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第4楽章〜フィナーレ〜③

ー/ー



 同日 午後9時すぎ〜

 〜黄瀬壮馬の見解〜

 3〜4分の間隔をおいてスタートするペアは、次々と炊飯場の広場から小道に吸い込まれていく。
 最初のペアが出発してから、1時間弱が経過した頃、ようやく、ボクたちの番が回ってきた。

 待ち時間の間、クジ引きの結果について、吹奏楽部の3年生たちに、あれこれと抗議をしていた白草さんも、取り付く島も無い寿副部長の態度と早見部長の説得で、最後はどうにか引き下がり、いまは、竜司と紅野さんが必要以上に近づかないように、牽制をしているようだ。

 そうしているうちに、後ろから数えて3組目のボクたちの順番が回ってきた。

「18番のペアの人たちは、準備してくださ〜い」

 タイムキーパーを務める早見部長から声がかかり、ボクと白草さんは、小道へと連なるスタート地点に移動する。

「はい、懐中電灯。折り返し地点にある展望台に御札が貼ってあるから、それを持って帰ってくれば、クリアだよ。途中で棄権したくなったら、いつでも、私に連絡してね。それじゃ、暗い道だから気をつけて」

 懐中電灯を手渡してくれた早見先輩は、そう言って、ボクたちを見送ってくれた。

 周囲を雑木に覆われているものの光量の強い懐中電灯のあかりを頼ると、暗がりに見えた小道でも、恐怖感は薄れる。……と言っても、それは、つい先日まで、()()()()()に心をとらわれて、深夜でも山奥に出掛けていた、ボクや竜司の感覚が壊れてしまっているからかも知れないけど……。

 そんなこともあって、自分としては普段はしない気のつかい方をしてしまい、ついつい、白草さんに話しかけてしまう。

「ゴメンね。ボクが相手で。ホントは、ペアになりたかった相手がいたんじゃないの?」

「気にしないで……黄瀬クンのせいじゃないし、黄瀬クンが相手だからイヤだって訳でもないから」

「そっか……じゃあ、質問を変えよう。もし、竜司がペアだったら、白草さんは、どんな話をしたかった?」

 ボクの問いかけに、クラスメートは、しばし沈黙する。
 そして、しばらく歩いたあと、彼女はポツリとつぶやいた。

「クロとなら――――――別に特別な話をする必要は無いと思う。こうして、二人で歩いているだけでも、すごく幸せな気分になると思うから……」

 おやおや、これはこれは……。
 白草さんの口から出た言葉は、ボクにとって意外なモノだった。

 彼女が竜司のことを想っているのは間違いないだろう、と予想はしていたものの……。

 こう言っては、本当に申し訳ないけど、白草四葉という女子に、こんなにも純情な一面があるとは思わなかった。もしかして、この隣を歩く同年代のカリスマ女子にも、普通の女の子っぽい側面があるんだろうか?

 これは、他人の恋愛話に興味が無いボクでも関心を持たざるを得ない内容だ。
 
 そこで、思い切って彼女にたずねてみることにする。

「白草さん、いま話してくれたようなことを竜司に言ったことある?」

「えっ!? クロ本人に? それは……言ったことない、と思うけど―――」

「ふ〜ん、やっぱり、そうか……」

 ボクがため息をつきながら答えると、白草さんは、ムッとした表情で反論しようとする。
 その瞬間、懐中電灯の先に、白い浮遊体があらわれ、ボクたち二人を目掛けて突っ込んで来た。

「けて……助けて……」

 フワリと白い布を被った怪異らしき存在は、そんな言葉をつぶやきながら、ボクらの周りをグルグルと回りだす。

「すみません、先輩。わたしたち、いま大事な話をしているので、あとにしてもらって良いですか?」

 白草さんが、少し苛立たしげに言うと、

「なんだよ〜、わかったよ」

と男子生徒の声がして、シーツを被った幽霊は去って行った。

(あの声は、トロンボーン担当の津田先輩だろうか?)

 ボクが、その正体について心当たりを探っていると、「まったく、とんだ邪魔が入ったわね」と、つぶやいたあと、白草さんは、あらためてボクに語りかけてくる。

「ねぇ、黄瀬クン。やっぱり、そうかって……どういう意味?」

 少なくとも、これまでは、ボクに対して見せたことが無いような真剣な表情で彼女はたずねてきた。

「どういう意味、と言われても――――――白草さんは、竜司自身に伝えていないことが多いんだ、と思ってね」

「クロに伝えていない……って、そりゃ、なんでもかんでも自分の想ってることを相手に伝える必要は無いでしょ?」

「もちろん、そうなんだろうけどさ……白草さん、前に竜司やボクに恋愛についての講義をしてくれたときに言ってたじゃないか? 告白をする前に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、って……少なくとも、いまの竜司には、白草さんの想いはあんまり伝わってないと思うよ?」

