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SCENE059 最初は大変だよね

ー/ー



 見習い探索者である四人に僕の力を見せつけるため、デコイへと視線を向ける。
 ひとつは衣織お姉さんが破壊してくれたので、現在修復中。僕が向かうのはもうひとつのデコイだ。

「見ていて下さいよ。これが魔法っていう力ですからね」

「は、はい」

 僕の言葉で、見習い探索者たちの表情が変わっていた。

「シャドウランス!」

 僕は闇の槍を出現させて、目の前のデコイへと叩き込む。
 僕自身のレベルは低いけれど、魔法の威力はなかなかなもの。今日もデコイを貫き、地面には大きなくぼみを作っていた。
 正直なところ、ダンジョンを壊すのはよろしくない。よろしくないけれど、これくらいを見せつけないとダンジョンマスターとしての威厳に関わると思うんだ。だから、僕はシャドウエッジじゃなくてシャドウランスを使ったんだよ。

「どうですかね。これが魔法というものです」

 魔法を使った僕は、見習い探索者たちの方へと振り返る。
 みんな、おーっというような顔をして口を開けていた。

「ラミア族というのは水と闇の魔法を得意としているらしいです。今の魔法をその闇属性の魔法で、見ての通り、闇の魔力で形作った闇を相手に叩き込むという魔法です」

「へえ、すごーいっ!」

 思ったよりも反応が薄いかな。唯一の女の子だけが反応してるじゃないか。
 男の子三人はどうしたんだろう。

「まったく、礼儀のなっていない連中だな。瞬がせっかく魔法を見せてくれたというのに、まともな反応ひとつできないのか」

「衣織お姉さん、ストップストップ」

 まったく、僕のこととなるとどうしてそんなに熱くなるのかなぁ。
 ほら、見習い探索者たちが怯えちゃってる。これは人選を間違えたかもしれない。

「まったく、衣織お姉さんがそんな態度を毎回取るようじゃ、谷地さんたちにお願いして講師役変えてもらうよ?」

「なにっ! それは困る」

「だったら、もうちょっと穏やかにしよう?」

「むむむむ……。仕方あるまい、瞬と気兼ねなく会うためだ。我慢しよう」

 いや、なんで僕に会うことが目的になってるのかな。衣織お姉さん、重度の魅了にかかってない?
 僕はついつい心配になっちゃうよ。ため息をつかざるを得ない状況だった。
 とりあえず衣織お姉さんのことは放っておいて、講義を続けないとね。デコイもいい感じで修復されてきているし。

「さて、みなさんはどのようなスキルを持っているんですかね。適性検査の時に、教えてもらっているはずですから」

 僕が四人に質問すると、どういうわけか四人とも困った顔をしていた。あれ、これって分からないってことかな?
 これでは話が進まなくなるので、ダンジョン管理局の谷地さんを呼んで四人のデータを見せてもらうことにした。

「普通は極秘資料なんですけれどね。指導のためなら仕方ありません、お見せしましょう」

 極秘資料というから渋るかと思ったんだけど、谷地さんは四人のデータを見てくれと言わんばかりに僕の前に資料を差し出していた。
 ぱらぱらと四人のデータを見させてもらう。その結果、男の子の二人は前衛職、残りの男女は後衛職のスキルを持っていることが分かった。

「ふむふむ。でも、魔法適性はみんななさそう……?」

「ですね」

「ちょっと、僕の出番もう終わり?!」

 あまりの事実に、僕はつい谷地さんに迫ってしまう。

「まあ、まあ。魔法とはいかないですけれど、近いスキルもありますから、無駄にはなりませんよ。それと、あまり近づかないで下さい、その服はその……」

「えっ?」

 谷地さんの言葉で僕はふと自分の着ている服を見る。

「あっ、そっか……」

 僕は理由が分かった。
 うん、思ったよりも胸の開いている服だったからだ。距離があるなら気にならないけど、確かに至近距離だとね。僕の身長って思ったより低いし、谷地さんは背が高いから。
 はあ、今度何か羽織るものを仕入れておこう。

