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第20話:ゴーレムの群れと科学対オカルト

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 1. 激戦の幕開け:科学の盾とオカルトの剣

 激しい地鳴りと共に、ミスト日本支部の総攻撃が始まった。セーフハウスの外壁を覆う魔力結界は、ソフィアの「アルカナ・シールド」の魔道エネルギーと共鳴し、防壁の表面を不気味に揺らめかせている。

 ルナの冷静な司令がセーフハウス全体に響き渡る。彼女はすでに戦闘服に換装し、モノクルを光らせて戦場全体を把握していた。

「ソフィア! シールドの防御に専念! クロエ、セーフハウスの自動迎撃システム、グール群を排除しなさい!」
「お任せください、ルナ!!」

 ソフィアの逞しい体が、青く輝くアルカナ・シールドの防御を維持する。ゴーレム10体からの同時攻撃は、シールドの表面に激しい衝撃波を叩きつけたが、前回のヴァイス戦の教訓から強化されたシールドは、なんとか持ちこたえていた。

「データ分析! グール群は迎撃システムで概ね排除。しかし、ゴーレムは魔力結界により、私たちの物理攻撃を90パーセント無効化しています!」

 クロエは、デスクの前に陣取り、超高速で戦場データを処理する。セーフハウスの壁面に仕込まれた自動機関砲が火を噴き、グール群を蹴散らすが、中級ゴーレムには文字通り弾が弾かれる。

「くっ……ゴーレムは物理無効に近い! ソフィアさん、シールドの維持が辛そう!」

 アリスはライトニング・ケインを構え、悠真を背後に庇いながら、ルナに報告する。

 ルナの冷徹な声がアリスに届く。

「アリス! 持ち場を離れることは許しません。悠真様への接触を試みる全ての敵を排除しなさい! あなたは最後の盾よ!」

「当然よ! 悠真くんの愛の盾は私だからね! ルナに譲るつもりはないんだから!」

 アリスは、こんな状況でもルナへの牽制を忘れなかった。その言葉は、任務を超えた本気の独占欲と、悠真を護るという純粋な愛が混ざり合った、彼女の本質だ。

(アリス……いつだって、命がけで俺を護ろうとしてくれる。彼女の独占欲は、誰よりもまっすぐで、熱い……)

 悠真は、ルナの厳しい司令と、アリスの揺るぎない愛の盾を目の当たりにし、心臓の奥底から込み上げてくる強い感情を自覚する。彼の目には、戦闘服を纏うアリスの姿が、どんな豪華なドレスよりも魅力的に映っていた。

 _____________________
 2. メイドたちの苦戦とオカルト攻撃

 ミスト側の指揮官、レディ・クロウとドクター・ヴァイスの連携が始まった。

「フン。科学の盾など、オカルトの剣の前では無力よ! ドクター・ヴァイス、高周波による魔力共鳴で、シールドの内部から駆動部を破壊なさい!」

 レディ・クロウがオカルト能力を発動させると、ゴーレムたちはシールドの表面をすり抜けるような不可視の魔力攻撃を放ち始めた。

「ッ! バリアを透過する!?」

 ソフィアは激しく動揺した。その魔力は、シールドを透過して彼女の駆動部に侵入し、激しい共鳴を起こす。

「ルナ! ソフィアの駆動部がオーバーヒートを警告! メイ、ゴーレムの注意を逸らせ!」
「まかせてっ! くらえっ!! ツンデレ・デストロイヤー!」

 メイが超高速体術でゴーレム群に突っ込むが、ゴーレムの重い一撃を食らい、その小柄な体が大きく吹き飛ばされる。

「なにこれっ! 硬すぎる! そして、このオカルト攻撃、体術で避けきれない!」

 メイは瓦礫の中で体制を立て直す。ルナは、歯噛みする。バレット隊の戦術は、完全に読まれていた。科学(サイボーグ)とオカルト(魔力結界)のハイブリッド編成は、バレット隊の弱点を見事に突いていたのだ。

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 3. M.A.の総力戦:エンジェル・ガードと正規メイド隊の参戦

