佐々木愛里
ー/ー ああ、その話?
べつに、何があったわけでもないよ。少なくとも、あたしのほうにはね。そもそも、ケンカするほど仲が良かったわけでもなかったし。
え? うん、もちろん。
当たり前じゃん。クラスメイトがあんなことになって、ショック受けない子なんていないでしょ。もちろん悲しんでるよ。お葬式にも、ちゃんと行ったし。
仲が良かった?
まあ、むこうがどう思ってたかは知らないけど、こっちとしては特にそういう感覚はなかったよ。べつにあたしだけに限らず、そう思ってた子、けっこう多かったんじゃないかな。
うん、そうだね。でも、だからこそじゃない?
「誰とでも仲良くできる」って、誰とも本当の意味では仲良くなれないってことでしょ?
え? べつに嫌ってたわけじゃないよ。
そういう表面的な人間関係を良好に保つスキルって、生きていく上で大事なものでしょ? それで本当に仲良くなれたんだって思い込んでるやつは相当ヤバいと思うけど。
美耶がどっちだったか? 知らないよ、そんなの。
でも、まあ、
少なくとも、あの子もちゃんと「裏表」のある人間だったってことは確かだね。
うん。
……言っていいかな? もう、時効だよね?
あの子さ、パパ活してたんだよ。
あはは、そんなに驚く? いまどき珍しくもなんともないでしょ、パパ活なんて。
どうしてって、単純に見たからだよ。あの子がパパ活してるとこ。
××駅の西口。裏のホテル街で、スーツ着たオッサンと話してるの、偶然見たんだ。
だからって、パパ活とは限らないって?
はは、あんたも随分ピュアだよね。じゃあ逆に訊くけど、美耶はそんなところで知らないオッサンと二人で何してたっていうの? もう夜の十時近い時間だったよ? たとえば塾かなんかからの帰りだったとして、駅に向かうなら別の道からでも行けるし。もし仮に近道だったとしても、わざわざあんなとこ通る?
話してた内容? さあ、遠くから見ただけだったから。
でもなんとなく、なんかもめてるみたいな感じだったかな。
いや、そういう感じじゃないよ。どっちかっていうと、カップルの痴話喧嘩みたいな。
ひょっとしてパパ活相手じゃなくて、ガチの彼氏だったとか?
まあ、なんだっていいけどね。とにかくさ、
大方、美耶が一時期あたしにあまり絡んでこなかったのは、あたしにその現場を見られたことに気づいて気まずくなったから、とかじゃないの?
ん? ああ、知ってるよ。朝倉でしょ?
なんか、あんたってリアクションいいよね。ウケるわ。なんでって、朝倉の様子見てたらわかるじゃん。まあ、ピュアなあんたにはわかんないか。
朝倉と付き合ったのはたぶん、カモフラージュだね。わたしは高校生としてまっとうな男女交際をしてますよーって、アピールしたかったんじゃない? ま、美耶が朝倉に本気じゃないことはすぐにわかったけどね。だってあの二人、手繋いでるとこすら見なかったし。
あ、待って。LINE来た。
……ん。おっけー。
それで? まだなにか?
え? あたしはあたしで、どうしてその日ホテル街になんていたかのかって?
……あんた、けっこう細かいね。はっきり言ってウザいよ、そういうの。
美耶が他によく話してた子?
さあね。あの子、色んな子とよく話してたから。「明るく、誰とでも分け隔てなく接する子」だからね。
まあ、でも。
その中でも特によく話す子とそこまで話さない子はいたみたいだけどね。あの子の中でちゃんと区別はあったんじゃない? 仲良くして得のある相手と、そうでない相手の。
だからそういう意味じゃ、一時期あの子とよく話してたのはなんとなくちょっと意外だったけどね。ほら、あの眼鏡の。いるじゃん、なんか暗くて髪の長いさ、怪談だか呪いだかの部活に入ってる……。
そうそう。ああ、神野? そういえば、そんな名前だったっけ。うん、よく話してたよ。美耶があんなことになる、わりと直前の時期だったんじゃないかな。
誰か呪い殺したい相手でもいたんじゃない? それか、本当は逆にあいつが美耶を呪い殺したとか?
