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君と二人きり。

ー/ー



―「俺は小鳥遊さんのことなんて呼んだらいい?」
 心臓の鼓動がはっきりと耳に伝わる。
 對馬君いや、そういえば一颯君って呼んでって言われたか。
 私、小鳥遊穂稀|《たかなしほまれ》は大好きな人と絶賛おしゃべり中だ。こんなに話せると思ってなかったのに、親友の小羽玖が私のためにいろいろしてくれて一颯君と話せている。
 小羽玖ってすごい。
 小羽玖は一颯君と同小なんだって。といっても、小羽玖には恋心がないからあんまり私の気持ちを分かってくれないんだよね。
 男子を一度も好きになったことがないなんて、私には想像できない。私には好きな人がいない時間が一瞬もないから。ぱっと見てすぐにその人を好きになっちゃう人だから、3股とか普通にしてたかな。
 でも、今は私の前にいる對馬一颯|《つしまいぶき》君のことが大好きだ。   
 待って、なんかさっき問いかけてたよね私に。そうだ、名前のことだ。
 やっぱりここは呼び捨てがいいな、なんて。
「えー、普通に穂稀とか…。」
 究極にはずかった。
  でも、小羽玖情報ではグイグイいかないと駄目なタイプらしい。らしいんだけど、一颯君も結構グイグイ派だからどうすればいいか分かんない。制服のスカートをぎゅっと手で握りしめている。
 引かれて…ないかな?
 「おっけ」
上の方から一颯君の声が聞こえた。ハッと顔をあげる。一颯君はニコニコしながら
「穂稀よろしく。いい名前だね。」
って。いい名前だねって、一颯君が。あぁ、ヤバいんだけど、いちいち発する言葉がかっこよすぎるのやめてくれませんか!
 一颯君と見つめ合ってるとその顔がよりかっこよく見えてすぐに目をそらしてしまう。
 ―ガタッ。後ろから、椅子が床を引きずる音がした。 
え、小羽玖?
小羽玖無しは無理だって。二人きりはちょっと気まずいかもだから。

「あ、あれ、小羽玖どこいくの?」
慌てて私がそういうと、
「ちょっとレポート提出すんのと、トイレ行ってくる。」
小羽玖と目が合う。
小羽玖のその目が私に頑張れ、と言っているように見えたから私も頑張るよ、という気持ちを込めて笑った。
そしたら、小羽玖も笑ってくれた。

さて、頑張るか!

一颯君ともっと仲良くなれるように。

気がつけば小羽玖は教室から出て行っていた。
教室には私と一颯君、それから陰キャの人が2人くらいいる。陰キャの人たちに聞かれてもあんまり広められないから大丈夫だよね。
「あのさ、」
一颯君は教室の啓示を眺めていた。
私がそうつぶやくと一颯君がこっちに目を向けた。
「小羽玖と同小なんだよね?」
「うん」
すぐに答えてくれた。やっぱり優しすぎ。
「あの」
「ねぇ」
話すタイミングが重なる。
「あ、ごめん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
聞きたいこと?なんだろう好きな食べ物とかそういう系?
「うん、なに?」
一颯君の顔から笑みが少し消えた気がした。

もっと大げさに言うと一颯君は少し緊張しているようにも見えた。

一颯君が息を吸う音が聞こえた。そして、私をまっすぐ見つめながら
「あのさ、」
と口を開いた。心臓の鼓動が早くなる。

え、なに。何を聞こうとしてるの?