「ルナ隊長! 限界です! このままではセーフハウスの外郭防御が崩壊する!」

 ソフィアの悲鳴に近い報告が響いた瞬間、セーフハウスの地下区画の壁面が、静かに開いた。

「ルナ隊長! 救援が到着しましたわ!」

 完璧な燕尾服を纏ったセバスチャン・グレイが、正規メイド隊の二個小隊(合計10名)と緊急支援チームを率いて現場に到着した。彼らは戦闘服に換装を完了した正規メイドたちを先導し、戦線から離れた位置で、負傷者の搬送と弾薬の補給、そして司令塔への情報中継の準備に入った。セバスチャンは実戦指揮官として、冷静に指示を飛ばす。

「ルナ隊長。救援の正規メイド隊は、既に配置を完了しました。バレット隊の第一防御線が疲弊していることを受け、ロイヤル・ファランクス(正規メイド隊第一小隊)を、あなた方の直接の援護に。アイアン・ヴェール(正規メイド隊第二小隊)は、オリヴィアの電磁投射砲の射界を確保する防衛線に投入します」

 セバスチャンの背後から、漆黒のロングコートを纏ったオリヴィアと、茶色のショートボブのベアトリスが、戦闘服に換装して現れた。その脇には、バレット隊と同じデザインの戦闘服を纏った、訓練されたプロのメイドたちが整然と並ぶ。

(メイドが……こんなにたくさん!?)

 悠真は、バレット隊の五人以外にも、M.A.には優秀なメイドたちが多数存在しているという事実に、改めて組織の規模の大きさを思い知らされた。

「オリヴィアよ。狙撃の師匠が、火力支援に来てやったわ!」
「オリヴィア先輩、ありがとうございます! 援護感謝します!」

「ベアトリスです。アリスとメイはちゃんとやっているのかしら!?」
「へんっ! ベアトリス先輩に言われるまでもないわ! 悠真くんの護衛は、公認の恋人役の私の特権なんだから!」
「そーです! 悠真せんぱいの傍にいるのは、メイとスパイクの連携が一番有効だと、データが示してますよ!」

 オリヴィアは電磁投射砲「アーク・ホープ」を構え、セーフハウスの壁面を貫通して外部にいるゴーレム群へ強烈な一撃を放つ。ベアトリスは光波ブレードを抜き、メイと共にゴーレム群に突っ込んでいった。

