使者

ー/ー



 ルサークの過去も分かり、夜も深くなってきた。

 皆は男女別にテントで寝ることになる。

「それじゃ、おやすみなさい」

 マルクエンは女性陣に声を掛け、テントの中へと消えていった。

「勇者様、失礼します」

 後からルサークもテントへと入り、窮屈(きゅうくつ)そうに身を屈めるマルクエンの隣へ座る。

 緊張しているルサークを気遣い、マルクエンは優しく話した。

「そんなに身構えなくても良いですよ。寝ましょう」

「あ、あのー。寝ている間に俺が逃げるって考えないんですか? もっと縛っておくだとか……」

 それを聞いてマルクエンは、ハッとする。

「た、確かに言われてみれば、そうしなくてはいけなかったかもしれません!」

「えっ!? えぇ……?」

「でもまぁ、面倒ですし。それに何より、私は思うんですけど、ルサークさんは逃げないって、何となく直感的に信じているんです」

 マルクエンの言葉にまた涙が出そうになるルサーク。

「信じて下さっている勇者様を裏切るようなことはしません」

「そうですか、それじゃ寝ましょう」

 マルクエンは寝袋に入って、すぅーっと寝てしまった。



 隣のテントでは、すでに爆睡しているスパチーがいて、何かあった時の為に、その隣にラミッタが寝る。

「それじゃ寝ましょうか。あとデルタさん、まぁ信じてはいるけど、変な気は起こさない事ね?」

「は、はい! 承知しております!」

「冗談よ冗談。そんなに緊張しなくていいわ」

 ケラケラとラミッタは笑うが、本当に冗談なのだろうかとデルタは勘繰る。

 レモーヌはもう疲れ果て、寝袋に入った。

「それじゃ、おやすみなさいです!」

 このテントには魔人はいるし、勇者はいるし、罪人もいる。

 何だかよく分からない状況すぎて、レモーヌは一周回って緊張がどこかへ行ってしまっていた。

 ラミッタが眠そうにあくびをして、横になって言う。

「はい、それじゃ寝ましょう! おやすみなさい!」




 朝になり、女子テントの中で一番最初に目覚めたのはデルタだ。

 隣で気持ちよさそうに寝ている勇者がいたが、逃げられるとは思っていないし、思わなかった。

 テントから外に出て、日差しを浴びながらうーんと伸びをする。

「あら?」

 外では人の気配がした。煙も上がっている。

 その方向へ近づくと、マルクエンとルサークが料理をしていた。

 デルタはその背中へ声を掛ける。

「おはようございます、勇者様。あと、ルサーク」

 それを聞いて振り返る二人。マルクエンは柔らかな笑みを浮かべ、それに答えた。

「あぁ、おはようございます」

「おっす、デルタ」

 フライパンでウィンナーと野菜を炒めているマルクエンにデルタは申し出た。

「勇者様、代わります」

「いえ、大丈夫です。料理の修行中でして」

 マルクエンはニコニコとフライパンを振っている。

 ルサークもパンを温め、スープの加減を見ながらデルタに指示した。

「デルタ、気にするな。それより向こうのテントの皆を起こしてきてくれ!」

 デルタはテントへと戻り、皆を起こそうとした。

 何かあってはいけないので、念のため勇者であるラミッタからだ。

「勇者様、朝食の準備ができました」

「うっ、うーん……。あぁ、おはよう」

 目をこすりながら起きたラミッタは片手間にスパチーへと封印魔法を放った。

「うぎゃー!!!」

 スパチーは最悪の目覚めを迎える。

「なにすんだ!!」

「はいはい。レモーヌも起きて」

 体を揺さぶられ、レモーヌも目を覚ました。

「あ、おはようございまッス!!!」



 テントから出ると、マルクエンとルサークが料理を盛り付けていた。

 それを見てレモーヌは慌てる。

「勇者様!! す、すんません、爆睡していたッス!! 本当は私が勇者様のお世話を任されているのに……」

 フフッとマルクエンは笑い返した。

「いえ、大丈夫ですよ。好きでやっている事ですから」

 美味しそうな匂いを嗅いだスパチーは興奮し始める。

「なんだ!! メシか!!」

 ルサークが取り分けたスープをスパチーに差し出した。

「あぁ、そうだぞ」

 全員で輪になって食事を始める。

「それじゃ、イタダキマス!!」

