【???】いつかの戦い

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 荒れ果てた土地の果てにある険しい山々に囲まれたその場所に、その城は禍々しくも建っていた。何者も拒むこの城は、魔王が率いる軍勢が拠点としていた。

 魔王の脅威は世界に轟くほどであり、世界を統べる強大な力を持っているとまで噂されていた。生半可な覚悟の酔狂な輩では魔王と対峙するどころか、城へと到達することも困難を極める。

 しかし、そんな世界を脅かす魔王を討つべく立ち上がった者たちがいた。
 それは後に勇者と呼ばれる男ロータスと、ロータスの率いる仲間たちだった。

 前人未踏とまで言われた果てしなく危険な道のりを超え、彼らはようやくして魔王のもとへと辿り着くに至る。

「ふははははははははははっ!!!! よくぞ我が城へと踏み込めた者だな。その無謀なる勇気をたたえてやろう!!!!」
 不気味なほど高らかに笑う山のように大きく、ムキムキのムチムチでカチカチの途轍もない威圧感を放つ巨人のような女は何を隠そう、この城の主、魔王だった。

 そこにただ立っているだけでもその計り知れないオーラに吹き飛ばされてしまいそうだったが、ロータスとその仲間たちは怯むことなく、魔王を取り囲む。

「教えてくれ、魔王。どうしてお前は世界を破滅へと導こうとする!?」
「破滅へ導く、ねぇ。キサマは間違っておるぞ。我の行おうとしていることは摂理の延長線上に過ぎぬのだ」
「摂理、だと?」
 カーテンのようなマントを翻し、魔王は言葉を続ける。

「この世界に生きとし生けるものは皆、摂理の中に捕らわれている。生きるためには命を喰らい、命を喰らったものもまた、別の生きるための命として喰らわれる。自然なことよ」
 ふははははははははははっ!!!! と高笑いを挟みつつ、魔王は腕を組む。

「だが、時として、そのバランスが崩れることがある。それがキサマたち人間のことだ。人間は大いなる知恵を身につけた。それによって一方的な喰らう者として君臨するようになった。そう、摂理を破壊しておるのは人間たちなのだ」
 それにしてもこの魔王、よくも笑いながらもスラスラと長いセリフを噛まずにノリノリで言えたものである。

「我は、それを正すべく、正しき摂理に戻すべく、人間を掌握しようとしているにすぎぬのだよ。人間だけがあらゆる命を思いのままにしようだなんておこがましいとは思わんかね?」
 ぐわーはっは、と笑いのバリエーションを見せつけつつも、魔王はハイテンションに踊り狂う。ちなみに、その一方でロータスと仲間たちは魔王の包囲網を崩さぬよう、必死に動き回っていた。

 いちいち喋る度に動き回るものだから追いかけるのも一苦労である。
 なんだって魔王は無駄に図体がでかいのか。これが分からない。

「世界の破滅、といったな。それはやはり正しくない。キサマの言う世界とは人間どもの生きている、人間本意の世界でしかないのだろう? 人間の人間による人間のための世界。まったく、人間という生き物は何処へ向かうというのだね。そんなものは我が全て破壊してやる!」

 そろそろ真面目に話を聞いているのはロータスくらいだ。
 話が長すぎる上に難しすぎるし、なんというか魔王の図体がでかいこともあって、声も反響しまくっちゃって聞き取りづらかったりするのだ。

「俺たち人間は、罪深き存在なのかもしれない。だが、魔王。そこに共存の道はないのか? 俺たち人間と手を取り合う、そんな関係になることはできないのか?」
「生ぬるいわ、小童めっ!!!! 鋼鉄巨神の黒弾丸(キャノンボーラー)!!!!」
 魔王が何かを詠唱すると途轍もなく巨大な鋼鉄製のボールのようなものが突如として空中に出現し、砲弾のような勢いでロータスたちに襲いかかった。
 まったくもって、質量の法則とか物理法則とかはどのようになっているのか疑問は尽きないところだ。

「マルペル、頼む!!」
「はいっ!!」
 マルペルと呼ばれた女僧侶が構えると「バーリアっ♪」とでも言いたげなくらい軽く、光る壁が生成され、魔王の出した巨大ボールはガッキンガッキンと豪快な金属音を立てて弾けて消失していく。
 見た目、なんというかピンでボールを弾く、そういう感じの遊戯のようだ。