「クロエ! エンジェル・ガードの火力支援に合わせ、ヴァイスの電子戦を無力化しなさい!」
「了解! イヴ師匠、ジャミングを!」

 遥か遠方から、エンジェル・ガードのイヴがヴァイスの電子戦に強力なジャミングをかける。クロエとイヴの連携による科学対科学の情報戦が、ヴァイスの狙撃精度を狂わせる。

 戦場は、M.A.の総力戦へと移行した。しかし、ゴーレム群のオカルト攻撃は止まらない。

 _____________________
 4. 悠真の完全覚醒:戦場を支配するテイマー

 アリスは、悠真を庇いながら、レディ・クロウの幻術攻撃に苦戦していた。ゴーレムの魔力攻撃がシールドをすり抜け、アリスのサイボーグボディを直撃する。

「くっ……! 悠真くん、離れないで! 私が、護るんだから!」

 アリスの体から火花が散り、駆動部からエラー音が鳴り響いた。彼女の「愛の盾」が崩壊の危機に瀕する。

 その瞬間、レディ・クロウが悠真に肉薄した。

「志藤悠真! 貴様の力は、私がいただく!」

 レディ・クロウのオカルト攻撃が、悠真の額をかすめる。生命の危機、そして目の前でアリスが傷つく姿。

 その強烈な感情の波が、悠真の抑止力を再び限界まで高めた。

「俺のメイドたちを、傷つけるな!」

 悠真の心からの叫びが、戦場全体を青白い光で覆い尽くした。それは、ゾルゲ戦の時とは比べ物にならない、支配力の奔流だった。

「スライミー! 防御結界を最大に!」

 悠真の命令と共に、スライミー(防御)はセーフハウス全体を青いバリアで覆い、レディ・クロウのオカルト攻撃を遮断した。

「ファントム! ゴーレムのエネルギー制御点を全て解析し、俺にフィードバックしろ!」

 ファントム(索敵)は、ゴーレムの体に潜り込み、駆動部の弱点情報をルナとクロエの司令塔システムに送り込む。

「スパイク! レディ・クロウとヴァイスの足元に、全力で牽制射撃を!」

 スパイク(牽制・陽動)は、二人の幹部の足元に硬質の針を乱射し、指揮系統を麻痺させた。

 悠真は、三体のテイム魔物を完全に掌握し、戦場全体をコントロールする真のテイマーへと覚醒した。彼の支配力は、ゴーレムの魔力制御を狂わせ、ゴーレム同士の同士討ちを誘発する。

 ルナがその光景を見て、歓喜に震えた。

「志藤様! 見事です! これが、あなたの真の覚醒!」

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 5. マナの決断と静かな撤退

 セーフハウスから約一キロ離れた廃ビルの屋上。潜入工作員であるマナは、冷静な表情でこの総力戦をドローンで観察していた。彼女の隣には、ヴァイスとレディ・クロウの通信装置が設置されている。

「クロウ、ヴァイス! 何をしている! 悠真の能力を奪いなさい!」

 レディ・クロウの焦った声が響く。

『マナ様! 無理です! 悠真の支配力が我々のオカルト能力とゴーレムの魔力制御を完全に狂わせています!』

 ヴァイスの声もまた、焦燥に満ちていた。

『彼の能力は、ゾルゲの報告を遥かに超えている! これ以上の戦闘継続は、日本支部全体の壊滅を招きます!』

 マナは、悠真の背後で青白い光を放つ支配力の奔流を見た。その光は、彼女が恋焦がれた「古代の血統」の真の力だ。

(美しい……これほどの力が、あの優柔不断な青年の中に眠っていたなんて……)

 マナは一瞬、魅了されたような表情を見せたが、すぐに冷静な幹部の顔に戻った。

(いいえ、この戦力では勝てない。私の目的は、悠真の力を利用し、ミスト内での指導的地位を確立し世界に君臨すること。ここで全てを失うわけにはいかない)

 マナは、冷徹な決断を下した。

「全員、撤退を命じます。日本支部は、これ以上の物理的戦闘を避ける。このデータは、アジア本部に直ちに送るわ」

 マナはそう言い放つと、ドローンを回収し、レディ・クロウとヴァイスの逃走経路を確保した。彼女は悠真の命を狙うことなく、静かに戦場を後にした。

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 6. 戦いの終わりとマナへのショック

 ミスト幹部たちの撤退命令により、ゴーレムとグール群は統率を失い、M.A.の総攻撃で次々と排除された。激しい戦闘の末、セーフハウスに静寂が戻った。

 悠真は、完全に覚醒した支配力により、全身の疲労を感じていた。彼は、瓦礫の中に立ち尽くす。

 ルナが悠真に近づき、冷徹な声で報告した。

「志藤様。ミスト日本支部は完全に撤退。あなたの『支配力』の覚醒が、私たちに勝利をもたらしました。そして、あなたは、もうただの『護衛対象』ではありません。我々のリーダーですわ」

「ルナ……」

 瓦礫と化した洋館の庭には、M.A.の処理班が投入され、周囲の針葉樹の森の奥深くに散乱したゴーレムの残骸を、秘密裏に回収し始めていた。都心のど真ん中であれば、甚大な被害と情報漏洩は避けられなかっただろう。郊外のこの広大な私有地と二重の防御結界が、街を護ったのだ。

