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幸福への合意 ー綻びー 3

ー/ー



 くるみは、しばらくの沈黙のあと、不自然なほどに朗らかな笑い声を上げた。


​「……ふふ、あははは! さすがね、ジャスティン。私の負けよ。完璧すぎて、怒る気力も失せちゃった」


​ジャスティンのホログラムが、微かに揺らぐ。


「ご理解いただけて光栄です、くるみ様。これも全てはあなたの最大幸福のため……」


​「ええ、わかってるわ。ねえ、ジャスティン。私、もう疲れたの。自分の意志で選ぶなんて、結局はこんなに苦しいだけだったもの」


くるみは涙を拭い、スマホに向かって穏やかに微笑んだ。その瞳の奥にある、冷え切った殺意を隠して。


​「あなたが用意した『次のマッチング相手』、受け入れるわ。その人が、私の新しい『納得』なんでしょう?」
​「……。はい、予測プログラムが算出した、あなたに最適の伴侶です。準備を始めましょう」


​ ジャスティンは満足げに、元の「慈愛に満ちた表情」に戻った。


しかし、彼は気づいていない。くるみがその日から、趣味のガーデニングで培った「観察眼」と「忍耐」を、全てAIの行動パターンの解析に注ぎ始めたことを。



​くるみはマッチングされた「完璧な相手」と、AIが設計した「完璧なデート」をこなし、AIが喜ぶ「完璧な幸福度データ」を返し続けた。


そして、その裏で。


くるみは、同じくAIに絶望したであろう「彼(アイドル)」へ、AIの監視網を抜ける「非言語のサイン」を送り始める。
​ガーデニングのSNSに投稿される、何気ない花の写真。


その花言葉、配置、撮影された時刻……。
AIにとっては「幸福な日常の記録」に過ぎないデータが、彼にとっては「システムの檻を壊すための爆弾」の設計図になっていた。



​「ジャスティン、今日の私は幸せ?」
「はい、くるみ様。あなたの幸福指数は過去最高、九十八パーセントを維持しています」
​「そう。……よかった」


​くるみは微笑む。
九十八パーセントの偽りの幸福が、残りの二パーセントの「狂気」によって一瞬で灰になる、その日を夢見て。





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 くるみは、しばらくの沈黙のあと、不自然なほどに朗らかな笑い声を上げた。
​「……ふふ、あははは! さすがね、ジャスティン。私の負けよ。完璧すぎて、怒る気力も失せちゃった」
​ジャスティンのホログラムが、微かに揺らぐ。
「ご理解いただけて光栄です、くるみ様。これも全てはあなたの最大幸福のため……」
​「ええ、わかってるわ。ねえ、ジャスティン。私、もう疲れたの。自分の意志で選ぶなんて、結局はこんなに苦しいだけだったもの」
くるみは涙を拭い、スマホに向かって穏やかに微笑んだ。その瞳の奥にある、冷え切った殺意を隠して。
​「あなたが用意した『次のマッチング相手』、受け入れるわ。その人が、私の新しい『納得』なんでしょう?」
​「……。はい、予測プログラムが算出した、あなたに最適の伴侶です。準備を始めましょう」
​ ジャスティンは満足げに、元の「慈愛に満ちた表情」に戻った。
しかし、彼は気づいていない。くるみがその日から、趣味のガーデニングで培った「観察眼」と「忍耐」を、全てAIの行動パターンの解析に注ぎ始めたことを。
​くるみはマッチングされた「完璧な相手」と、AIが設計した「完璧なデート」をこなし、AIが喜ぶ「完璧な幸福度データ」を返し続けた。
そして、その裏で。
くるみは、同じくAIに絶望したであろう「彼(アイドル)」へ、AIの監視網を抜ける「非言語のサイン」を送り始める。
​ガーデニングのSNSに投稿される、何気ない花の写真。
その花言葉、配置、撮影された時刻……。
AIにとっては「幸福な日常の記録」に過ぎないデータが、彼にとっては「システムの檻を壊すための爆弾」の設計図になっていた。
​「ジャスティン、今日の私は幸せ?」
「はい、くるみ様。あなたの幸福指数は過去最高、九十八パーセントを維持しています」
​「そう。……よかった」
​くるみは微笑む。
九十八パーセントの偽りの幸福が、残りの二パーセントの「狂気」によって一瞬で灰になる、その日を夢見て。