シオ

ー/ー



 治安維持部隊は普段のやる気の無い態度から一変して、血眼になりながらエナハの街を捜索していた。

 片っ端から店をあたり、通行人にも聞き込みをしている。

 その手はシオが武器を売ろうとしていた店にも及んだ。

「治安維持部隊だ、聞きたい事がある」

 様々な事に心当たりがありすぎる店主は驚くが、顔に出さないよう対応する。

「へぇ、どうも。治安維持部隊さんが何の御用で……」

「金色の剣を知らないか。竜の素材で出来ているらしい。勇者様の剣だ」

 あのバカ、とんでもない物に手を出したなと。冷や汗が流石に噴き出る店主。

 だが、白を切る。

「金色の剣……。心当たりはありませんねぇ」

「そうか、念のため店を見させてもらう」

 治安維持部隊は店を物色し、納得したのか店を出ようとする。

「何か分かったらすぐに連絡を入れるように」

 店主はニコニコ笑顔で返した。

「はっ、心得ています」

 ドアが閉まったのを見て、本当にまずい事になったと思った。

 あの小娘、このままじゃ死ぬかもしれねぇと。

 助けてやる義理は無いが、まぁ死ぬなよと祈ってはおく店主。




「シオー、なんか街が騒がしいよ」

 スラム街の少女がシオのテントを覗いた。

 寝起きでパンをかじっていたシオは面倒くさそうに返す。

「んだよ、殺しでもあったのか?」

「違うってー。勇者様の剣が盗まれて、治安維持部隊がすっごい怒っているってさ」

 それを聞いてシオはケラケラ笑った。

「勇者様の剣? 剣を盗まれるたぁ勇者様も大したことないんだな」

「なんでも、金色で竜の素材を使っているからすぐ分かるって」

 シオはその言葉を聞いて、かじっていたパンを落とした。

「なっ、それ本当か!?」

「うん、大人たちが言ってた」

 シオは顔が青ざめ、気が遠くなった。

「わ、悪い、ちょっと用事を思い出したわ」

 シオは急いで身支度をして、勇者の剣と防具を置いたまま逃げた。

 捕まったら殺される。そう考え、俊足の魔法を使い、街から離れようとした。

 それが逆にいけなかった。

「おい、貴様。そんなに急いでどうした?」

 街周辺で不審者を張っていた治安維持部隊に見つかる。

 気が動転したシオは一気に走って逃げようとした。

「おい!! 貴様待てー!!!」

 そう叫びながら追いかけてくる。逃げ足には自信があったが、雷の攻撃魔法を飛ばされ、それを身に受けてしまう。

「がぎゃっ!!」

 全身が痺れて動けなくなり、地面に転がるシオ。

「貴様、盗人のガキだな? 連れて行くぞ!」

 シオは拘束魔法を掛けられ、身動きが取れなくなる。

「は、離せ!!!」

 じたばたと手足を動かそうとするも、動けない。






「手間取らせやがって……」

 治安維持部隊の兵士が近付くと、声だけで抵抗しようとするシオ。

「やめろ!! こっち来んな!!」

「黙れ、下手打ちやがって。お前は右手の斬り落としだけじゃすまねぇ、この場で……」

 そこで魔力を感知したマルクエンとラミッタが駆け付けた。

「ゆ、勇者様!! 怪しげな者を取り押さえましたので」

 とっさに兵士はシオに話せなくなる沈黙の魔法を掛ける。

 シオを見てマルクエンは顔をしかめた。

「怪しげなって言ったって、その子はまだ子供じゃないですか」

「いえ、この街では少し有名な手癖の悪い者です」

 治安維持部隊の言葉にラミッタは突っかかる。

「そんな奴を、今の今まで野放しにしていたのかしら?」

 ラミッタに言われ、治安維持部隊は言葉に詰まった。

「まぁいいわ。その子と話をさせてくれるかしら?」

「いえ、勇者様のお手を煩わせるわけにはいきません。我々で尋問を……」

 ラミッタは笑顔を作るが、目が笑っていないまま言う。

