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SCENE085 ハプニングが大渋滞

ー/ー



『わわっ、ウィンクちゃん大丈夫?』

 視聴者たちが混乱している。
 さすがに、派手にこけて鼻血まで出しちゃったらそうなるか。

「みなさん、大丈夫ですよ。ほら、この通り」

 僕は回復魔法をかけて回復した状態を見せる。

『ほっ、よかった・・・』

『ウィンクちゃん、さっき魔法使ってた?』

「はい、練習の中で身につけた回復魔法を使いました。ですので、もう大丈夫ですよ」

 僕はドローンに向けて、にっこりと笑顔を向ける。
 その様子が視聴者さんたちにも伝わったのか、ほっとしたコメントがたくさん並んでいた。
 そんな中、僕の携帯電話が突然鳴り始める。
 何かと思って、僕はちょっと席を外して電話に出る。

『ウィンクさん、大丈夫ですの?』

「うわっ、誰かと思ったら、セイレーンさんですか。耳元で大きな声を出さないで下さいよ」

 電話越しにセイレーンさんの大きな声が響き渡る。慌てっぷりからすると、どうも僕の配信を見ているみたい。

「大丈夫ですよ。回復魔法ですぐに治療しましたから」

『そうですか。それならよかったですわ。あたしのライバルとして、ずっと元気でいてもらわないと困りますからね』

「はははっ、セイレーンさんってば優しいですね」

『当然ですわよ』

 僕が笑って反応していると、セイレーンさんは怒ったような感じで言い返してきた。何か気に障ったのかな。

『それよりも、ロックウェル伯爵令嬢と代わって下さらないかしら』

「ラティナさんと?」

『ええ。なにやら緊張していらっしゃるようですし、あたしが相手をしておきますわ。その間、気兼ねなくことを進めて下さいませ』

「分かりました。ちょっと代わりますから待っていて下さいね」

 僕は通話の状態を保留にしたまま、ラティナさんに声をかける。
 セイレーンさんから話があるみたいだと伝えると、ラティナさんは驚ているようだった。

「あの、セイレーン様、お久しぶりでございます」

『ラティナ、お久しぶりですわね。こちらに召喚される前ですから、かれこれ十年ちょっとぶりかしらね』

「そうですね。セイレーン様がいらっしゃらなくなって、私、ちょっと寂しく思っていました」

『まったく、相変わらずですわね。とりあえず、あたしと話をしませんこと?』

「はい、そうさせていただきます。今の私では、いろいろ邪魔をしてしまいそうですので」

 携帯電話のことにはちょっと驚いていたみたいだけど、セイレーンさんと話ができていることですぐに慣れてしまったみたいだ。
 僕はちょっと安心すると、探索者見習いの体験学習へと戻っていった。

「すみません。僕がこれから見本を見せないといけないですのにね」

「いや、セイレーンさんが出てこられたのでしたらしょうがないですよ。その間、衣織さんにちょっとスキルを見せてもらっていましたから、こちらは問題ありませんよ」

 僕が戻って謝罪をすると、谷地さんからはフォローが入っていた。ドローンもそっちを映してくれていたみたいで、視聴者さんたちも興奮しているみたいだった。

「おっ、瞬。電話は終わったのか?」

「衣織お姉さん。電話はセイレーンさんからで、ラティナさんに渡してきました。セイレーンさんとラティナさんはお友だちのようですからね」

「そうか。それなら積もる話もあるだろうな」

 衣織お姉さんは、ラティナさんの方を見て笑みをこぼしている。僕も視線を向けると、バトラーが後ろに控えてくれているみたいだ。バトラーがいれば、とりあえずは安心だろうね。
 僕は気を取り直して、探索者見習いの四人の前に姿を見せる。

「えっと、それでは、これから僕が魔法スキルを実際に見せてみますので、あちらのデコイに……デコイは?!」

 魔法の実演を見せてみようと思って、壁際に設置した二体のデコイに魔法を使おうとしたんだけど、一体も見当たらない。

『ウィンクちゃん、デコイなら鬼百合が壊しちゃってたよ』

『衣織はまったく力の加減をしてくれないからな』

「ええぇ……」

 どうやら、衣織お姉さんが太刀スキルと槍スキルを見せるために、デコイを二体とも破壊してしまったらしい。

「ちょっと、衣織お姉さん。あれ、修復されるのに二時間はかかるんだよ? その間、どうするんだよ」

「いや、私の攻撃に一回しか耐えられないんじゃ仕方ないだろう。そもそも瞬が電話を長引かせたのが悪い」

「僕のせいになるの?!」

 衣織お姉さんの言い分に、僕は呆れてしまう。
 どうしよう、デコイがないと魔法の威力の実演が難しいんだよね。壁を壊しちゃってもいいんだけど、やっぱり避けたいよなぁ……。
 でも、さすがにここで魔法を見せないわけにはいかないので、デコイなしでやることに決めた。

「本当はダンジョンを壊す可能性があるので、デコイが欲しかったんですけれどね。ないのなら仕方ありません。今から僕が水と闇の魔法を実際に使ってみますので、魔法がどういうものかよく見ていて下さいね」

「はいっ」

 僕が宣言をすると、見習いの四人が元気よく返事をしてくれた。見るからに僕と同い年なんだろうけど、モンスターになったせいで四人からはきっと同い年には見られてなさそうだよね。
 そんなことを思いながら、僕はデコイがあっただろう場所をじっと見つめる。

