二十四話 これこそロマンッ!!
ー/ー「『……この体の解析能力も大した事はありませんでしたか』」
冥土の体を乗っ取っり、その性能をフル活用していたアスモデウスは、しかしながら確実に殺せると踏んだウィオリナが、黒羽根のドリルを打ち砕いたことに失望する。
「『それでも適性はありますし、今のところこれがベストなのですが……』」
仕方ありません、と溜息を吐くアスモデウスに、ウィオリナに唖然としていた大輔がブチ切れる。
「何が仕方ないだよッ! 冥土は最高の冥土だよ! お前が使えこなせてないだけだッ!! 自分の不出来を棚に上げるなッ!」
インセクタの引き金を引く。音速を優に超えて射出された弾丸は、冥土たちの思考能力の間隙を縫って、アスモデウスの眼前に迫る。
そして、
「ハァッ!」
「『グッ!?』」
その弾丸と大輔が入れ替わる。しかも、物だけが入れ替わるだけでなく、それに加わる動きもだ。
つまるところ、入れ替わった大輔は弾速の勢いのまま、アスモデウスに回し蹴りを放つ。
アスモデウスは咄嗟に両腕をクロスし、回し蹴りを防ぐ。
「だから、使えこなせてないんだよ! 今は、黒羽根で簡易結界を張って僅かな時間を稼ぐ。その間に、片腕を黒腕に変形させて、カウンター! 冥土の性能を生かしてないの! ハンッ!」
大輔が丸眼鏡をクイッとし、鼻で笑った。
バッと裾を金属で補強しいる白衣を翻し、空中を蹴りながら、アスモデウスの背後に回る。
四十八口径の銃口を持つ銃身四十センチほどの自動拳銃であるイーラ・グロブスを鈍器として、アスモデウスの頭上に振り下ろす。
左手にもつインセクタをスピンさせながら、四方八方に数十発の弾丸を放つ。
「『小癪なッ!』」
アスモデウスは歯噛みしながら、黒羽根を背後に操り、イーラ・グロブスの振り下ろしを弾く。
また、地面やいつの間にか移動型聖星要塞で空中に張った結界を跳躍する多跳躍交弾によって迫る数十発の弾丸を残りの黒羽根で弾く。
が、
「ほ~ら。また間違えたッ!」
「『ッッ!!??』」
大輔が再び鼻で笑う。
同時にいつの間にか周囲に展開されていた数百を超える戦術補助多蜂支援機が、弾丸一つ通れるくらいの転移門を無数に作っており、黒羽根に弾かれた弾丸がその転移門をくぐり、アスモデウスに迫る。
「僕のデータを持ってるなら、戦術補助多蜂支援機の性能だって把握してるはずでしょ? なのに、考慮に入れなかった」
大輔は淡々と指摘していく。
「なんで、冥土に疑似魂魄を入れたと思う? 疑似感情を作ったと思う? 疑似的な自己意識を創り出したと思う?」
「『何故、思考連結機構がッ!?』」
アスモデウスは他の冥土たちとの情報共有が途絶えたことに驚愕する。情報共有が途絶えるということは、すなわち演算能力と解析能力の低下を意味する。
「冥土が冥土を使いこなせるようにするためだよ。僕や直樹じゃない。自分で、自分たちを使いこなす必要があったからさ」
そして、と大輔は続ける。
「それは何も冥土個人においてじゃない。冥土の慈悲。百一体全てにおいてだよ」
「『ッッァァァ!?!?』」
冥土の体を乗っ取ったアスモデウスが、吹き飛ばされる。
瞬間、
「イムニティ!」
「かいこまりぃッ!!」
虚空から、ミニスカ和風白ニーソのメイド服を纏った百一番目の冥土、イムニティが現れた。
最終番個体であり、防衛個体であるイムニティは、白く輝く短剣を握っており、
「いい加減目を覚ましてください、プー子上姉さまッッ!!」
「『ッッ!?!?』」
アスモデウスが乗っ取っていた冥土の体の首に刺した。その瞬間、閃光が迸ったかと思うと、冥土の体は機能停止したかのように動かなくなった。
同時に、他の冥土たちも機能停止し、全員がドサリと地面に落下する。
それと同時に大輔も大地に着地した。
「と、お疲れ、イムニティ」
「そんな事よりも副創造主様のヌード写真集をッ!」
「あ、うん。分かってる。はい、こ――」
