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第16話 メリーさんの過去話

ー/ー



 メリーは俺の料理が食べたい、ということで今日の夕ご飯はハンバーグにした。
 大きさは……大体150グラムより少し多いくらいかな?
メリーはあんな体格なのに、まあまあ食べるからこのくらい大きくても大丈夫だろう。
 それ以前に、幽霊が食べ物を食べるということ自体が理解不能……。
透けて食べ物が床に落ちるなんてことないよな?
 形を整えて、熱したフライパンにそれを入れる。
じっくり焼けばハンバーグはジューパチパチという音がなって食欲をそそってくる。
 うん、我ながら美味そうだ。
 後は大皿に野菜乗っけてハンバーグを添えればハイ完成! なんて簡単なんだ……。これ考えた人絶対天才だと思う。

「出来ましたよ〜!」

『あっ! 美味しそうです!』

 メリーは料理を見た瞬間に涎をだらだら垂らして眼を異様に輝かせる。
 この表情を見せられると、なんだかこっちまで嬉しくなっちゃうような感じだ。

『――――た、食べていいですか?』

 上目遣いで俺を見て思わず可愛いと思ってしまう反面、涎が垂れているせいで全てが台無しになってしまって残念と思ってしまう自分がいた。

「良いよ、先食べてて。俺はドレッシング持ってくるから」

『じゃあ頂きまーす!』

 メリーは遠慮することなく、まずはハンバーグに手をつけた。
 パクリと大きくひと口ハンバーグを頬張った。そしていつもの、

『ゆーまくん美味しいです! はむっ……うーん! 美味しいです!』

「そうかそうか、なら良かったよ! さて俺も食べるか。頂きまーす」

 俺も自分の作ったハンバーグを箸で切り、それを口の中へと入れる。

「うまっ」

 自分で作ったものだが、やっぱり美味かった。やっぱ手作りは良いねえ……。
 コンビニとかスーパーで売っている弁当も美味いし、結局は自分で作ったほうが安いし美味い。
余ったら明日の分として冷蔵庫とかで保存できるしな。
 まあそれは良いとして、俺はいつも見て疑問に思っていること。

「メリーって箸使えるのが意外なんだよなあ」

 そう、メリーは箸も普通に扱えるということだ。
 正直決めつけるのもどうかとは思うけど、メリーって幽霊なんだから元々は同じ人間だったに違いないと思う。
 眼が蒼いからヨーロッパの方か? でも髪の毛は黒いし……どこの人だったんだろうか?

『メリーは日本にずっといるので箸は普通に扱えますよ?』

「そうなのか?」

『はい、ていうかメリーはもとから日本人ですしね』

「ふーん、そうなんだ……ってちょっと待って。今なんて言った?」

『メリーはもとから日本人ですよ?』

「えぇぇぇぇぇぇ!!!???」

『――――!?』

「あ……ごめん急に大声出しちゃって……」

『い、いえ……』

 メリーが日本人だったとは……。
通りで箸扱うのが上手すぎるわけだ。
 メリーがここに来て初めて料理を提供した時、メリーはフォークとスプーンを使うかと思ってテーブルに出したことがあった。しかしメリーは、箸はないかと俺に訪ねて来て、そして普通に箸を使って食べていた。

「でももとから日本人だって言うのはどういう……」

『そういえばゆーまくんにはまだ話していませんでしたね』

「何が?」

『――――ここから重い話になるんですけど……良いですか?』

「――――ああ」

 多分、メリーの過去の話だろう。
 俺はメリーのことをもっと知りたいと本人の目の前で言ったし、メリーだって話したくないような内容かもしれないが、それでも俺に打ち明けてくれるからにはちゃんと聞いてあげる必要があると思った。

『ゆーまくんにはまだ話していませんでしたが、メリーはもともと普通の女子高生だったんです』

「えっ、メリーって高校生だったの!?」

『何かありますか?』

「な、なにもないです……」

 あ、危ないところだった……。本当にメリーに本気で殺されるところだった。
 まさかメリーが女子高生だったなんて……。
俺より3つくらい年下かと思ってたんだけど、まあ、人は見た目によりけりということだ。
 おっと、メリーがこっちを睨んできたからこの考えはよそう。人は見た目で判断しちゃだめってことですよ皆さん。わかりましたか?

