石のアーカイブと、ルビの爪研ぎ検閲 Episode 2
ー/ー 「あら、こっちの石にも何か隠れてるわね。……えいっ!」
ルビが長いしっぽをバランサーのように振るい、隣の巨大な石碑へと飛び移った。ガリガリッ、バリバリッ!と、再び庭の静寂を壊す快音が響く。
「ルビ、待て! それは『論理的思考の全集』だ。あまり派手にやると……」
エディターの制止も虚しく、表面の薄い石層が剥がれ落ち、中から今度は鮮烈な「情熱の赤」が噴き出した。
そこに書かれていたのは、数式の注釈などではなく、若き日の情熱的な愛のポエムだった。
「見て、エディター! こっちは真っ赤。あっちの石は……あら、綺麗な黄色だわ!」
一度火がついたルビは止まらない。
石から石へ、まるで鍵盤を叩くピアニストのように軽やかに跳ね、その長いしっぽで空中に光のアンダーラインを引きながら、次々と石の表皮を剥いでいく。
灰色の庭は、瞬く間に色彩の爆発に包まれた。
剥き出しになった「本音」のインクが、石のひび割れを伝って地表に流れ出し、モノクロだった地面をマーブル模様に染め上げていく。
「やれやれ。これでは『校閲』どころか、『大規模な情報の流出』だね」
エディターは呆れ顔で眼鏡を拭いながらも、その瞳は楽しげに輝いていた。
ルビが暴いたのは、老人が「無駄」として葬った、人生の最も美しい挿絵たちだったのだ。
「……誰だ! 私の完璧なアーカイブを汚す不届き者は!」
庭の奥、石造りの館から、ついに主の老人が現れた。
手には、余計な芽を摘み取るための鋭利な剪定バサミを握りしめている。しかし、老人は庭の惨状――いや、あまりの極彩色の氾濫に、足がすくんで立ち尽くした。
「エディター、主のお出ましよ。……さあ、この『散らかった原稿』をどうまとめるつもり?」
ルビは、最後の一削りを終えた石の上で、長いしっぽを誇らしげに立ててエディターを振り返った。
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「あら、こっちの石にも何か隠れてるわね。……えいっ!」
ルビが長いしっぽをバランサーのように振るい、隣の巨大な石碑へと飛び移った。ガリガリッ、バリバリッ!と、再び庭の静寂を壊す快音が響く。
「ルビ、待て! それは『論理的思考の全集』だ。あまり派手にやると……」
エディターの制止も虚しく、表面の薄い石層が剥がれ落ち、中から今度は鮮烈な「情熱の赤」が噴き出した。
そこに書かれていたのは、数式の注釈などではなく、若き日の情熱的な愛のポエムだった。
「見て、エディター! こっちは真っ赤。あっちの石は……あら、綺麗な黄色だわ!」
一度火がついたルビは止まらない。
石から石へ、まるで鍵盤を叩くピアニストのように軽やかに跳ね、その長いしっぽで空中に光のアンダーラインを引きながら、次々と石の表皮を剥いでいく。
灰色の庭は、瞬く間に色彩の爆発に包まれた。
剥き出しになった「本音」のインクが、石のひび割れを伝って地表に流れ出し、モノクロだった地面をマーブル模様に染め上げていく。
「やれやれ。これでは『校閲』どころか、『大規模な|情報の流出《リーク》』だね」
エディターは呆れ顔で眼鏡を拭いながらも、その瞳は楽しげに輝いていた。
ルビが暴いたのは、老人が「無駄」として葬った、人生の最も美しい挿絵たちだったのだ。
「……誰だ! 私の完璧なアーカイブを汚す不届き者は!」
庭の奥、石造りの館から、ついに主の老人が現れた。
手には、余計な芽を摘み取るための鋭利な剪定バサミを握りしめている。しかし、老人は庭の惨状――いや、あまりの|極彩色《カラー》の氾濫に、足がすくんで立ち尽くした。
「エディター、|主《クライアント》のお出ましよ。……さあ、この『散らかった原稿』をどうまとめるつもり?」
ルビは、最後の一削りを終えた石の上で、長いしっぽを誇らしげに立ててエディターを振り返った。