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15.集中するための魔法(前編)

ー/ー



「おは」
「おはよう」

 翔はまだ来ていないようだけど阿久津がいたので挨拶をした。
 教室では今まで翔ぐらいしか挨拶しなかったけど、それは他の人が嫌だったわけじゃない。
 単にその後の話題がかみ合わないことが多かったからだ。

「いい悪夢(ユメ)見れたかよ?」
「俺の睡眠時間は一分じゃねぇ!?」

 また懐かしいネタを振ってきやがって。
 何十年前のネタかわかってんのか。

「大丈夫だ、まだ二十年はたっていない」
「つまり生まれる前のネタってことだろうが!?」
「何、探偵小説には百年以上前のネタも現役だぞ」
「例えば?」
「いわゆる消去法というやつだな、『全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙な事であっても、それが真実となる』」
「それは別にシャーロックホームズのネタではないのでは?」
「探偵小説では最初さ」

 セリフとしては言ってなくても推理の技術として使っている推理小説はある気がするんだけどな。

「明言した方が強いんだ」
「当たり前のようにモノローグにツッコむのやめてくれますか!?」
「普通の会話と変わらない音量で話してたら区別付くわけないだろう」
「え、そんなに?」
「自覚なかったのか……」

 だって陽菜も翔も指摘してくれなかったぞ!?
 まさかそんなひどい状態だったなんて……

「おいおい治せばいいさ」
「他人事みたいに言いおってからに」
「他人事だからな」

 ドライな奴め、なんで俺の周りはそういう人間ばかりなんだよ。

「類は友を呼ぶと言うな」
「ところでなんでそんな古いネタばかりなんだよ」

 このままだと悲しい方向にしか話が進まないので強引に話題を変える。
 そもそもツッコミどころのあるネタを振ってきた阿久津が悪い。

「古いものは良いものが多い」
「いや、そんなことないと思うけど」
「後世に良いものとして伝わっているものはそれだけの理由があるからな」
「なるほど、一理あるな」
「納得するのか」

 意外そうな目で見られた。
 なんで納得しただけでそんな目で見られないといけないんだよ。

「いや……てっきり持論を曲げないタイプかと」
「曲げる時は曲げるよ!?」
「いやぁ、曲げないだろ」
「翔!?」

 翔が登校してきたようで話に割り込んできた。

「頑固すぎて困るぐらいだ」
「やはりそうか」
「ただ本人があまり興味ない内容だと曲げることもあるな」
「なるほど、そういうことか」
「本人の前でそういうこと言うのやめてもらえますか!?」

 俺だって納得すれば普通に意見を変える。
 陽菜や翔が「根拠は勘」とか言うから納得できないだけだ。

「まあそれはともかく、阿久津は真琴と友達になったのか」
「女性関係の相談を受けるという交換条件でな」
「余計なこと言うなよ!?」
「ほう……、女性関係なぁ」

 翔がアゴを手でさすりながら答える。
 あの表情は絶対何か余計なことをしようとしているに違いない。

「今ホットなのは透子ちゃんだな」
「透子……? 藤田か」
「違うよ!?」
「なるほど、だから胸を揉んだのか」
「事故だよ!? 語弊ある言い方するなよ!?」
「うーん、やっぱりツッコミ能力が今一つだろ」
「鍛えればなんとかなるんじゃないか?」
「大分頑張って鍛えてあげてるんだがな」
「俺は切れていいよね」

 おもちゃにされて黙ってはいられない。
 やられたらやり返すのが信条だ。

「やり返したら透子ちゃんに言いつけるぞ」
「な、お前、それは反則だろ!?」
「藤田にお熱ってやつか」
「ん?」
「ネタが古すぎて伝わってないよ!?」
「じゃあどういう意味なんだ?」
「恋心抱いているって感じの意味だよ」
「なるほどな」
「本人の口から出てたから間違いないな」
「罠だった!?」

 こいつら、無駄に連携しやがって。
 翔だけでも面倒だって言うのに賢いのが増えてさらに面倒だ。

「で、古いものは良いという話だが」
「それ続けるのかよ」
「お、どういう話だ?」
「良いものとして後世に伝わっているものは良いものである可能性が高いって話だ」
「ふーん」