 悠真の瞳は、勝利の喜びに満たされてはいなかった。彼は、遠くの廃ビルの屋上から、マナが自分を冷徹に見つめていたことをファントムの索敵情報で察知していた。

「マヤが……。本当に、ミストの幹部だったんだな。俺の優しさを利用して、こんな大規模な襲撃を仕組んだ……」

 悠真は、信じたい「友人」に裏切られた事実に、激しいショックと苦悩を覚える。彼の優柔不断さが、この総攻撃を招いたのだ。

 ルナは、悠真の苦悩を前に、一瞬言葉を失うが、すぐに理性を取り戻した。

「志藤様。マヤという人物は、あなたの命を狙う敵です。感情的な動揺は、あなたの抑止力を乱すノイズにしかなりません。司令塔として、あなたの理性を優先することを求めます」

 ルナの冷徹な言葉は、悠真の心に突き刺さった。

 その時、アリスが悠真の背後から強く抱きついた。彼女のサイボーグボディは激しく損傷し、駆動部から微かなオイルが漏れ出している。

「く……! 悠真くん。ルナ隊長の言うことは正しい。でもね……私は、悠真くんの優しさが大好きよ。マヤさんみたいに、裏切る敵はいるかもしれない。でも、私たちがいる。任務なんかじゃなくて、本気で悠真くんを愛してる私がいるんだから」

 アリスは、悠真の耳元でそう囁いた。

「悠真くんを護るための愛の盾は、私が永遠に維持する。だから、今は私の腕の中で、傷ついた心を癒やして?」

 悠真は、ルナの理性と、アリスの愛という、二つの異なるメイドの愛に包まれながら、戦いの終結と、愛するメイドたちを護るという、真のヒーローとしての覚悟を固めるのだった。

 セバスチャンが、瓦礫の端で報告を終えたルナに静かに近づいた。

「ルナ隊長。ご苦労様でした。総帥より、緊急命令です。バレット隊全員が戦闘で疲弊している今、セーフハウスの家事・雑務補助と、志藤様の精神的な安定を測る新たなセンサーとして――ネストリング(見習いメイド隊)を投入します」

