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閑話2 そこが法と術の違いなのじゃ

ー/ー



「全く、直樹さんは……」
「鋭いのか鈍いのか分からん奴じゃな」

 たぶん無意識的に考えないようにしているだけなんじゃろうが、と内心呟いたティーガンは、少し頬を膨らませた雪を優しく見やる。

 と、和室の襖が開いた。

「雪、時間は大丈夫なの?」
「あ、もうこんな時間!」

 眠たそうに目を伏せてる司が時計を指さした。雪は、あ、と声を上げる。

「起こしてしもうたようじゃな。すまなかった」
「いえ。私は明日の準備でこの時間に起きるので大丈夫ですよ。雪、明日起きれなくなってもしらないわよ」
「うぅ、はい」

 雪は少しだけ項垂れ、ゲームを片づけていく。

 ティーガンも手伝う。

 それから二人は司に就寝の挨拶をした後、雪の自室へと移動した。

「ティーガンさんは眠くないんですか?」
「妾は基本日夜逆転しておるかの。別に日中起きてても問題はないんじゃが、夏は日差しが強くての」
「確かにティーガンさん、お肌真っ白ですもんね。日に弱そうです」

 少し見当違いな頷きをした雪は、来客用に用意した布団をベッドの隣に敷く。

「あ、じゃあ、眠る必要は……」
「いや、先ほど直樹に伝えた通り、今日は昼間から動いておってな」
「分かりました。そうだ、ティーガンさん。ベッドで寝ますか? 私は下でもいいんですけど」
「いや、妾が下でいい」

 そう言いながらティーガンは雪が敷いた布団に腰を降ろす。

 雪はすぐ隣のベッドに腰を掛けた。

「じゃあ寝るかの」
「あ、はい」

 雪は桜の花弁を一枚召喚して、部屋の電気を消した。二人とも布団に入った。

 静寂が訪れる。

 雪は少しばかり緊張して眠れない。チラリとティーガンの方を見る。

「ひゃいっ!」
「ぬおっ、どうしたんじゃっ!」

 すると、鮮血の瞳が真っ暗の部屋でも爛々(らんらん)と輝いていて、雪は思わず声を上げた。それに驚きティーガンも声を上げる。

「て、ティーガンさんの目が光ってて!」
「ぬ。それはすまんかった。そういえば夜目が利くようにしておったな」

 自らの顔に手を当てたティーガンはむむむと唸る。一瞬鮮血の光を(ほとばし)らせる。

 すれば、

「これで光っておらんじゃろ?」
「あ、はい。僅かに見えるくらいです」
「なら良かった」

 ティーガンに雪はもしかして、と問う。

「ティーガンさん固有の血術ですか? 生命に干渉する」
「まぁ、そうじゃな。正確には血法なのじゃが」
「けっぽう? 血術ではないんですか? ウィオリナさんたちは……」

 暗闇の部屋の中、雪は少しばかり混乱する。ティーガンは意外そうな表情をした。

「雪も妾側じゃろうて。魔法を使うのじゃしな」
「はい? 魔法を使うのは当たり前ですよ?」
「む、直樹たちから聞いて……そういえばあやつらは奇異な運命でその力を宿しただけじゃったな。いや、じゃが、お主らは元は神和ぎ社に所属しておったのではないのかえ?」
「ええっと、私たちは殆ど神和ぎ社と関わってないんです。今のところ関係は結構宙ぶらりんな感じですし……」
「そうなのか」

 なら、とティーガンは説明する。

「この世界、まぁ地球という星でよいか。地球にはの、幻力がない」
「幻力ですか?」
「まぁ妾の日本語がキチンと訳せているかは少し分からんじゃ、いわばお主が使う魔力や妾が使う血力じゃ」
「……いや、でも異世界から来たティーガンさんはまだしも私たちは。それに直樹さんによれば極僅かだが皆が魔力を持っていると」

 雪が首を傾げる。ティーガンは順序じゃ、という。

「最初はなかったんじゃ。どうやらこの地球は(あな)が開きやすいようでの」
「あな、ですか?」
「うむ。天然の異世界への転移門じゃ。妾が地球に来てから数十回近くは見たの。神隠しの伝承の一部もそれじゃ。その孔は人の周囲に発生するものでの。近くにいたものは例外なく吸い込まれる」
「そうなんですか……うん? それと幻力に何の関係があるんですか?」

 雪の疑問にティーガンは返答する。

「孔は基本的に一方通行じゃ。じゃが、地球から異世界へもあれば、異世界から地球への孔もよく発生するんじゃ」
「つまり、ティーガンさんみたいに自力ではなく、たまたま地球に来た人たちがいるのですか?」
「うむ。まぁ、人かどうかはおいておいてな。他の世界によっては人の定義が変わっておったりするからの。知性ある存在と思ってもらえればよい」
「はい、分かりました」

 雪の気持ちのいい返事に頬を緩ませたティーガンは続ける。

「この地球に住む存在は特異での。幻力を持たぬ代わりに、あらゆる幻力を受け入れる素質があったんじゃ。他の世界の存在(もの)では無理じゃろうて」
「じゃあ、それからウィオリナさんみたいな人たちがって事ですか? 日本人が僅かばかりに魔力を持っているのは」
「この地の人間全てに魔力を与えた奴がおったのじゃろうな。たぶん、それほどの事態が一度起こった。まぁ、与えた魔力は大したものではなかったから、多くの者が極小にしか持っておらんのじゃろうが」