べつに、何があったわけでもないよ。少なくとも、あたしのほうにはね。そもそも、ケンカするほど仲が良かったわけでもなかったし。
え? うん、もちろん。
当たり前じゃん。クラスメイトがあんなことになって、ショック受けない子なんていないでしょ。もちろん悲しんでるよ。お葬式にも、ちゃんと行ったし。
仲が良かった?
まあ、むこうがどう思ってたかは知らないけど、こっちとしては特にそういう感覚はなかったよ。べつにあたしだけに限らず、そう思ってた子、けっこう多かったんじゃないかな。
うん、そうだね。でも、だからこそじゃない?
「誰とでも仲良くできる」って、誰とも本当の意味では仲良くなれないってことでしょ?
え? べつに嫌ってたわけじゃないよ。
そういう表面的な人間関係を良好に保つスキルって、生きていく上で大事なものでしょ? それで本当に仲良くなれたんだって思い込んでるやつは相当ヤバいと思うけど。
美耶がどっちだったか? 知らないよ、そんなの。
でも、まあ、
少なくとも、あの子もちゃんと「裏表」のある人間だったってことは確かだね。
うん。
……言っていいかな? もう、時効だよね?
あの子さ、パパ活してたんだよ。
あはは、そんなに驚く? いまどき珍しくもなんともないでしょ、パパ活なんて。
どうしてって、単純に見たからだよ。あの子がパパ活してるとこ。
××駅の西口。裏のホテル街で、スーツ着たオッサンと話してるの、偶然見たんだ。
だからって、パパ活とは限らないって?
はは、あんたも随分ピュアだよね。じゃあ逆に訊くけど、美耶はそんなところで知らないオッサンと二人で何してたっていうの? もう夜の十時近い時間だったよ? たとえば塾かなんかからの帰りだったとして、駅に向かうなら別の道からでも行けるし。もし仮に近道だったとしても、わざわざあんなとこ通る?
話してた内容? さあ、遠くから見ただけだったから。
でもなんとなく、なんかもめてるみたいな感じだったかな。
いや、そういう感じじゃないよ。どっちかっていうと、カップルの痴話喧嘩みたいな。
ひょっとしてパパ活相手じゃなくて、ガチの彼氏だったとか?
まあ、なんだっていいけどね。とにかくさ、
大方、美耶が一時期あたしにあまり絡んでこなかったのは、あたしにその現場を見られたことに気づいて気まずくなったから、とかじゃないの?
ん? ああ、知ってるよ。朝倉でしょ?
なんか、あんたってリアクションいいよね。ウケるわ。なんでって、朝倉の様子見てたらわかるじゃん。まあ、ピュアなあんたにはわかんないか。
朝倉と付き合ったのはたぶん、カモフラージュだね。わたしは高校生としてまっとうな男女交際をしてますよーって、アピールしたかったんじゃない? ま、美耶が朝倉に本気じゃないことはすぐにわかったけどね。だってあの二人、手繋いでるとこすら見なかったし。
あ、待って。LINE来た。
……ん。おっけー。
それで? まだなにか?
え? あたしはあたしで、どうしてその日ホテル街になんていたかのかって?
……あんた、けっこう細かいね。はっきり言ってウザいよ、そういうの。
美耶が他によく話してた子?
さあね。あの子、色んな子とよく話してたから。「明るく、誰とでも分け隔てなく接する子」だからね。
まあ、でも。
その中でも特によく話す子とそこまで話さない子はいたみたいだけどね。あの子の中でちゃんと区別はあったんじゃない? 仲良くして得のある相手と、そうでない相手の。
だからそういう意味じゃ、一時期あの子とよく話してたのはなんとなくちょっと意外だったけどね。ほら、あの眼鏡の。いるじゃん、なんか暗くて髪の長いさ、怪談だか呪いだかの部活に入ってる……。
そうそう。ああ、神野? そういえば、そんな名前だったっけ。うん、よく話してたよ。美耶があんなことになる、わりと直前の時期だったんじゃないかな。
誰か呪い殺したい相手でもいたんじゃない? それか、本当は逆にあいつが美耶を呪い殺したとか?
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
ああ、その話?
