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第七十話:カインの謀略、理性を超えた情熱

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 聖女アリアの殉教と、帝都近郊における「優しさの統治」の開始から一週間。盟約軍は、占領した教団施設を新たな司令部とし、復興と統治の作業に没頭していた。

 テラとルーナの献身的な愛は、領民の支持を固めることに成功し、カインが率いる帝国の主力軍との戦いは、一時的に膠着状態に入った。

 ヒカルは、帝都を無血で奪取した後、初めて平和な夜を迎えられるはずだった。だが、彼の「絆の共感者」の異能は、六龍姫の愛の音色が発する、新たな不協和音を捉え始めていた。

 司令部の奥深く、最高戦略官の蒼玉の理性竜姫アクアと、後方戦略総司令官の深海の戦術師シエルが、戦略会議を開いていた。二人の知性の結晶である魔力分析盤は、人類側の物資と兵力の動向を緻密に解析している。

「シエル。帝国軍の残党の動きに、論理的な一貫性が見えないわ。カインが、聖騎士団の壊滅後、なぜ即座に反撃に出ないのか……」

 アクアは眼鏡を押し上げ、冷徹な瞳に焦燥の色を滲ませた。帝国の反撃が遅れることは合理的ではない。そこには、必ずカインの謀略が潜んでいるはずだ。

「アクア様。私の分析でも、奇妙なデータが検出されています。軍の機密情報である辺境連合軍の合流ルートと、ギルティアが確保した秘密の経済ルートの情報が、わずかですが帝国側に流出している可能性があります」

 シエルの報告に、アクアは初めて冷静さを失いかけた。

「馬鹿な……! 我々の司令部は、シェイドの闇の特務機関、そしてゼファーの遊撃隊を動員して厳重に防諜しているはず! 」

 カインの謀略は、武力ではなく、ヒカルの最も信頼する情報と論理という核を突いてきた。

 その時、ヒカルが司令部に現れた。彼の顔色には、ルーナの調律の光を受けているにもかかわらず、深い疲労の色が浮かんでいる。彼の「絆の共感者」は、王妃たちの愛の奔流だけでなく、軍団内部に巣食う「不信」という新たな毒に晒されていた。

 アクアは、ヒカルに論理的な窮状を訴えた。

「王よ! カインは、私たちの情報網におそらくスパイを送り込みました! 王国の命運を握る経済と軍事の情報が、奴の手に渡っている!私の理性的な愛の論理が、奴の卑劣な情報戦の前に敗北しようとしています!」

 ヒカルは、アクアの悲痛な叫びを真正面から受け止めた。カインが、かつて自分を陥れたのと同じ「裏切り」の罠を、今度は盟約軍に仕掛けてきたのだ。

 ◇◆◇◆◇

 ヒカルが、この情報戦での劣勢をどう覆すか思案している最中、司令部には六龍姫の愛の不協和音が響き渡った。

 純白の調和聖女ルーナが、ヒカルの傍に寄り添い、優しく語りかけていた。

「ヒカル様。心がお疲れのようです。どうぞ、わたくしの光の調律を……。王の魂の安寧こそが、この情報戦における最強の防御です。私の癒しが必要ですわね……」

 ルーナの献身的な愛の独占に対し、紅蓮の激情竜姫レヴィアの嫉妬が臨界点に達した。

「ちょっとルーナ! 貴様は、卑怯よ! 王の疲弊を逆手にとって、精神的な支柱という最も美味しい場所を独占するとは!?」

 レヴィアの激情的な炎は、ルーナの「調律の光」をノイズとして断罪する。1週間前の姉妹喧嘩寸前のやり取りをまだ根に持っているのだ。

「王よ! このような偽りの調律者の甘言に惑わされないで! 貴方の激情的な愛は、私の炎でしか癒やされない! 私の愛こそが、王の火力を最大化する最高の燃料よ!」
「あら、レヴィア姉様。この間から私のお役目に対して何をそんなに焦ってらっしゃるの? これは私がヒカル様より与えられたお役目なの。貴方は前線で戦果を挙げられればよろしいのではなくて?」
「ちょ、ちょっとルーナ、レヴィア。二人ともいい加減にしなさい!」