『メリーは人と接することがあまり得意ではなくて、クラスの中でも1番影が薄い存在でした』

 なんかわかるわ~。俺も基本話すこと得意じゃないから自然とみんなから孤立していくんだよね。おかげで影の薄さが一層薄くなっていくんだよなぁ……。

『小学生の頃からそうだったのでメリーは平気だったんですが、ただ1人だけ仲が良いお友達がいました。ひなたという名前の子で、一人ぼっちのメリーに唯一話しかけてくれた女の子でした。いつも学校が終わったら公園で一緒に遊んだり、高校生になってからはよく本屋さんに行ってましたね。お互い本を読むのが好きだったので』

 なんか咲みたいな人だな……。
咲も本読むの好きだし、そのひなたっていう人と話が合いそうな気がする。

『でも……』

 メリーは急に暗い表情になる。これからかなり重たい話になるのだろう。
 俺も姿勢を正してメリーの一言一句を聞き逃さないように耳を傾けた。

『あれは夏の梅雨の時期で、雨が毎日のように降っているときでした。その日も大雨で、ひなたと一緒に2人で傘の中に入って帰っているときでした。ひなたと話しながら歩いていると、突然ひなたが悲鳴を上げたんです。ひなたはすぐに後ろを振り向いて、通り過ぎた男の人を睨んでいるんです』

「痴漢、だったのか?」

『その通りです。ひなたは普段は優しい子なんですが、非道なことは決して許さない性格だったので相当怒っていました。傘を投げ捨てて、通り過ぎてく男の人にちょっと待てって叫んだんです。その男の人はメリーたちの方を振り向くと、『なんだぁっ!?』ってキレてきたんです。相手は不良だったんです』

 嫌な予感しかしない……。
 俺の頭に浮かんだのは誘拐とか殴ったとか――――直接言えないけどあんなこととか、とにかく通報されて即現行犯逮捕されるレベルのことが起こってしまったんだろう。

『こんな時に変な妄想とかしないでくださいね?』

「し、してないし!?」

『――――なら良いですけど』

 すいません、変な妄想するのはやめるんでその怖い顔をするのはやめて下さい……。

『まあ、それはどうでもいいとして……。最初は口喧嘩になったんです。メリーは間に入って止めようと考えました。でもメリーはそんな勇気はあるわけもなく、2人を見守ることしか出来なかったんです。そのせいで、2人はどんどん喧嘩が発展していって……。堪えきれなくなったのか、男の人はひなたに一発パンチを喰らわせました』

「――――」

『当たってしまったひなたはよろついて地面に座り込みました。メリーはもう見ていられなくて、ひなたの方へ駆け寄ってもう良いから早くここから離れようって言ったんです。ひなたもそれに渋々賛成してくれて、何とか逃げ切ることが出来ました』

「それは良かったな……」

『そう思ったのも束の間でした』

 えっ……。
それで終わり、じゃないのか?

『その一週間後、ひなたは突然何者かによって……殺されました』

「――――は?」

『メリーもゆーまくんと同じ反応でしたよ。最初は何言ってるの? って思いましたから。でも本当に……殺されていたんです……!』

 メリーの声が震え始めた。
 ボロボロのワンピースの裾をギュッと握りしめる。
恐らく涙を必死に堪えているのだろう。
微かだが、鼻を啜る音が聞こえた。

『――――鑑定の結果、性行為、その後に暴力、最期は首絞めによる窒息死だったんです』

「ん? 暴力とかはわかるけど、その……性行為っていうのにすごく引っかかるんだけど? 別にいやらしいとかじゃなくて、事件としてすごく引っかかる」

『後に犯人が捕まり、取り調べによってわかったことは、自分の欲を満たすためことと勝負の決着をつけたかったそうです』

「勝負の決着――――もしかしてひなたっていう人に痴漢した男か!」

『その通りです。その男の人が犯人だったんです。メリーは唯一のお友達がいなくなってしまいました。しかも本当の意味でのお別れで……』

 なんて悲しすぎるエピソードなんだ……。
 俺だって友達はいない。
しかし、俺の隣には咲という唯一の友達兼幼馴染がいる。
 でも、メリーは友達の死によって本当に独りぼっちになってしまった。
その孤独感は、長い間どれだけ辛い思いをし続けてきただろうか……。
 きっと俺も、いや誰も想像できないほどだっただろう。

『メリーはもう耐えられなって、少しでも楽になろうと思って身投げして自ら命を断ったんです。でもこれで逃げ切れることはなく、メリーは今の姿になりました。体はもうだめでも、魂だけは生き残ったんです。そこからずっと、メリーは怪談話で有名になったメリーさんになったわけです……。犯人だった男の人の家が一番最初でした。どうしてもひなたの件でメリーは怒っていましたから。電話で恐怖感を出し、背後を取って食べる……。それが最初です』

「――――で、今に至るってことか……」

『そういうことです。それがメリーなんです……』

 何だか、すごい生々しい話を聞かされた気がする。いつもははしゃいで楽しそうにしているからあまり想像することは出来ないけど、色々と大変、辛い思いをしてきたんだなって、胸に突き刺さるように感じた。

