第25話 もう訳が分からない
ー/ー
くるりくるりと舞いながら飛ぶ。綺麗な水色の長い髪が風に靡き、きらきらと輝く。
空を舞台にしながら踊るハルピュイアを眺めながらシャロンはおぉと声を零していた。
踊っているのは旅芸人の一団の一人、ハルピュイアのアルシュアだ。彼女はルリアーナと同じく踊り子らしく、踊りの練習をしていた。
空中でするものだからその姿は里からでも見えるので、他のハルピュイアたちはたまに鑑賞していたりする。
「空で踊るって体力いるよね」
「戦うのとは違う筋肉使うそう」
アルシュアの踊りを眺めながらシャロンはカノアと話していると、踊っていたアルシュアが顔を向けてた。
「あ、噂の子だ!」
「う、噂?」
その言葉にシャロンが首を傾げれば、「マーシェの恋敵!」と返される。恋敵とはとシャロンが呟くとアルシュアは二人の前に降り立った。
「マーシェったら、婿候補さんを好きになるなんて、馬鹿だよねぇ」
けらけらと笑いながらアルシュアは言った。
それにどう答えればいいのかとシャロンが困ったように眉を下げると、彼女は「マーシェのことは気にしなくていいよ」と笑う。
「あなたの婿候補なんだからさ。マーシェは後からきた女なわけだし」
「でも、誰を選ぶかはジークさんが決めるわけで……」
「そうかもしれないけど、あなたの気持ちは伝えるべきだよ」
どう思っていて、ここにいてほしいのかを伝えるべきだ。アルシュアは言う、己の気持ちに嘘をつくべきではないし隠すべきでもないと。
そう言われてもシャロンはまだ悩んでいた。ジークハルトは訳あって逃げている最中で婿候補になったのも里の掟のせいだ。
彼を匿っているだけだと言われればそれまでで、彼は仕方なく婿候補になっただけなのだ。
だから、自分なんかが引き止めることはできないとそう思っている。
頬にキスという出来事から少し会話が上手くできなくなっているけれど、彼のことを嫌いになったわけではない。
「でも、まだ一緒にいたいんでしょ?」
「それは、その……」
「シャロン、素直になりなって」
カノアにまで諭されてしまい、シャロンは言い返せない。
まだ少し、そう少し一緒に入れたらなと思ってしまっている自分がいたからだ。
「マーシェのことは気にしないほうがいい。あの子、ちょっと勝手がすぎるし。暴走気味だからさ」
気に入ったものは手に入れないと気がすまない、思い通りにいかないのも嫌い。
そんな性格故に暴走気味で勝手な行動も多いのだとアルシュアは愚痴る。
「あの子のせいで面倒ごとに巻き込まれたことが何度あったか。団長も副団長も甘すぎるんだよねぇ」
「仲間なのに結構言う……」
「だって、本当のことだしぃ」
そんなに好きでもないしとばっさり言い切る。そんなアルシュアの様子から幾度となく彼女の面倒事に巻き込まれたようだ。
誰かに聞かれてても気にしないといった姿にシャロンは肝が据わっているなと思う。
話を聞いていたカノアは「面倒臭い人間ねぇ」と呆れた様子だ。
「あら、こんなところにいたの」
その声に振り返れば今まさに話していた人物、マーシェが腕を組んで立っていた。
シャロンに鋭い瞳を向けている彼女だがその口角は上がっている。
「訳ありなところを利用して、ジークさんを婿候補にした性悪ハルピュイア」
「利用なんてしてないですけど!」
流石のシャロンはそれには反論した。成り行きではあるものの、婿候補にしただけで訳ありを利用したわけではない。
そう返すのだがマーシェの中ではそれで固定されてしまっているようで聞く耳を持ってはくれなかった。
「言い訳はいいわよ、なんて酷い女なのかしら。ジークさんが可哀想だわ! でも、それももう終わりね!」
「え?」
「だって、ジークさんは護衛としてついてくるのだもの」
にっこりと笑みを見せてマーシェは言った、団長が説得してくれたのだと。シャロンは言葉が出なかった。
否定したかったけれどこの里にいるよりは良いのではないかとそう思ってしまって。
「嘘でしょ!」
「嘘じゃないわ!」
シャロンの代わりに反論するカノアにマーシェは口元に手を添えながら笑う。
「こんな場所にいるぐらいならワタシたちと一緒にいるほうが良いに決まってるじゃない。これに懲りたら利用する真似はしないことね!」
それはそれは悪い表情をしながらマーシェは笑う。それが胸に突き刺さってシャロンは目を細めると俯いた。
「ちょっと、マーシェ! それは……」
「アルシュアは黙っててよ!」
マーシェは「あなたは関係ないでしょ」と睨む。そのきつい眼差しにアルシュアは「だめだこりゃ」と呆れたように息を吐いた。
「シャロン?」
名を呼ばれてシャロンが顔を上げれば、マーシェの少し後ろにジークハルトが立っていた。
不思議そうにこちらを見つめる彼の瞳にシャロンは堪えきれず、翼をはためかせて飛んだ。
*
「シャロン!」
いきなり飛んでいったシャロンにカノアが声を上げるも、そんな言葉は聞こえていないように彼女は森の奥の方へと飛んでいってしまう。
「……シャロンはどうしたんだ?」
一連の行動に困惑した様子でジークハルトが問うと、カノアがきっと睨む。
「アナタのせいでしょうがっ!」