 レヴィアの激情に対し、アクアは激しい焦燥を覚えた。情報戦での敗北、そしてルーナに精神的な独占権を奪われたという二重の屈辱が、彼女の冷静な理性を崩壊させようとするのだ。

「お前たち、いい加減にしろ!! これでは軍議もままならぬ。いったん部屋に帰って頭を冷やして来い!!」

 司令部の空気はいつになく重かった。

 ヒカルは他の姫をいったん下がらせ、参謀長であるアクアと二人きりで話すことにした。


 ◇◆◇◆◇

 カインの情報戦とルーナの精神的な挑戦により、最高戦略官アクアの理性は極限まで揺さぶられていた。その夜は、王の義務としての当番制がアクアに割り当てられていた。

 王の寝室。ヒカルは、アクアがいつもの冷徹な軍師服ではなく、透き通るような水色のガウンを纏っていることに気づいた。彼女の銀色の髪は、普段は完璧にまとめられているが、今は肩に無造作に流れ落ち、その姿は一人の脆弱な女性の美しさを際立たせていた。

「王よ……今夜は、王妃としての義務を果たすことが困難かもしれません」

 アクアはベッドサイドに立ち尽くし、ヒカルと目を合わせようとしない。その声は微かに震え、いつもの冷静な音色は鳴りを潜めていた。

「ルーナの調律は、私に『激情という名のノイズ』が王の心を乱すと突きつけました。カインの謀略は、私の『論理的な愛』が情報流出を防げなかったという現実を突きつけました」

 アクアは、自分のプライドが論理によって完全に崩壊したという屈辱に、その場に崩れ落ちた。

「私は……もはや、王の戦略を支える論理的な存在ではない。レヴィアのような情熱もなく、ルーナのような献身的な光もない。ただ、敗北という名の非合理に囚われた、無価値な妻です」

 ヒカルは立ち上がり、アクアの震える身体を優しく抱きしめた。

「静かにしろ、アクア。お前は、最も勇敢な妻だ」

 ヒカルの温もりと、その瞳に宿る愛情が、アクアの心の氷を溶かし始める。彼女は理性という仮面を外し、ヒカルの胸に顔を埋め、子供のように涙を流した。

「王よ……私が欲しいのは、戦略的なキスでも、論理的な称賛でもない。ただ、私を『理性的な道具』としてではなく、『愛すべき非合理な妻』として抱きしめてください……」

 ヒカルの「絆の共感者」の異能は、アクアの理性が崩壊したことで、彼女の心の奥底に眠っていた「純粋で深い愛」の音色を感知していた。それは、彼女の知性と同じくらい強靭な、揺るぎない愛の感情だった。

 ヒカルは、アクアの銀色の髪を優しく撫で、王の義務ではなく、夫としての純粋な愛を込めた言葉を投げかけた。

「アクア。お前が泣くのは、カインの謀略に屈したからではない。俺への愛が強すぎるあまり、俺の盾になりきれなかったことに、自らの理性を責めているからだ」

 ヒカルは、アクアの頬を両手で包み込んだ。

「お前の理性は、俺が信じる『優しさ』と同じく、脆い光ではない。お前の理性は、誰よりも強靭な、俺の王国の最高の知性だ。だが、その知性は、俺の愛という非合理な燃料があってこそ、初めて世界を揺るがす力となる」

 ヒカルは、アクアの涙に濡れた唇に、深く、情熱的なキスを与えた。それは、MVPの報酬でも、戦略的な行為でもない、純粋な愛の証明だった。

「ルーナは、調律という名の秩序で俺を独占しようとした。だが、俺は、お前の『情熱的な理性』という、誰にも真似できない愛を信じる。お前の理性は、俺の情熱によって、論理を超越した、最強の愛の形へと進化するのだ」