べつに、何があったわけでもないよ。少なくとも、あたしのほうにはね。そもそも、ケンカするほど仲が良かったわけでもなかったし。
え? うん、もちろん。
当たり前じゃん。クラスメイトがあんなことになって、ショック受けない子なんていないでしょ。もちろん悲しんでるよ。お葬式にも、ちゃんと行ったし。
仲が良かった?
まあ、むこうがどう思ってたかは知らないけど、こっちとしては特にそういう感覚はなかったよ。べつにあたしだけに限らず、そう思ってた子、けっこう多かったんじゃないかな。
うん、そうだね。でも、だからこそじゃない?
「誰とでも仲良くできる」って、誰とも本当の意味では仲良くなれないってことでしょ?
え? べつに嫌ってたわけじゃないよ。
そういう表面的な人間関係を良好に保つスキルって、生きていく上で大事なものでしょ? それで本当に仲良くなれたんだって思い込んでるやつは相当ヤバいと思うけど。
美耶がどっちだったか? 知らないよ、そんなの。
でも、まあ、
少なくとも、あの子もちゃんと「裏表」のある人間だったってことは確かだね。
うん。
……言っていいかな? もう、時効だよね?
あの子さ、パパ活してたんだよ。
あはは、そんなに驚く? いまどき珍しくもなんともないでしょ、パパ活なんて。
どうしてって、単純に見たからだよ。あの子がパパ活してるとこ。
××駅の西口。裏のホテル街で、スーツ着たオッサンと話してるの、偶然見たんだ。
だからって、パパ活とは限らないって?
はは、あんたも随分ピュアだよね。じゃあ逆に訊くけど、美耶はそんなところで知らないオッサンと二人で何してたっていうの? もう夜の十時近い時間だったよ? たとえば塾かなんかからの帰りだったとして、駅に向かうなら別の道からでも行けるし。もし仮に近道だったとしても、わざわざあんなとこ通る?
話してた内容? さあ、遠くから見ただけだったから。
でもなんとなく、なんかもめてるみたいな感じだったかな。
いや、そういう感じじゃないよ。どっちかっていうと、カップルの痴話喧嘩みたいな。
ひょっとしてパパ活相手じゃなくて、ガチの彼氏だったとか?
まあ、なんだっていいけどね。とにかくさ、
大方、美耶が一時期あたしにあまり絡んでこなかったのは、あたしにその現場を見られたことに気づいて気まずくなったから、とかじゃないの?
ん? ああ、知ってるよ。|朝倉《あさくら》でしょ?
なんか、あんたってリアクションいいよね。ウケるわ。なんでって、朝倉の様子見てたらわかるじゃん。まあ、ピュアなあんたにはわかんないか。
朝倉と付き合ったのはたぶん、カモフラージュだね。わたしは高校生としてまっとうな男女交際をしてますよーって、アピールしたかったんじゃない? ま、美耶が朝倉に本気じゃないことはすぐにわかったけどね。だってあの二人、手繋いでるとこすら見なかったし。
あ、待って。LINE来た。
……ん。おっけー。
それで? まだなにか?
え? あたしはあたしで、どうしてその日ホテル街になんていたかのかって?
……あんた、けっこう細かいね。はっきり言ってウザいよ、そういうの。
美耶が他によく話してた子?
さあね。あの子、色んな子とよく話してたから。「明るく、誰とでも分け隔てなく接する子」だからね。
まあ、でも。
その中でも特によく話す子とそこまで話さない子はいたみたいだけどね。あの子の中でちゃんと区別はあったんじゃない? 仲良くして得のある相手と、そうでない相手の。
だからそういう意味じゃ、一時期あの子とよく話してたのはなんとなくちょっと意外だったけどね。ほら、あの眼鏡の。いるじゃん、なんか暗くて髪の長いさ、怪談だか呪いだかの部活に入ってる……。
そうそう。ああ、|神野《じんの》? そういえば、そんな名前だったっけ。うん、よく話してたよ。美耶があんなことになる、わりと直前の時期だったんじゃないかな。
誰か呪い殺したい相手でもいたんじゃない? それか、本当は逆にあいつが美耶を呪い殺したとか?
