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SCENE057 初めての体験教室

ー/ー



 瞳に作ってもらった服をお披露目配信した翌日、僕のところに谷地さんがやってきた。

「やあ、ウィンクさん、ご無沙汰しております」

「谷地さん、どうしたんですか?」

 ショートカットの扉から出てきたのでびっくりしたけど、不殺設定をしている人限定で通れるようにしてたんだった。しばらく使ってなかったから忘れてたよ。
 話を聞いてみれば、ようやくダンジョンでの実習をする準備が整ったらしく、それを僕に伝えに来たらしい。ようやく探索者育成ダンジョンとして、僕のダンジョンが稼働することになったんだ。

「先日にバトラーさんに書類を持たせたはずですが、読まれましたよね?」

「あ、はい。読みましたよ、もちろん。あははははは……」

 僕は笑ってごまかしておいた。読むには読んだんだけどね。瞳に作ってもらった服のことですっかり頭から飛んじゃってるんだよ。人間、強いインパクトを受けると、そこで記憶すっ飛んじゃうからね。
 だけど、ここで大笑いをしてしまったのは、どうも逆効果だったみたいだ。
 うん、僕が把握してないことはあっさりバレちゃったよ。しょうがないね。

「まったく、プリンセスは嘘が下手ですな」

「なんだよう……。大体、瞳に作ってもらった服を配信でお披露目しろなんて言うから悪いんだよ? あれのせいで、僕、頭が真っ白になっちゃったんだから」

「いいわけはよろしくありませんな。ダンジョンマスターたる者、いかなる時も動じない強さを持ちませんと」

「ぶぅ……」

 バトラーのお説教に、僕はふて腐れたよ。誰のせいだと思っているのさ。
 言い分に納得できないけれど、谷地さんを放っておくわけにはいかない。バトラーへの文句はほどほどにしておいて、管理局との間での話を始めることにする。

「……よろしいですかね?」

「はい、お話をどうぞ」

 僕は谷地さんの話を聞くことにした。
 それによれば、今日、第一陣となる探索者の卵たちを連れてきているみたいだ。途中にいるキラーアントのことがあるので、入口に日下さんと一緒に待機しているそうだ。
 そんなわけで、僕は入口に向かうことにする。

 入口にやってくると、日下さんと一緒に数人の同い年くらいと思われる人たちがいた。あっ、後ろには衣織お姉さんもいる。

「こんにちは、日下さん」

「ウィンクさん、こんにちは」

 僕たちは挨拶をする。
 たったそれだけのことなのに、探索者たちはびっくりしてしまっていた。やっぱり僕のことをモンスターだと思っているからなんだろうな。

「ダンジョン体験の希望者は、そこの四人ですか?」

「はい、そうです」

 日下さんはそう答えると、探索者たちへと視線を向ける。
 男の子三人と女の子一人かぁ。まあ、探索者ってそういう割合になるかな。危険なことには変わりはないし、嫌がって辞退する率は女性の方が多いと聞いているからね。
 僕はよく見ようと思って、体験希望の探索者へと近付いていく。

 ガンッ!

「あたっ!」

 僕は見えない壁にぶつかっていた。

「プリンセス。モンスターはダンジョンから外に出られませんぞ?」

「ごめん、うっかりしてたよ」

 僕は額を擦っている。
 それにしても、この見えない壁、ものすごく痛いよね。勢いよく動いたらものすごく跳ね返されたし、気をつけないと。
 でも、この僕のドジのおかげか、探索者の子たちはちょっと緊張が解けたみたいだ。笑うくらいの余裕が出てきている。

「さて、改めて自己紹介をさせていただきます。僕はこのダンジョンのダンジョンマスターであるウィンクと言います。種族はラミアプリンセスです。一応僕もみなさんの面倒を見ることになっていますので、よろしくお願いしますね」

「えっ、モンスターにも見てもらうわけ?」

「聞いてない」

 僕が自己紹介をすると、男の子たちがなんか変な反応をしている。
 でも、ダメだよ。衣織お姉さんの前でそんな反応をすると……。

「お前たち。うちの瞬をバカにしたのか?」

 ああ、遅かった。
 衣織お姉さん、探索者の卵たちをいじめないであげて。

「衣織さん、見習い探索者たちを脅すのはやめて下さい。目の前のウィンクさんが衣織さんのお知り合いだということは、まだ世間では知られていないんですからね?」

「……そうだったな」

 日下さんに咎められて、衣織お姉さんは威圧を解いていた。
 本当に僕のこととなると熱くなるんだから……。本当に困ったものだよ。

「はっはっはっ。まったく、プリンセスは大切にされておりますな」

「まあ、そうなんだけどね。ちょっと過保護じゃないかなって、心配になってくるよ」

「そうですな。何事も度が過ぎてはいけませんからな。ほどほどがよいのです」

 バトラーにまでこんな風に言われるんだから、やっぱり衣織お姉さんは変だと思うよ。

 初めての探索者の受け入れをしたわけだけど、いきなりトラブルから始まっちゃった。
 衣織お姉さんの威圧的な目が光る中、いよいよダンジョンの体験が始まるわけだけど、すんなり無事にやり遂げられるんだろうかな?
 僕はそこそこ心配になってきてしまったよ。
 頼りになる不安材料を抱えたまま、僕は見習い探索者たちをダンジョンへと招き入れ、まずは一番奥のボス部屋へと案内することにしたのだった。