 ヒカルの愛のキスと、情熱的な言葉は、アクアの理性を根源から再構築した。彼女は、理性の仮面の下に、情熱という名の新たな核を得たのだ。

 アクアは、ヒカルの胸の中で静かに微笑み、涙を拭った。その瞳には、以前の冷徹な知性だけでなく、炎のような情熱の光が宿っていた。

「王よ……私の理性は、今、貴方の愛という名の『非合理な真実』によって満たされました。私にとって、貴方を愛することは、もはや論理的な選択ではなく、揺るぎない情熱です」

 アクアは、ヒカルの首に腕を回し、理性を込めた冷静な声で、勝利を誓った。

「私の論理的な愛は、貴方の情熱によって、最強の武器となった。カインの論理も、ルーナの秩序も、私の論理と情熱の複合愛の前には無力です。必ず、カインの情報網を破壊し、私の理性が最強の盾であることを証明しますわ」

 この夜、アクアはヒカルの愛を独占し、失われた理性とプライドを回復させた。ヒカルの愛の調律により、盟約軍の知的な核は、「論理を超えた情熱」という最強の鎧を纏い、カインの謀略に立ち向かう準備を整えたのだった。


◇◆◇◆◇

 翌朝。

 ヒカルは、アクアの理性的な愛を論理を超えた情熱で肯定し、彼女に大胆な逆転の戦略を立案するよう命じていた。

「アクア! 貴様はシエルと共に、カインの謀略に乗じて偽の機密情報を流し、奴を混乱させろ! 奴が最も信頼する『情報』という足場を崩壊させるのだ!」

 アクアの瞳に、再び理性的な炎が宿っていた。ヒカルの情熱的な愛が、彼女の理性を再構築したのだ。アクアは立ち上がり、錫杖を振り上げて指示を出す。

「御意、王よ! 私の理性的な愛が、王の情熱的な指令に応え、カインの論理的な支配を必ず打ち砕きます!」



 そんななか、後方戦略総司令官のシエルは、カインの情報戦を分析する中で、スパイが情報漏洩だけでなく、古王残党の活動にも関わっている可能性を指摘してきた。

「王よ。スパイの魔力残滓から、古王残党との連携が確認されています。ヴァルキリア様、シェイドと連携し、スパイの正体を特定し、奴らの情報網の核を叩く必要があります」

 この情報を受け、ヒカルは顧問団に、政治的な足場固めを急がせた。

「よし、ヴァルキリアにそこは任せよう。さらに、ギルティア、ウィンド・ランナー! お前たちの出番だ!」

 財務官僚長官のギルティアは、冷徹な論理を突きつける。

「王よ。情報流出は、経済的な損失に直結します。私とウィンド・ランナーが、帝国の金融・物流システムへのカウンター経済制裁の準備を急ぎましょう。王の経済資産の維持は、この私の論理的な忠誠が保証いたしますわ」

 物流・貿易次長の放浪の運び屋(ウィンド・ランナー)が、皮肉めいた笑みを浮かべた。

「最高のビジネスチャンスですね、団長さん。カインの論理的な支配は、金の力で最も簡単に崩壊する。情報戦と経済戦の多方面作戦の火蓋が切られましたね」

 ヒカルの愛の指揮棒は、情報戦と経済戦という新たな戦場へと向かう。レヴィアは、ヒカルがアクアを優しく抱擁し慰める姿を見て、知的なデレに激しく嫉妬し、次の MVP報酬を賭けた激情の炎を燃え上がらせた。

「夫! アクアの理性的な愛よりも、ルーナの調律よりも、我の激情的な愛の MVP報酬を、次は独占させてくれなければ、ユニゾンが暴走するわよ!」

 ヒカルは、レヴィアの嫉妬が軍の士気を高める燃料となることを理解し、王の義務としてその愛を受け入れた。

「レヴィア。約束しよう。もちろん、カインとの情報戦に勝利した暁には、貴様の激情的な愛を、誰にも邪魔させない最高の MVP報酬として独占させてやる!」
「や、約束よ!! 絶対だからね!!」