「今日の放課後」
ほ、放課後?
「空いてる?」
「へ⁉」
私の口からぽろっと零れ落ちたその言葉は自分の声か分からないくらい変な声をしていた。
放課後空いてるって聞いてくるのは彼氏とかでしょ普通。
「あ、その」
思いもよらなかった質問にうまく返答ができない。
「あ、ごめんね、急にこんなこと聞いちゃって」
「あ、別に大丈夫…。」
大丈夫なんだけどどうしてそんなことを聞いてくるのかが不明でなんて答えたらいいのかよくわからない。
私が何も言えずにうずうずしていると
「いや、君と話してるのが楽しいから、放課後一緒に遊べないかな、なんて…。」
え⁉なにそれ、どゆこと⁉
「あ、あの」
「ごめん、急だったから全然断っても」
「断るわけないよ!あ、今日の放課後空いてるよ」
一颯君が私に気を使う必要はないし、断ったら私的に人間失格だからつい大きな声で断るわけない、って言っちゃった…。
「あ、そうなんだ、じゃ、あそぼ」
一颯君が口にしたあそぼという単語がやけに子供っぽく聞こえて可愛いな、って思ってしまった。
「じゃ、どこ行く?」
「え、ほかの子も一緒じゃないの?」
一颯君がいきなり私に今日どこ行くかの話を始めたから、4人くらいで行くのかな、と勝手に思っていた私にとってそれは思いもよらなことだった。
「え、2人で行くんじゃないの?」
え、今何て言った?2人だったらデートみたいじゃん。ていうか、デートじゃん。え、デート⁉
「え、いや、ちょ、無理だよ!」
頭の中にデートという単語が出てきたとたん私は叫んでいた。一颯君は目を丸くしていた。
「ダメ?」
もう、なんでそんな子供っぽく接してくるの?可愛すぎて死ぬからやめてほしいんですけど。
「あ、別に」
「よかった」
一颯君はにかっと笑った。可愛い。結局そのあとは2人で話し合い、最近オープンしたお店と図書館に行くことになった。

 あー、楽しみだな、一颯君との初デート的なやつ。

「服はどうする?」
女の子の重要ポイント、服装について聞いた。
そういえば、一颯君の私服姿見てみたいかも。なんて。
「うーん、制服でもいいけど私服にしよっか」
「え、あ、うん」
一颯君の口から自然に放たれた私服という言葉が聞きなれなくて、なんだか特別な感じがした。
「穂稀の私服姿楽しみだな」
ふっと一颯君の口からそんな言葉が漏れた。

 なに、言ってるの?

それは、まるで彼氏が言う言葉みたいじゃんか。
何も言えない私と一颯君の目が合う。
なんだろう、なんかいつもの一颯君と違うな。
 ふっと小さく笑って再び下を向いた一颯君が一瞬満面の笑みに見えたのは、気のせいだったのだろうか。