 ルナは、疲労困憊のメイドたちと、瓦礫の中に立つ悠真を一瞥し、深い溜め息を漏らした。

「……そうですか。総帥の格上の嫉妬は、こんな時でも私たちに試練を与えますか。ネストリングの受け入れ準備に入ります」






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 1. 激戦の幕開け:科学の盾とオカルトの剣
 激しい地鳴りと共に、ミスト日本支部の総攻撃が始まった。セーフハウスの外壁を覆う魔力結界は、ソフィアの「アルカナ・シールド」の魔道エネルギーと共鳴し、防壁の表面を不気味に揺らめかせている。
 ルナの冷静な司令がセーフハウス全体に響き渡る。彼女はすでに戦闘服に換装し、モノクルを光らせて戦場全体を把握していた。
「ソフィア! シールドの防御に専念! クロエ、セーフハウスの自動迎撃システム、グール群を排除しなさい!」
「お任せください、ルナ!!」
 ソフィアの逞しい体が、青く輝くアルカナ・シールドの防御を維持する。ゴーレム10体からの同時攻撃は、シールドの表面に激しい衝撃波を叩きつけたが、前回のヴァイス戦の教訓から強化されたシールドは、なんとか持ちこたえていた。
「データ分析! グール群は迎撃システムで概ね排除。しかし、ゴーレムは魔力結界により、私たちの物理攻撃を90パーセント無効化しています!」
 クロエは、デスクの前に陣取り、超高速で戦場データを処理する。セーフハウスの壁面に仕込まれた自動機関砲が火を噴き、グール群を蹴散らすが、中級ゴーレムには文字通り弾が弾かれる。
「くっ……ゴーレムは物理無効に近い! ソフィアさん、シールドの維持が辛そう!」
 アリスはライトニング・ケインを構え、悠真を背後に庇いながら、ルナに報告する。
 ルナの冷徹な声がアリスに届く。
「アリス! 持ち場を離れることは許しません。悠真様への接触を試みる全ての敵を排除しなさい! あなたは最後の盾よ!」
「当然よ! 悠真くんの愛の盾は私だからね! ルナに譲るつもりはないんだから!」
 アリスは、こんな状況でもルナへの牽制を忘れなかった。その言葉は、任務を超えた本気の独占欲と、悠真を護るという純粋な愛が混ざり合った、彼女の本質だ。
(アリス……いつだって、命がけで俺を護ろうとしてくれる。彼女の独占欲は、誰よりもまっすぐで、熱い……)
 悠真は、ルナの厳しい司令と、アリスの揺るぎない愛の盾を目の当たりにし、心臓の奥底から込み上げてくる強い感情を自覚する。彼の目には、戦闘服を纏うアリスの姿が、どんな豪華なドレスよりも魅力的に映っていた。
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 2. メイドたちの苦戦とオカルト攻撃
 ミスト側の指揮官、レディ・クロウとドクター・ヴァイスの連携が始まった。
「フン。科学の盾など、オカルトの剣の前では無力よ! ドクター・ヴァイス、高周波による魔力共鳴で、シールドの内部から駆動部を破壊なさい!」
 レディ・クロウがオカルト能力を発動させると、ゴーレムたちはシールドの表面をすり抜けるような不可視の魔力攻撃を放ち始めた。
「ッ! バリアを透過する!?」
 ソフィアは激しく動揺した。その魔力は、シールドを透過して彼女の駆動部に侵入し、激しい共鳴を起こす。
「ルナ! ソフィアの駆動部がオーバーヒートを警告! メイ、ゴーレムの注意を逸らせ!」
「まかせてっ! くらえっ!! ツンデレ・デストロイヤー!」
 メイが超高速体術でゴーレム群に突っ込むが、ゴーレムの重い一撃を食らい、その小柄な体が大きく吹き飛ばされる。
「なにこれっ! 硬すぎる! そして、このオカルト攻撃、体術で避けきれない!」
 メイは瓦礫の中で体制を立て直す。ルナは、歯噛みする。バレット隊の戦術は、完全に読まれていた。科学(サイボーグ)とオカルト(魔力結界)のハイブリッド編成は、バレット隊の弱点を見事に突いていたのだ。
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 3. M.A.の総力戦:エンジェル・ガードと正規メイド隊の参戦
「ルナ隊長! 限界です! このままではセーフハウスの外郭防御が崩壊する!」
 ソフィアの悲鳴に近い報告が響いた瞬間、セーフハウスの地下区画の壁面が、静かに開いた。
「ルナ隊長! 救援が到着しましたわ!」