黒翼を侍らしながら、隣に降り立ったイムニティに大輔は呆れかえりながら、“収納庫”から取り出した一冊の写真集を渡そうとして、
「待ちやがれッ!」
「あッ! 私の宝物がッ!?」
慌てて飛んできた直樹が切り刻んだ。
「何が宝物だッ! っつか、いつの間に俺の写真なんて撮りやがったッ! 誰だよッ!?」
「冥土だよ。イムニティをこき使うために用意してたんだって」
「あのクソッ!」
直樹は地団太を踏む。しかし、名前の事があるからか、悪態を吐くことしかできない。
「……あ、あの、それで結局、どういうことなんです?」
と、泣き崩れるイムニティを見やりながら、ウィオリナが戸惑いの表情を向ける。
状況を尋ねたら大輔が突然ブチ切れてアスモデウスに特攻したため、現状を理解していなかったのだ。
「あ、まだ説明してなかったね」
優雅に蝙蝠の翼を侍らせながら降りてきたティーガンが、クロノアの力を疑似的に再現して直樹に切り刻まれたヌード写真集を再生し、イムニティに『お主が持っている他のを妾に見せてくれるんじゃったら、これを渡すんじゃが……』と交渉している様子を横目にウィオリナに説明する。
ちなみに、驚愕に目を見張り抗議しようとした直樹はティーガンの血の触手により拘束されていた。野郎の触手拘束など嬉しくもないので、大輔は無視する。
「まず、一つ。冥土の身体を乗っ取ったの奴は、アスモデウスっていうやつでさ」
「……確か、烏丸先生の知識に」
「うん。天獄界の七王の一匹。で、知っての通りアスモデウスは取り憑くのが得意、特に女性相手が得意らしくてさ」
「けれど、冥土さんは」
「うん、外見は女性だけど、そもそも人形だった」
「だった?」
ウィオリナが首を傾げる。
大輔はウィオリナの疑問に鷹揚に頷く。それどころか、白衣をバサッとはためかし、丸眼鏡を光らせながらクイッとする。
「得たんだよ! 本物の生命を! 魂魄を!」
頬は紅潮し、その茶目を爛々と輝かせる。というか、ちょっと狂気が混じっている気がする。
ウィオリナが少しだけ引いた様子を見せるが、大輔は気にした様子もなく興奮しながら続ける。
「冥土は着眼点はさ、邪神が作り上げた人形だったんだ! それに使われてた核から、自意識、つまり自分を自分と認識し、自己主張を発現する疑似魂魄を創って、それを冥土たちの基礎として据えたんだけどさ!」
「は、はい」
これ、物凄い事だから。超凄いことだから。と、マッドに笑う大輔にウィオリナは気圧される。
「だけど、ここで問題があったんだよ! 一応さ、僕もやろうと思えば魂魄、つまり世界から与えられる特殊型プログラムが仕込まれた非実体エネルギー体を創れるんだッ! それなりに手間は掛かるけど、人間も創れる」
「は、は――えッ!?」
するりと飛び出た悍ましい発言にウィオリナは驚愕する。直樹の抗議をいなしながら、イムニティと協定を結んでいたティーガンがむ? と鋭い瞳を大輔に向ける。
大輔は気にしない。
「けど、その場合、魂魄は輪廻の輪に入らないし、生きているのに世界から死という法則も与えられないんだよ!」
大輔は悔しそうに慟哭する。
そして一転。
「それにそもそも、ただ単に生命体を創っても面白くない! 機械に命が宿る! 持たざる存在が、経験によって命を得るッ! これこそロマンッ!!」
「……」
無邪気な子供が夢を語るが如く、大輔はキラキラと表情を輝かせる。ウィオリナはあまりのことに言葉もでない。
つまるところ、冥土たちはそのロマンのために創り出されたということだ。
一応、邪神との戦いに備えて戦力を増強するという目的もあったが、ぶっちゃけ言うと、大輔にとってはこれが目的だったりする。
頭のねじがぶっ飛んでいる。
「……のぅ」
「俺は違うぞ。自立式の兵器が必要だったから、協力しただけだ」
大輔の言葉に唖然としつつ、ティーガンは拘束を解いた直樹にシラッとした瞳を向けた。