「勇者の言う事が聞けないのかしら?」

 流石に勇者という立場を振りかざしすぎだと思ったマルクエンはラミッタを止めようとする。

「おい、ラミッタ。そこまで言わなくても……」

「アンタは黙ってなさい。とにかくその子は預かるわ」

「か、かしこまりました……」

「宿敵、頼んだわよ」

「あぁ……」

 拘束されて、口も塞がれている女の子をマルクエンは担ぎ上げた。




 治安維持部隊の兵士は、隊長に今あった出来事を報告した。

「そうか。まずい事になったな……」

 隊長が言うと、部下の兵士も顔を青くしている。

「これでは我々の秘密が……」

「ヤツを向かわせるぞ」

 隊長の言葉に兵士は頷いた。

「はっ、ですが勇者相手では流石のアイツも……」

「なに、ガキを殺して逃げるだけさ、大丈夫。大丈夫だ……」




 街の外れでラミッタはシオの沈黙魔法を解いてやる。

「ぷっはぉ!! やっと喋れる!!」

 そんなシオにラミッタは話しかけた。

「アンタが私達の剣を盗んだの? 中々に度胸があるじゃない」

「し、知らなかったんだ!! まさか勇者様の剣だったなんて!!」

 言い訳をするシオにマルクエンは諭すように言う。

「別に、私達の物ではなくても盗みはダメだ」

 その言葉に、シオは。

「んだよ、だったら、だったら!!」

 そこまで言ってから思い切り叫ぶ。

「だったら!! 盗み以外に生きていく方法を教えてくれよ!!!」

 シオの勢いは止まらない。

「アンタら勇者様なんだろ!? 世界の救世主様なんだろ!? だったらなんで私みたいな盗んでしか生きられない貧民がいるんだよ!!」

「あぁ、すまない」

 マルクエンが頭を下げるのを見てシオは驚く。

 そして、マルクエンは続けて言う。

「飢える者が居るのは国の責任だ」

「き、綺麗事ばっかり言いやがって!!」

 その瞬間。マルクエンとラミッタは殺気を感じて振り返る。


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 治安維持部隊は普段のやる気の無い態度から一変して、血眼になりながらエナハの街を捜索していた。
 片っ端から店をあたり、通行人にも聞き込みをしている。
 その手はシオが武器を売ろうとしていた店にも及んだ。
「治安維持部隊だ、聞きたい事がある」
 様々な事に心当たりがありすぎる店主は驚くが、顔に出さないよう対応する。
「へぇ、どうも。治安維持部隊さんが何の御用で……」
「金色の剣を知らないか。竜の素材で出来ているらしい。勇者様の剣だ」
 あのバカ、とんでもない物に手を出したなと。冷や汗が流石に噴き出る店主。
 だが、白を切る。
「金色の剣……。心当たりはありませんねぇ」
「そうか、念のため店を見させてもらう」
 治安維持部隊は店を物色し、納得したのか店を出ようとする。
「何か分かったらすぐに連絡を入れるように」
 店主はニコニコ笑顔で返した。
「はっ、心得ています」
 ドアが閉まったのを見て、本当にまずい事になったと思った。
 あの小娘、このままじゃ死ぬかもしれねぇと。
 助けてやる義理は無いが、まぁ死ぬなよと祈ってはおく店主。
「シオー、なんか街が騒がしいよ」
 スラム街の少女がシオのテントを覗いた。
 寝起きでパンをかじっていたシオは面倒くさそうに返す。
「んだよ、殺しでもあったのか?」
「違うってー。勇者様の剣が盗まれて、治安維持部隊がすっごい怒っているってさ」
 それを聞いてシオはケラケラ笑った。
「勇者様の剣? 剣を盗まれるたぁ勇者様も大したことないんだな」
「なんでも、金色で竜の素材を使っているからすぐ分かるって」
 シオはその言葉を聞いて、かじっていたパンを落とした。
「なっ、それ本当か!?」