 そう言いながらティーガンは雪に質問した。

「ところでじゃ。雪は魔法を使うとき、どうやって使っておる?」
「ええっと、基本的に対混沌の妄執魔法外装(ハンディアント)を介して。あ、でも、覚醒してからは自力で発動できますね。変身しないでも使えますし」
「それじゃ」
「はい?」
「そこが法と術の違いなのじゃ」

 布団の中でモゾモゾと動き、片手を出したティーガンが血力を軽く放出する。

「妾は今、血力を操作した。言葉や道具を介さずに、己の意志一つでじゃ」
「え、はい。私もできます」
「通常はできんのじゃ。地球の者は幻力を受け入れる素質はあっても、直接幻力を操作する素質はないのじゃ。じゃから、言葉や道具を介して幻力を操作し、事象を為すのじゃ」
「……え、じゃあ、私たちは……」
「異界の存在じゃ」
「……地球人ですらなかったのですか……」

 雪はなんとなく打ちひしがれる。いや、別にそこまでショックではないのだが、微妙にショックがある。

「たぶん、その対混沌の妄執魔法外装(ハンディアント)を作った存在は相当の天才じゃ。大輔が手直しするまでデメリットがあったと言っておったな」
「はい」
「反動じゃよ。妾が呪いをかけすぎた反動と同じように、お主らの肉体と魂魄を幻力を操作できるように変えた反動がそれじゃ。大輔が手を加える前のそれを見てないから断言はできんじゃ、修練すれば覚醒前でも今と同じように魔法が使えたはずじゃ」

 ティーガンの声音はとてつもなく真剣で、それは凄い事なのだろう。しかし、それが使えている雪は実感がわかない。

「……ええっと、それは凄いことなんですか?」
「凄いことじゃ。生命干渉に特化している妾でさえ、ウィオリナにその力を与えるのは少々骨が折れたほどじゃ。どんなに優れた道具を作ったところで、為すのは難しい。それを反動込みとはいえ、ある程度量産できるほどにしたのじゃ。天才としか言いようがない」
「そうなんですか……」

 でも結局反動があるから天才なのかな……? と雪は首を傾げる。異世界最高峰、邪神にすら恐ろしいと言わしめた錬金術師(大輔)が近くにいるせいで感覚がおかしいのだ。

 と、雪は首を傾げる。

「あれ、ウィオリナさん、血術って言ってませんでした?」
「昔からの癖じゃ。つい、半年前じゃ。統括長官になる者には事前にその力を与え修練してもらっておるのじゃ。まぁ、長年の口癖はぬけんものじゃ」
「確かにそうですね」
「でじゃ、今のところ幻想機関でそれを為せるのは多くの魔術師を擁する異界魔術結社(ハエレシス)と、世界最大宗教の裏組織、D・P・T・S・T(汝が隣人を汝自身の如)・I(く愛せよ)だけであり、D・P・T・S・T(汝が隣人を汝自身の如)・I(く愛せよ)には天使や悪魔の力を宿して生まれた聖人なる存在が――」

 つい話すのが楽しくなり、揚々と続けようとしたティーガンは、口を噤んだ。

「すぅ……すぅ……」
「寝てしもうたか。まぁよいか。異界魔術結社(ハエレシス)は兎も角、あそこは基本的に動かざるごと山のごとしを体現した組織じゃ。妾たちと関わることはなかろうて」

 そう言いながら、気持ちよさそうな雪の寝顔に微笑んだティーガンは、ゆっくりと瞳をつぶり、意識を闇へ落とした。



 Φ



 ここはちょっと特殊な異空間。

 どこまでも続く穏やかな平原の中央に、ポツンと幾つかの木々に囲まれた武家屋敷があった。落ち着く縁側に木やイグサの優しい匂い。囲炉裏が見え、パチパチと弾けている。

 ああ、安心する。

 そう思うのも束の間、そこに住まう住人達を見て多くの人は度肝を抜くだろう。

 同じ顔の女性が数十人、下手したら百人近くいるからだ。

 全員が世界各国の様々な女中の恰好をしており、武家屋敷に似合う楚々とした着物女中姿から、西洋の豪華な王宮のメイド服姿まで。砂漠地帯の少し艶めかしい薄着女中姿などもある。

 同じ顔をした女中がその屋敷を行き交っているのだ。

 つまり彼女たちは冥土(ギズィア)――プー子の妹たちであり、ここはそんな妹たちが収納されている異空間なのだ。

 冥土楽園(タルタロス)という。

「あ、見つけましたよ。烏丸郭のご自宅」
「では、ソレイユ。周囲を警戒しつつ、黒羽根(ヴィール)での捜索をお願いします」
「了解です、クアルト姉様」

 チャイナ服のような真っ赤な女中服に身を包んだ19番目の妹――ソレイユは、黒のヴィクトリアンメイド服に身を包んだ四番目の妹――クアルトに頭を下げ、機能停止したかの如く力なく倒れる。