直樹は間髪入れずに否定する。
しかし、ティーガンは疑わしいのか、詰問するように瞳を細める。
「……ホントかの?」
「ああ、ほんと――」
直樹がすまし顔で頷こうとしたとき、
「違いますよ」
イムニティが否定する。それから思い出すように顎に手を当てる。
「副創造主様が疑似魂魄をこの身に入れてくれたんですけどね。その時に、確か、『いいか。最初に魂魄を宿してくれ。じゃないとドラゴンの[影魔]を創って、そいつを侍らせながら、クハハ、勇者よ、我に勝てると思うておろうかッ! っていう動画を撮らされるんだ。頼んだぞ。俺はお前に賭けてるんだ。どちらが、ロマンに情熱的かを……』、とか言ってました」
ご丁寧に直樹の声を再現して、イムニティが言う。直樹が慌てる。
「ちょッ!? お前、っつか、あの時、まだ起動してなか――あ」
「お主……」
ティーガンが呆れたように溜息を吐く。
そしてフリーズしていたウィオリナが、我に戻りそれから何度か深呼吸する。
「冥土さんに命が宿っていた事は分かりました。それとさっきイムニティさんが持っていた短剣になんの関係があるんです?」
どうやら、ウィオリナは聞かなかった事にしたらしい。
大輔は気にした様子もなく、続ける。
「アスモデウスの取り憑きは、生命に特化してる。正直、僕や直樹でも引きはがすのには手間がかかる。しかも、冥土は命を獲得したばかりで、イムニティから自己改変を与えられてなくてさ。まだ人形だった頃の機構も生きていたんだ。そのせいで、自己矛盾があってさ」
それに、と大輔は続ける。
「イムニティ以外の全機と完全情報共有、簡単に言えば疑似魂魄ごと消滅しても他の冥土たちがバックアップを取ってあるから、そこからまた疑似魂魄を再生する事もできるシステムがあってね。生を獲得した今、それって己の存在を揺るがしかねない問題でさ」
つまるところ、クローンにも近い。
しかも、魂魄が消滅しても再び同じ記憶や意志を持ったまま、創られる。それは『生きている』という自己認識と矛盾しかねないのだ。
ともすれば、生と死。その両方を持つ、狭間的な存在とも言える。
「しかも、その影響を受けてイムニティ以外の冥土たちも暴走する可能性が大きくてさ。アスモデウスを斃しても、せっかく命を獲得した冥土の記憶等々を消去する必要がでてきたんだよ」
それで、と大輔はイーラ・グロブスをくるくる廻しながら、イムニティを見やる。
「大皇日女の助言もあって、いつでも命を獲得してもいいように、一週間前からプロクルに意見を貰いつつ、イムニティにその矛盾を自己誤認させるプログラムを創って貰っていたんだ。んで、さっき、冥土に命が宿ってるってわかったから、急遽、その創りかけのプログラムをイムニティに完成させてもらって、打ち込んだわけ」
「なぜ、イムニティさんが……」
「言わなかったけ? イムニティは特殊個体でさ。冥土も含めたすべての機体の監視役であり、デバッカー。まぁ、こういう時のための個体なんだよ。僕たちに命令にも背けるように創ってあるし」
「えっへん。私、結構凄いんです。上姉さまよりも凄いんです」
イムニティが胸を張り、調子に乗る。直樹が頭にチョップを喰らわせる。それを見てウィオリナは深く考えないようにしたらしい。
大輔に向かいなおって、首をかしげる。
「……つまり、冥土さんはどうなるんです?」
「さぁ?」
「え?」
大輔が首を横に振り、分からないといったため、ウィオリナは茫然とする。直樹が大輔の足りない言葉を付け足す。
「ぶっちゃけ、アスモデウスがあいつの魂魄に巣食ってるから、そのプログラムが意味を為すかは五分五分。後は、アイツ自身が自分の力でアスモデウスを追い出すかどうか」
直樹は神妙な表情をする
「俺も、大輔も消去したいわけじゃないからさ。やむなく、こんな賭けに出たわけで、そして、今は見守る事しかできないってわけだ」
そう言いながら、直樹は倒れた冥土の方を見やった。
