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SCENE063 横浜ダンジョン会議

ー/ー



 副支部長と出会ってから二日後のことだった。

 ブルブルブル……。

 俺のスマホが鳴っている。
 今日は学校だったので、今は授業中だ。とてもじゃないけれど出られない。

(参ったな……。よりにもよって真面目に授業を受けている時になんでかかってくるのかな……)

 しばらくスマホは震え続けていたのだけど、しばらくしてようやく震えはおさまっていた。本当に勘弁してほしい。
 授業が終わってから、俺はかかってきた電話に折り返しの電話をする。ちゃんと画面は確認してから電話しているよ。

「すみません、水瀬ですけど。先ほどお電話をいただいたようですが」

『ああ、数回かけさせてもらったよ。もしかして、授業中だったかな?』

「はい。今日は久しぶりに学校に出ていました。俺のコースなら、ダンジョン実績さえあれば単位は取れますけれど、ちゃんと学生をしておかないといけないと思いましたのでね」

『そうか。それは本当にタイミングが悪かったようだな』

 電話の相手は、どうやら先日お会いした副支部長のようだった。授業中に電話をかけてしまったことを悪く思っているみたいだ。

「いえ、大丈夫ですよ。俺は隠密のスキルのせいでいてもいなくても変わりませんから」

『そうか。なら、今すぐ横浜ダンジョンの入口まで来てほしい』

「ということは……」

『ああ、ダンジョンの主と話をさせてもらうつもりだ』

 副支部長はなんとも乗り気なようだ。

「ちょっと待って下さい。セイレーンさんに連絡を入れませんと。いくらなんでもアポなしでは、セイレーンさんも怒ってしまいますよ。どうも異界の高貴な方のようですから、ちゃんと礼節は持っておいた方がよいと思います」

『ふむ……。それならそこから君が連絡を入れてくれればいい。君が横浜ダンジョンに来るまでは時間がかかるだろう?』

「まあ、そうですけれど。……しょうがありませんね。では、俺が到着するまで待っていて下さいね、お願いしますから」

『無論だ』

 そういって、副支部長は通話を切っていた。
 俺は大きなため息をつく。
 隠密のスキルのせいで、いてもいなくても確かに変わらないんだが、俺の気分が全然違う。
 とはいえ、これは大事な交渉だから、俺が合わせないといけない。
 通話を終えた俺は、すぐさまセイレーンさんに対して電話を入れる。一応承諾はしてくれたので、シードラゴンさんが入口までやってくるはずだ。
 ウィンクさんと同じであるなら、シードラゴンさんはダンジョンから外に出られない。うまいこと俺が間を取り持たないとな。

「……よしっ」

 俺は気合いを入れると学校を後にして、横浜ダンジョンの入口へと向かっていった。
 ダンジョンの入口に到着すると、そこにはダンジョン管理局の人たちがたくさん集まっていた。とはいっても五人くらいだ。
 しかし、誰も俺に気が付かない。ダンジョン管理局の人たちには、俺の隠密スキルは見破れないらしい。
 なので、俺は隠密スキルを解いて、ダンジョン管理局の人たちの前に姿を見せる。

「おお、水瀬くん、来ていたのか」

「はい、ちょうど今さっき到着しました」

 副支部長の言葉に、俺は淡々と答える。

「ちょっと待っていて下さいね。ダンジョンに入ったところにシードラゴンさんが来ているはずですから」

「うむ、我々が安全に入れるように、よろしく頼むよ」

「分かりました」

 俺は了承をして、横浜ダンジョンに足を踏み入れる。いつもなら隠密スキルが発動した状態で入っていくので、スキルを切った状態では初めてだ。なので、とても緊張している。

「おお、よく来られましたな、下僕殿」

「下僕って……。セイレーンさんの呼び方を真似るんですね」

「セイレーン様に下僕として認められているのは、君だけですからね。とても名誉なことだと思われますぞ?」

「は、はあ……」

 シードラゴンさんの言い分に、俺はもうどうでもいいやと投げやりな反応を返していた。
 俺は気を取り直して、シードラゴンさんと話をすることにする。

「シードラゴンさん」

「はい、何でしょうか」

「電話でお伝えしたダンジョン管理局の方々が、ダンジョンの外で待機しています。お呼びしても大丈夫でしょうか」

 俺は中に入れて大丈夫かという質問をする。なにせダンジョンに入れば、モンスターがうようよしているのが普通だからだ。
 俺の質問を受けて、シードラゴンさんは笑っていた。

「この入口付近は安全地帯ですよ。そうでなければ、ダンジョン内で死んで復活した探索者がモンスターに襲われて再び死ぬことになります。そのような無慈悲なこと、セイレーン様はなさいません。どうぞ、ご安心を」

 言われてみれば確かにその通りだ。
 俺の目の前には、自動改札機に似たダンジョンのふたつめの入口がある。復活ポイントはこの改札の外にある。どうやら、この改札がダンジョンの本格的な内部との境界になっているようだ。

「あのへんてこな物体よりも外にいれば、モンスターに襲われることはありません。ささっ、早く中にお呼び下さいませ」

「分かりました」

 シードラゴンさんに言われて、俺はダンジョン管理局の人たちを中へと招き入れる。
 ダンジョン管理局の人とシードラゴンさんとの間で、一体どんな話し合いがもたれるんだろう。それ以前にどこで話をするつもりなんだろうかな。
 俺は間を取り持つと決意したのに、もう今から胃がキリキリ痛んでダウンしそうになっていた。
 頼むから、俺の意識もってくれよ……?


