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SCENE061 横浜ダンジョン、最強計画

ー/ー



 本当に誰も来ないダンジョンって暇ですわね……。
 あたしは、とても退屈をしておりましたわ。
 横浜ダンジョンは全部で十階層ございますけれど、これまでの最高到達深度は七階層まで。あたしのところに到達できた探索者は、下僕ただ一人ですわ。

「本日はやけにため息をつかれておりますね、セイレーン様」

 あたしに声をかけてきたのは、執事をしておりますシードラゴンですわ。有能な部下ですけれど、こうも暇ですと、話をしていても退屈すぎるというものですわ。

「はあ、こちらの世界の娯楽を知ってしまったというのは、よろしくなかったかしらね」

「そうかも知れませんな」

 あたしの言葉に、まったく否定を入れることをしませんわね。少しくらいは何か苦言のひとつでも入れてみなさいと思いますわ。
 その時でしたわ。
 あたしが下僕から渡された携帯電話とかいうものが、妙な音を立てていますのよ。一体何が起きているというのかしら。

「おお、これはこれは」

 シードラゴンが携帯電話とやらを手に取って、何かを見ていますわね。

「セイレーン様。ウィンク殿がなにやら配信をしているようです。ご覧になってはいかがでしょうか」

「あら、あの新参者のダンジョンマスターですわね。何をなさっているのかしら」

 シードラゴンが告げてきた内容が気になりまして、あたしは配信サイトを立ち上げますわ。
 あたしが視聴している間は、ダンジョンの管理をシードラゴンに任せますわ。ダンジョンマスターの権限の一部は、サポートするモンスターにも付与することができますのよ。
 手が空いたあたしは、配信を視聴しております。
 画面は小さいですけれど、あたしたちモンスターには関係ありませんわ。目の良さは自慢ですわよ。

 ……どうやら、探索者の見習いとか呼ばれる存在に、ダンジョンに潜るための能力を教え込んでおりますようですわ。
 人間というのは不便ですわね。こうして教えてもらわなければ、自分の能力を使うこともできませんとは。
 モンスターは弱肉強食の世界ですから、自分で使い方を把握しませんと生き残ることは基本的にできませんのよ。
 あたしだって、モンスターの力は自力で使えるようになりましたわ。いくら高貴な貴族の血筋であっても、そこは基本的に変わりませんのよ。
 モンスターにとってしてみれば、それだけ生存競争が激しいということですものね。そこはしっかりと割り切っておりますわ。

「ふむ、あれは非破壊系のオブジェクトですわね。あたしたちには使い道がないと思って無視しておりましたけれど、なるほどそういう使い方がありますのね」

 真っ白な人形の使い方を見て、あたしはなるほどと思っておりますわ。

「ふむふむ、あの人形をトラップの起点にすることができそうですわね。破壊することで道が開けて奥に進めるようになる。いいアイディアですわ」

 ウィンクさんの配信を見ながら、あたしはダンジョンの新しい仕掛けなどを考えついてしまいますわ。
 外部からの情報がありますと、こういうことがありますのね。なるほど、異界のダンジョン管理システムが、ダンジョン間の移動を禁止している理由というものがよく分かりますわ。だって、このようにしてよそのダンジョンを見て新たな仕掛けを思いついてしまうのですからね。
 ダンジョンマスター同士を競わせることに重点を置いているダンジョンのシステムからすれば、よそのダンジョンの仕組みを不透明にしたがるのがよく分かりますわ。

 ふふっ、これは面白いですわね。

 ダンジョンの管理システムからしてみれば、まさか現地人の力を借りて、このような交流を行うなんて思ってもみなかったでしょうね。
 これもすべてはあのウィンクさんのおかげですわね。彼女がこちらの世界の配信なるシステムを使って下さったから、このような穴を突くことができましたのよ。
 そうなりますと、ここはあたしのシステムもうまく使ってもらえるようにしませんとね。
 ダンジョンの中であれば、どこで死のうとも入口で復活できるというシステムをね。
 高価な素材で探索者を釣り、罠で探索者を殺し、入口に復活させて再び来れるようにする。このシステムによって、あたしのダンジョンは多くの探索者を葬ってポイントを稼いできましたものね。

 ……これは、早速下僕を呼び出して作戦会議をしませんとね。
 うまくいけば、小さな積み重ねで大量のポイントをゲットできますわ。そのためには、このウィンクさんの探索者の育成というものをうまく使いませんとね。
 おーほっほっほっほっ。あたしってば、とても頭が冴えておりますわ!