「それじゃ、魔法を使いますからね。あの辺りをよく見ておいて下さいね」

 僕は四人にしっかり言い聞かせると、構えて魔法を使う準備をする。
 さあ、気を取り直して頑張りますか。


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次のエピソードへ進む SCENE086 そんなマナな


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『わわっ、ウィンクちゃん大丈夫?』
 視聴者たちが混乱している。
 さすがに、派手にこけて鼻血まで出しちゃったらそうなるか。
「みなさん、大丈夫ですよ。ほら、この通り」
 僕は回復魔法をかけて回復した状態を見せる。
『ほっ、よかった・・・』
『ウィンクちゃん、さっき魔法使ってた?』
「はい、練習の中で身につけた回復魔法を使いました。ですので、もう大丈夫ですよ」
 僕はドローンに向けて、にっこりと笑顔を向ける。
 その様子が視聴者さんたちにも伝わったのか、ほっとしたコメントがたくさん並んでいた。
 そんな中、僕の携帯電話が突然鳴り始める。
 何かと思って、僕はちょっと席を外して電話に出る。
『ウィンクさん、大丈夫ですの?』
「うわっ、誰かと思ったら、セイレーンさんですか。耳元で大きな声を出さないで下さいよ」
 電話越しにセイレーンさんの大きな声が響き渡る。慌てっぷりからすると、どうも僕の配信を見ているみたい。
「大丈夫ですよ。回復魔法ですぐに治療しましたから」
『そうですか。それならよかったですわ。あたしのライバルとして、ずっと元気でいてもらわないと困りますからね』
「はははっ、セイレーンさんってば優しいですね」
『当然ですわよ』
 僕が笑って反応していると、セイレーンさんは怒ったような感じで言い返してきた。何か気に障ったのかな。
『それよりも、ロックウェル伯爵令嬢と代わって下さらないかしら』
「ラティナさんと?」
『ええ。なにやら緊張していらっしゃるようですし、あたしが相手をしておきますわ。その間、気兼ねなくことを進めて下さいませ』
「分かりました。ちょっと代わりますから待っていて下さいね」
 僕は通話の状態を保留にしたまま、ラティナさんに声をかける。
 セイレーンさんから話があるみたいだと伝えると、ラティナさんは驚ているようだった。
「あの、セイレーン様、お久しぶりでございます」
『ラティナ、お久しぶりですわね。こちらに召喚される前ですから、かれこれ十年ちょっとぶりかしらね』
「そうですね。セイレーン様がいらっしゃらなくなって、私、ちょっと寂しく思っていました」
『まったく、相変わらずですわね。とりあえず、あたしと話をしませんこと?』
「はい、そうさせていただきます。今の私では、いろいろ邪魔をしてしまいそうですので」
 携帯電話のことにはちょっと驚いていたみたいだけど、セイレーンさんと話ができていることですぐに慣れてしまったみたいだ。
 僕はちょっと安心すると、探索者見習いの体験学習へと戻っていった。
「すみません。僕がこれから見本を見せないといけないですのにね」
「いや、セイレーンさんが出てこられたのでしたらしょうがないですよ。その間、衣織さんにちょっとスキルを見せてもらっていましたから、こちらは問題ありませんよ」
 僕が戻って謝罪をすると、谷地さんからはフォローが入っていた。ドローンもそっちを映してくれていたみたいで、視聴者さんたちも興奮しているみたいだった。
「おっ、瞬。電話は終わったのか?」
「衣織お姉さん。電話はセイレーンさんからで、ラティナさんに渡してきました。セイレーンさんとラティナさんはお友だちのようですからね」
「そうか。それなら積もる話もあるだろうな」
 衣織お姉さんは、ラティナさんの方を見て笑みをこぼしている。僕も視線を向けると、バトラーが後ろに控えてくれているみたいだ。バトラーがいれば、とりあえずは安心だろうね。
 僕は気を取り直して、探索者見習いの四人の前に姿を見せる。
「えっと、それでは、これから僕が魔法スキルを実際に見せてみますので、あちらのデコイに……デコイは?!」
 魔法の実演を見せてみようと思って、壁際に設置した二体のデコイに魔法を使おうとしたんだけど、一体も見当たらない。
『ウィンクちゃん、デコイなら鬼百合が壊しちゃってたよ』
『衣織はまったく力の加減をしてくれないからな』
「ええぇ……」
 どうやら、衣織お姉さんが太刀スキルと槍スキルを見せるために、デコイを二体とも破壊してしまったらしい。
「ちょっと、衣織お姉さん。あれ、修復されるのに二時間はかかるんだよ? その間、どうするんだよ」
「いや、私の攻撃に一回しか耐えられないんじゃ仕方ないだろう。そもそも瞬が電話を長引かせたのが悪い」
「僕のせいになるの?!」
 衣織お姉さんの言い分に、僕は呆れてしまう。
 どうしよう、デコイがないと魔法の威力の実演が難しいんだよね。壁を壊しちゃってもいいんだけど、やっぱり避けたいよなぁ……。
 でも、さすがにここで魔法を見せないわけにはいかないので、デコイなしでやることに決めた。
「本当はダンジョンを壊す可能性があるので、デコイが欲しかったんですけれどね。ないのなら仕方ありません。今から僕が水と闇の魔法を実際に使ってみますので、魔法がどういうものかよく見ていて下さいね」
「はいっ」
 僕が宣言をすると、見習いの四人が元気よく返事をしてくれた。見るからに僕と同い年なんだろうけど、モンスターになったせいで四人からはきっと同い年には見られてなさそうだよね。
 そんなことを思いながら、僕はデコイがあっただろう場所をじっと見つめる。
「それじゃ、魔法を使いますからね。あの辺りをよく見ておいて下さいね」
 僕は四人にしっかり言い聞かせると、構えて魔法を使う準備をする。
 さあ、気を取り直して頑張りますか。