第33話

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ここはウエス国の森の中。

「待てー!」
「待つキー!」
「待つキキー!」
「おいら、捕まらないぞー!」
リリィ、モック、ドンキーに加えてハクも追いかけっこをしている。

「リリィの同じ年くらいの遊び相手が出来て良かったわ」
フィーネが紅茶を飲みながら追いかけっこを眺めている。
「見た目は同い年でも、ずっと年上だけどな」
イブが突っ込む。確かにハクは見た目は子供だが、年齢はフィーネに負けない。
「スザクの方は上手く行ってるかしら?」
フィーネが露天風呂の方を見て言う。
「きょうだいのことはきょうだいにしかわからんからな。任せるしかないだろう。」
イブはため息交じりで言った。

ウエス湖での戦いの後、リリィの力で人間の姿に戻ったホウオウは、一命を取り留め、フィーネの丸太小屋で療養していた。
露天風呂に薬草を入れ、湯船に浸かる治療を続けている。

「姉さん、随分回復してきたわね。」
スザクがホウオウの紅潮した顔を見て感慨深げに言った。
「スザク、私はどうやってこの恩を返せば良いんだろうか?」
ホウオウは体中傷跡があるものの、体はすっかり回復していた。
「ねえ?姉さんもココに住まない?フィーネには私から言っておくから。」
スザクの思いがけない提案にホウオウは戸惑う。
「私は、ここにいる資格のない人間よ。体力が戻ったらすぐに出ていくわ。」
ホウオウはうつむき加減でこたえる。
「私は、姉さんにここにいて欲しい。一緒に魔神と戦ってもらいたいと思ってる。」
「ありがとう。スザク。でも私は、ここにいちゃいけない人間なのよ。何よりもライジンが黙ってないだろうし。」
ホウオウの顔が曇る。
「じゃあ、私と一緒に町で暮らさない?オウガもいるし。フィーネたちにもいつでも会いに来れる。」
「こんな私でも、まだ姉と思ってくれるんだね。ありがとう、スザク。」
ホウオウは涙ぐんだ。
「じゃあ、それで決まりね。家や仕事は何とかなるわ。きょうだいで一からやり直しましょう!」
スザクとホウオウは抱き合った。




その夜。

スザクは、ホウオウとのことをフィーネに話した。
「わかった。2人のことはオルガに話しておくわ。」
フィーネは、スザクとホウオウに言った。
「ありがとう。フィーネ。敵だった私にこんなにしてくれるなんて、どうお礼をしたら良いか。本当にありがとう。」
ホウオウはフィーネに向かって申し訳なさそうに言った。
「姉さんと2人で生まれ変わったつもりでやり直すわ。」
スザクは力強く言った。
「そうね。2人ならきっと大丈夫。」
フィーネが、笑顔で言う。
「スザク、町に行っても、たまには遊びに来てね。」
リリィがスザクの手を握っている。
「もちろんよ。リリィや皆んなに会いにくるわ。」

スザクとホウオウがフィーネの仲間になったことで、魔神がどう動くか、対策を考える必要があったが、フィーネ達はいつも通り、のんびり過ごしている。

「ライジンとフウジンは、あれだけ痛めつけたから、しばらくは大人しくしてるだろうな。」
イブが言った。
「もし魔神が動くなら、ココにくるはずよ。私とリリィがいる、この森にね。」
フィーネがいつになく真面目な顔をして言う。
「もし魔神が来ても、おいらがいるから大丈夫だぞ。」
ハクが自信あり気に言う。
「確かにハクは強いけど、油断は禁物よ。何をしてくるかわからない。」
フィーネが、気を引き締めて言う。

「とにかく、心の準備はしておきましょう。」
フィーネは紅茶を一口飲んだ。


1ヶ月後。
オルガが手配してくれた家にスザクとホウオウが引っ越した。
仕事は、オルガの畑仕事の手伝いをすることになった。
「フィーネ、色々ありがとう。」
スザクが頭を下げる。
「スザク、ホウオウ、頑張って。」
フィーネ達は、手を振って見送った。


「待てー!」
「待つキー!」
「待つキキー!」
「おいらを捕まえてみな!」
スザクが居なくなっても、フィーネの丸太小屋は賑やかだ。


「フィーネ、良かったのか?」
イブが意味あり気に聞く。
「何が?スザクのこと?」
フィーネが紅茶を一口飲んで言う。
「オルガとスザクが同じ町に住んで。しかも仕事も一緒だぞ。」
イブが少しずつ核心を突いてくる。
「何が言いたいのか、よくわからないわ。」
フィーネは、とぼけて言う。
「このままだと、スザクにオルガを獲られるぞって話だ。」
イブが直球でフィーネに突っ込む。
「オルガとスザクはお似合いだと思うわ....」
フィーネはうつむきながら、紅茶を一口飲んだ。
「お前がエルフだから、オルガのことは諦めるのか?自分に素直になったらどうだ?フィーネ。」
イブが核心を突く。
「私と一緒になってもオルガは幸せになれない。これで良いのよ。」
フィーネは、紅茶を飲み干した。
「そうか....まあ、女神のお節介だったな。ぼくは、これ以上は言わない。」
イブも紅茶を飲み干した。