 ボクが断言するように返答すると、クラスメートは、

「なっ! そんなことって……!!」

と、絶句する。

「わたしが、こんなにもそばでアピールしてるのに、気付かないなんて、ちょっとおかしいんじゃないの!?」

 静寂に包まれた小道で、彼女は声をあげて、食って掛かってくるけど、ボクは冷静さを失うことは無かった。

「それをボクに言われても困るけどさ……白草さん、良ければ、竜司のどんなところが好きなのか聞かせてくれない?」

 ボクが隣を歩くクラスメートにたずねると、彼女は、こちらに顔を向けて即答した。


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 同日 午後9時すぎ〜
 〜黄瀬壮馬の見解〜
 3〜4分の間隔をおいてスタートするペアは、次々と炊飯場の広場から小道に吸い込まれていく。
 最初のペアが出発してから、1時間弱が経過した頃、ようやく、ボクたちの番が回ってきた。
 待ち時間の間、クジ引きの結果について、吹奏楽部の3年生たちに、あれこれと抗議をしていた白草さんも、取り付く島も無い寿副部長の態度と早見部長の説得で、最後はどうにか引き下がり、いまは、竜司と紅野さんが必要以上に近づかないように、牽制をしているようだ。
 そうしているうちに、後ろから数えて3組目のボクたちの順番が回ってきた。
「18番のペアの人たちは、準備してくださ〜い」
 タイムキーパーを務める早見部長から声がかかり、ボクと白草さんは、小道へと連なるスタート地点に移動する。
「はい、懐中電灯。折り返し地点にある展望台に御札が貼ってあるから、それを持って帰ってくれば、クリアだよ。途中で棄権したくなったら、いつでも、私に連絡してね。それじゃ、暗い道だから気をつけて」
 懐中電灯を手渡してくれた早見先輩は、そう言って、ボクたちを見送ってくれた。
 周囲を雑木に覆われているものの光量の強い懐中電灯のあかりを頼ると、暗がりに見えた小道でも、恐怖感は薄れる。……と言っても、それは、つい先日まで、|と《・》|あ《・》|る《・》|怪《・》|異《・》に心をとらわれて、深夜でも山奥に出掛けていた、ボクや竜司の感覚が壊れてしまっているからかも知れないけど……。
 そんなこともあって、自分としては普段はしない気のつかい方をしてしまい、ついつい、白草さんに話しかけてしまう。
「ゴメンね。ボクが相手で。ホントは、ペアになりたかった相手がいたんじゃないの?」
「気にしないで……黄瀬クンのせいじゃないし、黄瀬クンが相手だからイヤだって訳でもないから」
「そっか……じゃあ、質問を変えよう。もし、竜司がペアだったら、白草さんは、どんな話をしたかった?」
 ボクの問いかけに、クラスメートは、しばし沈黙する。
 そして、しばらく歩いたあと、彼女はポツリとつぶやいた。
「クロとなら――――――別に特別な話をする必要は無いと思う。こうして、二人で歩いているだけでも、すごく幸せな気分になると思うから……」
 おやおや、これはこれは……。
 白草さんの口から出た言葉は、ボクにとって意外なモノだった。
 彼女が竜司のことを想っているのは間違いないだろう、と予想はしていたものの……。
 こう言っては、本当に申し訳ないけど、白草四葉という女子に、こんなにも純情な一面があるとは思わなかった。もしかして、この隣を歩く同年代のカリスマ女子にも、普通の女の子っぽい側面があるんだろうか?
 これは、他人の恋愛話に興味が無いボクでも関心を持たざるを得ない内容だ。
 そこで、思い切って彼女にたずねてみることにする。
「白草さん、いま話してくれたようなことを竜司に言ったことある?」
「えっ!? クロ本人に? それは……言ったことない、と思うけど―――」
「ふ〜ん、やっぱり、そうか……」
 ボクがため息をつきながら答えると、白草さんは、ムッとした表情で反論しようとする。
 その瞬間、懐中電灯の先に、白い浮遊体があらわれ、ボクたち二人を目掛けて突っ込んで来た。
「けて……助けて……」
 フワリと白い布を被った怪異らしき存在は、そんな言葉をつぶやきながら、ボクらの周りをグルグルと回りだす。
「すみません、先輩。わたしたち、いま大事な話をしているので、あとにしてもらって良いですか?」
 白草さんが、少し苛立たしげに言うと、
「なんだよ〜、わかったよ」
と男子生徒の声がして、シーツを被った幽霊は去って行った。
(あの声は、トロンボーン担当の津田先輩だろうか?)
 ボクが、その正体について心当たりを探っていると、「まったく、とんだ邪魔が入ったわね」と、つぶやいたあと、白草さんは、あらためてボクに語りかけてくる。
「ねぇ、黄瀬クン。やっぱり、そうかって……どういう意味?」
 少なくとも、これまでは、ボクに対して見せたことが無いような真剣な表情で彼女はたずねてきた。
「どういう意味、と言われても――――――白草さんは、竜司自身に伝えていないことが多いんだ、と思ってね」
「クロに伝えていない……って、そりゃ、なんでもかんでも自分の想ってることを相手に伝える必要は無いでしょ?」
「もちろん、そうなんだろうけどさ……白草さん、前に竜司やボクに恋愛についての講義をしてくれたときに言ってたじゃないか? 告白をする前に、|上《・》|手《・》|に《・》|好《・》|き《・》|バ《・》|レ《・》|さ《・》|せ《・》|る《・》|の《・》|が《・》|相《・》|手《・》|と《・》|付《・》|き《・》|合《・》|う《・》|た《・》|め《・》|の《・》|コ《・》|ツ《・》|だ《・》、って……少なくとも、いまの竜司には、白草さんの想いはあんまり伝わってないと思うよ?」
 ボクが断言するように返答すると、クラスメートは、
「なっ! そんなことって……!!」
と、絶句する。
「わたしが、こんなにもそばでアピールしてるのに、気付かないなんて、ちょっとおかしいんじゃないの!?」
 静寂に包まれた小道で、彼女は声をあげて、食って掛かってくるけど、ボクは冷静さを失うことは無かった。
「それをボクに言われても困るけどさ……白草さん、良ければ、竜司のどんなところが好きなのか聞かせてくれない?」
 ボクが隣を歩くクラスメートにたずねると、彼女は、こちらに顔を向けて即答した。