 若干声のトーンが落ちてアゴをさすり始めた。

「後世に伝わっているから良かったり正しかったりするかは分野によると思うんだが」
「例えば?」
「かつてティラノサウルスは毛がないとされてきた」
「考古学の分野は一つの発見で覆りやすいからな」
「名画が偽物だったということがある」
「真作と見間違う贋作は良いものと言っていいんじゃないか」

 会話に割り込む隙がない。
 俺もある程度は分かるけど反応速度が段違いだ。
 ただそれにしても翔はやけに絡んでるな。

「なら」
「待て待て待て、翔はなんでけんか腰なんだよ」
「喧嘩なんかしてないが?」
「ただの討論だろ」
「今にも殴りかかりそうだったけど」
「まさか真琴じゃあるまいし」
「普段からそういう考えだから他人も同じだと思うんだろう」
「俺は相手を選ぶよ!?」

 翔を殴ったって効果ないの分かってるから殴ってるんであって、ダメージがあるならやらないぞ。

「まあ春日井の態度は別にいいんだが、言っていることは間違っていない」

 阿久津にとっては気にするほどではなかったらしい。
 まあそれならいいか。

「例えばうさぎ跳びはもうトレーニングとして推奨されない」
「え、そうなの!?」
「有名な話だろ」
「筋トレしないので……」
「春日井ほどとは言わないが少しは鍛えたらどうだ?」
「オレも常々そう言ってるんだがな」
「魔法があれば筋肉なんていらないんだよ」
「十分に発達した筋肉は魔法と見分けがつかないっていうぞ?」
「魔法並みの効果を発揮する筋肉って何だよ!?」

 バキとか男塾とかの世界かよ。

「春日井くん、ちょっとこっち来てくれないー?」
「ほいよー」

 翔が女子に呼ばれていった。
 あいつは力があるから何かと手伝わされているんだよな。
 でもそのおかげで女子と仲が良いのはうらやましい。

「さて今日は能見に頼みたいことがあるんだ」
「今日はって昨日も頼んだよね?」
「内容としては、運動部の練習で役立つ魔法を作ってほしい」
「押し通してくるのか」
「まあ魔法に詳しい能見先生が無理だと言うなら構わないが」
「あ、いい度胸だ、やってやんよ」

 舐めた態度を取ってくれるな。
 見てろよ、あっと言わせる魔法を作ってやる。

「と言っても何が欲しいかが分からないと作りようがないよ」
「ふむ、それはそうだろうな」

 額に指を当ててトントンとしている。
 大丈夫か? 殺し屋になったりしないか?

「ファブルじゃあるまいし、ってか?」
「こいつ、人がわざわざ黙っていたことを」
「集中する時はパターンを作っておいたほうが楽なんだよ」
「なるほど」
「一休さんでも言っていただろう?」
「古いにもほどがあるわ!?」

 俺たちが生まれる前どころか親が生まれる前だぞ。
 どこまで遡れば気が済むんだ。

「集中か、そうだな、集中しやすくなる魔法とか作れないか?」
「それって練習で役立つのか?」
「集中しづらい環境ってのはあるからな」

 たしかにそういう環境であっても集中できるなら便利なのかな。

「わかった、少し考えてみる」
「頼む」

 阿久津が離れるとほぼ同時に翔が戻ってきた。
 どうもロッカーを動かしたらしく腕まくりしている。

「意外と仲良さそうだな」
「意外と、って何だよ」
「てっきり『イケメン死すべし、慈悲はない』とか言うと思ってたぞ」
「あいつは利用価値がありそうだから許す」
「ほほう、真琴に珍しい」
「まこと部分のイントネーションおかしくなかったか?」
「いや、これは快挙だからな、陽菜ちゃんにも教えてあげよう」
「やめろよまじで!?」

 陽菜に伝わったら全力で祝われそうだ。
 この年で友だちが一人出来た程度で騒がれるのは困る。

「で、魔法のあてはあるのか?」
「どこまで聞いてたんだよ!?」
「全部丸聞こえだったぞ」

 ……声のボリュームは落とそう、そうしよう。

 ・・・

 授業中。

 さて頼まれた魔法を作りたいけど、集中しやすくなる魔法ってなんだ?
 普通にイメージするなら防音の魔法って感じだろうか?
 さっそく世界書を開いて音を消す魔法を作成してみる。