「くぅぅぅ……こざかしい!!!!」
 状況から見るに、巨大な魔王とロータスの仲間たちでは多勢に無勢にも程がある。周りを取り囲んじゃったりしちゃって、背中に目のついていない魔王としてはイライラも最高潮だ。

「我はな、この目で見届けてきたのだ。数千年という長い年月、人間という生き物がいかに愚かな生き物であるかを」
「何? 数千年、だと? お前は一体……」
 へぇー、すごい長生きなんすねぇ、と言いたげな空気が漂いそうだったが、そこはロータス。比較的当たり障りもない質問をチョイスする。

「ふははははははははははっ!!!! 我のこの身体は、人間どもの負の感情を糧としておるのだ。怒り、悲しみ、嫉み、ありとあらゆる感情は我にとっては至高の食事というわけだ。つまり、人間どもが生き長らえ、負の感情を抱き続けている限り、我は何度でもこの世界に蘇ることができる!!!!」
 多分、今、誰かが小さな声で「やっべー」と呟いたような気がする。

「さあどうする、愚かなる人間よ。この我を打ち倒すべくここに来たのだろう? 残念だったな。例え我が倒されようとも、我はいずれ蘇る。ふははははははははははっ!!!! 絶望に打ちひしがれるがよい!!!!」
 魔王が延々と高笑いしながら喋っている一方その頃、その部屋の外側にいた魔王軍の配下たちは「今日も魔王様はゴキゲンでいいなぁ」と思っていた。

 魔王の実力は自他ともに認めるほどに強大なのだから、魔王軍の誰も、魔王が敗北することは考えてすらいない。例え負けたって復活するのだから同じことだと楽観的に考えていたくらいだ。

「それでも……、それでも俺はお前を打ち倒し、束の間であったとしても平穏を取り戻す!!!!」
 魔王に感化されてかどうかは定かではないが、ロータスもハイテンションモードに突入し、なんかこう精霊の加護的なもので全身が黄金に輝きだし、どこぞの神殿で女神を自称する声だけの某から譲り受けた聖剣を手に構えた。

「みんな、俺についてきてくれっ!!!!」
 割とロータスのビジュアル的な変貌っぷりには仲間のみんなもビビっていたりドン引きしていたりしたのだが、ここはさすが、長年付き合ってきた仲間というだけはあって優しく合わせてくれる。

「いくぞおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」
 魔王を取り囲むみんなで、一斉攻撃タイム。
 ずるいとかは言ってられない。魔王だって負けたくはないのだから。
 しかしまあ、本当に多勢に無勢で弱ったものだ。

 魔王だって多少なりは耐性とかあったり、バリア的なものを張っていたりするというのに、ロータスの仲間の面々はそれらを無力化したり、貫通したりとやりたい放題だ。一体何処の次元で修行を積めばそんな技術を得られるのだろう。

「ぐおおおぉぉぉぉ人間どもめえええぇぇぇ!!!!」
 腕を振るったり、蹴り上げたり、頭を振ったり。頑張って抵抗している魔王だが、それを客観的に見ると、なんだかイジメに遭ってる子供みたいで笑えないね。
 状況としてはその通りではあるのだけれども。

 いっそのこと、卑怯だ! と叫んでしまいたかったが、割とさっきまで偉そうな態度、頭良さそうアピールのセリフを縦に並べていたこともあって、格下みたいな言葉を口から出すことができず、自分の体面を守るために魔王は我慢した。

「今だっ!」
 どのタイミングを持って、ロータスは「今だ」と判断したのかは皆目見当もつかないが、魔王の正面に回り込んで、そのまま巨大山盛りおっぱいの中へとダイブ。