「セイレーン様、本日も探索者どもは六階層止まりですね」

「仕方ありませんわ。そこで手に入る素材もかなりのものをそろえておりますから。それよりもシードラゴン、下僕を呼び出して下さいませんこと?」

「はあ、下僕を、でございますか?」

「ええ、そうですわ」

「承知致しました。ですが、そのためにはその配信視聴というものを、一度止めていただきませんと。下僕との連絡もそれを使っておりますからね」

「なんですって?!」

 あたしは意外な弱点に気付かされてしまう。
 下僕と連絡を取り合おうとすると、このウィンクの行っている配信というものを見れなくなってしまうというのよ。
 それはいけませんわ。この横浜ダンジョンをさらに効率的に運営するためのヒントを、この配信から得ようと思っていますのに。

「仕方ありませんわね。この配信が終わってから連絡を取りましょう」

「もしや、ダンジョンをもっと発展させるアイディアが思いつきましたのでしょうか」

「ええ。このダンジョンだけにあるこの復活機能を使って、ダンジョンポイントを荒稼ぎしますわよ。我が家の財力と知能というものを、異界のモンスターどもに見せつけてやりますわ」

 あたしはとても気合いが入っておりました。
 シードラゴンもあたしの気合いをしっかりと感じ取ってくれたようでして、これならば特に問題もなく進めることはできそうですわね。
 さあ、あたしのダンジョンの世界一位を絶対揺るぎのない確定的なものにしますわよ。