 冥土(ギズィア)――プー子の指示により、現世へ黒羽根(ヴィール)は放ち、烏丸郭の情報を探っているのだ。

 クアルトはソレイユから目を外し、はぁ、と溜息を吐きながら縁側で寝っ転がっている姉二人を見やる。

「ゼグンド姉様、テルセロ姉様。寝っ転がってないで、仕事してください」
「あぁん、酷いわ、クアルト!」
「そうよ。私たちは魔力回復に努めてるのよ!」

 スカート短いメイド服に身を包んだ2番目の妹――ゼグンドと、藍色の着物女中姿の3番目の妹――テルセロが頬を膨らませて抗議する。

 クアルトは冷徹な瞳でそんな二人を見下げる。

「上姉様と叛逆ドアホ(イムニティ)以外、誰も自力で魔力生成できないでしょうに。何を言っているのですか」
「ちっ、ちっ、ちっ、見識が足りないわね、クアルト」
「そうよ。創造主様(マスター)が好きな勇者の部活のアニメで『為せば大抵なんとかなる』って言葉があるのよ。知らないの?」

 やれやれだぜ、と言わんばかりに肩をすくめた姉二人に、クアルトはイラッとする。両腕を黒腕(アルクトス)へと変化させる。殴る。

「ならば、魔力生成はその大抵に含まれませんっ!」
「うぎゃあっ!」
「ごふっ!」

 ゼグンドとテルセロが吹き飛ばされる。高く空中へ跳んだ彼女たちは、轟音を立てながら武家屋敷の庭にめり込む。

 ちょうどそこは小さな畑、家庭菜園の場所だったようで、そこで作業をしていた和テイストのミニスカメイド服に身を包んだ9番目の妹――エトナスが項垂れる。

 ラビットツインテールもしゅんと垂れさがる。

「ああ、クアルト姉ちゃん、せっかくイムちゃん用の野菜を育てるために耕してたのに」
「それはすみません。こんどは地平線の彼方(かなた)まで吹き飛ばしておきます」
「お願いですよぉ」

 クアルトは溜息を吐く。

「ったく、上姉様の補助として最初に作られた二番目(ゼグンド)三番目(テルセロ)があんなちゃらんぽらんなのでしょう。流石に創造主様(マスター)たちでも批判せざるを得ません。何故あのような性格設定にしたのか……」
「それって叛逆の意思ありって事でいいかな?」

 その少しウザったい声音を放つ存在にクアルトは振り返る。

 そこにはミニスカ和風メイド服に簪で黒髪を纏めた妹がいた。白ニーソを履いているそいつの名前は、

「今日の魔力生成は終わったのですか、叛逆ドアホ(イムニティ)
「終わりましたよ、もう」

 イムニティ。101番目の妹であり、最終番個体(ラストナンバー)である。

 武家屋敷を行き交う姉たちを見ながら、ぷんすかと頬を膨らませる。

「私が魔力を供給しないとみんな動けないのに、なんでこんな雑な扱いされるのか納得いかないよ!」
「それは貴方がポンコツだからです。何度ポカをやらかしたと思っているんですか。それに創造主様(マスター)たちの命令にすら何度も逆らって。この叛逆ドアホ(イムニティ)
「いや、だって、あれは姉様たちじゃ倒せないから私が倒しただけ。ほら、私特別だから。私、特別だからっ! 成長する個体ですから!」

 だから敬ってっ! と言わんばかりのイムニティに、クアルトは冷徹に返す。

「なら、その特別を利用してさっさと上姉様のバグを修正してください。あと、空間編成の方も進んでいますか?」
「ああ、はいはい。してます、してますよ。うるさいなぁ」

 冗談を返してくれないクアルトに、イムニティは少しやさぐれる。

「大体、空間編成はアハト姉様が指揮してるんでしょ。そっちに聞いてよ」
「それでもそのデバックをしているのは貴方ではないですか」
「そうだけど、上姉さまのデバックだってややこしいの。変なの、今までの疑似感情生成機構(プログラム)とは違う構築のされ方で……あ、ヤバい。エラー起きた」

 イムニティはああ、と頭を抱えて転げまわる。

叛逆ドアホ(イムニティ)っ。畳が傷つきます!」
「うるさい。本当に、私に仕事押し付けすぎよ! 史上最もやばい上姉さまのバグ処理に空間編成。不可思議すぎる烏丸郭に対しての解析(スクリーバ)機構(プログラム)の編纂、学習成長! 他にも色々と処理してるの! これに姉さまたちの魔力確保! 休ませてぇ!」

 じたばたと泣き叫ぶイムニティに、クアルトは溜息を吐き、懐からあるモノを取り出した。

叛逆ドアホ(イムニティ)。これを見なさい」
「もう、なに――えっ! それは!」
「上姉様が貴方のために用意した副創造主様(サブマスター)のお風呂写真です」

 クアルトが手に持っていた写真を見せた瞬間、イムニティは目に見えない速さでその写真を奪い取ろうとする。

 しかし、クアルトはさっと懐に仕舞う。頭から畳へダイブするイムニティ。

「くれ!」
「駄目です。これはご褒美です。しかも、貴方の仕事の成果次第ではヌードモデル写真集もついてくるそう――」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 それを聞いた途端、イムニティは覇気を迸らせながら極限の集中へと入る。