「おほん。それじゃ、ダンジョン体験の続きに戻りましょう」

「はいっ」

 気を取り直して、ダンジョン体験を再開する。

「ねえ、バトラー」

「なんですかな、プリンセス」

「この感知ってスキルの使い方は分かる?」

「ああ、それでしたらこうですな」

 後衛職の適性のある二人に共通していたのは感知というスキルだった。

「直感というスキルとは違い、自分から魔力を張り巡らせてモンスターや罠などを見つけるというスキルです。魔法に近いので、プリンセスの先程の説明は無駄になりませんぞ」

 バトラーは僕のフォローをしてくれている。

「では、感知スキルを使いますので、よく見ていて下さいませ」

「バトラーって使えたんだ」

「ええ、執事ですから、必須スキルでございます」

 バトラーはそう言いながら、集中をしていた。
 次の瞬間、足元からクモの巣のような模様が発生して、周囲へと広がっていく。

「このような感じでございますでしょうか。本来はこのように目視することはできませぬ。目に見えると相手方に丸わかりですからな」

「確かにそうだね」

「魔力を張り巡らせるので、相手に気付かれることもございます。熟練してきますと、このようになります」

 バトラーは一度感知スキルを解き、改めて感知スキルを使っている。だけど、使っているかどうかはまったく目に見えない。僕や衣織お姉さんは、魔力の違和感を感じて察知できているものの、見習いの四人や谷地さんたちは感じ取れていないようだった。