『実はゆーまくんは中学時代から知ってるんですよ?』

「――――はい?」


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 メリーは俺の料理が食べたい、ということで今日の夕ご飯はハンバーグにした。
 大きさは……大体150グラムより少し多いくらいかな?
メリーはあんな体格なのに、まあまあ食べるからこのくらい大きくても大丈夫だろう。
 それ以前に、幽霊が食べ物を食べるということ自体が理解不能……。
透けて食べ物が床に落ちるなんてことないよな?
 形を整えて、熱したフライパンにそれを入れる。
じっくり焼けばハンバーグはジューパチパチという音がなって食欲をそそってくる。
 うん、我ながら美味そうだ。
 後は大皿に野菜乗っけてハンバーグを添えればハイ完成! なんて簡単なんだ……。これ考えた人絶対天才だと思う。
「出来ましたよ〜!」
『あっ! 美味しそうです!』
 メリーは料理を見た瞬間に涎をだらだら垂らして眼を異様に輝かせる。
 この表情を見せられると、なんだかこっちまで嬉しくなっちゃうような感じだ。
『――――た、食べていいですか?』
 上目遣いで俺を見て思わず可愛いと思ってしまう反面、涎が垂れているせいで全てが台無しになってしまって残念と思ってしまう自分がいた。
「良いよ、先食べてて。俺はドレッシング持ってくるから」
『じゃあ頂きまーす!』
 メリーは遠慮することなく、まずはハンバーグに手をつけた。
 パクリと大きくひと口ハンバーグを頬張った。そしていつもの、
『ゆーまくん美味しいです! はむっ……うーん! 美味しいです!』
「そうかそうか、なら良かったよ! さて俺も食べるか。頂きまーす」
 俺も自分の作ったハンバーグを箸で切り、それを口の中へと入れる。
「うまっ」
 自分で作ったものだが、やっぱり美味かった。やっぱ手作りは良いねえ……。
 コンビニとかスーパーで売っている弁当も美味いし、結局は自分で作ったほうが安いし美味い。
余ったら明日の分として冷蔵庫とかで保存できるしな。
 まあそれは良いとして、俺はいつも見て疑問に思っていること。
「メリーって箸使えるのが意外なんだよなあ」
 そう、メリーは箸も普通に扱えるということだ。
 正直決めつけるのもどうかとは思うけど、メリーって幽霊なんだから元々は同じ人間だったに違いないと思う。
 眼が蒼いからヨーロッパの方か? でも髪の毛は黒いし……どこの人だったんだろうか?
『メリーは日本にずっといるので箸は普通に扱えますよ?』
「そうなのか?」
『はい、ていうかメリーはもとから日本人ですしね』
「ふーん、そうなんだ……ってちょっと待って。今なんて言った?」
『メリーはもとから日本人ですよ?』
「えぇぇぇぇぇぇ!!!???」
『――――!?』
「あ……ごめん急に大声出しちゃって……」
『い、いえ……』
 メリーが日本人だったとは……。
通りで箸扱うのが上手すぎるわけだ。
 メリーがここに来て初めて料理を提供した時、メリーはフォークとスプーンを使うかと思ってテーブルに出したことがあった。しかしメリーは、箸はないかと俺に訪ねて来て、そして普通に箸を使って食べていた。
「でももとから日本人だって言うのはどういう……」
『そういえばゆーまくんにはまだ話していませんでしたね』
「何が?」
『――――ここから重い話になるんですけど……良いですか?』
「――――ああ」
 多分、メリーの過去の話だろう。
 俺はメリーのことをもっと知りたいと本人の目の前で言ったし、メリーだって話したくないような内容かもしれないが、それでも俺に打ち明けてくれるからにはちゃんと聞いてあげる必要があると思った。
『ゆーまくんにはまだ話していませんでしたが、メリーはもともと普通の女子高生だったんです』
「えっ、メリーって高校生だったの!?」
『何かありますか?』
「な、なにもないです……」
 あ、危ないところだった……。本当にメリーに本気で殺されるところだった。
 まさかメリーが女子高生だったなんて……。
俺より3つくらい年下かと思ってたんだけど、まあ、人は見た目によりけりということだ。
 おっと、メリーがこっちを睨んできたからこの考えはよそう。人は見た目で判断しちゃだめってことですよ皆さん。わかりましたか?
『メリーは人と接することがあまり得意ではなくて、クラスの中でも1番影が薄い存在でした』
 なんかわかるわ~。俺も基本話すこと得意じゃないから自然とみんなから孤立していくんだよね。おかげで影の薄さが一層薄くなっていくんだよなぁ……。