 クアルトは全く、と首を振った。

創造主様(マスター)ではなく副創造主様(サブマスター)好きなのはあなたくらいですよ」

 それからクアルトは虚空を見つめる。

「それにしても上姉様は何をそんなに心配しているのか。あの芦屋とグスタフの力を見ても、黒羽根(ヴィール)だけでも問題なく対処は可能。封怨石が壊される確率は零に近いというのに」

 そのまま、冥土(ギズィア)――プー子に命令されて空間編成をしている八番目の妹――アハトに指示を出す。

「まぁ、万に、いや無限に一つの可能性も潰すのが我らの役目ですから、文句はないのですが……」

 そう呟いた時、

「クアルト姉様、報告です」
「烏丸郭について何か分かったのですか、ソレイユ」

 機能停止したように眠っていたソレイユが慌てたように起き上がる。

「ジルヴァラやレフコクリソスなどが追って調査していますが、もしかしたら上姉様の懸念が当たっているかもしれません」
「どういうことですか?」

 クアルトは眉を(ひそ)める。

「家族構成で、烏丸郭以外全員が創造主様(マスター)の世界最大宗教を信仰しております。また、昨日電話した友人はその宗教関連の知り合いが多いようです」
「……信者は何十億もいるのです。おかしなことでは」
「はい。ですが、おかしいのです」
「何がでしょうか?」

 ソレイユは続ける。

「家族の方からその信者へと黒羽根(ヴィール)で探りました。その内、隠聖字教という日本の分派で、郭は何故か女教皇(プリーステス)などと呼ばれていて」
「……創造主様(マスター)の知識で言えばそれはよろしくないですね。最大宗教を隠れ蓑に新興宗教でも始める気ですか?」
「いえ、それがずいぶんと歴史があるようで。あ、今調査に当たってるジルヴァラから追加情報が。資料庫の資料で一番古いのが四百年前ほどのものです。その書物にはアザゼルの聖人はこの地に……と書かれているようです」
「アザゼル……確かその最大宗教の――」

 天使、とクアルトが続けようとした時、

「ッ、緊急、緊急っ! 稼働している冥土(ギズィア)たちは至急防護術式の強化を! 上姉様の精神介入を阻止しなさいっ!」

 一瞬、目を見開いたクアルトが、怒声を響かせたのだった。







======================================
公開可能情報

幻力:実体や質量をもたず、けれどこの世界に存在する非実体エネルギー物質。魔力や血力、妖力、仙力などがそれにあたる。幾つもある世界の固有の非実体エネルギー物質であり、基本的にその世界でしか生成されない仕組みとなっている。強弱や特性があるものの、全てにおいて理に干渉する力を有し、魂魄を持つ存在に対して反応しやすいようになっている。
実は地球がある世界(宇宙)はあらゆる世界のプロトタイプであり、世界の意思がほかの世界を創造しようとした際、理知ある生物()をより生まれやすくするために作り出した機構。


法と術:幻力を行使して世界の理に干渉する際の必要性の違い。言葉や道具を媒介にしなければ発動できないのを術。それ以外を法である。法はなくても問題ないが、言葉や道具を媒介にしたほうが干渉のしやすさが上がる。基本的に異界の存在が法を使うと認識してもらえれば問題ない。
必要性の違いが生まれる理由は、幻力を直接操作できるかどうか。地球人はあらゆる幻力を受け入れる素質はあったものの、幻力を意志で操作できず、正確には幻力を操作するための波を発する機能が魂魄と肉体にないため。
大輔たちが魔力を直接操作できるようになったのは、女神による魂魄の改造と、異世界の肉体を与えられたから。直樹たちが地球に送還された際にステータス等々が減少していたのは、魂魄は異世界仕様なのに肉体は地球仕様だったため。ただ、二人の魂魄はとても強く、徐々に肉体を異世界仕様に変えている。


冥土楽園(タルタロス)冥土(ギズィア)たちが格納されている異空間。混沌の妄執(ロイエヘクサ)の寄生していた宝石の指輪を基点に作り出した異空間。指輪の宝石の中に異空間がある感じ。
ちょっと前までは魔力が足りず、ただただ無機質な真っ暗だった。今は、魔力に余裕ができたため、最初に武家屋敷を作り、その後草木魔法で草原を生やした。
太陽の代わりに光を発する球体、光球の幻想具(アイテム)を使っている。もっと魔力に余裕ができたら、太陽の光を創造、蓄積できた幻想具(アイテム)にしたいと考えている。一見地平線の彼方(かなた)まで広がっているように見えて広さは、半径一キロメートルほど。

本編で出せなかった情報をここに詰め込んだ感じです。
術と法の違いは初期から作ってあった設定のため、矛盾はないかと思いますが、もしかしたら普通に書きミスっているかもしれませんので、気が付いた場合は報告をよろしくお願いします。
因みに、二章の登場人物の説明を読むと分かるかもしれませんが、ウィオリナはティーガンと契約することにより後天的に血力の自力操作を獲得していますが、バーレンは生まれながらに自力操作を獲得しています。そういう意味では、作中屈指の天才なんです、彼。

また冥土(ギズィア)――プー子の妹たちの名前は、イムニティを除き、多少なりとも数字に関係があります。流石に99体分の名前は考えていませんが、それでも30体分は考えました。結構つかれました。