 お、やっぱりこの程度は既に作られてるな。
 ただ一分で消費MP10は多すぎるしなにより手間だ。
 使い直すだけで集中が乱されるぞ。
 ただ効果時間を三分に伸ばしても消費MP30になるだけか。
 普通の人を想定するなら消費MP30すら厳しいし、そこまで使っても3分か……。

 そうだ、消すんじゃなくて音量を下げる感じならどうだろう。
 作成してみると既に登録があったけど消費MP5とまだ厳しい。

 何かヒントはないものかと思って辺りを見回す。
 放送設備、グラウンド、先生、時計、一通り見回した後、ある一点で目を留める。

 藤田さんの横顔、いつ見ても綺麗だよなぁ。
 俺の座っている位置だと少し斜め後ろからなので藤田さんの視界に入らず、しかも授業に集中してるから不機嫌そうな顔をしていない。
 いつもあんな顔してたら大人気間違いなしなのに。

「能見!! 藤田を見ている能見!!」
「見てないですよ!?」

 とっさに声をかけられて慌ててそう答えた。

「そう返事をするということは自覚があるってことだな」
「見ているって言われたら誰でもそう答えますよ!?」
「なら見ていないと?」
「そうです、先生の話に集中していたからたまたまそっちを向いていただけです」
「なら先生が話していたことを言ってみろ」
「えーと……、なんでしたっけ?」
「集中しすぎて何も聞いてないじゃないか」

 たしかに全く聞いてなかった。
 内容どころか話をしていたかさえまったく記憶にない。

「とりあえず言いがかりはよしてください」
「わかった、わかった、放課後に補講してやるから居残り」
「ひどすぎる!? 何が分かったんですか!?」
「藤田ー、能見に付き合ってやれるか?」
「……はい」
「誰が付きあっt、は? え?」
「実は藤田から授業に対する質問が来ていてな、放課後その回答のついでに能見の補講もしてやろう」
「…よろしく」
「コチラコソ」
「よし、これで一件落着だな」