 男の欲望を垂れ流してる本能野郎だったなら、おっぱい祭りが開幕されていたところだが、あいにくと残念なことにロータスだったのが運の尽き。

 光り輝く聖剣が魔王の胸へと突き立てられた。

「ぐえええええええええええぇぇぇぇぇええええぇぇっっ!!!!」

 もっとマシな断末魔はなかったのだろうか。多分ロータス以外、なんだったら部屋の外側にいた魔王の配下ですらそのような感想を抱いていたと思う。

 何はともあれ、心臓を一突きにされた魔王の身体は浄化の光によって頭の先から足の先まで満遍なく包み込まれて、灰と化して消失していった。
 これって傍から見たら意外とスプラッターなのでは。

「やったか!?」
 完全にフラグなセリフだが、申し訳ない。ちゃんと魔王は倒された。

 魔王の灰にまみれた中から聖剣を取りだし、ロータスはここで自分と仲間たちを巻き込んだ旅が終了したのだと悟った。

「ありがとう、みんな。みんなのおかげで、俺は魔王を打ち倒すことができた」
 もはや疲労困憊。本当に魔王を倒すことができたのかどうかさえ、まだ半信半疑の状態の仲間たちではあったが、一つだけ大きな確信を得た。
 この男、ロータスこそ勇者の名にふさわしい、と。

「だが、魔王はこうも言っていたな。人々に負の感情がある限り、何度でも復活すると。それが何年先、何十年先かは分からない。そのときにまで俺たちはいなくなっているかもしれない……」
 拳を握り、ロータスは熱く語る。

「だからこそ、俺たちは少しでも人々から負の感情が生まれない、そんな世界を創っていきたいと思うんだ。きっとそれが俺たちにできる数少ないことだから」

 カッコよく決めたと思われるし、いい締めだったのだと思われるが、さっきの今まで魔王という強敵と戦って疲弊している仲間たちの半数以上は、ロータスの熱い演説を話半分に聞いていた。あー、そだねー、という返事もきてたし。

 何はともあれ、魔王は倒された。

 このことは後の人類の歴史の教科書にも載るほど偉大な出来事となる。まあ、当の本人たちの目に届くことはないのだろうけれども。

 一時の安息、一時の休息を勝ち得たロータスは、このときより周囲から勇者と呼ばれるようになり、半ば迷惑に思い始める。
 また、このときから自分の中の正義に疑問を持ち始めるようになるのだった。