空は青く何処までも高い。
フィーネの心はどこかどんよりとしているのだった。




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ここはウエス国の森の中。
「待てー!」
「待つキー!」
「待つキキー!」
「おいら、捕まらないぞー!」
リリィ、モック、ドンキーに加えてハクも追いかけっこをしている。
「リリィの同じ年くらいの遊び相手が出来て良かったわ」
フィーネが紅茶を飲みながら追いかけっこを眺めている。
「見た目は同い年でも、ずっと年上だけどな」
イブが突っ込む。確かにハクは見た目は子供だが、年齢はフィーネに負けない。
「スザクの方は上手く行ってるかしら?」
フィーネが露天風呂の方を見て言う。
「きょうだいのことはきょうだいにしかわからんからな。任せるしかないだろう。」
イブはため息交じりで言った。
ウエス湖での戦いの後、リリィの力で人間の姿に戻ったホウオウは、一命を取り留め、フィーネの丸太小屋で療養していた。
露天風呂に薬草を入れ、湯船に浸かる治療を続けている。
「姉さん、随分回復してきたわね。」
スザクがホウオウの紅潮した顔を見て感慨深げに言った。
「スザク、私はどうやってこの恩を返せば良いんだろうか?」
ホウオウは体中傷跡があるものの、体はすっかり回復していた。
「ねえ?姉さんもココに住まない?フィーネには私から言っておくから。」
スザクの思いがけない提案にホウオウは戸惑う。
「私は、ここにいる資格のない人間よ。体力が戻ったらすぐに出ていくわ。」
ホウオウはうつむき加減でこたえる。
「私は、姉さんにここにいて欲しい。一緒に魔神と戦ってもらいたいと思ってる。」
「ありがとう。スザク。でも私は、ここにいちゃいけない人間なのよ。何よりもライジンが黙ってないだろうし。」
ホウオウの顔が曇る。
「じゃあ、私と一緒に町で暮らさない?オウガもいるし。フィーネたちにもいつでも会いに来れる。」
「こんな私でも、まだ姉と思ってくれるんだね。ありがとう、スザク。」
ホウオウは涙ぐんだ。
「じゃあ、それで決まりね。家や仕事は何とかなるわ。きょうだいで一からやり直しましょう!」
スザクとホウオウは抱き合った。
その夜。
スザクは、ホウオウとのことをフィーネに話した。
「わかった。2人のことはオルガに話しておくわ。」
フィーネは、スザクとホウオウに言った。
「ありがとう。フィーネ。敵だった私にこんなにしてくれるなんて、どうお礼をしたら良いか。本当にありがとう。」
ホウオウはフィーネに向かって申し訳なさそうに言った。
「姉さんと2人で生まれ変わったつもりでやり直すわ。」
スザクは力強く言った。
「そうね。2人ならきっと大丈夫。」
フィーネが、笑顔で言う。
「スザク、町に行っても、たまには遊びに来てね。」
リリィがスザクの手を握っている。
「もちろんよ。リリィや皆んなに会いにくるわ。」
スザクとホウオウがフィーネの仲間になったことで、魔神がどう動くか、対策を考える必要があったが、フィーネ達はいつも通り、のんびり過ごしている。
「ライジンとフウジンは、あれだけ痛めつけたから、しばらくは大人しくしてるだろうな。」
イブが言った。
「もし魔神が動くなら、ココにくるはずよ。私とリリィがいる、この森にね。」
フィーネがいつになく真面目な顔をして言う。
「もし魔神が来ても、おいらがいるから大丈夫だぞ。」
ハクが自信あり気に言う。
「確かにハクは強いけど、油断は禁物よ。何をしてくるかわからない。」
フィーネが、気を引き締めて言う。
「とにかく、心の準備はしておきましょう。」
フィーネは紅茶を一口飲んだ。
1ヶ月後。
オルガが手配してくれた家にスザクとホウオウが引っ越した。
仕事は、オルガの畑仕事の手伝いをすることになった。
「フィーネ、色々ありがとう。」
スザクが頭を下げる。
「スザク、ホウオウ、頑張って。」
フィーネ達は、手を振って見送った。
「待てー!」
「待つキー!」
「待つキキー!」
「おいらを捕まえてみな!」
スザクが居なくなっても、フィーネの丸太小屋は賑やかだ。
「フィーネ、良かったのか?」
イブが意味あり気に聞く。
「何が?スザクのこと?」
フィーネが紅茶を一口飲んで言う。
「オルガとスザクが同じ町に住んで。しかも仕事も一緒だぞ。」
イブが少しずつ核心を突いてくる。
「何が言いたいのか、よくわからないわ。」
フィーネは、とぼけて言う。
「このままだと、スザクにオルガを獲られるぞって話だ。」
イブが直球でフィーネに突っ込む。
「オルガとスザクはお似合いだと思うわ....」
フィーネはうつむきながら、紅茶を一口飲んだ。
「お前がエルフだから、オルガのことは諦めるのか?自分に素直になったらどうだ?フィーネ。」
イブが核心を突く。
「私と一緒になってもオルガは幸せになれない。これで良いのよ。」
フィーネは、紅茶を飲み干した。
「そうか....まあ、女神のお節介だったな。ぼくは、これ以上は言わない。」
イブも紅茶を飲み干した。
空は青く何処までも高い。
フィーネの心はどこかどんよりとしているのだった。