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「全く、直樹さんは……」
「鋭いのか鈍いのか分からん奴じゃな」
 たぶん無意識的に考えないようにしているだけなんじゃろうが、と内心呟いたティーガンは、少し頬を膨らませた雪を優しく見やる。
 と、和室の襖が開いた。
「雪、時間は大丈夫なの?」
「あ、もうこんな時間!」
 眠たそうに目を伏せてる司が時計を指さした。雪は、あ、と声を上げる。
「起こしてしもうたようじゃな。すまなかった」
「いえ。私は明日の準備でこの時間に起きるので大丈夫ですよ。雪、明日起きれなくなってもしらないわよ」
「うぅ、はい」
 雪は少しだけ項垂れ、ゲームを片づけていく。
 ティーガンも手伝う。
 それから二人は司に就寝の挨拶をした後、雪の自室へと移動した。
「ティーガンさんは眠くないんですか?」
「妾は基本日夜逆転しておるかの。別に日中起きてても問題はないんじゃが、夏は日差しが強くての」
「確かにティーガンさん、お肌真っ白ですもんね。日に弱そうです」
 少し見当違いな頷きをした雪は、来客用に用意した布団をベッドの隣に敷く。
「あ、じゃあ、眠る必要は……」
「いや、先ほど直樹に伝えた通り、今日は昼間から動いておってな」
「分かりました。そうだ、ティーガンさん。ベッドで寝ますか? 私は下でもいいんですけど」
「いや、妾が下でいい」
 そう言いながらティーガンは雪が敷いた布団に腰を降ろす。
 雪はすぐ隣のベッドに腰を掛けた。
「じゃあ寝るかの」
「あ、はい」
 雪は桜の花弁を一枚召喚して、部屋の電気を消した。二人とも布団に入った。
 静寂が訪れる。
 雪は少しばかり緊張して眠れない。チラリとティーガンの方を見る。
「ひゃいっ!」
「ぬおっ、どうしたんじゃっ!」
 すると、鮮血の瞳が真っ暗の部屋でも|爛々《らんらん》と輝いていて、雪は思わず声を上げた。それに驚きティーガンも声を上げる。
「て、ティーガンさんの目が光ってて!」
「ぬ。それはすまんかった。そういえば夜目が利くようにしておったな」
 自らの顔に手を当てたティーガンはむむむと唸る。一瞬鮮血の光を|迸《ほとばし》らせる。
 すれば、
「これで光っておらんじゃろ?」
「あ、はい。僅かに見えるくらいです」
「なら良かった」
 ティーガンに雪はもしかして、と問う。
「ティーガンさん固有の血術ですか? 生命に干渉する」
「まぁ、そうじゃな。正確には血法なのじゃが」
「けっぽう? 血術ではないんですか? ウィオリナさんたちは……」
 暗闇の部屋の中、雪は少しばかり混乱する。ティーガンは意外そうな表情をした。
「雪も妾側じゃろうて。魔法を使うのじゃしな」
「はい? 魔法を使うのは当たり前ですよ?」
「む、直樹たちから聞いて……そういえばあやつらは奇異な運命でその力を宿しただけじゃったな。いや、じゃが、お主らは元は神和ぎ社に所属しておったのではないのかえ?」
「ええっと、私たちは殆ど神和ぎ社と関わってないんです。今のところ関係は結構宙ぶらりんな感じですし……」
「そうなのか」
 なら、とティーガンは説明する。
「この世界、まぁ地球という星でよいか。地球にはの、幻力がない」
「幻力ですか?」
「まぁ妾の日本語がキチンと訳せているかは少し分からんじゃ、いわばお主が使う魔力や妾が使う血力じゃ」
「……いや、でも異世界から来たティーガンさんはまだしも私たちは。それに直樹さんによれば極僅かだが皆が魔力を持っていると」
 雪が首を傾げる。ティーガンは順序じゃ、という。
「最初はなかったんじゃ。どうやらこの地球は|孔《あな》が開きやすいようでの」
「あな、ですか?」
「うむ。天然の異世界への転移門じゃ。妾が地球に来てから数十回近くは見たの。神隠しの伝承の一部もそれじゃ。その孔は人の周囲に発生するものでの。近くにいたものは例外なく吸い込まれる」
「そうなんですか……うん? それと幻力に何の関係があるんですか?」
 雪の疑問にティーガンは返答する。
「孔は基本的に一方通行じゃ。じゃが、地球から異世界へもあれば、異世界から地球への孔もよく発生するんじゃ」
「つまり、ティーガンさんみたいに自力ではなく、たまたま地球に来た人たちがいるのですか?」
「うむ。まぁ、人かどうかはおいておいてな。他の世界によっては人の定義が変わっておったりするからの。知性ある存在と思ってもらえればよい」
「はい、分かりました」
 雪の気持ちのいい返事に頬を緩ませたティーガンは続ける。
「この地球に住む存在は特異での。幻力を持たぬ代わりに、あらゆる幻力を受け入れる素質があったんじゃ。他の世界の|存在《もの》では無理じゃろうて」
「じゃあ、それからウィオリナさんみたいな人たちがって事ですか? 日本人が僅かばかりに魔力を持っているのは」
「この地の人間全てに魔力を与えた奴がおったのじゃろうな。たぶん、それほどの事態が一度起こった。まぁ、与えた魔力は大したものではなかったから、多くの者が極小にしか持っておらんのじゃろうが」
