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第六十一話:光の福音と多方面戦線の動揺

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 ヒカルが六龍盟約軍を四つの戦線に分断させた直後、聖女アリア率いる聖騎士団が、その隙を突くように猛攻を再開した。

「全軍に告ぐ! 竜の王は戦力を分散させた! 今こそ、人類の絶対的正義を、偽りの絆を持つ反逆者に思い知らせるのだ!」

 教団の魔術師団が放つ憎悪の魔力が、大地を覆い尽くす。これは、ヒカルの多方面作戦が成功し、後方攪乱部隊が動くまでの時間稼ぎを許さないという、カインの緻密な戦略的判断だった。

 司令部で戦況を俯瞰するヒカルの戦場の視覚化の異能は、聖騎士団の魔力が憎悪を燃料に増幅し、聖女アリアの光の結界が前線を押し上げているのを映し出していた。

「ここまでの流れは予想済みだ。だが、教団の攻勢が予想以上に速い! レヴィアとアクアの局地的な反撃だけでは、テラの防御結界が持たない!」

 ヒカルの傍らに控えるリリアが、不安を隠せない声で囁く。

「ヒカル様……この憎悪の魔力は、私たちが逃げた日の、人間たちの絶望と同じ匂いがします。このままでは、兵士たちの心が折れてしまう……」

 ヒカルの絆の共感者は、テラの献身の魔力が、憎悪と絶望という不協和音に晒され、安定度を急激に下げているのを感じ取っていた。

 しかしながらヒカルにはこの戦局を耐え切る策があった。そう、姫たちの感情の調律だ!



 テラの防御結界が揺らぎ始めた瞬間、ヒカルは光の調律による精神的な防御を最優先とした。

「ルーナ! アウラ! 今こそ光の力で、兵士たちの精神的な安寧を調律しろ! これはお前たちにしかできない唯一の闘いだ!」

 純白の調和聖女ルーナは、司令部の最前線へ進み出た。彼女の背後には、無垢なる浄化使アウラが光の魔石と魔力解析端末を携え、論理的な光の支援を準備している。

「ヒカル様。わたくしの調律の光は、憎悪という不協和音を愛という調和に変えるためにあります。光の福音を、今こそ世界へ解き放ちます!」

 ルーナは、ヒカルへの献身的な愛を燃料とし、調律の光を聖騎士団との間に展開した。この光の力は、兵士たちの心の絶望を癒やし、士気の崩壊を食い止める。

 しかし、聖女アリアの憎悪の光もまた、信仰という狂信的な力でルーナの調律に抵抗した。

『聞け、竜族どもよ! お前たちの王が与える光は偽りだ! 竜と人間の間に共存などありえない! 愛など幻想だ!』

 教団が流すプロパガンダは、ルーナの調律を上書きしようと、兵士たちの心に不信を植え付ける。

 ◇◆◇◆◇

 憎悪のプロパガンダに対し、ルーナは王の愛を公的な行動で証明することを決意する。

「アウラ。憎悪に満ちたプロパガンダに対抗するには、論理的な真実と、圧倒的な愛の献身が必要です! ヒカル様のご期待に応えるのです!」

 無垢なる浄化使アウラが、論理的な分析を即座に提示した。

「ルーナ様。おっしゃる通り、プロパガンダに対抗するには、半年前より練ってきた人間社会への福祉と治癒という無形の利益を今こそ示すことが、最も合理的です。光の福音の投資収益率は、憎悪の破壊を上回ります」

 ルーナは、ヒカルに一歩近づき、王の義務として自らの愛を独占しようと宣言する。

「ヒカル様。わたくしに、半年間の綿密な準備を経た、人間社会への福祉と治癒という最重要作戦を実行させてください。わたくしの献身的な愛が、人類の憎悪を癒やし、王の愛の光が人類の救いとなることを示させてください」

 ヒカルは、ルーナの愛の独占が、戦略的な危機を精神的な勝利へと導く唯一の道であることを理解し、その重い義務を承認した。

「ルーナ。お前の光の福音は、全軍の精神的な盾だ。当初の作成通り、アウラと共に、憎悪に満ちた人間社会へ、盟約軍の優しさという新秩序を布教せよ! 安心しろ! テラとアクアの防御が、お前たちの背中を護る!」

 この「光の福音」の指令に、最前線で防御戦を強いられていたレヴィアが、通信魔力を通じて激しく嫉妬を表明した。

「ずるいわよ、ルーナ! 貴様は王の精神的な安寧を独占するだけでなく、王の優しさという最高の光まで独占するつもりなの!? とは言え、私の激情は、貴様の地味な布教活動には負けないわ!」