【第71話へ続く】



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 テラとルーナの献身的な愛は、領民の支持を固めることに成功し、カインが率いる帝国の主力軍との戦いは、一時的に膠着状態に入った。
 ヒカルは、帝都を無血で奪取した後、初めて平和な夜を迎えられるはずだった。だが、彼の「絆の共感者」の異能は、六龍姫の愛の音色が発する、新たな不協和音を捉え始めていた。
 司令部の奥深く、最高戦略官の蒼玉の理性竜姫アクアと、後方戦略総司令官の深海の戦術師シエルが、戦略会議を開いていた。二人の知性の結晶である魔力分析盤は、人類側の物資と兵力の動向を緻密に解析している。
「シエル。帝国軍の残党の動きに、論理的な一貫性が見えないわ。カインが、聖騎士団の壊滅後、なぜ即座に反撃に出ないのか……」
 アクアは眼鏡を押し上げ、冷徹な瞳に焦燥の色を滲ませた。帝国の反撃が遅れることは合理的ではない。そこには、必ずカインの謀略が潜んでいるはずだ。
「アクア様。私の分析でも、奇妙なデータが検出されています。軍の機密情報である辺境連合軍の合流ルートと、ギルティアが確保した秘密の経済ルートの情報が、わずかですが帝国側に流出している可能性があります」
 シエルの報告に、アクアは初めて冷静さを失いかけた。
「馬鹿な……! 我々の司令部は、シェイドの闇の特務機関、そしてゼファーの遊撃隊を動員して厳重に防諜しているはず! 」
 カインの謀略は、武力ではなく、ヒカルの最も信頼する情報と論理という核を突いてきた。
 その時、ヒカルが司令部に現れた。彼の顔色には、ルーナの調律の光を受けているにもかかわらず、深い疲労の色が浮かんでいる。彼の「絆の共感者」は、王妃たちの愛の奔流だけでなく、軍団内部に巣食う「不信」という新たな毒に晒されていた。
 アクアは、ヒカルに論理的な窮状を訴えた。
「王よ! カインは、私たちの情報網におそらくスパイを送り込みました! 王国の命運を握る経済と軍事の情報が、奴の手に渡っている!私の理性的な愛の論理が、奴の卑劣な情報戦の前に敗北しようとしています!」
 ヒカルは、アクアの悲痛な叫びを真正面から受け止めた。カインが、かつて自分を陥れたのと同じ「裏切り」の罠を、今度は盟約軍に仕掛けてきたのだ。
 ◇◆◇◆◇
 ヒカルが、この情報戦での劣勢をどう覆すか思案している最中、司令部には六龍姫の愛の不協和音が響き渡った。
 純白の調和聖女ルーナが、ヒカルの傍に寄り添い、優しく語りかけていた。
「ヒカル様。心がお疲れのようです。どうぞ、わたくしの光の調律を……。王の魂の安寧こそが、この情報戦における最強の防御です。私の癒しが必要ですわね……」
 ルーナの献身的な愛の独占に対し、紅蓮の激情竜姫レヴィアの嫉妬が臨界点に達した。
「ちょっとルーナ! 貴様は、卑怯よ! 王の疲弊を逆手にとって、精神的な支柱という最も美味しい場所を独占するとは!?」
 レヴィアの激情的な炎は、ルーナの「調律の光」をノイズとして断罪する。1週間前の姉妹喧嘩寸前のやり取りをまだ根に持っているのだ。
「王よ! このような偽りの調律者の甘言に惑わされないで! 貴方の激情的な愛は、私の炎でしか癒やされない! 私の愛こそが、王の火力を最大化する最高の燃料よ!」
「あら、レヴィア姉様。この間から私のお役目に対して何をそんなに焦ってらっしゃるの? これは私がヒカル様より与えられたお役目なの。貴方は前線で戦果を挙げられればよろしいのではなくて?」