冥土の体を乗っ取っり、その性能をフル活用していたアスモデウスは、しかしながら確実に殺せると踏んだウィオリナが、黒羽根のドリルを打ち砕いたことに失望する。
「『それでも適性はありますし、今のところこれがベストなのですが……』」
仕方ありません、と溜息を吐くアスモデウスに、ウィオリナに唖然としていた大輔がブチ切れる。
「何が仕方ないだよッ! 冥土は最高の冥土だよ! お前が使えこなせてないだけだッ!! 自分の不出来を棚に上げるなッ!」
インセクタの引き金を引く。音速を優に超えて射出された弾丸は、冥土たちの思考能力の間隙を縫って、アスモデウスの眼前に迫る。
そして、
「ハァッ!」
「『グッ!?』」
その弾丸と大輔が入れ替わる。しかも、物だけが入れ替わるだけでなく、それに加わる動きもだ。
つまるところ、入れ替わった大輔は弾速の勢いのまま、アスモデウスに回し蹴りを放つ。
アスモデウスは咄嗟に両腕をクロスし、回し蹴りを防ぐ。
「だから、使えこなせてないんだよ! 今は、黒羽根で簡易結界を張って僅かな時間を稼ぐ。その間に、片腕を黒腕に変形させて、カウンター! 冥土の性能を生かしてないの! ハンッ!」
大輔が丸眼鏡をクイッとし、鼻で笑った。
バッと裾を金属で補強しいる白衣を翻し、空中を蹴りながら、アスモデウスの背後に回る。
四十八口径の銃口を持つ銃身四十センチほどの自動拳銃であるイーラ・グロブスを鈍器として、アスモデウスの頭上に振り下ろす。
左手にもつインセクタをスピンさせながら、四方八方に数十発の弾丸を放つ。
「『小癪なッ!』」
アスモデウスは歯噛みしながら、黒羽根を背後に操り、イーラ・グロブスの振り下ろしを弾く。
また、地面やいつの間にか移動型聖星要塞で空中に張った結界を跳躍する多跳躍交弾によって迫る数十発の弾丸を残りの黒羽根で弾く。
が、
「ほ~ら。また間違えたッ!」
「『ッッ!!??』」
大輔が再び鼻で笑う。
同時にいつの間にか周囲に展開されていた数百を超える戦術補助多蜂支援機が、弾丸一つ通れるくらいの転移門を無数に作っており、黒羽根に弾かれた弾丸がその転移門をくぐり、アスモデウスに迫る。
「僕のデータを持ってるなら、戦術補助多蜂支援機の性能だって把握してるはずでしょ? なのに、考慮に入れなかった」
大輔は淡々と指摘していく。
「なんで、冥土に疑似魂魄を入れたと思う? 疑似感情を作ったと思う? 疑似的な自己意識を創り出したと思う?」
「『何故、思考連結機構がッ!?』」
アスモデウスは他の冥土たちとの情報共有が途絶えたことに驚愕する。情報共有が途絶えるということは、すなわち演算能力と解析能力の低下を意味する。
「冥土が冥土を使いこなせるようにするためだよ。僕や直樹じゃない。自分で、自分たちを使いこなす必要があったからさ」
そして、と大輔は続ける。
「それは何も冥土個人においてじゃない。冥土の慈悲。百一体全てにおいてだよ」
「『ッッァァァ!?!?』」
冥土の体を乗っ取ったアスモデウスが、吹き飛ばされる。
瞬間、
「イムニティ!」
「かいこまりぃッ!!」
虚空から、ミニスカ和風白ニーソのメイド服を纏った百一番目の冥土、イムニティが現れた。
最終番個体であり、防衛個体であるイムニティは、白く輝く短剣を握っており、
「いい加減目を覚ましてください、プー子上姉さまッッ!!」
「『ッッ!?!?』」
アスモデウスが乗っ取っていた冥土の体の首に刺した。その瞬間、閃光が迸ったかと思うと、冥土の体は機能停止したかのように動かなくなった。
同時に、他の冥土たちも機能停止し、全員がドサリと地面に落下する。
それと同時に大輔も大地に着地した。
「と、お疲れ、イムニティ」
「そんな事よりも副創造主様のヌード写真集をッ!」
「あ、うん。分かってる。はい、こ――」
黒翼を侍らしながら、隣に降り立ったイムニティに大輔は呆れかえりながら、“収納庫”から取り出した一冊の写真集を渡そうとして、