 レヴィアの激情的な嫉妬の魔力は、ユニゾン訓練で過剰な火力を放つ予兆となり、ヒカルの絆の共感者の異能を激しく揺さぶる。

(ルーナの光の福音は、精神的な士気のMVPだ。しかし、レヴィアの嫉妬がユニゾン暴走のリスクを高めている……。だが、レヴィアの反応、これも計算の範疇だ)

 ヒカルは、レヴィアの激情的な嫉妬を、次の戦線での攻撃的な愛として調律することを決意した。

「レヴィア! 今の防御戦で最も地味な任務を耐え忍んでいるのは、貴様とアクアの局地反撃部隊だ。ルーナの布教活動が完了した後、次なる戦線での攻撃主導権と、MVPに匹敵する特別な情熱の夜を、貴様の激情に独占させてやる! それが、王の愛の約束だ!」

 レヴィアの激情的な嫉妬は、王の愛の約束という最高の報酬によって、一瞬で攻撃的な熱意へと昇華した。

「あぁっ……! 夫よ、夫ォオオ! MVPに匹敵する特別な情熱の夜ですって!? く、くぅ〜〜っ! もう駄目、全身が燃え上がるようだわ!」

 レヴィアは陶酔に悶えるような声で叫び、その激情の炎は歓喜の光へと変わった。

(ルーナのMVPは精神的な勝利。私のMVPは、物理的な破壊と王の愛の情熱の独占! 夫よ、必ず、次の戦いで最高の武功を立ててやるわ!)

 そのレヴィアの反応を目の当たりにした純白の調和聖女ルーナは、MVPの可能性を理性で悟ると、頬を桃色に染め、静かな高揚を隠しきれなかった。

「ヒカル様……! わたくしの献身的な愛が、王の光を独占し、MVPという最高の光の報酬をいただけるのですね……」

 ルーナは、白い手を胸元に当て、透き通るような白金の瞳を潤ませてヒカルを見つめた。

(ヒカル様の愛の光を独占できる……。この光の報酬こそが、王妃としての最高の証明ですわ!)