 ニヤリと笑って戻っていった。
 おのれ、先生め、感謝します。


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「おは」
「おはよう」
 翔はまだ来ていないようだけど阿久津がいたので挨拶をした。
 教室では今まで翔ぐらいしか挨拶しなかったけど、それは他の人が嫌だったわけじゃない。
 単にその後の話題がかみ合わないことが多かったからだ。
「いい|悪夢《ユメ》見れたかよ?」
「俺の睡眠時間は一分じゃねぇ!?」
 また懐かしいネタを振ってきやがって。
 何十年前のネタかわかってんのか。
「大丈夫だ、まだ二十年はたっていない」
「つまり生まれる前のネタってことだろうが!?」
「何、探偵小説には百年以上前のネタも現役だぞ」
「例えば?」
「いわゆる消去法というやつだな、『全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙な事であっても、それが真実となる』」
「それは別にシャーロックホームズのネタではないのでは?」
「探偵小説では最初さ」
 セリフとしては言ってなくても推理の技術として使っている推理小説はある気がするんだけどな。
「明言した方が強いんだ」
「当たり前のようにモノローグにツッコむのやめてくれますか!?」
「普通の会話と変わらない音量で話してたら区別付くわけないだろう」
「え、そんなに?」
「自覚なかったのか……」
 だって陽菜も翔も指摘してくれなかったぞ!?
 まさかそんなひどい状態だったなんて……
「おいおい治せばいいさ」
「他人事みたいに言いおってからに」
「他人事だからな」
 ドライな奴め、なんで俺の周りはそういう人間ばかりなんだよ。
「類は友を呼ぶと言うな」
「ところでなんでそんな古いネタばかりなんだよ」
 このままだと悲しい方向にしか話が進まないので強引に話題を変える。
 そもそもツッコミどころのあるネタを振ってきた阿久津が悪い。
「古いものは良いものが多い」
「いや、そんなことないと思うけど」
「後世に良いものとして伝わっているものはそれだけの理由があるからな」
「なるほど、一理あるな」
「納得するのか」
 意外そうな目で見られた。
 なんで納得しただけでそんな目で見られないといけないんだよ。
「いや……てっきり持論を曲げないタイプかと」
「曲げる時は曲げるよ!?」
「いやぁ、曲げないだろ」
「翔!?」
 翔が登校してきたようで話に割り込んできた。
「頑固すぎて困るぐらいだ」
「やはりそうか」
「ただ本人があまり興味ない内容だと曲げることもあるな」
「なるほど、そういうことか」
「本人の前でそういうこと言うのやめてもらえますか!?」
 俺だって納得すれば普通に意見を変える。
 陽菜や翔が「根拠は勘」とか言うから納得できないだけだ。
「まあそれはともかく、阿久津は真琴と友達になったのか」
「女性関係の相談を受けるという交換条件でな」
「余計なこと言うなよ!?」
「ほう……、女性関係なぁ」
 翔がアゴを手でさすりながら答える。
 あの表情は絶対何か余計なことをしようとしているに違いない。
「今ホットなのは透子ちゃんだな」
「透子……? 藤田か」
「違うよ!?」
「なるほど、だから胸を揉んだのか」
「事故だよ!? 語弊ある言い方するなよ!?」
「うーん、やっぱりツッコミ能力が今一つだろ」
「鍛えればなんとかなるんじゃないか?」
「大分頑張って鍛えてあげてるんだがな」
「俺は切れていいよね」
 おもちゃにされて黙ってはいられない。
 やられたらやり返すのが信条だ。
「やり返したら透子ちゃんに言いつけるぞ」
「な、お前、それは反則だろ!?」
「藤田にお熱ってやつか」
「ん?」
「ネタが古すぎて伝わってないよ!?」
「じゃあどういう意味なんだ?」
「恋心抱いているって感じの意味だよ」
「なるほどな」
「本人の口から出てたから間違いないな」
「罠だった!?」
 こいつら、無駄に連携しやがって。
 翔だけでも面倒だって言うのに賢いのが増えてさらに面倒だ。
「で、古いものは良いという話だが」
「それ続けるのかよ」
「お、どういう話だ?」
「良いものとして後世に伝わっているものは良いものである可能性が高いって話だ」
「ふーん」
 若干声のトーンが落ちてアゴをさすり始めた。
「後世に伝わっているから良かったり正しかったりするかは分野によると思うんだが」
「例えば?」
「かつてティラノサウルスは毛がないとされてきた」
「考古学の分野は一つの発見で覆りやすいからな」
「名画が偽物だったということがある」
「真作と見間違う贋作は良いものと言っていいんじゃないか」
 会話に割り込む隙がない。
 俺もある程度は分かるけど反応速度が段違いだ。
 ただそれにしても翔はやけに絡んでるな。
「なら」
「待て待て待て、翔はなんでけんか腰なんだよ」
「喧嘩なんかしてないが?」
「ただの討論だろ」
「今にも殴りかかりそうだったけど」
「まさか真琴じゃあるまいし」
「普段からそういう考えだから他人も同じだと思うんだろう」
「俺は相手を選ぶよ!?」
 翔を殴ったって効果ないの分かってるから殴ってるんであって、ダメージがあるならやらないぞ。
