃい」
「リサさん、よろしくお願いします」
「リサさん、よろしくお願いします」
リサに促されて、モチコはリサの向かいの席に座る。
|待機室《ラウンジ》はそこそこの広さがあった。
並んでいるテーブルとイスは固定席ではなく、そのとき空いている席を使うスタイルのようだ。
部屋の中央にはタワーへと登っていく螺旋階段がある。
奥の方にはシャワーや仮眠室もあるようだった。
並んでいるテーブルとイスは固定席ではなく、そのとき空いている席を使うスタイルのようだ。
部屋の中央にはタワーへと登っていく螺旋階段がある。
奥の方にはシャワーや仮眠室もあるようだった。
|待機室《ラウンジ》の中を見回したあと、モチコは尋ねる。
「先輩……えっと、ミライア先輩は、まだ来てないですか?」
「そのうち来ると思うわ。いつも時間ギリギリに入って来るから」
「そのうち来ると思うわ。いつも時間ギリギリに入って来るから」
リサはそう答えると、手に持っていた書類をテーブルに置いて、モチコの方を見た。
「仕事まで時間もあるし、今のうちに、モチコちゃんに色々と説明しておきましょうか」
「はい。ぜひお願いします」
「私は必要なものを取ってくるねえ〜」
「はい。ぜひお願いします」
「私は必要なものを取ってくるねえ〜」
シズゥはそう言うと部屋の奥へと消えていった。
「あらためて。モチコちゃん、シグナスへようこそ」
「はい、今日からがんばります」
「知っていると思うけれど、シグナスは、台風からこの街を守るために作られた組織なの」
「はい」
「普段は天気を観測したり、街の防災活動を行っているわ。台風が接近したときには、|台風警告信号《タイフーンシグナル》の発令と、台風への|攻撃《アタック》を行うの」
「はい、今日からがんばります」
「知っていると思うけれど、シグナスは、台風からこの街を守るために作られた組織なの」
「はい」
「普段は天気を観測したり、街の防災活動を行っているわ。台風が接近したときには、|台風警告信号《タイフーンシグナル》の発令と、台風への|攻撃《アタック》を行うの」
モチコは、先日ミライアのホウキに乗った時のことを思い出した。
あれがまさに台風への|攻撃《アタック》だ。
あれがまさに台風への|攻撃《アタック》だ。
その後のリサの説明によると、シグナスは営利目的ではなく街の防災に関わる組織のため、運営資金は主に税金と、街の貴族からの寄付金、それに北の王都からの交付金だという。
「北の王都からも資金が出ているんですね」
「もし台風が強いままこの街を通り過ぎて、王都まで行ってしまったら、確実に甚大な被害が出るわ。王都を守るのも、私たちのミッションなの」
「もし台風が強いままこの街を通り過ぎて、王都まで行ってしまったら、確実に甚大な被害が出るわ。王都を守るのも、私たちのミッションなの」
確かに、人口が桁違いに多い王都に台風が直撃すれば、大変なことになる。
この街はちょうど台風の通り道になっているので、この街と北の王都を守るためには、シグナスの存在が必要不可欠だろう。
この街はちょうど台風の通り道になっているので、この街と北の王都を守るためには、シグナスの存在が必要不可欠だろう。
「私たちは4人1組のチームになっていて、各チームが交代で任務にあたっているわ」
「リサさんと、おシズさんと、ミライア先輩と、私……の4人チームですか?」
「そう。今は全部で6つのチームがあるの。そのうち5つが日勤で、私たちが唯一の夜勤チームよ」
「それだと、うちのチームが休みの日の夜勤はどうしてるんですか?」
「日勤チームのどれかが、交代で夜勤に入ることになっているわ」
「なるほど。夜勤専門は、私たちだけなんですね」
「リサさんと、おシズさんと、ミライア先輩と、私……の4人チームですか?」
「そう。今は全部で6つのチームがあるの。そのうち5つが日勤で、私たちが唯一の夜勤チームよ」
「それだと、うちのチームが休みの日の夜勤はどうしてるんですか?」
「日勤チームのどれかが、交代で夜勤に入ることになっているわ」
「なるほど。夜勤専門は、私たちだけなんですね」
リサと話しているところに、のんびりした声が飛び込んできた。
「そうだよ〜。貴重な夜勤メンバーに加わってくれたモッチーは、我らの救世主だね〜」
シズゥはそう言いながら、何かを手に持って戻ってきた。
「救世主モッチーに、我らのメンバーである証を授けよう〜」
シズゥが持ってきたのは、シグナスの制服だった。
たたまれた制服がモチコに手渡される。