 完璧な燕尾服を纏ったセバスチャン・グレイが、正規メイド隊の二個小隊(合計10名)と緊急支援チームを率いて現場に到着した。彼らは戦闘服に換装を完了した正規メイドたちを先導し、戦線から離れた位置で、負傷者の搬送と弾薬の補給、そして司令塔への情報中継の準備に入った。セバスチャンは実戦指揮官として、冷静に指示を飛ばす。
「ルナ隊長。救援の正規メイド隊は、既に配置を完了しました。バレット隊の第一防御線が疲弊していることを受け、ロイヤル・ファランクス(正規メイド隊第一小隊)を、あなた方の直接の援護に。アイアン・ヴェール(正規メイド隊第二小隊)は、オリヴィアの電磁投射砲の射界を確保する防衛線に投入します」
 セバスチャンの背後から、漆黒のロングコートを纏ったオリヴィアと、茶色のショートボブのベアトリスが、戦闘服に換装して現れた。その脇には、バレット隊と同じデザインの戦闘服を纏った、訓練されたプロのメイドたちが整然と並ぶ。
(メイドが……こんなにたくさん!?)
 悠真は、バレット隊の五人以外にも、M.A.には優秀なメイドたちが多数存在しているという事実に、改めて組織の規模の大きさを思い知らされた。
「オリヴィアよ。狙撃の師匠が、火力支援に来てやったわ!」
「オリヴィア先輩、ありがとうございます! 援護感謝します!」
「ベアトリスです。アリスとメイはちゃんとやっているのかしら!?」
「へんっ! ベアトリス先輩に言われるまでもないわ! 悠真くんの護衛は、公認の恋人役の私の特権なんだから!」
「そーです! 悠真せんぱいの傍にいるのは、メイとスパイクの連携が一番有効だと、データが示してますよ!」
 オリヴィアは電磁投射砲「アーク・ホープ」を構え、セーフハウスの壁面を貫通して外部にいるゴーレム群へ強烈な一撃を放つ。ベアトリスは光波ブレードを抜き、メイと共にゴーレム群に突っ込んでいった。
「クロエ! エンジェル・ガードの火力支援に合わせ、ヴァイスの電子戦を無力化しなさい!」
「了解! イヴ師匠、ジャミングを!」
 遥か遠方から、エンジェル・ガードのイヴがヴァイスの電子戦に強力なジャミングをかける。クロエとイヴの連携による科学対科学の情報戦が、ヴァイスの狙撃精度を狂わせる。
 戦場は、M.A.の総力戦へと移行した。しかし、ゴーレム群のオカルト攻撃は止まらない。
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 4. 悠真の完全覚醒:戦場を支配するテイマー
 アリスは、悠真を庇いながら、レディ・クロウの幻術攻撃に苦戦していた。ゴーレムの魔力攻撃がシールドをすり抜け、アリスのサイボーグボディを直撃する。
「くっ……! 悠真くん、離れないで! 私が、護るんだから!」
 アリスの体から火花が散り、駆動部からエラー音が鳴り響いた。彼女の「愛の盾」が崩壊の危機に瀕する。
 その瞬間、レディ・クロウが悠真に肉薄した。
「志藤悠真! 貴様の力は、私がいただく!」
 レディ・クロウのオカルト攻撃が、悠真の額をかすめる。生命の危機、そして目の前でアリスが傷つく姿。
 その強烈な感情の波が、悠真の抑止力を再び限界まで高めた。
「俺のメイドたちを、傷つけるな!」
 悠真の心からの叫びが、戦場全体を青白い光で覆い尽くした。それは、ゾルゲ戦の時とは比べ物にならない、支配力の奔流だった。
「スライミー! 防御結界を最大に!」
 悠真の命令と共に、スライミー(防御)はセーフハウス全体を青いバリアで覆い、レディ・クロウのオカルト攻撃を遮断した。
「ファントム! ゴーレムのエネルギー制御点を全て解析し、俺にフィードバックしろ!」
 ファントム(索敵)は、ゴーレムの体に潜り込み、駆動部の弱点情報をルナとクロエの司令塔システムに送り込む。
「スパイク! レディ・クロウとヴァイスの足元に、全力で牽制射撃を!」
 スパイク(牽制・陽動)は、二人の幹部の足元に硬質の針を乱射し、指揮系統を麻痺させた。
 悠真は、三体のテイム魔物を完全に掌握し、戦場全体をコントロールする真のテイマーへと覚醒した。彼の支配力は、ゴーレムの魔力制御を狂わせ、ゴーレム同士の同士討ちを誘発する。
 ルナがその光景を見て、歓喜に震えた。
「志藤様! 見事です! これが、あなたの真の覚醒!」
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 5. マナの決断と静かな撤退
 セーフハウスから約一キロ離れた廃ビルの屋上。潜入工作員であるマナは、冷静な表情でこの総力戦をドローンで観察していた。彼女の隣には、ヴァイスとレディ・クロウの通信装置が設置されている。