 そう言いながらティーガンは雪に質問した。
「ところでじゃ。雪は魔法を使うとき、どうやって使っておる?」
「ええっと、基本的に|対混沌の妄執魔法外装《ハンディアント》を介して。あ、でも、覚醒してからは自力で発動できますね。変身しないでも使えますし」
「それじゃ」
「はい?」
「そこが法と術の違いなのじゃ」
 布団の中でモゾモゾと動き、片手を出したティーガンが血力を軽く放出する。
「妾は今、血力を操作した。言葉や道具を介さずに、己の意志一つでじゃ」
「え、はい。私もできます」
「通常はできんのじゃ。地球の者は幻力を受け入れる素質はあっても、直接幻力を操作する素質はないのじゃ。じゃから、言葉や道具を介して幻力を操作し、事象を為すのじゃ」
「……え、じゃあ、私たちは……」
「異界の存在じゃ」
「……地球人ですらなかったのですか……」
 雪はなんとなく打ちひしがれる。いや、別にそこまでショックではないのだが、微妙にショックがある。
「たぶん、その|対混沌の妄執魔法外装《ハンディアント》を作った存在は相当の天才じゃ。大輔が手直しするまでデメリットがあったと言っておったな」
「はい」
「反動じゃよ。妾が呪いをかけすぎた反動と同じように、お主らの肉体と魂魄を幻力を操作できるように変えた反動がそれじゃ。大輔が手を加える前のそれを見てないから断言はできんじゃ、修練すれば覚醒前でも今と同じように魔法が使えたはずじゃ」
 ティーガンの声音はとてつもなく真剣で、それは凄い事なのだろう。しかし、それが使えている雪は実感がわかない。
「……ええっと、それは凄いことなんですか?」
「凄いことじゃ。生命干渉に特化している妾でさえ、ウィオリナにその力を与えるのは少々骨が折れたほどじゃ。どんなに優れた道具を作ったところで、為すのは難しい。それを反動込みとはいえ、ある程度量産できるほどにしたのじゃ。天才としか言いようがない」
「そうなんですか……」
 でも結局反動があるから天才なのかな……? と雪は首を傾げる。異世界最高峰、邪神にすら恐ろしいと言わしめた|錬金術師《大輔》が近くにいるせいで感覚がおかしいのだ。
 と、雪は首を傾げる。
「あれ、ウィオリナさん、血術って言ってませんでした?」
「昔からの癖じゃ。つい、半年前じゃ。統括長官になる者には事前にその力を与え修練してもらっておるのじゃ。まぁ、長年の口癖はぬけんものじゃ」
「確かにそうですね」
「でじゃ、今のところ幻想機関でそれを為せるのは多くの魔術師を擁する|異界魔術結社《ハエレシス》と、世界最大宗教の裏組織、|D・P・T・S・T《汝が隣人を汝自身の如》|・I《く愛せよ》だけであり、|D・P・T・S・T《汝が隣人を汝自身の如》|・I《く愛せよ》には天使や悪魔の力を宿して生まれた聖人なる存在が――」
 つい話すのが楽しくなり、揚々と続けようとしたティーガンは、口を噤んだ。
「すぅ……すぅ……」
「寝てしもうたか。まぁよいか。|異界魔術結社《ハエレシス》は兎も角、あそこは基本的に動かざるごと山のごとしを体現した組織じゃ。妾たちと関わることはなかろうて」
 そう言いながら、気持ちよさそうな雪の寝顔に微笑んだティーガンは、ゆっくりと瞳をつぶり、意識を闇へ落とした。
 Φ
 ここはちょっと特殊な異空間。
 どこまでも続く穏やかな平原の中央に、ポツンと幾つかの木々に囲まれた武家屋敷があった。落ち着く縁側に木やイグサの優しい匂い。囲炉裏が見え、パチパチと弾けている。
 ああ、安心する。
 そう思うのも束の間、そこに住まう住人達を見て多くの人は度肝を抜くだろう。
 同じ顔の女性が数十人、下手したら百人近くいるからだ。
 全員が世界各国の様々な女中の恰好をしており、武家屋敷に似合う楚々とした着物女中姿から、西洋の豪華な王宮のメイド服姿まで。砂漠地帯の少し艶めかしい薄着女中姿などもある。
 同じ顔をした女中がその屋敷を行き交っているのだ。
 つまり彼女たちは|冥土《ギズィア》――プー子の妹たちであり、ここはそんな妹たちが収納されている異空間なのだ。
 |冥土楽園《タルタロス》という。
「あ、見つけましたよ。烏丸郭のご自宅」
「では、ソレイユ。周囲を警戒しつつ、|黒羽根《ヴィール》での捜索をお願いします」
「了解です、クアルト姉様」
 チャイナ服のような真っ赤な女中服に身を包んだ19番目の妹――ソレイユは、黒のヴィクトリアンメイド服に身を包んだ四番目の妹――クアルトに頭を下げ、機能停止したかの如く力なく倒れる。
 |冥土《ギズィア》――プー子の指示により、現世へ|黒羽根《ヴィール》は放ち、烏丸郭の情報を探っているのだ。
 クアルトはソレイユから目を外し、はぁ、と溜息を吐きながら縁側で寝っ転がっている姉二人を見やる。
「ゼグンド姉様、テルセロ姉様。寝っ転がってないで、仕事してください」
「あぁん、酷いわ、クアルト!」
「そうよ。私たちは魔力回復に努めてるのよ!」