次のエピソードへ進む 誰にも分からないこと。


みんなのリアクション

―「俺は小鳥遊さんのことなんて呼んだらいい?」
 心臓の鼓動がはっきりと耳に伝わる。
 對馬君いや、そういえば一颯君って呼んでって言われたか。
 私、小鳥遊穂稀|《たかなしほまれ》は大好きな人と絶賛おしゃべり中だ。こんなに話せると思ってなかったのに、親友の小羽玖が私のためにいろいろしてくれて一颯君と話せている。
 小羽玖ってすごい。
 小羽玖は一颯君と同小なんだって。といっても、小羽玖には恋心がないからあんまり私の気持ちを分かってくれないんだよね。
 男子を一度も好きになったことがないなんて、私には想像できない。私には好きな人がいない時間が一瞬もないから。ぱっと見てすぐにその人を好きになっちゃう人だから、3股とか普通にしてたかな。
 でも、今は私の前にいる對馬一颯|《つしまいぶき》君のことが大好きだ。   
 待って、なんかさっき問いかけてたよね私に。そうだ、名前のことだ。
 やっぱりここは呼び捨てがいいな、なんて。
「えー、普通に穂稀とか…。」
 究極にはずかった。
  でも、小羽玖情報ではグイグイいかないと駄目なタイプらしい。らしいんだけど、一颯君も結構グイグイ派だからどうすればいいか分かんない。制服のスカートをぎゅっと手で握りしめている。
 引かれて…ないかな?
 「おっけ」
上の方から一颯君の声が聞こえた。ハッと顔をあげる。一颯君はニコニコしながら
「穂稀よろしく。いい名前だね。」
って。いい名前だねって、一颯君が。あぁ、ヤバいんだけど、いちいち発する言葉がかっこよすぎるのやめてくれませんか!
 一颯君と見つめ合ってるとその顔がよりかっこよく見えてすぐに目をそらしてしまう。
 ―ガタッ。後ろから、椅子が床を引きずる音がした。 
え、小羽玖?
小羽玖無しは無理だって。二人きりはちょっと気まずいかもだから。
「あ、あれ、小羽玖どこいくの?」
慌てて私がそういうと、
「ちょっとレポート提出すんのと、トイレ行ってくる。」
小羽玖と目が合う。
小羽玖のその目が私に頑張れ、と言っているように見えたから私も頑張るよ、という気持ちを込めて笑った。
そしたら、小羽玖も笑ってくれた。
さて、頑張るか!
一颯君ともっと仲良くなれるように。
気がつけば小羽玖は教室から出て行っていた。
教室には私と一颯君、それから陰キャの人が2人くらいいる。陰キャの人たちに聞かれてもあんまり広められないから大丈夫だよね。
「あのさ、」
一颯君は教室の啓示を眺めていた。
私がそうつぶやくと一颯君がこっちに目を向けた。
「小羽玖と同小なんだよね?」
「うん」
すぐに答えてくれた。やっぱり優しすぎ。
「あの」
「ねぇ」
話すタイミングが重なる。
「あ、ごめん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
聞きたいこと?なんだろう好きな食べ物とかそういう系?
「うん、なに?」
一颯君の顔から笑みが少し消えた気がした。
もっと大げさに言うと一颯君は少し緊張しているようにも見えた。
一颯君が息を吸う音が聞こえた。そして、私をまっすぐ見つめながら
「あのさ、」
と口を開いた。心臓の鼓動が早くなる。
え、なに。何を聞こうとしてるの?
「今日の放課後」
ほ、放課後?
「空いてる?」
「へ⁉」
私の口からぽろっと零れ落ちたその言葉は自分の声か分からないくらい変な声をしていた。
放課後空いてるって聞いてくるのは彼氏とかでしょ普通。
「あ、その」
思いもよらなかった質問にうまく返答ができない。
「あ、ごめんね、急にこんなこと聞いちゃって」
「あ、別に大丈夫…。」
大丈夫なんだけどどうしてそんなことを聞いてくるのかが不明でなんて答えたらいいのかよくわからない。
私が何も言えずにうずうずしていると
「いや、君と話してるのが楽しいから、放課後一緒に遊べないかな、なんて…。」
え⁉なにそれ、どゆこと⁉
「あ、あの」
「ごめん、急だったから全然断っても」
「断るわけないよ!あ、今日の放課後空いてるよ」
一颯君が私に気を使う必要はないし、断ったら私的に人間失格だからつい大きな声で断るわけない、って言っちゃった…。
「あ、そうなんだ、じゃ、あそぼ」
一颯君が口にしたあそぼという単語がやけに子供っぽく聞こえて可愛いな、って思ってしまった。
「じゃ、どこ行く?」
「え、ほかの子も一緒じゃないの?」
一颯君がいきなり私に今日どこ行くかの話を始めたから、4人くらいで行くのかな、と勝手に思っていた私にとってそれは思いもよらなことだった。
「え、2人で行くんじゃないの?」
え、今何て言った?2人だったらデートみたいじゃん。ていうか、デートじゃん。え、デート⁉
「え、いや、ちょ、無理だよ!」
頭の中にデートという単語が出てきたとたん私は叫んでいた。一颯君は目を丸くしていた。
「ダメ?」
もう、なんでそんな子供っぽく接してくるの?可愛すぎて死ぬからやめてほしいんですけど。
「あ、別に」
「よかった」
一颯君はにかっと笑った。可愛い。結局そのあとは2人で話し合い、最近オープンしたお店と図書館に行くことになった。
 あー、楽しみだな、一颯君との初デート的なやつ。
「服はどうする?」
女の子の重要ポイント、服装について聞いた。
そういえば、一颯君の私服姿見てみたいかも。なんて。
「うーん、制服でもいいけど私服にしよっか」
「え、あ、うん」
一颯君の口から自然に放たれた私服という言葉が聞きなれなくて、なんだか特別な感じがした。
「穂稀の私服姿楽しみだな」
ふっと一颯君の口からそんな言葉が漏れた。
 なに、言ってるの?
それは、まるで彼氏が言う言葉みたいじゃんか。
何も言えない私と一颯君の目が合う。
なんだろう、なんかいつもの一颯君と違うな。
 ふっと小さく笑って再び下を向いた一颯君が一瞬満面の笑みに見えたのは、気のせいだったのだろうか。