第百話:次世代の光
ー/ー 決起の祝賀会から一夜明け、盟約軍司令部には、魔王軍との最終決戦への準備という緊張感とともに、前夜の祝賀会の余韻が漂っていた。
ヒカルは、朝食の間に六龍姫全員と共にいた。皆が軽い食事を終え、魔王軍との最終決戦への準備について非公式な意見を交換しているところだった。
その時、爆炎龍将軍フレアが、普段の武人らしい威勢を失い、顔を紅潮させながら、シエルの手を引いて朝食の間に入ってきた。
「王よ! レヴィア様! アクア様! 全員に、このフレアから最大の歓喜の報告があります!」
紅蓮の激情竜姫レヴィアが、不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「フレア。貴様の激情は、会議の邪魔だ。武功の報告なら後で聞く! それよりも、王の隣にいる我に、今すぐ正妃の愛の証明を要求しろ!」
フレアは、その激情を受け止めつつも、ヒカルとレヴィアの前で、静かに頭を垂れたシエルと共に、深々と膝をついた。
「ですが、これだけは報告させてください! このフレアとシエルの間に……新たな命が宿りました。王の治世において、初めての竜族の次世代が誕生します!」
その報告は、司令部全体を一瞬で静寂に包み込んだ。六龍盟約軍の設立以来、初めての「種の存続」という、最大の祝福が訪れた瞬間だった。
蒼玉の理性竜姫アクアは、冷静な仮面が一瞬崩壊し、目を見開いた。彼女の理性の愛は、何よりも種の存続という義務を最優先する。
「な、なんですって…!? 種の存続が……我よりも先に、シエルが成し遂げたというの!?」
純白の調和聖女ルーナは、静かに光の魔力を放ち、シエルを優しく包み込んだ。
「シエル殿、フレア殿。心より祝福いたします。新たな命の誕生は、ヒカル様の優しさによる新秩序が真実である、最高の証明です」
疾風の遊撃竜姫セフィラが、椅子から飛び跳ね、心からの無邪気な歓声を上げた。
「わーい! 赤ちゃん! 赤ちゃん楽しみだね、シエル姉さん! 最高の新しい冒険の始まりだよ! 私の団長(ヒカル)の王国は、どんどん楽しくなるね!」
磐石の守護龍テラは、感極まったように静かに涙を流した。
「主よ。わらわの母性の愛は、この瞬間、最大の安寧を得ました。竜族の未来の希望を、テラも全力で護り抜きます。シエル殿、本当におめでとうございます」
闇の特務機関長ヴァルキリアは、一瞬の沈黙の後、孤高の威厳を崩し、理知的な祝福を贈った。
「そうだな。シエル、フレア。貴様たちの功績は、王国の種の存続という論理において、最高に評価されるべきです。その子は、将来、王を補佐する六天将の血統を継ぐ、重要な資産となる。私からも、祝福します」
◇◆◇◆◇
しかし、この歓喜の報せは、六龍姫の間に、「正妃の座」を賭けた愛の争奪戦とは異なる、「種の存続」という本能的な義務を巡る、最大の競争の火蓋を切った。
紅蓮の激情竜姫レヴィアは、シエルとフレアに祝福の言葉を送りながらも、その瞳には王の血統への強い独占欲が燃え盛る。
「シエル! よくやったわ! だが、貴様の腹の子が、王の血統を継ぐ次世代の光となるわけではない! 王の血統を継ぐのは、この我と、王の間の子どもだけだ!」
レヴィアは、フレアの報告を受けて、自身の「種の存続」という本能的な愛の要求を、王妃の座への絶対的な要求へと昇華させた。
「夫よ! 私と貴方との間に、王の血統を継ぐ皇女を授かることこそ、この盟約軍の最大の使命だわ! 当番の独占を許可しろ! 正妃の座は、この激情的な愛が、王国の未来を築くことで独占する!」
ヴァルキリアとアクアも、レヴィアの激情的な要求に、冷静な論理と孤高の忠誠という形で応える。
「レヴィアの主張は、種の存続という論理においては正しい。王よ、レヴィアの激情を、王国の未来という義務へと転換させるべきです」
ヒカルは、この突如訪れた「種の存続」という、愛の論理を超えた本能的な重圧に直面した。
「静粛に! シエル、フレア、心から祝福する。シエルは、この命を最優先し、後方司令部の核として、王国の安寧を築き続けろ」
ヒカルは、レヴィアの激情的な愛を正面から受け止めた。
「レヴィア。お前の愛は、王国の未来を築く最高の希望だ。だが、正妃の座は、魔王討伐という武功をもって裁定するという、王の最終的な約束に揺るぎはない」
ヒカルの言葉は、「種の存続」という愛の論理に、「武功による公平な裁定」という王の義務を優先させるという、孤独な決意の表明だった。
◇◆◇◆◇
シエルとフレアの報告は、六龍盟約軍の兵士たちに、「愛のユニゾンが、新たな命を生み出す」という、最高の士気向上をもたらした。
ヒカルは、六龍姫全員の顔に、競争心と歓喜、そして揺るぎない覚悟が浮かび上がるのを確認した。
「お前たちの愛は、単なる感情ではない。王国の未来を築く、命の旋律だ。この命を護るため、全軍、魔王との最終決戦へと移行する」
ヒカルは、六龍姫全員の献身的な愛を受け止め、「愛のユニゾンが、種の存続という最大の使命を果たす」という確信を得た。
「魔王討伐後、俺の愛の指揮棒は、『正妃』の座の裁定という、最も困難な義務を果たす。これが、王の最終的な約束だ!」
このエピソードをもって、第2部「人間社会への介入編」は終幕を迎えた。ヒカルの「優しさが最強の力」という理念は、憎悪と謀略、そして種の存続という本能的な重圧を乗り越え、魔王との最終決戦へと向かう。
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