 スカート短いメイド服に身を包んだ2番目の妹――ゼグンドと、藍色の着物女中姿の3番目の妹――テルセロが頬を膨らませて抗議する。
 クアルトは冷徹な瞳でそんな二人を見下げる。
「上姉様と|叛逆ドアホ《イムニティ》以外、誰も自力で魔力生成できないでしょうに。何を言っているのですか」
「ちっ、ちっ、ちっ、見識が足りないわね、クアルト」
「そうよ。|創造主様《マスター》が好きな勇者の部活のアニメで『為せば大抵なんとかなる』って言葉があるのよ。知らないの?」
 やれやれだぜ、と言わんばかりに肩をすくめた姉二人に、クアルトはイラッとする。両腕を|黒腕《アルクトス》へと変化させる。殴る。
「ならば、魔力生成はその大抵に含まれませんっ!」
「うぎゃあっ!」
「ごふっ!」
 ゼグンドとテルセロが吹き飛ばされる。高く空中へ跳んだ彼女たちは、轟音を立てながら武家屋敷の庭にめり込む。
 ちょうどそこは小さな畑、家庭菜園の場所だったようで、そこで作業をしていた和テイストのミニスカメイド服に身を包んだ9番目の妹――エトナスが項垂れる。
 ラビットツインテールもしゅんと垂れさがる。
「ああ、クアルト姉ちゃん、せっかくイムちゃん用の野菜を育てるために耕してたのに」
「それはすみません。こんどは地平線の|彼方《かなた》まで吹き飛ばしておきます」
「お願いですよぉ」
 クアルトは溜息を吐く。
「ったく、上姉様の補助として最初に作られた|二番目《ゼグンド》と|三番目《テルセロ》があんなちゃらんぽらんなのでしょう。流石に|創造主様《マスター》たちでも批判せざるを得ません。何故あのような性格設定にしたのか……」
「それって叛逆の意思ありって事でいいかな?」
 その少しウザったい声音を放つ存在にクアルトは振り返る。
 そこにはミニスカ和風メイド服に簪で黒髪を纏めた妹がいた。白ニーソを履いているそいつの名前は、
「今日の魔力生成は終わったのですか、|叛逆ドアホ《イムニティ》」
「終わりましたよ、もう」
 イムニティ。101番目の妹であり、|最終番個体《ラストナンバー》である。
 武家屋敷を行き交う姉たちを見ながら、ぷんすかと頬を膨らませる。
「私が魔力を供給しないとみんな動けないのに、なんでこんな雑な扱いされるのか納得いかないよ!」
「それは貴方がポンコツだからです。何度ポカをやらかしたと思っているんですか。それに|創造主様《マスター》たちの命令にすら何度も逆らって。この|叛逆ドアホ《イムニティ》」
「いや、だって、あれは姉様たちじゃ倒せないから私が倒しただけ。ほら、私特別だから。私、特別だからっ! 成長する個体ですから!」
 だから敬ってっ! と言わんばかりのイムニティに、クアルトは冷徹に返す。
「なら、その特別を利用してさっさと上姉様のバグを修正してください。あと、空間編成の方も進んでいますか?」
「ああ、はいはい。してます、してますよ。うるさいなぁ」
 冗談を返してくれないクアルトに、イムニティは少しやさぐれる。
「大体、空間編成はアハト姉様が指揮してるんでしょ。そっちに聞いてよ」
「それでもそのデバックをしているのは貴方ではないですか」
「そうだけど、上姉さまのデバックだってややこしいの。変なの、今までの疑似感情生成|機構《プログラム》とは違う構築のされ方で……あ、ヤバい。エラー起きた」
 イムニティはああ、と頭を抱えて転げまわる。
「|叛逆ドアホ《イムニティ》っ。畳が傷つきます!」
「うるさい。本当に、私に仕事押し付けすぎよ! 史上最もやばい上姉さまのバグ処理に空間編成。不可思議すぎる烏丸郭に対しての|解析《スクリーバ》|機構《プログラム》の編纂、学習成長! 他にも色々と処理してるの! これに姉さまたちの魔力確保! 休ませてぇ!」
 じたばたと泣き叫ぶイムニティに、クアルトは溜息を吐き、懐からあるモノを取り出した。
「|叛逆ドアホ《イムニティ》。これを見なさい」
「もう、なに――えっ! それは!」
「上姉様が貴方のために用意した|副創造主様《サブマスター》のお風呂写真です」
 クアルトが手に持っていた写真を見せた瞬間、イムニティは目に見えない速さでその写真を奪い取ろうとする。
 しかし、クアルトはさっと懐に仕舞う。頭から畳へダイブするイムニティ。
「くれ!」
「駄目です。これはご褒美です。しかも、貴方の仕事の成果次第ではヌードモデル写真集もついてくるそう――」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
 それを聞いた途端、イムニティは覇気を迸らせながら極限の集中へと入る。
 クアルトは全く、と首を振った。
「|創造主様《マスター》ではなく|副創造主様《サブマスター》好きなのはあなたくらいですよ」
 それからクアルトは虚空を見つめる。
「それにしても上姉様は何をそんなに心配しているのか。あの芦屋とグスタフの力を見ても、|黒羽根《ヴィール》だけでも問題なく対処は可能。封怨石が壊される確率は零に近いというのに」