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 瞳に作ってもらった服をお披露目配信した翌日、僕のところに谷地さんがやってきた。
「やあ、ウィンクさん、ご無沙汰しております」
「谷地さん、どうしたんですか?」
 ショートカットの扉から出てきたのでびっくりしたけど、不殺設定をしている人限定で通れるようにしてたんだった。しばらく使ってなかったから忘れてたよ。
 話を聞いてみれば、ようやくダンジョンでの実習をする準備が整ったらしく、それを僕に伝えに来たらしい。ようやく探索者育成ダンジョンとして、僕のダンジョンが稼働することになったんだ。
「先日にバトラーさんに書類を持たせたはずですが、読まれましたよね?」
「あ、はい。読みましたよ、もちろん。あははははは……」
 僕は笑ってごまかしておいた。読むには読んだんだけどね。瞳に作ってもらった服のことですっかり頭から飛んじゃってるんだよ。人間、強いインパクトを受けると、そこで記憶すっ飛んじゃうからね。
 だけど、ここで大笑いをしてしまったのは、どうも逆効果だったみたいだ。
 うん、僕が把握してないことはあっさりバレちゃったよ。しょうがないね。
「まったく、プリンセスは嘘が下手ですな」
「なんだよう……。大体、瞳に作ってもらった服を配信でお披露目しろなんて言うから悪いんだよ? あれのせいで、僕、頭が真っ白になっちゃったんだから」
「いいわけはよろしくありませんな。ダンジョンマスターたる者、いかなる時も動じない強さを持ちませんと」
「ぶぅ……」
 バトラーのお説教に、僕はふて腐れたよ。誰のせいだと思っているのさ。
 言い分に納得できないけれど、谷地さんを放っておくわけにはいかない。バトラーへの文句はほどほどにしておいて、管理局との間での話を始めることにする。
「……よろしいですかね?」
「はい、お話をどうぞ」
 僕は谷地さんの話を聞くことにした。
 それによれば、今日、第一陣となる探索者の卵たちを連れてきているみたいだ。途中にいるキラーアントのことがあるので、入口に日下さんと一緒に待機しているそうだ。
 そんなわけで、僕は入口に向かうことにする。
 入口にやってくると、日下さんと一緒に数人の同い年くらいと思われる人たちがいた。あっ、後ろには衣織お姉さんもいる。
「こんにちは、日下さん」
「ウィンクさん、こんにちは」
 僕たちは挨拶をする。
 たったそれだけのことなのに、探索者たちはびっくりしてしまっていた。やっぱり僕のことをモンスターだと思っているからなんだろうな。
「ダンジョン体験の希望者は、そこの四人ですか?」
「はい、そうです」
 日下さんはそう答えると、探索者たちへと視線を向ける。
 男の子三人と女の子一人かぁ。まあ、探索者ってそういう割合になるかな。危険なことには変わりはないし、嫌がって辞退する率は女性の方が多いと聞いているからね。
 僕はよく見ようと思って、体験希望の探索者へと近付いていく。
 ガンッ!
「あたっ!」
 僕は見えない壁にぶつかっていた。
「プリンセス。モンスターはダンジョンから外に出られませんぞ?」
「ごめん、うっかりしてたよ」
 僕は額を擦っている。
 それにしても、この見えない壁、ものすごく痛いよね。勢いよく動いたらものすごく跳ね返されたし、気をつけないと。
 でも、この僕のドジのおかげか、探索者の子たちはちょっと緊張が解けたみたいだ。笑うくらいの余裕が出てきている。
「さて、改めて自己紹介をさせていただきます。僕はこのダンジョンのダンジョンマスターであるウィンクと言います。種族はラミアプリンセスです。一応僕もみなさんの面倒を見ることになっていますので、よろしくお願いしますね」
「えっ、モンスターにも見てもらうわけ?」
「聞いてない」
 僕が自己紹介をすると、男の子たちがなんか変な反応をしている。
 でも、ダメだよ。衣織お姉さんの前でそんな反応をすると……。
「お前たち。うちの瞬をバカにしたのか?」
 ああ、遅かった。
 衣織お姉さん、探索者の卵たちをいじめないであげて。
「衣織さん、見習い探索者たちを脅すのはやめて下さい。目の前のウィンクさんが衣織さんのお知り合いだということは、まだ世間では知られていないんですからね?」
「……そうだったな」
 日下さんに咎められて、衣織お姉さんは威圧を解いていた。
 本当に僕のこととなると熱くなるんだから……。本当に困ったものだよ。
「はっはっはっ。まったく、プリンセスは大切にされておりますな」
「まあ、そうなんだけどね。ちょっと過保護じゃないかなって、心配になってくるよ」
「そうですな。何事も度が過ぎてはいけませんからな。ほどほどがよいのです」
 バトラーにまでこんな風に言われるんだから、やっぱり衣織お姉さんは変だと思うよ。
 初めての探索者の受け入れをしたわけだけど、いきなりトラブルから始まっちゃった。
 衣織お姉さんの威圧的な目が光る中、いよいよダンジョンの体験が始まるわけだけど、すんなり無事にやり遂げられるんだろうかな?
 僕はそこそこ心配になってきてしまったよ。
 頼りになる不安材料を抱えたまま、僕は見習い探索者たちをダンジョンへと招き入れ、まずは一番奥のボス部屋へと案内することにしたのだった。