「まあ春日井の態度は別にいいんだが、言っていることは間違っていない」
 阿久津にとっては気にするほどではなかったらしい。
 まあそれならいいか。
「例えばうさぎ跳びはもうトレーニングとして推奨されない」
「え、そうなの!?」
「有名な話だろ」
「筋トレしないので……」
「春日井ほどとは言わないが少しは鍛えたらどうだ?」
「オレも常々そう言ってるんだがな」
「魔法があれば筋肉なんていらないんだよ」
「十分に発達した筋肉は魔法と見分けがつかないっていうぞ?」
「魔法並みの効果を発揮する筋肉って何だよ!?」
 バキとか男塾とかの世界かよ。
「春日井くん、ちょっとこっち来てくれないー?」
「ほいよー」
 翔が女子に呼ばれていった。
 あいつは力があるから何かと手伝わされているんだよな。
 でもそのおかげで女子と仲が良いのはうらやましい。
「さて今日は能見に頼みたいことがあるんだ」
「今日はって昨日も頼んだよね?」
「内容としては、運動部の練習で役立つ魔法を作ってほしい」
「押し通してくるのか」
「まあ魔法に詳しい能見先生が無理だと言うなら構わないが」
「あ、いい度胸だ、やってやんよ」
 舐めた態度を取ってくれるな。
 見てろよ、あっと言わせる魔法を作ってやる。
「と言っても何が欲しいかが分からないと作りようがないよ」
「ふむ、それはそうだろうな」
 額に指を当ててトントンとしている。
 大丈夫か? 殺し屋になったりしないか?
「ファブルじゃあるまいし、ってか?」
「こいつ、人がわざわざ黙っていたことを」
「集中する時はパターンを作っておいたほうが楽なんだよ」
「なるほど」
「一休さんでも言っていただろう?」
「古いにもほどがあるわ!?」
 俺たちが生まれる前どころか親が生まれる前だぞ。
 どこまで遡れば気が済むんだ。
「集中か、そうだな、集中しやすくなる魔法とか作れないか?」
「それって練習で役立つのか?」
「集中しづらい環境ってのはあるからな」
 たしかにそういう環境であっても集中できるなら便利なのかな。
「わかった、少し考えてみる」
「頼む」
 阿久津が離れるとほぼ同時に翔が戻ってきた。
 どうもロッカーを動かしたらしく腕まくりしている。
「意外と仲良さそうだな」
「意外と、って何だよ」
「てっきり『イケメン死すべし、慈悲はない』とか言うと思ってたぞ」
「あいつは利用価値がありそうだから許す」
「ほほう、真琴に珍しい」
「まこと部分のイントネーションおかしくなかったか?」
「いや、これは快挙だからな、陽菜ちゃんにも教えてあげよう」
「やめろよまじで!?」
 陽菜に伝わったら全力で祝われそうだ。
 この年で友だちが一人出来た程度で騒がれるのは困る。
「で、魔法のあてはあるのか?」
「どこまで聞いてたんだよ!?」
「全部丸聞こえだったぞ」
 ……声のボリュームは落とそう、そうしよう。
 ・・・
 授業中。
 さて頼まれた魔法を作りたいけど、集中しやすくなる魔法ってなんだ?
 普通にイメージするなら防音の魔法って感じだろうか?
 さっそく世界書を開いて音を消す魔法を作成してみる。
 お、やっぱりこの程度は既に作られてるな。
 ただ一分で消費MP10は多すぎるしなにより手間だ。
 使い直すだけで集中が乱されるぞ。
 ただ効果時間を三分に伸ばしても消費MP30になるだけか。
 普通の人を想定するなら消費MP30すら厳しいし、そこまで使っても3分か……。
 そうだ、消すんじゃなくて音量を下げる感じならどうだろう。
 作成してみると既に登録があったけど消費MP5とまだ厳しい。
 何かヒントはないものかと思って辺りを見回す。
 放送設備、グラウンド、先生、時計、一通り見回した後、ある一点で目を留める。
 藤田さんの横顔、いつ見ても綺麗だよなぁ。
 俺の座っている位置だと少し斜め後ろからなので藤田さんの視界に入らず、しかも授業に集中してるから不機嫌そうな顔をしていない。
 いつもあんな顔してたら大人気間違いなしなのに。
「能見!! 藤田を見ている能見!!」
「見てないですよ!?」
 とっさに声をかけられて慌ててそう答えた。
「そう返事をするということは自覚があるってことだな」
「見ているって言われたら誰でもそう答えますよ!?」
「なら見ていないと?」
「そうです、先生の話に集中していたからたまたまそっちを向いていただけです」
「なら先生が話していたことを言ってみろ」
「えーと……、なんでしたっけ?」
「集中しすぎて何も聞いてないじゃないか」
 たしかに全く聞いてなかった。
 内容どころか話をしていたかさえまったく記憶にない。
「とりあえず言いがかりはよしてください」
「わかった、わかった、放課後に補講してやるから居残り」
「ひどすぎる!? 何が分かったんですか!?」
「藤田ー、能見に付き合ってやれるか?」
「……はい」
「誰が付きあっt、は? え?」
「実は藤田から授業に対する質問が来ていてな、放課後その回答のついでに能見の補講もしてやろう」
「…よろしく」
「コチラコソ」
「よし、これで一件落着だな」
 ニヤリと笑って戻っていった。
 おのれ、先生め、感謝します。