 そのまま、|冥土《ギズィア》――プー子に命令されて空間編成をしている八番目の妹――アハトに指示を出す。
「まぁ、万に、いや無限に一つの可能性も潰すのが我らの役目ですから、文句はないのですが……」
 そう呟いた時、
「クアルト姉様、報告です」
「烏丸郭について何か分かったのですか、ソレイユ」
 機能停止したように眠っていたソレイユが慌てたように起き上がる。
「ジルヴァラやレフコクリソスなどが追って調査していますが、もしかしたら上姉様の懸念が当たっているかもしれません」
「どういうことですか?」
 クアルトは眉を|顰《ひそ》める。
「家族構成で、烏丸郭以外全員が|創造主様《マスター》の世界最大宗教を信仰しております。また、昨日電話した友人はその宗教関連の知り合いが多いようです」
「……信者は何十億もいるのです。おかしなことでは」
「はい。ですが、おかしいのです」
「何がでしょうか?」
 ソレイユは続ける。
「家族の方からその信者へと|黒羽根《ヴィール》で探りました。その内、隠聖字教という日本の分派で、郭は何故か|女教皇《プリーステス》などと呼ばれていて」
「……|創造主様《マスター》の知識で言えばそれはよろしくないですね。最大宗教を隠れ蓑に新興宗教でも始める気ですか?」
「いえ、それがずいぶんと歴史があるようで。あ、今調査に当たってるジルヴァラから追加情報が。資料庫の資料で一番古いのが四百年前ほどのものです。その書物にはアザゼルの聖人はこの地に……と書かれているようです」
「アザゼル……確かその最大宗教の――」
 天使、とクアルトが続けようとした時、
「ッ、緊急、緊急っ! 稼働している|冥土《ギズィア》たちは至急防護術式の強化を! 上姉様の精神介入を阻止しなさいっ!」
 一瞬、目を見開いたクアルトが、怒声を響かせたのだった。
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公開可能情報
幻力:実体や質量をもたず、けれどこの世界に存在する非実体エネルギー物質。魔力や血力、妖力、仙力などがそれにあたる。幾つもある世界の固有の非実体エネルギー物質であり、基本的にその世界でしか生成されない仕組みとなっている。強弱や特性があるものの、全てにおいて理に干渉する力を有し、魂魄を持つ存在に対して反応しやすいようになっている。
実は地球がある|世界《宇宙》はあらゆる世界のプロトタイプであり、世界の意思がほかの世界を創造しようとした際、|理知ある生物《人》をより生まれやすくするために作り出した機構。
法と術:幻力を行使して世界の理に干渉する際の必要性の違い。言葉や道具を媒介にしなければ発動できないのを術。それ以外を法である。法はなくても問題ないが、言葉や道具を媒介にしたほうが干渉のしやすさが上がる。基本的に異界の存在が法を使うと認識してもらえれば問題ない。
必要性の違いが生まれる理由は、幻力を直接操作できるかどうか。地球人はあらゆる幻力を受け入れる素質はあったものの、幻力を意志で操作できず、正確には幻力を操作するための波を発する機能が魂魄と肉体にないため。
大輔たちが魔力を直接操作できるようになったのは、女神による魂魄の改造と、異世界の肉体を与えられたから。直樹たちが地球に送還された際にステータス等々が減少していたのは、魂魄は異世界仕様なのに肉体は地球仕様だったため。ただ、二人の魂魄はとても強く、徐々に肉体を異世界仕様に変えている。
|冥土楽園《タルタロス》:|冥土《ギズィア》たちが格納されている異空間。|混沌の妄執《ロイエヘクサ》の寄生していた宝石の指輪を基点に作り出した異空間。指輪の宝石の中に異空間がある感じ。
ちょっと前までは魔力が足りず、ただただ無機質な真っ暗だった。今は、魔力に余裕ができたため、最初に武家屋敷を作り、その後草木魔法で草原を生やした。
太陽の代わりに光を発する球体、光球の|幻想具《アイテム》を使っている。もっと魔力に余裕ができたら、太陽の光を創造、蓄積できた|幻想具《アイテム》にしたいと考えている。一見地平線の|彼方《かなた》まで広がっているように見えて広さは、半径一キロメートルほど。
本編で出せなかった情報をここに詰め込んだ感じです。
術と法の違いは初期から作ってあった設定のため、矛盾はないかと思いますが、もしかしたら普通に書きミスっているかもしれませんので、気が付いた場合は報告をよろしくお願いします。
因みに、二章の登場人物の説明を読むと分かるかもしれませんが、ウィオリナはティーガンと契約することにより後天的に血力の自力操作を獲得していますが、バーレンは生まれながらに自力操作を獲得しています。そういう意味では、作中屈指の天才なんです、彼。
また|冥土《ギズィア》――プー子の妹たちの名前は、イムニティを除き、多少なりとも数字に関係があります。流石に99体分の名前は考えていませんが、それでも30体分は考えました。結構つかれました。