 むさい男共が作ったとは思えないほど美味しいスープを飲んでラミッタが言う。

「腕を上げたわね、宿敵」

「おぉ、ありがとうなラミッタ!」

 食事を終えると、レモーヌはふと、ポケットの中から振動を感じていた。

 触れると対になっている石が震え、光るという魔道具、連絡石が反応している。

「あぁ、ギルドのお呼び出しっスね。行ってきます!」

 そう言って立ち上がるレモーヌにマルクエンは声を掛けた。

「レモーヌさん、お気を付けて!」

「ありがとざっす! 行ってきますー」





 勇者達と行動を別にし、街のギルドへと戻ったレモーヌ。

 到着すると、奥の部屋へ案内され、そこではギルドマスターが待っていた。

「レモーヌ、勇者様のお世話ご苦労だったな」

「いえいえ、結構楽しかったっす!」

 レモーヌはニコニコ笑顔で答える。

「それで、本日付でその任務は終わりだ。夜に王都から使者の方が来るらしい」

「あー、そうなんすか、結構早かったっスね」

「この事を勇者様に伝えたら、お前は街へ戻れ。使者の方と勇者様のお話は誰にも聞かせたくないらしい」

「あー、了解っす! ルサークさんとデルタさん……。偽物勇者のお二人はどうします?」

 レモーヌの質問にギルドマスターは静かに答えた。

「その二人も使者の方に会ってもらえるらしい。ともかくこれ以上はギルドマスターの私にすら詳しく教えてこなかった」

「そうなんすねー」

「まぁ、以上だ。勇者様の元へ行き、お伝えしたら戻って来い」

「はいッス!」





 マルクエン達は各々自由に過ごしていたが、やがて遠くからこちらに近付く者を見た。

「ただいま戻りましたー」

 元気いっぱいのレモーヌが帰ってきたので、マルクエンも笑顔で返す。

「レモーヌさん。おかえりなさい」

「どうもっす。早速なんですけど、夜に王都からの使者さんが来るらしく。私はお伝えしたら街へ戻るよう言われました。内緒のお話らしいので」

 レモーヌの言葉を盗み聞きしたルサークは「ついに来たか」と覚悟をした。

 続けてレモーヌが話す。

「というわけで、今までお世話になりました! 勇者様と一緒に居られるというキチョーな体験が出来て良かったっす!」


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 ルサークの過去も分かり、夜も深くなってきた。
 皆は男女別にテントで寝ることになる。
「それじゃ、おやすみなさい」
 マルクエンは女性陣に声を掛け、テントの中へと消えていった。
「勇者様、失礼します」
 後からルサークもテントへと入り、|窮屈《きゅうくつ》そうに身を屈めるマルクエンの隣へ座る。
 緊張しているルサークを気遣い、マルクエンは優しく話した。
「そんなに身構えなくても良いですよ。寝ましょう」
「あ、あのー。寝ている間に俺が逃げるって考えないんですか? もっと縛っておくだとか……」
 それを聞いてマルクエンは、ハッとする。
「た、確かに言われてみれば、そうしなくてはいけなかったかもしれません!」
「えっ!? えぇ……?」
「でもまぁ、面倒ですし。それに何より、私は思うんですけど、ルサークさんは逃げないって、何となく直感的に信じているんです」
 マルクエンの言葉にまた涙が出そうになるルサーク。
「信じて下さっている勇者様を裏切るようなことはしません」
「そうですか、それじゃ寝ましょう」
 マルクエンは寝袋に入って、すぅーっと寝てしまった。
 隣のテントでは、すでに爆睡しているスパチーがいて、何かあった時の為に、その隣にラミッタが寝る。
「それじゃ寝ましょうか。あとデルタさん、まぁ信じてはいるけど、変な気は起こさない事ね?」
「は、はい! 承知しております!」
「冗談よ冗談。そんなに緊張しなくていいわ」
 ケラケラとラミッタは笑うが、本当に冗談なのだろうかとデルタは勘繰る。
 レモーヌはもう疲れ果て、寝袋に入った。
「それじゃ、おやすみなさいです!」
 このテントには魔人はいるし、勇者はいるし、罪人もいる。
 何だかよく分からない状況すぎて、レモーヌは一周回って緊張がどこかへ行ってしまっていた。
 ラミッタが眠そうにあくびをして、横になって言う。
「はい、それじゃ寝ましょう! おやすみなさい!」