次のエピソードへ進む 第25話 二人寄り添って


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 荒れ果てた土地の果てにある険しい山々に囲まれたその場所に、その城は禍々しくも建っていた。何者も拒むこの城は、魔王が率いる軍勢が拠点としていた。
 魔王の脅威は世界に轟くほどであり、世界を統べる強大な力を持っているとまで噂されていた。生半可な覚悟の酔狂な輩では魔王と対峙するどころか、城へと到達することも困難を極める。
 しかし、そんな世界を脅かす魔王を討つべく立ち上がった者たちがいた。
 それは後に勇者と呼ばれる男ロータスと、ロータスの率いる仲間たちだった。
 前人未踏とまで言われた果てしなく危険な道のりを超え、彼らはようやくして魔王のもとへと辿り着くに至る。
「ふははははははははははっ!!!! よくぞ我が城へと踏み込めた者だな。その無謀なる勇気をたたえてやろう!!!!」
 不気味なほど高らかに笑う山のように大きく、ムキムキのムチムチでカチカチの途轍もない威圧感を放つ巨人のような女は何を隠そう、この城の主、魔王だった。
 そこにただ立っているだけでもその計り知れないオーラに吹き飛ばされてしまいそうだったが、ロータスとその仲間たちは怯むことなく、魔王を取り囲む。
「教えてくれ、魔王。どうしてお前は世界を破滅へと導こうとする!?」
「破滅へ導く、ねぇ。キサマは間違っておるぞ。我の行おうとしていることは摂理の延長線上に過ぎぬのだ」
「摂理、だと?」
 カーテンのようなマントを翻し、魔王は言葉を続ける。
「この世界に生きとし生けるものは皆、摂理の中に捕らわれている。生きるためには命を喰らい、命を喰らったものもまた、別の生きるための命として喰らわれる。自然なことよ」
 ふははははははははははっ!!!! と高笑いを挟みつつ、魔王は腕を組む。
「だが、時として、そのバランスが崩れることがある。それがキサマたち人間のことだ。人間は大いなる知恵を身につけた。それによって一方的な喰らう者として君臨するようになった。そう、摂理を破壊しておるのは人間たちなのだ」
 それにしてもこの魔王、よくも笑いながらもスラスラと長いセリフを噛まずにノリノリで言えたものである。
「我は、それを正すべく、正しき摂理に戻すべく、人間を掌握しようとしているにすぎぬのだよ。人間だけがあらゆる命を思いのままにしようだなんておこがましいとは思わんかね?」
 ぐわーはっは、と笑いのバリエーションを見せつけつつも、魔王はハイテンションに踊り狂う。ちなみに、その一方でロータスと仲間たちは魔王の包囲網を崩さぬよう、必死に動き回っていた。
 いちいち喋る度に動き回るものだから追いかけるのも一苦労である。
 なんだって魔王は無駄に図体がでかいのか。これが分からない。
「世界の破滅、といったな。それはやはり正しくない。キサマの言う世界とは人間どもの生きている、人間本意の世界でしかないのだろう? 人間の人間による人間のための世界。まったく、人間という生き物は何処へ向かうというのだね。そんなものは我が全て破壊してやる!」
 そろそろ真面目に話を聞いているのはロータスくらいだ。
 話が長すぎる上に難しすぎるし、なんというか魔王の図体がでかいこともあって、声も反響しまくっちゃって聞き取りづらかったりするのだ。
「俺たち人間は、罪深き存在なのかもしれない。だが、魔王。そこに共存の道はないのか? 俺たち人間と手を取り合う、そんな関係になることはできないのか?」
「生ぬるいわ、小童めっ!!!! |鋼鉄巨神の黒弾丸《キャノンボーラー》!!!!」
 魔王が何かを詠唱すると途轍もなく巨大な鋼鉄製のボールのようなものが突如として空中に出現し、砲弾のような勢いでロータスたちに襲いかかった。
 まったくもって、質量の法則とか物理法則とかはどのようになっているのか疑問は尽きないところだ。
「マルペル、頼む!!」
「はいっ!!」
 マルペルと呼ばれた女僧侶が構えると「バーリアっ♪」とでも言いたげなくらい軽く、光る壁が生成され、魔王の出した巨大ボールはガッキンガッキンと豪快な金属音を立てて弾けて消失していく。
 見た目、なんというかピンでボールを弾く、そういう感じの遊戯のようだ。
「くぅぅぅ……こざかしい!!!!」
 状況から見るに、巨大な魔王とロータスの仲間たちでは多勢に無勢にも程がある。周りを取り囲んじゃったりしちゃって、背中に目のついていない魔王としてはイライラも最高潮だ。
「我はな、この目で見届けてきたのだ。数千年という長い年月、人間という生き物がいかに愚かな生き物であるかを」
「何? 数千年、だと? お前は一体……」
 へぇー、すごい長生きなんすねぇ、と言いたげな空気が漂いそうだったが、そこはロータス。比較的当たり障りもない質問をチョイスする。
「ふははははははははははっ!!!! 我のこの身体は、人間どもの負の感情を糧としておるのだ。怒り、悲しみ、嫉み、ありとあらゆる感情は我にとっては至高の食事というわけだ。つまり、人間どもが生き長らえ、負の感情を抱き続けている限り、我は何度でもこの世界に蘇ることができる!!!!」