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 本当に誰も来ないダンジョンって暇ですわね……。
 あたしは、とても退屈をしておりましたわ。
 横浜ダンジョンは全部で十階層ございますけれど、これまでの最高到達深度は七階層まで。あたしのところに到達できた探索者は、下僕ただ一人ですわ。
「本日はやけにため息をつかれておりますね、セイレーン様」
 あたしに声をかけてきたのは、執事をしておりますシードラゴンですわ。有能な部下ですけれど、こうも暇ですと、話をしていても退屈すぎるというものですわ。
「はあ、こちらの世界の娯楽を知ってしまったというのは、よろしくなかったかしらね」
「そうかも知れませんな」
 あたしの言葉に、まったく否定を入れることをしませんわね。少しくらいは何か苦言のひとつでも入れてみなさいと思いますわ。
 その時でしたわ。
 あたしが下僕から渡された携帯電話とかいうものが、妙な音を立てていますのよ。一体何が起きているというのかしら。
「おお、これはこれは」
 シードラゴンが携帯電話とやらを手に取って、何かを見ていますわね。
「セイレーン様。ウィンク殿がなにやら配信をしているようです。ご覧になってはいかがでしょうか」
「あら、あの新参者のダンジョンマスターですわね。何をなさっているのかしら」
 シードラゴンが告げてきた内容が気になりまして、あたしは配信サイトを立ち上げますわ。
 あたしが視聴している間は、ダンジョンの管理をシードラゴンに任せますわ。ダンジョンマスターの権限の一部は、サポートするモンスターにも付与することができますのよ。
 手が空いたあたしは、配信を視聴しております。
 画面は小さいですけれど、あたしたちモンスターには関係ありませんわ。目の良さは自慢ですわよ。
 ……どうやら、探索者の見習いとか呼ばれる存在に、ダンジョンに潜るための能力を教え込んでおりますようですわ。
 人間というのは不便ですわね。こうして教えてもらわなければ、自分の能力を使うこともできませんとは。
 モンスターは弱肉強食の世界ですから、自分で使い方を把握しませんと生き残ることは基本的にできませんのよ。
 あたしだって、モンスターの力は自力で使えるようになりましたわ。いくら高貴な貴族の血筋であっても、そこは基本的に変わりませんのよ。
 モンスターにとってしてみれば、それだけ生存競争が激しいということですものね。そこはしっかりと割り切っておりますわ。
「ふむ、あれは非破壊系のオブジェクトですわね。あたしたちには使い道がないと思って無視しておりましたけれど、なるほどそういう使い方がありますのね」
 真っ白な人形の使い方を見て、あたしはなるほどと思っておりますわ。
「ふむふむ、あの人形をトラップの起点にすることができそうですわね。破壊することで道が開けて奥に進めるようになる。いいアイディアですわ」
 ウィンクさんの配信を見ながら、あたしはダンジョンの新しい仕掛けなどを考えついてしまいますわ。
 外部からの情報がありますと、こういうことがありますのね。なるほど、異界のダンジョン管理システムが、ダンジョン間の移動を禁止している理由というものがよく分かりますわ。だって、このようにしてよそのダンジョンを見て新たな仕掛けを思いついてしまうのですからね。
 ダンジョンマスター同士を競わせることに重点を置いているダンジョンのシステムからすれば、よそのダンジョンの仕組みを不透明にしたがるのがよく分かりますわ。
 ふふっ、これは面白いですわね。
 ダンジョンの管理システムからしてみれば、まさか現地人の力を借りて、このような交流を行うなんて思ってもみなかったでしょうね。
 これもすべてはあのウィンクさんのおかげですわね。彼女がこちらの世界の配信なるシステムを使って下さったから、このような穴を突くことができましたのよ。
 そうなりますと、ここはあたしのシステムもうまく使ってもらえるようにしませんとね。
 ダンジョンの中であれば、どこで死のうとも入口で復活できるというシステムをね。
 高価な素材で探索者を釣り、罠で探索者を殺し、入口に復活させて再び来れるようにする。このシステムによって、あたしのダンジョンは多くの探索者を葬ってポイントを稼いできましたものね。
 ……これは、早速下僕を呼び出して作戦会議をしませんとね。
 うまくいけば、小さな積み重ねで大量のポイントをゲットできますわ。そのためには、このウィンクさんの探索者の育成というものをうまく使いませんとね。
 おーほっほっほっほっ。あたしってば、とても頭が冴えておりますわ!
「セイレーン様、本日も探索者どもは六階層止まりですね」
「仕方ありませんわ。そこで手に入る素材もかなりのものをそろえておりますから。それよりもシードラゴン、下僕を呼び出して下さいませんこと?」
「はあ、下僕を、でございますか?」
「ええ、そうですわ」
「承知致しました。ですが、そのためにはその配信視聴というものを、一度止めていただきませんと。下僕との連絡もそれを使っておりますからね」
「なんですって?!」
 あたしは意外な弱点に気付かされてしまう。
 下僕と連絡を取り合おうとすると、このウィンクの行っている配信というものを見れなくなってしまうというのよ。
 それはいけませんわ。この横浜ダンジョンをさらに効率的に運営するためのヒントを、この配信から得ようと思っていますのに。
「仕方ありませんわね。この配信が終わってから連絡を取りましょう」
「もしや、ダンジョンをもっと発展させるアイディアが思いつきましたのでしょうか」
「ええ。このダンジョンだけにあるこの復活機能を使って、ダンジョンポイントを荒稼ぎしますわよ。我が家の財力と知能というものを、異界のモンスターどもに見せつけてやりますわ」
 あたしはとても気合いが入っておりました。
 シードラゴンもあたしの気合いをしっかりと感じ取ってくれたようでして、これならば特に問題もなく進めることはできそうですわね。
 さあ、あたしのダンジョンの世界一位を絶対揺るぎのない確定的なものにしますわよ。