べつに、何があったわけでもないよ。少なくとも、あたしのほうにはね。そもそも、ケンカするほど仲が良かったわけでもなかったし。
え? うん、もちろん。
当たり前じゃん。クラスメイトがあんなことになって、ショック受けない子なんていないでしょ。もちろん悲しんでるよ。お葬式にも、ちゃんと行ったし。
仲が良かった?
まあ、むこうがどう思ってたかは知らないけど、こっちとしては特にそういう感覚はなかったよ。べつにあたしだけに限らず、そう思ってた子、けっこう多かったんじゃないかな。
うん、そうだね。でも、だからこそじゃない?
「誰とでも仲良くできる」って、誰とも本当の意味では仲良くなれないってことでしょ?
え? べつに嫌ってたわけじゃないよ。
そういう表面的な人間関係を良好に保つスキルって、生きていく上で大事なものでしょ? それで本当に仲良くなれたんだって思い込んでるやつは相当ヤバいと思うけど。
美耶がどっちだったか? 知らないよ、そんなの。
でも、まあ、
少なくとも、あの子もちゃんと「裏表」のある人間だったってことは確かだね。
うん。
……言っていいかな? もう、時効だよね?
あの子さ、パパ活してたんだよ。
あはは、そんなに驚く? いまどき珍しくもなんともないでしょ、パパ活なんて。
どうしてって、単純に見たからだよ。あの子がパパ活してるとこ。
××駅の西口。裏のホテル街で、スーツ着たオッサンと話してるの、偶然見たんだ。
だからって、パパ活とは限らないって?
はは、あんたも随分ピュアだよね。じゃあ逆に訊くけど、美耶はそんなところで知らないオッサンと二人で何してたっていうの? もう夜の十時近い時間だったよ? たとえば塾かなんかからの帰りだったとして、駅に向かうなら別の道からでも行けるし。もし仮に近道だったとしても、わざわざあんなとこ通る?
話してた内容? さあ、遠くから見ただけだったから。
でもなんとなく、なんかもめてるみたいな感じだったかな。
いや、そういう感じじゃないよ。どっちかっていうと、カップルの痴話喧嘩みたいな。
ひょっとしてパパ活相手じゃなくて、ガチの彼氏だったとか?
まあ、なんだっていいけどね。とにかくさ、
大方、美耶が一時期あたしにあまり絡んでこなかったのは、あたしにその現場を見られたことに気づいて気まずくなったから、とかじゃないの?
ん? ああ、知ってるよ。|朝倉《あさくら》でしょ?
なんか、あんたってリアクションいいよね。ウケるわ。なんでって、朝倉の様子見てたらわかるじゃん。まあ、ピュアなあんたにはわかんないか。
朝倉と付き合ったのはたぶん、カモフラージュだね。わたしは高校生としてまっとうな男女交際をしてますよーって、アピールしたかったんじゃない? ま、美耶が朝倉に本気じゃないことはすぐにわかったけどね。だってあの二人、手繋いでるとこすら見なかったし。
あ、待って。LINE来た。
……ん。おっけー。
それで? まだなにか?
え? あたしはあたしで、どうしてその日ホテル街になんていたかのかって?
……あんた、けっこう細かいね。はっきり言ってウザいよ、そういうの。
美耶が他によく話してた子?
さあね。あの子、色んな子とよく話してたから。「明るく、誰とでも分け隔てなく接する子」だからね。
まあ、でも。
その中でも特によく話す子とそこまで話さない子はいたみたいだけどね。あの子の中でちゃんと区別はあったんじゃない? 仲良くして得のある相手と、そうでない相手の。
だからそういう意味じゃ、一時期あの子とよく話してたのはなんとなくちょっと意外だったけどね。ほら、あの眼鏡の。いるじゃん、なんか暗くて髪の長いさ、怪談だか呪いだかの部活に入ってる……。
そうそう。ああ、|神野《じんの》? そういえば、そんな名前だったっけ。うん、よく話してたよ。美耶があんなことになる、わりと直前の時期だったんじゃないかな。
誰か呪い殺したい相手でもいたんじゃない? それか、本当は逆にあいつが美耶を呪い殺したとか?