カノアはそう声を荒げてジークハルトの胸ぐらを掴んだ。
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踊っているのは旅芸人の一団の一人、ハルピュイアのアルシュアだ。彼女はルリアーナと同じく踊り子らしく、踊りの練習をしていた。
空中でするものだからその姿は里からでも見えるので、他のハルピュイアたちはたまに鑑賞していたりする。
「空で踊るって体力いるよね」
「戦うのとは違う筋肉使うそう」
アルシュアの踊りを眺めながらシャロンはカノアと話していると、踊っていたアルシュアが顔を向けてた。
「あ、噂の子だ!」
「う、噂?」
その言葉にシャロンが首を傾げれば、「マーシェの恋敵!」と返される。恋敵とはとシャロンが呟くとアルシュアは二人の前に降り立った。
「マーシェったら、婿候補さんを好きになるなんて、馬鹿だよねぇ」
けらけらと笑いながらアルシュアは言った。
それにどう答えればいいのかとシャロンが困ったように眉を下げると、彼女は「マーシェのことは気にしなくていいよ」と笑う。
「あなたの婿候補なんだからさ。マーシェは後からきた女なわけだし」
「でも、誰を選ぶかはジークさんが決めるわけで……」
「そうかもしれないけど、あなたの気持ちは伝えるべきだよ」
どう思っていて、ここにいてほしいのかを伝えるべきだ。アルシュアは言う、己の気持ちに嘘をつくべきではないし隠すべきでもないと。
そう言われてもシャロンはまだ悩んでいた。ジークハルトは訳あって逃げている最中で婿候補になったのも里の掟のせいだ。
彼を匿っているだけだと言われればそれまでで、彼は仕方なく婿候補になっただけなのだ。
だから、自分なんかが引き止めることはできないとそう思っている。
頬にキスという出来事から少し会話が上手くできなくなっているけれど、彼のことを嫌いになったわけではない。
「でも、まだ一緒にいたいんでしょ?」
「それは、その……」
「シャロン、素直になりなって」
カノアにまで諭されてしまい、シャロンは言い返せない。
まだ少し、そう少し一緒に入れたらなと思ってしまっている自分がいたからだ。
「マーシェのことは気にしないほうがいい。あの子、ちょっと勝手がすぎるし。暴走気味だからさ」
気に入ったものは手に入れないと気がすまない、思い通りにいかないのも嫌い。
そんな性格故に暴走気味で勝手な行動も多いのだとアルシュアは愚痴る。
「あの子のせいで面倒ごとに巻き込まれたことが何度あったか。団長も副団長も甘すぎるんだよねぇ」
「仲間なのに結構言う……」
「だって、本当のことだしぃ」
そんなに好きでもないしとばっさり言い切る。そんなアルシュアの様子から幾度となく彼女の面倒事に巻き込まれたようだ。
誰かに聞かれてても気にしないといった姿にシャロンは肝が据わっているなと思う。
話を聞いていたカノアは「面倒臭い人間ねぇ」と呆れた様子だ。
「あら、こんなところにいたの」
その声に振り返れば今まさに話していた人物、マーシェが腕を組んで立っていた。
シャロンに鋭い瞳を向けている彼女だがその口角は上がっている。
「訳ありなところを利用して、ジークさんを婿候補にした性悪ハルピュイア」
「利用なんてしてないですけど!」
流石のシャロンはそれには反論した。成り行きではあるものの、婿候補にしただけで訳ありを利用したわけではない。
そう返すのだがマーシェの中ではそれで固定されてしまっているようで聞く耳を持ってはくれなかった。
「言い訳はいいわよ、なんて酷い女なのかしら。ジークさんが可哀想だわ! でも、それももう終わりね!」
「え?」
「だって、ジークさんは護衛としてついてくるのだもの」
にっこりと笑みを見せてマーシェは言った、団長が説得してくれたのだと。シャロンは言葉が出なかった。
否定したかったけれどこの里にいるよりは良いのではないかとそう思ってしまって。
「嘘でしょ!」
「嘘じゃないわ!」
シャロンの代わりに反論するカノアにマーシェは口元に手を添えながら笑う。
「こんな場所にいるぐらいならワタシたちと一緒にいるほうが良いに決まってるじゃない。これに懲りたら利用する真似はしないことね!」
それはそれは悪い表情をしながらマーシェは笑う。それが胸に突き刺さってシャロンは目を細めると俯いた。
「ちょっと、マーシェ! それは……」
「アルシュアは黙っててよ!」
マーシェは「あなたは関係ないでしょ」と睨む。そのきつい眼差しにアルシュアは「だめだこりゃ」と呆れたように息を吐いた。
「シャロン?」
名を呼ばれてシャロンが顔を上げれば、マーシェの少し後ろにジークハルトが立っていた。
不思議そうにこちらを見つめる彼の瞳にシャロンは堪えきれず、翼をはためかせて飛んだ。
*
「シャロン!」
いきなり飛んでいったシャロンにカノアが声を上げるも、そんな言葉は聞こえていないように彼女は森の奥の方へと飛んでいってしまう。
「……シャロンはどうしたんだ?」
一連の行動に困惑した様子でジークハルトが問うと、カノアがきっと睨む。
「アナタのせいでしょうがっ!」
カノアはそう声を荒げてジークハルトの胸ぐらを掴んだ。