 朝になり、女子テントの中で一番最初に目覚めたのはデルタだ。
 隣で気持ちよさそうに寝ている勇者がいたが、逃げられるとは思っていないし、思わなかった。
 テントから外に出て、日差しを浴びながらうーんと伸びをする。
「あら?」
 外では人の気配がした。煙も上がっている。
 その方向へ近づくと、マルクエンとルサークが料理をしていた。
 デルタはその背中へ声を掛ける。
「おはようございます、勇者様。あと、ルサーク」
 それを聞いて振り返る二人。マルクエンは柔らかな笑みを浮かべ、それに答えた。
「あぁ、おはようございます」
「おっす、デルタ」
 フライパンでウィンナーと野菜を炒めているマルクエンにデルタは申し出た。
「勇者様、代わります」
「いえ、大丈夫です。料理の修行中でして」
 マルクエンはニコニコとフライパンを振っている。
 ルサークもパンを温め、スープの加減を見ながらデルタに指示した。
「デルタ、気にするな。それより向こうのテントの皆を起こしてきてくれ!」
 デルタはテントへと戻り、皆を起こそうとした。
 何かあってはいけないので、念のため勇者であるラミッタからだ。
「勇者様、朝食の準備ができました」
「うっ、うーん……。あぁ、おはよう」
 目をこすりながら起きたラミッタは片手間にスパチーへと封印魔法を放った。
「うぎゃー!!!」
 スパチーは最悪の目覚めを迎える。
「なにすんだ!!」
「はいはい。レモーヌも起きて」
 体を揺さぶられ、レモーヌも目を覚ました。
「あ、おはようございまッス!!!」
 テントから出ると、マルクエンとルサークが料理を盛り付けていた。
 それを見てレモーヌは慌てる。
「勇者様!! す、すんません、爆睡していたッス!! 本当は私が勇者様のお世話を任されているのに……」
 フフッとマルクエンは笑い返した。
「いえ、大丈夫ですよ。好きでやっている事ですから」
 美味しそうな匂いを嗅いだスパチーは興奮し始める。
「なんだ!! メシか!!」
 ルサークが取り分けたスープをスパチーに差し出した。
「あぁ、そうだぞ」
 全員で輪になって食事を始める。
「それじゃ、イタダキマス!!」
 むさい男共が作ったとは思えないほど美味しいスープを飲んでラミッタが言う。
「腕を上げたわね、宿敵」
「おぉ、ありがとうなラミッタ!」
 食事を終えると、レモーヌはふと、ポケットの中から振動を感じていた。
 触れると対になっている石が震え、光るという魔道具、連絡石が反応している。
「あぁ、ギルドのお呼び出しっスね。行ってきます!」
 そう言って立ち上がるレモーヌにマルクエンは声を掛けた。
「レモーヌさん、お気を付けて!」
「ありがとざっす! 行ってきますー」
 勇者達と行動を別にし、街のギルドへと戻ったレモーヌ。
 到着すると、奥の部屋へ案内され、そこではギルドマスターが待っていた。
「レモーヌ、勇者様のお世話ご苦労だったな」
「いえいえ、結構楽しかったっす!」
 レモーヌはニコニコ笑顔で答える。
「それで、本日付でその任務は終わりだ。夜に王都から使者の方が来るらしい」
「あー、そうなんすか、結構早かったっスね」
「この事を勇者様に伝えたら、お前は街へ戻れ。使者の方と勇者様のお話は誰にも聞かせたくないらしい」
「あー、了解っす! ルサークさんとデルタさん……。偽物勇者のお二人はどうします?」
 レモーヌの質問にギルドマスターは静かに答えた。
「その二人も使者の方に会ってもらえるらしい。ともかくこれ以上はギルドマスターの私にすら詳しく教えてこなかった」
「そうなんすねー」
「まぁ、以上だ。勇者様の元へ行き、お伝えしたら戻って来い」
「はいッス!」
 マルクエン達は各々自由に過ごしていたが、やがて遠くからこちらに近付く者を見た。
「ただいま戻りましたー」
 元気いっぱいのレモーヌが帰ってきたので、マルクエンも笑顔で返す。
「レモーヌさん。おかえりなさい」
「どうもっす。早速なんですけど、夜に王都からの使者さんが来るらしく。私はお伝えしたら街へ戻るよう言われました。内緒のお話らしいので」
 レモーヌの言葉を盗み聞きしたルサークは「ついに来たか」と覚悟をした。
 続けてレモーヌが話す。
「というわけで、今までお世話になりました! 勇者様と一緒に居られるというキチョーな体験が出来て良かったっす!」