「ちょ、ちょっとルーナ、レヴィア。二人ともいい加減にしなさい!」
 レヴィアの激情に対し、アクアは激しい焦燥を覚えた。情報戦での敗北、そしてルーナに精神的な独占権を奪われたという二重の屈辱が、彼女の冷静な理性を崩壊させようとするのだ。
「お前たち、いい加減にしろ!! これでは軍議もままならぬ。いったん部屋に帰って頭を冷やして来い!!」
 司令部の空気はいつになく重かった。
 ヒカルは他の姫をいったん下がらせ、参謀長であるアクアと二人きりで話すことにした。
 ◇◆◇◆◇
 カインの情報戦とルーナの精神的な挑戦により、最高戦略官アクアの理性は極限まで揺さぶられていた。その夜は、王の義務としての当番制がアクアに割り当てられていた。
 王の寝室。ヒカルは、アクアがいつもの冷徹な軍師服ではなく、透き通るような水色のガウンを纏っていることに気づいた。彼女の銀色の髪は、普段は完璧にまとめられているが、今は肩に無造作に流れ落ち、その姿は一人の脆弱な女性の美しさを際立たせていた。
「王よ……今夜は、王妃としての義務を果たすことが困難かもしれません」
 アクアはベッドサイドに立ち尽くし、ヒカルと目を合わせようとしない。その声は微かに震え、いつもの冷静な音色は鳴りを潜めていた。
「ルーナの調律は、私に『激情という名のノイズ』が王の心を乱すと突きつけました。カインの謀略は、私の『論理的な愛』が情報流出を防げなかったという現実を突きつけました」
 アクアは、自分のプライドが論理によって完全に崩壊したという屈辱に、その場に崩れ落ちた。
「私は……もはや、王の戦略を支える論理的な存在ではない。レヴィアのような情熱もなく、ルーナのような献身的な光もない。ただ、敗北という名の非合理に囚われた、無価値な妻です」
 ヒカルは立ち上がり、アクアの震える身体を優しく抱きしめた。
「静かにしろ、アクア。お前は、最も勇敢な妻だ」
 ヒカルの温もりと、その瞳に宿る愛情が、アクアの心の氷を溶かし始める。彼女は理性という仮面を外し、ヒカルの胸に顔を埋め、子供のように涙を流した。
「王よ……私が欲しいのは、戦略的なキスでも、論理的な称賛でもない。ただ、私を『理性的な道具』としてではなく、『愛すべき非合理な妻』として抱きしめてください……」
 ヒカルの「絆の共感者」の異能は、アクアの理性が崩壊したことで、彼女の心の奥底に眠っていた「純粋で深い愛」の音色を感知していた。それは、彼女の知性と同じくらい強靭な、揺るぎない愛の感情だった。
 ヒカルは、アクアの銀色の髪を優しく撫で、王の義務ではなく、夫としての純粋な愛を込めた言葉を投げかけた。
「アクア。お前が泣くのは、カインの謀略に屈したからではない。俺への愛が強すぎるあまり、俺の盾になりきれなかったことに、自らの理性を責めているからだ」
 ヒカルは、アクアの頬を両手で包み込んだ。
「お前の理性は、俺が信じる『優しさ』と同じく、脆い光ではない。お前の理性は、誰よりも強靭な、俺の王国の最高の知性だ。だが、その知性は、俺の愛という非合理な燃料があってこそ、初めて世界を揺るがす力となる」
 ヒカルは、アクアの涙に濡れた唇に、深く、情熱的なキスを与えた。それは、MVPの報酬でも、戦略的な行為でもない、純粋な愛の証明だった。
「ルーナは、調律という名の秩序で俺を独占しようとした。だが、俺は、お前の『情熱的な理性』という、誰にも真似できない愛を信じる。お前の理性は、俺の情熱によって、論理を超越した、最強の愛の形へと進化するのだ」