「うん、大人たちが言ってた」
 シオは顔が青ざめ、気が遠くなった。
「わ、悪い、ちょっと用事を思い出したわ」
 シオは急いで身支度をして、勇者の剣と防具を置いたまま逃げた。
 捕まったら殺される。そう考え、俊足の魔法を使い、街から離れようとした。
 それが逆にいけなかった。
「おい、貴様。そんなに急いでどうした?」
 街周辺で不審者を張っていた治安維持部隊に見つかる。
 気が動転したシオは一気に走って逃げようとした。
「おい!! 貴様待てー!!!」
 そう叫びながら追いかけてくる。逃げ足には自信があったが、雷の攻撃魔法を飛ばされ、それを身に受けてしまう。
「がぎゃっ!!」
 全身が痺れて動けなくなり、地面に転がるシオ。
「貴様、盗人のガキだな? 連れて行くぞ!」
 シオは拘束魔法を掛けられ、身動きが取れなくなる。
「は、離せ!!!」
 じたばたと手足を動かそうとするも、動けない。
「手間取らせやがって……」
 治安維持部隊の兵士が近付くと、声だけで抵抗しようとするシオ。
「やめろ!! こっち来んな!!」
「黙れ、下手打ちやがって。お前は右手の斬り落としだけじゃすまねぇ、この場で……」
 そこで魔力を感知したマルクエンとラミッタが駆け付けた。
「ゆ、勇者様!! 怪しげな者を取り押さえましたので」
 とっさに兵士はシオに話せなくなる沈黙の魔法を掛ける。
 シオを見てマルクエンは顔をしかめた。
「怪しげなって言ったって、その子はまだ子供じゃないですか」
「いえ、この街では少し有名な手癖の悪い者です」
 治安維持部隊の言葉にラミッタは突っかかる。
「そんな奴を、今の今まで野放しにしていたのかしら?」
 ラミッタに言われ、治安維持部隊は言葉に詰まった。
「まぁいいわ。その子と話をさせてくれるかしら?」
「いえ、勇者様のお手を煩わせるわけにはいきません。我々で尋問を……」
 ラミッタは笑顔を作るが、目が笑っていないまま言う。
「勇者の言う事が聞けないのかしら?」
 流石に勇者という立場を振りかざしすぎだと思ったマルクエンはラミッタを止めようとする。
「おい、ラミッタ。そこまで言わなくても……」
「アンタは黙ってなさい。とにかくその子は預かるわ」
「か、かしこまりました……」
「宿敵、頼んだわよ」
「あぁ……」
 拘束されて、口も塞がれている女の子をマルクエンは担ぎ上げた。
 治安維持部隊の兵士は、隊長に今あった出来事を報告した。
「そうか。まずい事になったな……」
 隊長が言うと、部下の兵士も顔を青くしている。
「これでは我々の秘密が……」
「ヤツを向かわせるぞ」
 隊長の言葉に兵士は頷いた。
「はっ、ですが勇者相手では流石のアイツも……」
「なに、ガキを殺して逃げるだけさ、大丈夫。大丈夫だ……」
 街の外れでラミッタはシオの沈黙魔法を解いてやる。
「ぷっはぉ!! やっと喋れる!!」
 そんなシオにラミッタは話しかけた。
「アンタが私達の剣を盗んだの? 中々に度胸があるじゃない」
「し、知らなかったんだ!! まさか勇者様の剣だったなんて!!」
 言い訳をするシオにマルクエンは諭すように言う。
「別に、私達の物ではなくても盗みはダメだ」
 その言葉に、シオは。
「んだよ、だったら、だったら!!」
 そこまで言ってから思い切り叫ぶ。
「だったら!! 盗み以外に生きていく方法を教えてくれよ!!!」
 シオの勢いは止まらない。
「アンタら勇者様なんだろ!? 世界の救世主様なんだろ!? だったらなんで私みたいな盗んでしか生きられない貧民がいるんだよ!!」
「あぁ、すまない」
 マルクエンが頭を下げるのを見てシオは驚く。
 そして、マルクエンは続けて言う。
「飢える者が居るのは国の責任だ」
「き、綺麗事ばっかり言いやがって!!」
 その瞬間。マルクエンとラミッタは殺気を感じて振り返る。