『小学生の頃からそうだったのでメリーは平気だったんですが、ただ1人だけ仲が良いお友達がいました。ひなたという名前の子で、一人ぼっちのメリーに唯一話しかけてくれた女の子でした。いつも学校が終わったら公園で一緒に遊んだり、高校生になってからはよく本屋さんに行ってましたね。お互い本を読むのが好きだったので』
 なんか咲みたいな人だな……。
咲も本読むの好きだし、そのひなたっていう人と話が合いそうな気がする。
『でも……』
 メリーは急に暗い表情になる。これからかなり重たい話になるのだろう。
 俺も姿勢を正してメリーの一言一句を聞き逃さないように耳を傾けた。
『あれは夏の梅雨の時期で、雨が毎日のように降っているときでした。その日も大雨で、ひなたと一緒に2人で傘の中に入って帰っているときでした。ひなたと話しながら歩いていると、突然ひなたが悲鳴を上げたんです。ひなたはすぐに後ろを振り向いて、通り過ぎた男の人を睨んでいるんです』
「痴漢、だったのか?」
『その通りです。ひなたは普段は優しい子なんですが、非道なことは決して許さない性格だったので相当怒っていました。傘を投げ捨てて、通り過ぎてく男の人にちょっと待てって叫んだんです。その男の人はメリーたちの方を振り向くと、『なんだぁっ!?』ってキレてきたんです。相手は不良だったんです』
 嫌な予感しかしない……。
 俺の頭に浮かんだのは誘拐とか殴ったとか――――直接言えないけどあんなこととか、とにかく通報されて即現行犯逮捕されるレベルのことが起こってしまったんだろう。
『こんな時に変な妄想とかしないでくださいね?』
「し、してないし!?」
『――――なら良いですけど』
 すいません、変な妄想するのはやめるんでその怖い顔をするのはやめて下さい……。
『まあ、それはどうでもいいとして……。最初は口喧嘩になったんです。メリーは間に入って止めようと考えました。でもメリーはそんな勇気はあるわけもなく、2人を見守ることしか出来なかったんです。そのせいで、2人はどんどん喧嘩が発展していって……。堪えきれなくなったのか、男の人はひなたに一発パンチを喰らわせました』
「――――」
『当たってしまったひなたはよろついて地面に座り込みました。メリーはもう見ていられなくて、ひなたの方へ駆け寄ってもう良いから早くここから離れようって言ったんです。ひなたもそれに渋々賛成してくれて、何とか逃げ切ることが出来ました』
「それは良かったな……」
『そう思ったのも束の間でした』
 えっ……。
それで終わり、じゃないのか?
『その一週間後、ひなたは突然何者かによって……殺されました』
「――――は?」
『メリーもゆーまくんと同じ反応でしたよ。最初は何言ってるの? って思いましたから。でも本当に……殺されていたんです……!』
 メリーの声が震え始めた。
 ボロボロのワンピースの裾をギュッと握りしめる。
恐らく涙を必死に堪えているのだろう。
微かだが、鼻を啜る音が聞こえた。
『――――鑑定の結果、性行為、その後に暴力、最期は首絞めによる窒息死だったんです』
「ん? 暴力とかはわかるけど、その……性行為っていうのにすごく引っかかるんだけど? 別にいやらしいとかじゃなくて、事件としてすごく引っかかる」
『後に犯人が捕まり、取り調べによってわかったことは、自分の欲を満たすためことと勝負の決着をつけたかったそうです』
「勝負の決着――――もしかしてひなたっていう人に痴漢した男か!」
『その通りです。その男の人が犯人だったんです。メリーは唯一のお友達がいなくなってしまいました。しかも本当の意味でのお別れで……』
 なんて悲しすぎるエピソードなんだ……。
 俺だって友達はいない。
しかし、俺の隣には咲という唯一の友達兼幼馴染がいる。
 でも、メリーは友達の死によって本当に独りぼっちになってしまった。
その孤独感は、長い間どれだけ辛い思いをし続けてきただろうか……。
 きっと俺も、いや誰も想像できないほどだっただろう。
『メリーはもう耐えられなって、少しでも楽になろうと思って身投げして自ら命を断ったんです。でもこれで逃げ切れることはなく、メリーは今の姿になりました。体はもうだめでも、魂だけは生き残ったんです。そこからずっと、メリーは怪談話で有名になったメリーさんになったわけです……。犯人だった男の人の家が一番最初でした。どうしてもひなたの件でメリーは怒っていましたから。電話で恐怖感を出し、背後を取って食べる……。それが最初です』
「――――で、今に至るってことか……」
『そういうことです。それがメリーなんです……』
 何だか、すごい生々しい話を聞かされた気がする。いつもははしゃいで楽しそうにしているからあまり想像することは出来ないけど、色々と大変、辛い思いをしてきたんだなって、胸に突き刺さるように感じた。
『実はゆーまくんは中学時代から知ってるんですよ?』
「――――はい?」