「待ちやがれッ!」
「あッ! 私の宝物がッ!?」
慌てて飛んできた直樹が切り刻んだ。
「何が宝物だッ! っつか、いつの間に俺の写真なんて撮りやがったッ! 誰だよッ!?」
「冥土だよ。イムニティをこき使うために用意してたんだって」
「あのクソッ!」
直樹は地団太を踏む。しかし、名前の事があるからか、悪態を吐くことしかできない。
「……あ、あの、それで結局、どういうことなんです?」
と、泣き崩れるイムニティを見やりながら、ウィオリナが戸惑いの表情を向ける。
状況を尋ねたら大輔が突然ブチ切れてアスモデウスに特攻したため、現状を理解していなかったのだ。
「あ、まだ説明してなかったね」
優雅に蝙蝠の翼を侍らせながら降りてきたティーガンが、クロノアの力を疑似的に再現して直樹に切り刻まれたヌード写真集を再生し、イムニティに『お主が持っている他のを妾に見せてくれるんじゃったら、これを渡すんじゃが……』と交渉している様子を横目にウィオリナに説明する。
ちなみに、驚愕に目を見張り抗議しようとした直樹はティーガンの血の触手により拘束されていた。野郎の触手拘束など嬉しくもないので、大輔は無視する。
「まず、一つ。冥土の身体を乗っ取ったの奴は、アスモデウスっていうやつでさ」
「……確か、烏丸先生の知識に」
「うん。天獄界の七王の一匹。で、知っての通りアスモデウスは取り憑くのが得意、特に女性相手が得意らしくてさ」
「けれど、冥土さんは」
「うん、外見は女性だけど、そもそも人形だった」
「だった?」
ウィオリナが首を傾げる。
大輔はウィオリナの疑問に鷹揚に頷く。それどころか、白衣をバサッとはためかし、丸眼鏡を光らせながらクイッとする。
「得たんだよ! 本物の生命を! 魂魄を!」
頬は紅潮し、その茶目を爛々と輝かせる。というか、ちょっと狂気が混じっている気がする。
ウィオリナが少しだけ引いた様子を見せるが、大輔は気にした様子もなく興奮しながら続ける。
「冥土は着眼点はさ、邪神が作り上げた人形だったんだ! それに使われてた核から、自意識、つまり自分を自分と認識し、自己主張を発現する疑似魂魄を創って、それを冥土たちの基礎として据えたんだけどさ!」
「は、はい」
これ、物凄い事だから。超凄いことだから。と、マッドに笑う大輔にウィオリナは気圧される。
「だけど、ここで問題があったんだよ! 一応さ、僕もやろうと思えば魂魄、つまり世界から与えられる特殊型プログラムが仕込まれた非実体エネルギー体を創れるんだッ! それなりに手間は掛かるけど、人間も創れる」
「は、は――えッ!?」
するりと飛び出た悍ましい発言にウィオリナは驚愕する。直樹の抗議をいなしながら、イムニティと協定を結んでいたティーガンがむ? と鋭い瞳を大輔に向ける。
大輔は気にしない。
「けど、その場合、魂魄は輪廻の輪に入らないし、生きているのに世界から死という法則も与えられないんだよ!」
大輔は悔しそうに慟哭する。
そして一転。
「それにそもそも、ただ単に生命体を創っても面白くない! 機械に命が宿る! 持たざる存在が、経験によって命を得るッ! これこそロマンッ!!」
「……」
無邪気な子供が夢を語るが如く、大輔はキラキラと表情を輝かせる。ウィオリナはあまりのことに言葉もでない。
つまるところ、冥土たちはそのロマンのために創り出されたということだ。
一応、邪神との戦いに備えて戦力を増強するという目的もあったが、ぶっちゃけ言うと、大輔にとってはこれが目的だったりする。
頭のねじがぶっ飛んでいる。
「……のぅ」
「俺は違うぞ。自立式の兵器が必要だったから、協力しただけだ」
大輔の言葉に唖然としつつ、ティーガンは拘束を解いた直樹にシラッとした瞳を向けた。
直樹は間髪入れずに否定する。
しかし、ティーガンは疑わしいのか、詰問するように瞳を細める。
「……ホントかの?」