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 副支部長と出会ってから二日後のことだった。
 ブルブルブル……。
 俺のスマホが鳴っている。
 今日は学校だったので、今は授業中だ。とてもじゃないけれど出られない。
(参ったな……。よりにもよって真面目に授業を受けている時になんでかかってくるのかな……)
 しばらくスマホは震え続けていたのだけど、しばらくしてようやく震えはおさまっていた。本当に勘弁してほしい。
 授業が終わってから、俺はかかってきた電話に折り返しの電話をする。ちゃんと画面は確認してから電話しているよ。
「すみません、水瀬ですけど。先ほどお電話をいただいたようですが」
『ああ、数回かけさせてもらったよ。もしかして、授業中だったかな?』
「はい。今日は久しぶりに学校に出ていました。俺のコースなら、ダンジョン実績さえあれば単位は取れますけれど、ちゃんと学生をしておかないといけないと思いましたのでね」
『そうか。それは本当にタイミングが悪かったようだな』
 電話の相手は、どうやら先日お会いした副支部長のようだった。授業中に電話をかけてしまったことを悪く思っているみたいだ。
「いえ、大丈夫ですよ。俺は隠密のスキルのせいでいてもいなくても変わりませんから」
『そうか。なら、今すぐ横浜ダンジョンの入口まで来てほしい』
「ということは……」
『ああ、ダンジョンの主と話をさせてもらうつもりだ』
 副支部長はなんとも乗り気なようだ。
「ちょっと待って下さい。セイレーンさんに連絡を入れませんと。いくらなんでもアポなしでは、セイレーンさんも怒ってしまいますよ。どうも異界の高貴な方のようですから、ちゃんと礼節は持っておいた方がよいと思います」
『ふむ……。それならそこから君が連絡を入れてくれればいい。君が横浜ダンジョンに来るまでは時間がかかるだろう?』
「まあ、そうですけれど。……しょうがありませんね。では、俺が到着するまで待っていて下さいね、お願いしますから」
『無論だ』
 そういって、副支部長は通話を切っていた。
 俺は大きなため息をつく。
 隠密のスキルのせいで、いてもいなくても確かに変わらないんだが、俺の気分が全然違う。
 とはいえ、これは大事な交渉だから、俺が合わせないといけない。
 通話を終えた俺は、すぐさまセイレーンさんに対して電話を入れる。一応承諾はしてくれたので、シードラゴンさんが入口までやってくるはずだ。
 ウィンクさんと同じであるなら、シードラゴンさんはダンジョンから外に出られない。うまいこと俺が間を取り持たないとな。
「……よしっ」
 俺は気合いを入れると学校を後にして、横浜ダンジョンの入口へと向かっていった。
 ダンジョンの入口に到着すると、そこにはダンジョン管理局の人たちがたくさん集まっていた。とはいっても五人くらいだ。
 しかし、誰も俺に気が付かない。ダンジョン管理局の人たちには、俺の隠密スキルは見破れないらしい。
 なので、俺は隠密スキルを解いて、ダンジョン管理局の人たちの前に姿を見せる。
「おお、水瀬くん、来ていたのか」
「はい、ちょうど今さっき到着しました」
 副支部長の言葉に、俺は淡々と答える。
「ちょっと待っていて下さいね。ダンジョンに入ったところにシードラゴンさんが来ているはずですから」
「うむ、我々が安全に入れるように、よろしく頼むよ」
「分かりました」
 俺は了承をして、横浜ダンジョンに足を踏み入れる。いつもなら隠密スキルが発動した状態で入っていくので、スキルを切った状態では初めてだ。なので、とても緊張している。
「おお、よく来られましたな、下僕殿」
「下僕って……。セイレーンさんの呼び方を真似るんですね」
「セイレーン様に下僕として認められているのは、君だけですからね。とても名誉なことだと思われますぞ?」
「は、はあ……」
 シードラゴンさんの言い分に、俺はもうどうでもいいやと投げやりな反応を返していた。
 俺は気を取り直して、シードラゴンさんと話をすることにする。
「シードラゴンさん」
「はい、何でしょうか」
「電話でお伝えしたダンジョン管理局の方々が、ダンジョンの外で待機しています。お呼びしても大丈夫でしょうか」
 俺は中に入れて大丈夫かという質問をする。なにせダンジョンに入れば、モンスターがうようよしているのが普通だからだ。
 俺の質問を受けて、シードラゴンさんは笑っていた。
「この入口付近は安全地帯ですよ。そうでなければ、ダンジョン内で死んで復活した探索者がモンスターに襲われて再び死ぬことになります。そのような無慈悲なこと、セイレーン様はなさいません。どうぞ、ご安心を」
 言われてみれば確かにその通りだ。
 俺の目の前には、自動改札機に似たダンジョンのふたつめの入口がある。復活ポイントはこの改札の外にある。どうやら、この改札がダンジョンの本格的な内部との境界になっているようだ。
「あのへんてこな物体よりも外にいれば、モンスターに襲われることはありません。ささっ、早く中にお呼び下さいませ」
「分かりました」
 シードラゴンさんに言われて、俺はダンジョン管理局の人たちを中へと招き入れる。
 ダンジョン管理局の人とシードラゴンさんとの間で、一体どんな話し合いがもたれるんだろう。それ以前にどこで話をするつもりなんだろうかな。
 俺は間を取り持つと決意したのに、もう今から胃がキリキリ痛んでダウンしそうになっていた。
 頼むから、俺の意識もってくれよ……?