 多分、今、誰かが小さな声で「やっべー」と呟いたような気がする。
「さあどうする、愚かなる人間よ。この我を打ち倒すべくここに来たのだろう? 残念だったな。例え我が倒されようとも、我はいずれ蘇る。ふははははははははははっ!!!! 絶望に打ちひしがれるがよい!!!!」
 魔王が延々と高笑いしながら喋っている一方その頃、その部屋の外側にいた魔王軍の配下たちは「今日も魔王様はゴキゲンでいいなぁ」と思っていた。
 魔王の実力は自他ともに認めるほどに強大なのだから、魔王軍の誰も、魔王が敗北することは考えてすらいない。例え負けたって復活するのだから同じことだと楽観的に考えていたくらいだ。
「それでも……、それでも俺はお前を打ち倒し、束の間であったとしても平穏を取り戻す!!!!」
 魔王に感化されてかどうかは定かではないが、ロータスもハイテンションモードに突入し、なんかこう精霊の加護的なもので全身が黄金に輝きだし、どこぞの神殿で女神を自称する声だけの某から譲り受けた聖剣を手に構えた。
「みんな、俺についてきてくれっ!!!!」
 割とロータスのビジュアル的な変貌っぷりには仲間のみんなもビビっていたりドン引きしていたりしたのだが、ここはさすが、長年付き合ってきた仲間というだけはあって優しく合わせてくれる。
「いくぞおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」
 魔王を取り囲むみんなで、一斉攻撃タイム。
 ずるいとかは言ってられない。魔王だって負けたくはないのだから。
 しかしまあ、本当に多勢に無勢で弱ったものだ。
 魔王だって多少なりは耐性とかあったり、バリア的なものを張っていたりするというのに、ロータスの仲間の面々はそれらを無力化したり、貫通したりとやりたい放題だ。一体何処の次元で修行を積めばそんな技術を得られるのだろう。
「ぐおおおぉぉぉぉ人間どもめえええぇぇぇ!!!!」
 腕を振るったり、蹴り上げたり、頭を振ったり。頑張って抵抗している魔王だが、それを客観的に見ると、なんだかイジメに遭ってる子供みたいで笑えないね。
 状況としてはその通りではあるのだけれども。
 いっそのこと、卑怯だ! と叫んでしまいたかったが、割とさっきまで偉そうな態度、頭良さそうアピールのセリフを縦に並べていたこともあって、格下みたいな言葉を口から出すことができず、自分の体面を守るために魔王は我慢した。
「今だっ!」
 どのタイミングを持って、ロータスは「今だ」と判断したのかは皆目見当もつかないが、魔王の正面に回り込んで、そのまま巨大山盛りおっぱいの中へとダイブ。
 男の欲望を垂れ流してる本能野郎だったなら、おっぱい祭りが開幕されていたところだが、あいにくと残念なことにロータスだったのが運の尽き。
 光り輝く聖剣が魔王の胸へと突き立てられた。
「ぐえええええええええええぇぇぇぇぇええええぇぇっっ!!!!」
 もっとマシな断末魔はなかったのだろうか。多分ロータス以外、なんだったら部屋の外側にいた魔王の配下ですらそのような感想を抱いていたと思う。
 何はともあれ、心臓を一突きにされた魔王の身体は浄化の光によって頭の先から足の先まで満遍なく包み込まれて、灰と化して消失していった。
 これって傍から見たら意外とスプラッターなのでは。
「やったか!?」
 完全にフラグなセリフだが、申し訳ない。ちゃんと魔王は倒された。
 魔王の灰にまみれた中から聖剣を取りだし、ロータスはここで自分と仲間たちを巻き込んだ旅が終了したのだと悟った。
「ありがとう、みんな。みんなのおかげで、俺は魔王を打ち倒すことができた」
 もはや疲労困憊。本当に魔王を倒すことができたのかどうかさえ、まだ半信半疑の状態の仲間たちではあったが、一つだけ大きな確信を得た。
 この男、ロータスこそ勇者の名にふさわしい、と。
「だが、魔王はこうも言っていたな。人々に負の感情がある限り、何度でも復活すると。それが何年先、何十年先かは分からない。そのときにまで俺たちはいなくなっているかもしれない……」
 拳を握り、ロータスは熱く語る。
「だからこそ、俺たちは少しでも人々から負の感情が生まれない、そんな世界を創っていきたいと思うんだ。きっとそれが俺たちにできる数少ないことだから」
 カッコよく決めたと思われるし、いい締めだったのだと思われるが、さっきの今まで魔王という強敵と戦って疲弊している仲間たちの半数以上は、ロータスの熱い演説を話半分に聞いていた。あー、そだねー、という返事もきてたし。
 何はともあれ、魔王は倒された。
 このことは後の人類の歴史の教科書にも載るほど偉大な出来事となる。まあ、当の本人たちの目に届くことはないのだろうけれども。
 一時の安息、一時の休息を勝ち得たロータスは、このときより周囲から勇者と呼ばれるようになり、半ば迷惑に思い始める。
 また、このときから自分の中の正義に疑問を持ち始めるようになるのだった。