ルナとカイが、他の同僚たちと話をするために二人の元を離れていった後、ユウキとアキは、再び二人きりになった。
会場は賑やかだが、二人の間には、穏やかで落ち着いた空気が流れている。
「ねぇ、アキくん。さっき、カイさんが言ってたこと…」
ユウキは、そう言って、アキの顔を覗き込んだ。アキは、顔を赤らめながら、気まずそうに目を逸らした。
「…あいつ、余計なことを」
「余計なことじゃないよ!すごいことじゃない!アキくんは、いつも私に、自分の仕事のことを話してくれないから。だから、私、アキくんが、どれだけすごいことしてるのか、全然知らなくて…」
ユウキの言葉に、アキは、静かにユウキの瞳を見つめた。
「…俺は、ただ、自分の仕事を全うしただけだ。それが、俺の責任だから」
アキは、そう言って、グラスの中のカクテルを一口飲んだ。
その横顔は、普段の少し不器用なアキとは違い、プロの運行管理者としての、強い意志が感じられた。
「…ねぇ、アキくん。怖いって、思うことはないの?」
ユウキは、そう言って、アキの手を握りしめた。ユウキの言葉に、アキは、少しだけ驚いたような顔をした。
「…あるさ。エレベーターの運行は、常に危険と隣り合わせだ。ちょっとした数値の異常が、大きな事故に繋がることもある。俺たちは、いつも、見えない敵と戦っているようなもんだ」
アキの言葉に、ユウキは、言葉を失った。彼女の仕事は、お客様の笑顔を引き出すことだ。しかし、アキの仕事は、人々の命を預かり、人々の夢を守ること。その重圧は、ユウキが想像していたよりも、ずっと重かった。
「…でもね、アキくん」
ユウキは、そう言って、アキの頭を優しく撫でた。
「雨の日のカフェで、アキくんが言ってくれた言葉、私、ずっと覚えてるよ」
ユウキは、アキの瞳を真っ直ぐに見つめ、優しく微笑んだ。
「…『俺が守っているのは、空の安全だけじゃない。地上にいる、みんなの日常も、守っているんだ』って。アキくんのその言葉が、私の心を支えているんだよ」
ユウキの言葉に、アキは、胸の奥が熱くなるのを感じた。彼が何気なく口にした言葉が、ユウキの支えになっている。
その事実が、アキの心に、再び強い力を与えてくれた。
「…私は、アキくんの、その言葉を守るために、コンシェルジュの仕事を頑張るよ」
ユウキがそう言うと、アキは、満足そうに微笑んだ。
「ありがとう、ユウキ。お前が、俺の仕事を、理解してくれて、本当に嬉しい」
二人は、誰にも聞こえないように、小さな声で、お互いの想いを伝え合った。
その瞬間、二人の心は、仕事という共通の夢を通して、さらに深く結びついた。
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交流会が終わり、二人は家路についた。夜風が心地よく、ビルの隙間から見える月が、二人を優しく照らしている。
「…なんか、すごく不思議な日だったね」
ユウキは、アキの腕に自分の腕を絡ませて、そう呟いた。
「ああ。まさか、あんなに褒められるとは思わなかった」
アキは、気恥ずかしそうに言った。
「当然だよ!アキくんは、本当にすごいんだから!私の、宇宙の英雄様だもん」
ユウキがそう言うと、アキは、ユウキの頭を優しく撫でた。
「…俺は、ただ、お前の英雄でいられれば、それでいい」
アキの素直な言葉に、ユウキは、胸がきゅっと締め付けられるのを感じた。
アキのマンションに着き、エレベーターを降りると、二人は、部屋の扉を開ける。部屋は、静かで、二人の他愛のない会話が、やけに心地よく響く。
「…ユウキ」
アキは、ユウキの背後から、優しく抱きしめた。ユウキは、アキの温かい腕の中に身を委ねる。
「…今日、お前のおかげで、俺の仕事が、もっと好きになった」
アキは、ユウキの耳元で囁いた。ユウキは、アキの言葉に、静かに涙を流した。
「…私もだよ。アキくんのおかげで、私の仕事も、もっともっと好きになった」
ユウキは、そう言って、アキの手を強く握りしめた。
二人の心は、仕事という共通の夢を通して、さらに深く結びついた。
賑やかな交流会の片隅で、二人は、お互いの存在が、それぞれの仕事の支えになっていることを、改めて実感した。