ep56 宿屋

ー/ー



「それで……どうするつもりなんですか?」

 部屋の隅のイスにちょこんと座ってシヒロが言った。
 俺はベッドに腰掛けて腕を組む。

「そうだな……」

 俺たちは今、宿屋にいる。下の食堂で晩飯を済ませ、ちょうど二階の部屋に上がってきたところだ。

「彼らを手配した人たち……〔ダムド〕でしたよね。フリーダム傘下の組織とかではないんですかね?」

「組織というほどしっかり構成されたものでもないのかもな。いずれにしても、わざわざあんなふうに俺に近づいてくる時点で〔フリーダム〕と何らかの繋がりがあると考えるのが妥当だろう」

「だけどさっきの人たちは〔フリーダム〕でもなければ〔ダムド〕でもないんですよね。情報の信憑性はあるのでしょうか」

「〔ダムド〕からヤツらに与えられた命令は『あの銀髪の冒険者と仲間を捕まえてこい』ってだけ。それ以上でも以下でもない。つまり、信憑性以前にヤツらはそれ以上のことは知らないんだろう。結局さっきのヤツらは末端ですらないってことだ」

「なんというか……ずいぶんと敵まで距離がありますね。ついこの前は〔フリーダム〕と正面から戦っていたのに」

「今まではいわば戦場でやり合っていただけ。しかもヤツらにとって俺はつねにイレギュラーの存在。そして今回はじめて〔フリーダム〕から俺に対して意図を持って接触してきている。
〔フリーダム〕は得体の知れない組織だが、ヤツらからしても〔銀髪の魔剣使い〕は得体の知れぬ者。ヤツらとしても慎重になるのは当然だろう」

「さっきの人は本当にあのままにしておいて良かったんですか?」

「問題ない。もっとも、アイツらがこの先無事でいられるのかどうかはわからないけどな」

「あの、クローさん」

「なんだ?」

「クローさんは〔フリーダム〕を潰すつもりなんですか?」

「……どうだろうな」

 正直、その点は自分でもわからなかった。というより今は『この力で人助けができれば』ということだけだった。
 目の前に〔フリーダム〕とかいう悪い連中がいて、そいつらから〔魔導剣士〕の力で人を守る。それ以上でも以下でもない。そもそも、俺の命はもう長くないんだ。

「クローさん?」

「ん?」

「ど、どうかしましたか?」

「なんでもないが?」

「そうですか。ならいいんですけど……」

「あっ、ベッドはシヒロが使えって言ったもんな。俺がここ座ってちゃ使えないよな」

 俺はすっくと立ち上がってベッドから離れる。
 シヒロは慌てて椅子からぴょんと跳び上がった。

「そそそんな! まだ大丈夫です! それにぼくがホントにひとりで使っちゃっていいんですか?」

「そもそも一人用の部屋の一人用のベッドなんだ。それに、万が一の時に俺が動きやすいしな」

「や、やっぱり部屋を分けた方が」

「さっきも言っただろ? お前の安全のためだ。まあ、ひとりでゆっくり寝たいのはわかるが」

「あの、その、というか…」

 シヒロは頬を赤くした。

「なんだ?」

「なななんでもないです!」

「?」

「じ、じゃあ、ぼくそっちに行きますね!」


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「それで……どうするつもりなんですか?」
 部屋の隅のイスにちょこんと座ってシヒロが言った。
 俺はベッドに腰掛けて腕を組む。
「そうだな……」
 俺たちは今、宿屋にいる。下の食堂で晩飯を済ませ、ちょうど二階の部屋に上がってきたところだ。
「彼らを手配した人たち……〔ダムド〕でしたよね。フリーダム傘下の組織とかではないんですかね?」
「組織というほどしっかり構成されたものでもないのかもな。いずれにしても、わざわざあんなふうに俺に近づいてくる時点で〔フリーダム〕と何らかの繋がりがあると考えるのが妥当だろう」
「だけどさっきの人たちは〔フリーダム〕でもなければ〔ダムド〕でもないんですよね。情報の信憑性はあるのでしょうか」
「〔ダムド〕からヤツらに与えられた命令は『あの銀髪の冒険者と仲間を捕まえてこい』ってだけ。それ以上でも以下でもない。つまり、信憑性以前にヤツらはそれ以上のことは知らないんだろう。結局さっきのヤツらは末端ですらないってことだ」
「なんというか……ずいぶんと敵まで距離がありますね。ついこの前は〔フリーダム〕と正面から戦っていたのに」
「今まではいわば戦場でやり合っていただけ。しかもヤツらにとって俺はつねにイレギュラーの存在。そして今回はじめて〔フリーダム〕から俺に対して意図を持って接触してきている。
〔フリーダム〕は得体の知れない組織だが、ヤツらからしても〔銀髪の魔剣使い〕は得体の知れぬ者。ヤツらとしても慎重になるのは当然だろう」
「さっきの人は本当にあのままにしておいて良かったんですか?」
「問題ない。もっとも、アイツらがこの先無事でいられるのかどうかはわからないけどな」
「あの、クローさん」
「なんだ?」
「クローさんは〔フリーダム〕を潰すつもりなんですか?」
「……どうだろうな」
 正直、その点は自分でもわからなかった。というより今は『この力で人助けができれば』ということだけだった。
 目の前に〔フリーダム〕とかいう悪い連中がいて、そいつらから〔魔導剣士〕の力で人を守る。それ以上でも以下でもない。そもそも、俺の命はもう長くないんだ。
「クローさん?」
「ん?」
「ど、どうかしましたか?」
「なんでもないが?」
「そうですか。ならいいんですけど……」
「あっ、ベッドはシヒロが使えって言ったもんな。俺がここ座ってちゃ使えないよな」
 俺はすっくと立ち上がってベッドから離れる。
 シヒロは慌てて椅子からぴょんと跳び上がった。
「そそそんな! まだ大丈夫です! それにぼくがホントにひとりで使っちゃっていいんですか?」
「そもそも一人用の部屋の一人用のベッドなんだ。それに、万が一の時に俺が動きやすいしな」
「や、やっぱり部屋を分けた方が」
「さっきも言っただろ? お前の安全のためだ。まあ、ひとりでゆっくり寝たいのはわかるが」
「あの、その、というか…」
 シヒロは頬を赤くした。
「なんだ?」
「なななんでもないです!」
「?」
「じ、じゃあ、ぼくそっちに行きますね!」