 ヒカルは、多方面戦線という軍事的な危機と、王妃争奪戦という感情的な危機の二重の重圧に耐えながら、聖女アリアとの憎悪の戦いの長期化を決意した。

【第62話へ続く】



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 ヒカルが六龍盟約軍を四つの戦線に分断させた直後、聖女アリア率いる聖騎士団が、その隙を突くように猛攻を再開した。
「全軍に告ぐ! 竜の王は戦力を分散させた! 今こそ、人類の絶対的正義を、偽りの絆を持つ反逆者に思い知らせるのだ!」
 教団の魔術師団が放つ憎悪の魔力が、大地を覆い尽くす。これは、ヒカルの多方面作戦が成功し、後方攪乱部隊が動くまでの時間稼ぎを許さないという、カインの緻密な戦略的判断だった。
 司令部で戦況を俯瞰するヒカルの戦場の視覚化の異能は、聖騎士団の魔力が憎悪を燃料に増幅し、聖女アリアの光の結界が前線を押し上げているのを映し出していた。
「ここまでの流れは予想済みだ。だが、教団の攻勢が予想以上に速い! レヴィアとアクアの局地的な反撃だけでは、テラの防御結界が持たない!」
 ヒカルの傍らに控えるリリアが、不安を隠せない声で囁く。
「ヒカル様……この憎悪の魔力は、私たちが逃げた日の、人間たちの絶望と同じ匂いがします。このままでは、兵士たちの心が折れてしまう……」
 ヒカルの絆の共感者は、テラの献身の魔力が、憎悪と絶望という不協和音に晒され、安定度を急激に下げているのを感じ取っていた。
 しかしながらヒカルにはこの戦局を耐え切る策があった。そう、姫たちの感情の調律だ!
 テラの防御結界が揺らぎ始めた瞬間、ヒカルは光の調律による精神的な防御を最優先とした。
「ルーナ! アウラ! 今こそ光の力で、兵士たちの精神的な安寧を調律しろ! これはお前たちにしかできない唯一の闘いだ!」
 純白の調和聖女ルーナは、司令部の最前線へ進み出た。彼女の背後には、無垢なる浄化使アウラが光の魔石と魔力解析端末を携え、論理的な光の支援を準備している。
「ヒカル様。わたくしの調律の光は、憎悪という不協和音を愛という調和に変えるためにあります。光の福音を、今こそ世界へ解き放ちます!」
 ルーナは、ヒカルへの献身的な愛を燃料とし、調律の光を聖騎士団との間に展開した。この光の力は、兵士たちの心の絶望を癒やし、士気の崩壊を食い止める。
 しかし、聖女アリアの憎悪の光もまた、信仰という狂信的な力でルーナの調律に抵抗した。
『聞け、竜族どもよ! お前たちの王が与える光は偽りだ! 竜と人間の間に共存などありえない! 愛など幻想だ!』
 教団が流すプロパガンダは、ルーナの調律を上書きしようと、兵士たちの心に不信を植え付ける。
 ◇◆◇◆◇
 憎悪のプロパガンダに対し、ルーナは王の愛を公的な行動で証明することを決意する。
「アウラ。憎悪に満ちたプロパガンダに対抗するには、論理的な真実と、圧倒的な愛の献身が必要です! ヒカル様のご期待に応えるのです!」
 無垢なる浄化使アウラが、論理的な分析を即座に提示した。
「ルーナ様。おっしゃる通り、プロパガンダに対抗するには、半年前より練ってきた人間社会への福祉と治癒という無形の利益を今こそ示すことが、最も合理的です。光の福音の投資収益率は、憎悪の破壊を上回ります」
 ルーナは、ヒカルに一歩近づき、王の義務として自らの愛を独占しようと宣言する。
「ヒカル様。わたくしに、半年間の綿密な準備を経た、人間社会への福祉と治癒という最重要作戦を実行させてください。わたくしの献身的な愛が、人類の憎悪を癒やし、王の愛の光が人類の救いとなることを示させてください」
 ヒカルは、ルーナの愛の独占が、戦略的な危機を精神的な勝利へと導く唯一の道であることを理解し、その重い義務を承認した。
「ルーナ。お前の光の福音は、全軍の精神的な盾だ。当初の作成通り、アウラと共に、憎悪に満ちた人間社会へ、盟約軍の優しさという新秩序を布教せよ! 安心しろ! テラとアクアの防御が、お前たちの背中を護る!」
 この「光の福音」の指令に、最前線で防御戦を強いられていたレヴィアが、通信魔力を通じて激しく嫉妬を表明した。
「ずるいわよ、ルーナ! 貴様は王の精神的な安寧を独占するだけでなく、王の優しさという最高の光まで独占するつもりなの!? とは言え、私の激情は、貴様の地味な布教活動には負けないわ!」
 レヴィアの激情的な嫉妬の魔力は、ユニゾン訓練で過剰な火力を放つ予兆となり、ヒカルの絆の共感者の異能を激しく揺さぶる。
(ルーナの光の福音は、精神的な士気のMVPだ。しかし、レヴィアの嫉妬がユニゾン暴走のリスクを高めている……。だが、レヴィアの反応、これも計算の範疇だ)
 ヒカルは、レヴィアの激情的な嫉妬を、次の戦線での攻撃的な愛として調律することを決意した。
「レヴィア! 今の防御戦で最も地味な任務を耐え忍んでいるのは、貴様とアクアの局地反撃部隊だ。ルーナの布教活動が完了した後、次なる戦線での攻撃主導権と、MVPに匹敵する特別な情熱の夜を、貴様の激情に独占させてやる! それが、王の愛の約束だ!」
 レヴィアの激情的な嫉妬は、王の愛の約束という最高の報酬によって、一瞬で攻撃的な熱意へと昇華した。
「あぁっ……! 夫よ、夫ォオオ! MVPに匹敵する特別な情熱の夜ですって!? く、くぅ〜〜っ! もう駄目、全身が燃え上がるようだわ!」
 レヴィアは陶酔に悶えるような声で叫び、その激情の炎は歓喜の光へと変わった。
(ルーナのMVPは精神的な勝利。私のMVPは、物理的な破壊と王の愛の情熱の独占! 夫よ、必ず、次の戦いで最高の武功を立ててやるわ!)
 そのレヴィアの反応を目の当たりにした純白の調和聖女ルーナは、MVPの可能性を理性で悟ると、頬を桃色に染め、静かな高揚を隠しきれなかった。
「ヒカル様……! わたくしの献身的な愛が、王の光を独占し、MVPという最高の光の報酬をいただけるのですね……」
 ルーナは、白い手を胸元に当て、透き通るような白金の瞳を潤ませてヒカルを見つめた。
(ヒカル様の愛の光を独占できる……。この光の報酬こそが、王妃としての最高の証明ですわ!)
 ヒカルは、多方面戦線という軍事的な危機と、王妃争奪戦という感情的な危機の二重の重圧に耐えながら、聖女アリアとの憎悪の戦いの長期化を決意した。
【第62話へ続く】