たたまれた制服がモチコに手渡される。
「服のサイズはバッチリ合わせておいたから〜」
「え? 私のサイズなんて教えましたっけ?」
「モッチーのことなら何でも知ってるよお〜。髪の色、目の色、メガネの度数、身長、体重、足の大きさ、あとスリーサイズとか〜」
「な、何で知ってるんですか……?」
「ん~? 私はいろいろ知ってるお姉さんだからだよ〜。ちなみにモッチーの下着の色は、み――」
「そ、それ以上言わなくていいです! 着替えてきます!」
「ほい〜。更衣室はあっちだよお〜」
「え? 私のサイズなんて教えましたっけ?」
「モッチーのことなら何でも知ってるよお〜。髪の色、目の色、メガネの度数、身長、体重、足の大きさ、あとスリーサイズとか〜」
「な、何で知ってるんですか……?」
「ん~? 私はいろいろ知ってるお姉さんだからだよ〜。ちなみにモッチーの下着の色は、み――」
「そ、それ以上言わなくていいです! 着替えてきます!」
「ほい〜。更衣室はあっちだよお〜」
モチコは話を強引に切り上げて更衣室へ向かう。
もらった制服に袖を通してみると、確かにぴったりのサイズだった。
おシズさんは、いったいどこから情報を仕入れているのだろう……。
もらった制服に袖を通してみると、確かにぴったりのサイズだった。
おシズさんは、いったいどこから情報を仕入れているのだろう……。
シグナスの制服は紺色のセーラー服だ。
風が強い海の上を飛ぶので、船乗りと同じデザインにしたと聞いた。
セーラーカラーには白い線が1本入っていて、胸のスカーフ留めの部分に、白鳥のエンブレムが刺繍されている。
セーラーカラーの下には、二の腕が隠れるくらいの長さのケープも羽織る。
モチコは制服に着替えると、鏡の前でくるりと回転してみた。
風が強い海の上を飛ぶので、船乗りと同じデザインにしたと聞いた。
セーラーカラーには白い線が1本入っていて、胸のスカーフ留めの部分に、白鳥のエンブレムが刺繍されている。
セーラーカラーの下には、二の腕が隠れるくらいの長さのケープも羽織る。
モチコは制服に着替えると、鏡の前でくるりと回転してみた。
「おおぅ。ばっちりグー」
プリーツが多めのスカートは、回転に合わせて控えめに揺れてかわいい。
気に入りました。
気に入りました。
着替えを終えてリサとシズゥのところへ戻ると、2人は歓声を上げて迎えてくれた。
「わぁ、モチコちゃん。とっても似合うわ!」
「制服のモッチーもかわいいねえ〜」
「あ……ありがとうございます……」
「制服のモッチーもかわいいねえ〜」
「あ……ありがとうございます……」
2人に拍手までされてちょっと恥ずかしくなり、モチコは制服のスカートをつまみながらもじもじする。
「あ、そういえば、スカーフが無かったです」
シグナスのスタッフはみんな、制服の胸の部分にスカーフを留めている。
だが、渡された制服のなかに、スカーフは入っていなかった。
だが、渡された制服のなかに、スカーフは入っていなかった。
「あ〜。スカーフはねえ〜。後で来るから〜」
「ふふふ。モチコちゃん、楽しみにしておいてね」
「え……? は、はい……?」
「ふふふ。モチコちゃん、楽しみにしておいてね」
「え……? は、はい……?」
2人の言っている意味がよく分からなかったが、まあいいか。
後で来るみたいだし。
後で来るみたいだし。
「さて、次はうちのチームの役割分担について、説明しておくわね」
リサが説明を始めたので、モチコはイスに座って続きを聞く。
「私は『ナビゲーター』といって、台風を観測しながら指示を出す係よ。|台風警戒信号《タイフーンシグナル》のアナウンスも私が担当するわ」
「私は『ディスパッチャー』だよ〜。飛行スケジュールを調整したり、必要な人や物を手配する係だね〜」
「ふむふむ。ナビゲーターと、ディスパッチャーですね」
「私は『ディスパッチャー』だよ〜。飛行スケジュールを調整したり、必要な人や物を手配する係だね〜」
「ふむふむ。ナビゲーターと、ディスパッチャーですね」
モチコはうなずきながらメモを取った。
リサが説明を続ける。
リサが説明を続ける。
「そして、ミライアとモチコちゃんは――」
――バッコォーン!!
リサが話している途中で、いきなり|待機室《ラウンジ》のドアが激しい音を立てて開いた。
リサが話している途中で、いきなり|待機室《ラウンジ》のドアが激しい音を立てて開いた。
「ミライア様に相方ができたって本当ですかぁぁぁぁーっ!!」
(中編へ続く)