「クロウ、ヴァイス! 何をしている! 悠真の能力を奪いなさい!」
 レディ・クロウの焦った声が響く。
『マナ様! 無理です! 悠真の支配力が我々のオカルト能力とゴーレムの魔力制御を完全に狂わせています!』
 ヴァイスの声もまた、焦燥に満ちていた。
『彼の能力は、ゾルゲの報告を遥かに超えている! これ以上の戦闘継続は、日本支部全体の壊滅を招きます!』
 マナは、悠真の背後で青白い光を放つ支配力の奔流を見た。その光は、彼女が恋焦がれた「古代の血統」の真の力だ。
(美しい……これほどの力が、あの優柔不断な青年の中に眠っていたなんて……)
 マナは一瞬、魅了されたような表情を見せたが、すぐに冷静な幹部の顔に戻った。
(いいえ、この戦力では勝てない。私の目的は、悠真の力を利用し、ミスト内での指導的地位を確立し世界に君臨すること。ここで全てを失うわけにはいかない)
 マナは、冷徹な決断を下した。
「全員、撤退を命じます。日本支部は、これ以上の物理的戦闘を避ける。このデータは、アジア本部に直ちに送るわ」
 マナはそう言い放つと、ドローンを回収し、レディ・クロウとヴァイスの逃走経路を確保した。彼女は悠真の命を狙うことなく、静かに戦場を後にした。
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 6. 戦いの終わりとマナへのショック
 ミスト幹部たちの撤退命令により、ゴーレムとグール群は統率を失い、M.A.の総攻撃で次々と排除された。激しい戦闘の末、セーフハウスに静寂が戻った。
 悠真は、完全に覚醒した支配力により、全身の疲労を感じていた。彼は、瓦礫の中に立ち尽くす。
 ルナが悠真に近づき、冷徹な声で報告した。
「志藤様。ミスト日本支部は完全に撤退。あなたの『支配力』の覚醒が、私たちに勝利をもたらしました。そして、あなたは、もうただの『護衛対象』ではありません。我々のリーダーですわ」
「ルナ……」
 瓦礫と化した洋館の庭には、M.A.の処理班が投入され、周囲の針葉樹の森の奥深くに散乱したゴーレムの残骸を、秘密裏に回収し始めていた。都心のど真ん中であれば、甚大な被害と情報漏洩は避けられなかっただろう。郊外のこの広大な私有地と二重の防御結界が、街を護ったのだ。
 悠真の瞳は、勝利の喜びに満たされてはいなかった。彼は、遠くの廃ビルの屋上から、マナが自分を冷徹に見つめていたことをファントムの索敵情報で察知していた。
「マヤが……。本当に、ミストの幹部だったんだな。俺の優しさを利用して、こんな大規模な襲撃を仕組んだ……」
 悠真は、信じたい「友人」に裏切られた事実に、激しいショックと苦悩を覚える。彼の優柔不断さが、この総攻撃を招いたのだ。
 ルナは、悠真の苦悩を前に、一瞬言葉を失うが、すぐに理性を取り戻した。
「志藤様。マヤという人物は、あなたの命を狙う敵です。感情的な動揺は、あなたの抑止力を乱すノイズにしかなりません。司令塔として、あなたの理性を優先することを求めます」
 ルナの冷徹な言葉は、悠真の心に突き刺さった。
 その時、アリスが悠真の背後から強く抱きついた。彼女のサイボーグボディは激しく損傷し、駆動部から微かなオイルが漏れ出している。
「く……! 悠真くん。ルナ隊長の言うことは正しい。でもね……私は、悠真くんの優しさが大好きよ。マヤさんみたいに、裏切る敵はいるかもしれない。でも、私たちがいる。任務なんかじゃなくて、本気で悠真くんを愛してる私がいるんだから」
 アリスは、悠真の耳元でそう囁いた。
「悠真くんを護るための愛の盾は、私が永遠に維持する。だから、今は私の腕の中で、傷ついた心を癒やして?」
 悠真は、ルナの理性と、アリスの愛という、二つの異なるメイドの愛に包まれながら、戦いの終結と、愛するメイドたちを護るという、真のヒーローとしての覚悟を固めるのだった。
 セバスチャンが、瓦礫の端で報告を終えたルナに静かに近づいた。
「ルナ隊長。ご苦労様でした。総帥より、緊急命令です。バレット隊全員が戦闘で疲弊している今、セーフハウスの家事・雑務補助と、志藤様の精神的な安定を測る新たなセンサーとして――ネストリング(見習いメイド隊)を投入します」
 ルナは、疲労困憊のメイドたちと、瓦礫の中に立つ悠真を一瞥し、深い溜め息を漏らした。
「……そうですか。総帥の格上の嫉妬は、こんな時でも私たちに試練を与えますか。ネストリングの受け入れ準備に入ります」