「いかがでしょうか。我のようにスキルを使いこなすには、日々鍛錬あるのみでございます」

「みなさん、頑張りましょうね」

「は、はいっ」

 僕がにっこりと微笑んで呼び掛けると、二人は背筋を伸ばして返事をしていた。
 さあ、張り切って練習していこうね。

 この日のダンジョン体験は、結局、夕方までみっちり続けられたよ。


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 見習い探索者である四人に僕の力を見せつけるため、デコイへと視線を向ける。
 ひとつは衣織お姉さんが破壊してくれたので、現在修復中。僕が向かうのはもうひとつのデコイだ。
「見ていて下さいよ。これが魔法っていう力ですからね」
「は、はい」
 僕の言葉で、見習い探索者たちの表情が変わっていた。
「シャドウランス!」
 僕は闇の槍を出現させて、目の前のデコイへと叩き込む。
 僕自身のレベルは低いけれど、魔法の威力はなかなかなもの。今日もデコイを貫き、地面には大きなくぼみを作っていた。
 正直なところ、ダンジョンを壊すのはよろしくない。よろしくないけれど、これくらいを見せつけないとダンジョンマスターとしての威厳に関わると思うんだ。だから、僕はシャドウエッジじゃなくてシャドウランスを使ったんだよ。
「どうですかね。これが魔法というものです」
 魔法を使った僕は、見習い探索者たちの方へと振り返る。
 みんな、おーっというような顔をして口を開けていた。
「ラミア族というのは水と闇の魔法を得意としているらしいです。今の魔法をその闇属性の魔法で、見ての通り、闇の魔力で形作った闇を相手に叩き込むという魔法です」
「へえ、すごーいっ!」
 思ったよりも反応が薄いかな。唯一の女の子だけが反応してるじゃないか。
 男の子三人はどうしたんだろう。
「まったく、礼儀のなっていない連中だな。瞬がせっかく魔法を見せてくれたというのに、まともな反応ひとつできないのか」
「衣織お姉さん、ストップストップ」
 まったく、僕のこととなるとどうしてそんなに熱くなるのかなぁ。
 ほら、見習い探索者たちが怯えちゃってる。これは人選を間違えたかもしれない。
「まったく、衣織お姉さんがそんな態度を毎回取るようじゃ、谷地さんたちにお願いして講師役変えてもらうよ?」
「なにっ! それは困る」
「だったら、もうちょっと穏やかにしよう?」
「むむむむ……。仕方あるまい、瞬と気兼ねなく会うためだ。我慢しよう」
 いや、なんで僕に会うことが目的になってるのかな。衣織お姉さん、重度の魅了にかかってない?
 僕はついつい心配になっちゃうよ。ため息をつかざるを得ない状況だった。
 とりあえず衣織お姉さんのことは放っておいて、講義を続けないとね。デコイもいい感じで修復されてきているし。
「さて、みなさんはどのようなスキルを持っているんですかね。適性検査の時に、教えてもらっているはずですから」
 僕が四人に質問すると、どういうわけか四人とも困った顔をしていた。あれ、これって分からないってことかな?
 これでは話が進まなくなるので、ダンジョン管理局の谷地さんを呼んで四人のデータを見せてもらうことにした。
「普通は極秘資料なんですけれどね。指導のためなら仕方ありません、お見せしましょう」
 極秘資料というから渋るかと思ったんだけど、谷地さんは四人のデータを見てくれと言わんばかりに僕の前に資料を差し出していた。
 ぱらぱらと四人のデータを見させてもらう。その結果、男の子の二人は前衛職、残りの男女は後衛職のスキルを持っていることが分かった。
「ふむふむ。でも、魔法適性はみんななさそう……?」
「ですね」
「ちょっと、僕の出番もう終わり?!」
 あまりの事実に、僕はつい谷地さんに迫ってしまう。
「まあ、まあ。魔法とはいかないですけれど、近いスキルもありますから、無駄にはなりませんよ。それと、あまり近づかないで下さい、その服はその……」
「えっ?」
 谷地さんの言葉で僕はふと自分の着ている服を見る。
「あっ、そっか……」
 僕は理由が分かった。
 うん、思ったよりも胸の開いている服だったからだ。距離があるなら気にならないけど、確かに至近距離だとね。僕の身長って思ったより低いし、谷地さんは背が高いから。
 はあ、今度何か羽織るものを仕入れておこう。
「おほん。それじゃ、ダンジョン体験の続きに戻りましょう」
「はいっ」
 気を取り直して、ダンジョン体験を再開する。
「ねえ、バトラー」
「なんですかな、プリンセス」
「この感知ってスキルの使い方は分かる?」
「ああ、それでしたらこうですな」
 後衛職の適性のある二人に共通していたのは感知というスキルだった。
「直感というスキルとは違い、自分から魔力を張り巡らせてモンスターや罠などを見つけるというスキルです。魔法に近いので、プリンセスの先程の説明は無駄になりませんぞ」
 バトラーは僕のフォローをしてくれている。
「では、感知スキルを使いますので、よく見ていて下さいませ」
「バトラーって使えたんだ」
「ええ、執事ですから、必須スキルでございます」
 バトラーはそう言いながら、集中をしていた。
 次の瞬間、足元からクモの巣のような模様が発生して、周囲へと広がっていく。
「このような感じでございますでしょうか。本来はこのように目視することはできませぬ。目に見えると相手方に丸わかりですからな」
「確かにそうだね」
「魔力を張り巡らせるので、相手に気付かれることもございます。熟練してきますと、このようになります」
 バトラーは一度感知スキルを解き、改めて感知スキルを使っている。だけど、使っているかどうかはまったく目に見えない。僕や衣織お姉さんは、魔力の違和感を感じて察知できているものの、見習いの四人や谷地さんたちは感じ取れていないようだった。
「いかがでしょうか。我のようにスキルを使いこなすには、日々鍛錬あるのみでございます」
「みなさん、頑張りましょうね」
「は、はいっ」
 僕がにっこりと微笑んで呼び掛けると、二人は背筋を伸ばして返事をしていた。
 さあ、張り切って練習していこうね。
 この日のダンジョン体験は、結局、夕方までみっちり続けられたよ。