 ヒカルの愛のキスと、情熱的な言葉は、アクアの理性を根源から再構築した。彼女は、理性の仮面の下に、情熱という名の新たな核を得たのだ。
 アクアは、ヒカルの胸の中で静かに微笑み、涙を拭った。その瞳には、以前の冷徹な知性だけでなく、炎のような情熱の光が宿っていた。
「王よ……私の理性は、今、貴方の愛という名の『非合理な真実』によって満たされました。私にとって、貴方を愛することは、もはや論理的な選択ではなく、揺るぎない情熱です」
 アクアは、ヒカルの首に腕を回し、理性を込めた冷静な声で、勝利を誓った。
「私の論理的な愛は、貴方の情熱によって、最強の武器となった。カインの論理も、ルーナの秩序も、私の論理と情熱の複合愛の前には無力です。必ず、カインの情報網を破壊し、私の理性が最強の盾であることを証明しますわ」
 この夜、アクアはヒカルの愛を独占し、失われた理性とプライドを回復させた。ヒカルの愛の調律により、盟約軍の知的な核は、「論理を超えた情熱」という最強の鎧を纏い、カインの謀略に立ち向かう準備を整えたのだった。
◇◆◇◆◇
 翌朝。
 ヒカルは、アクアの理性的な愛を論理を超えた情熱で肯定し、彼女に大胆な逆転の戦略を立案するよう命じていた。
「アクア! 貴様はシエルと共に、カインの謀略に乗じて偽の機密情報を流し、奴を混乱させろ! 奴が最も信頼する『情報』という足場を崩壊させるのだ!」
 アクアの瞳に、再び理性的な炎が宿っていた。ヒカルの情熱的な愛が、彼女の理性を再構築したのだ。アクアは立ち上がり、錫杖を振り上げて指示を出す。
「御意、王よ! 私の理性的な愛が、王の情熱的な指令に応え、カインの論理的な支配を必ず打ち砕きます!」
 そんななか、後方戦略総司令官のシエルは、カインの情報戦を分析する中で、スパイが情報漏洩だけでなく、古王残党の活動にも関わっている可能性を指摘してきた。
「王よ。スパイの魔力残滓から、古王残党との連携が確認されています。ヴァルキリア様、シェイドと連携し、スパイの正体を特定し、奴らの情報網の核を叩く必要があります」
 この情報を受け、ヒカルは顧問団に、政治的な足場固めを急がせた。
「よし、ヴァルキリアにそこは任せよう。さらに、ギルティア、ウィンド・ランナー! お前たちの出番だ!」
 財務官僚長官のギルティアは、冷徹な論理を突きつける。
「王よ。情報流出は、経済的な損失に直結します。私とウィンド・ランナーが、帝国の金融・物流システムへのカウンター経済制裁の準備を急ぎましょう。王の経済資産の維持は、この私の論理的な忠誠が保証いたしますわ」
 物流・貿易次長の|放浪の運び屋《ウィンド・ランナー》が、皮肉めいた笑みを浮かべた。
「最高のビジネスチャンスですね、団長さん。カインの論理的な支配は、金の力で最も簡単に崩壊する。情報戦と経済戦の多方面作戦の火蓋が切られましたね」
 ヒカルの愛の指揮棒は、情報戦と経済戦という新たな戦場へと向かう。レヴィアは、ヒカルがアクアを優しく抱擁し慰める姿を見て、知的なデレに激しく嫉妬し、次の MVP報酬を賭けた激情の炎を燃え上がらせた。
「夫! アクアの理性的な愛よりも、ルーナの調律よりも、我の激情的な愛の MVP報酬を、次は独占させてくれなければ、ユニゾンが暴走するわよ!」
 ヒカルは、レヴィアの嫉妬が軍の士気を高める燃料となることを理解し、王の義務としてその愛を受け入れた。
「レヴィア。約束しよう。もちろん、カインとの情報戦に勝利した暁には、貴様の激情的な愛を、誰にも邪魔させない最高の MVP報酬として独占させてやる!」
「や、約束よ!! 絶対だからね!!」
【第71話へ続く】