「ああ、ほんと――」
直樹がすまし顔で頷こうとしたとき、
「違いますよ」
イムニティが否定する。それから思い出すように顎に手を当てる。
「副創造主様が疑似魂魄をこの身に入れてくれたんですけどね。その時に、確か、『いいか。最初に魂魄を宿してくれ。じゃないとドラゴンの[影魔]を創って、そいつを侍らせながら、クハハ、勇者よ、我に勝てると思うておろうかッ! っていう動画を撮らされるんだ。頼んだぞ。俺はお前に賭けてるんだ。どちらが、ロマンに情熱的かを……』、とか言ってました」
ご丁寧に直樹の声を再現して、イムニティが言う。直樹が慌てる。
「ちょッ!? お前、っつか、あの時、まだ起動してなか――あ」
「お主……」
ティーガンが呆れたように溜息を吐く。
そしてフリーズしていたウィオリナが、我に戻りそれから何度か深呼吸する。
「冥土さんに命が宿っていた事は分かりました。それとさっきイムニティさんが持っていた短剣になんの関係があるんです?」
どうやら、ウィオリナは聞かなかった事にしたらしい。
大輔は気にした様子もなく、続ける。
「アスモデウスの取り憑きは、生命に特化してる。正直、僕や直樹でも引きはがすのには手間がかかる。しかも、冥土は命を獲得したばかりで、イムニティから自己改変を与えられてなくてさ。まだ人形だった頃の機構も生きていたんだ。そのせいで、自己矛盾があってさ」
それに、と大輔は続ける。
「イムニティ以外の全機と完全情報共有、簡単に言えば疑似魂魄ごと消滅しても他の冥土たちがバックアップを取ってあるから、そこからまた疑似魂魄を再生する事もできるシステムがあってね。生を獲得した今、それって己の存在を揺るがしかねない問題でさ」
つまるところ、クローンにも近い。
しかも、魂魄が消滅しても再び同じ記憶や意志を持ったまま、創られる。それは『生きている』という自己認識と矛盾しかねないのだ。
ともすれば、生と死。その両方を持つ、狭間的な存在とも言える。
「しかも、その影響を受けてイムニティ以外の冥土たちも暴走する可能性が大きくてさ。アスモデウスを斃しても、せっかく命を獲得した冥土の記憶等々を消去する必要がでてきたんだよ」
それで、と大輔はイーラ・グロブスをくるくる廻しながら、イムニティを見やる。
「大皇日女の助言もあって、いつでも命を獲得してもいいように、一週間前からプロクルに意見を貰いつつ、イムニティにその矛盾を自己誤認させるプログラムを創って貰っていたんだ。んで、さっき、冥土に命が宿ってるってわかったから、急遽、その創りかけのプログラムをイムニティに完成させてもらって、打ち込んだわけ」
「なぜ、イムニティさんが……」
「言わなかったけ? イムニティは特殊個体でさ。冥土も含めたすべての機体の監視役であり、デバッカー。まぁ、こういう時のための個体なんだよ。僕たちに命令にも背けるように創ってあるし」
「えっへん。私、結構凄いんです。上姉さまよりも凄いんです」
イムニティが胸を張り、調子に乗る。直樹が頭にチョップを喰らわせる。それを見てウィオリナは深く考えないようにしたらしい。
大輔に向かいなおって、首をかしげる。
「……つまり、冥土さんはどうなるんです?」
「さぁ?」
「え?」
大輔が首を横に振り、分からないといったため、ウィオリナは茫然とする。直樹が大輔の足りない言葉を付け足す。
「ぶっちゃけ、アスモデウスがあいつの魂魄に巣食ってるから、そのプログラムが意味を為すかは五分五分。後は、アイツ自身が自分の力でアスモデウスを追い出すかどうか」
直樹は神妙な表情をする
「俺も、大輔も消去したいわけじゃないからさ。やむなく、こんな賭けに出たわけで、そして、今は見守る事しかできないってわけだ」
そう言いながら、直樹は倒れた冥土の方を見やった。
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