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第三部・第4章〜三大配信者 芦宮高校最大の決戦〜⑥

ー/ー



 映像と舞台上のパフォーマンスがシンクロする演出の巧みさに目を奪われ、声を上げる間もないまま、ステージに向けたままの視線を釘付けにされている間、楽曲は2コーラス目に突入していた。

 ♪ Your my only shining star
 ♪ Your my shooting star

 ♪ たどり着いた感情 それが恋ならば
 ♪ どれほど 想い つのるのかな?

 ボクらから見て、ステージの左手側では楽曲のフレーズに合わせて、野中さんと石川さんが向かい合い、手をつなぎながら視線を交わす仕草をしている。

 竜司と一緒に、この曲がエンディング・テーマとして使われていたアニメを観ていたときには感じなかったことだけど……。
 切ない感情を呼び起こす歌詞の内容に、なぜが、胸を締め付けられる想いがする。

 ♪ 途絶えがちな視線に 戸惑うその瞳
 ♪ 乗り込む電車に かき消されて

 ステージのセンターでは、上級生の女生徒が切なげな表情で歌い上げるようなポーズを取る。
 素人のボクの見立てでも、彼女のダンスは、メンバーの中でも頭ひとつ抜けているようなキレがあった。
 
 今回の活動は、ダンス部から()りすぐりのメンバーが集まっているのだろうけど、この楽曲でセンターに近い立ち位置に居る理由が、彼女のダンスを見ていて良く理解できた。

 ♪ 振り向く勇気を捨てては 傷を重ねた
 ♪ 偽りばかりの世界 汚れていないわたしたち 眼の前に見えるはず

 ようやく、宮野さんと白草さんのパートに回ってきたようだ。
 前半は宮野さん、後半は白草さんが、揃ってキレのあるダンスを見せる。

 半分くらいプロのアーティストと言って良い白草さんはともかく、宮野さんが、ダンス部のメンバーと渡り合うくらいの動きを見せていることに、ボクは驚きを隠せなかった。

(こんなにダンス向きのスキルを持ってるなら、わざわざ、広報部に入部しなくても良いんじゃ……)

 万年、部員不足に悩む我が部の貴重な戦力になるかも知れない一年生に対して、そう思わせるくらい彼女は、見事なダンスを披露していた。

 そして、楽曲は二度目のサビの部分へと向かう。

 ♪ Love in your eyes 覚悟きめて ゆっくりと近づく
 ♪ 夕焼けに映る 希望へ 手を伸ばす

 この楽曲の最大の見せ場である、頭上で両手をプロペラのように回転させる動作と、少し前に流行った縄跳びを飛ぶような動作が、五人……いや、映像と合わせて十人分がシンクロして、迫力あるダンスに感じられる。

 ♪ Pure色に塗り替えた そらさない眼差し
 ♪ 目止めが合う度に 優しい鐘が鳴り渡る

 サビの部分が終了して間奏に入ると、大講堂は、歓声に包まれる。
 しかし、白草さんが、このまま、メロディーの余韻に浸らせるような演出を好むわけがなかった。

「みんなで行くよ〜! せ〜の!」

 ステージ上から声が上がると、客席の方から

「リッカ!」

と、コールの声が発せられて、オレンジのスカーフを右手の手首に巻いた上級生が、華麗なソロダンスを披露する。

「マヤ!」

 次のコールでは、野中さんが、先輩に代わってセンターに立つ。

「ナナコ!」

 続いて、石川さんが、素早く入れ替わって、両手を大きく動かすようなポーズで観客を盛り上げる。

「ユキノ!」

 生徒たちの歓声がさらに大きくなったのを待って登場した宮野さんも笑顔で観客に応え、さらに、最後は……

「ヨツバ!」

のコールとともに、白草さんが、少し長めのダンスを披露すると、拍手はさらに大きくなっていく。
 少し曲調がスローテンポになるラストのサビの部分で、ふたたびメンバー全員が息のあった動きを見せると、客席からは、指笛のような音まで聞こえてきた。

 そして、楽曲が終了し、五人が全力を出し切ったという晴れ晴れとした表情のまま、そろってお辞儀をすると、大講堂は、割れんばかりの拍手でいっぱいになった。

 トップを務めるプレゼンターが、ここまでの盛り上がりを引き出してしまうとは……。

 年末の漫才グランプリでもそうだけど、最初に出演する演者は、会場が暖まる前にステージに立つため、圧倒的に不利なことが多い。
 
 その不利な条件を覆して、わずか十分たらずの時間で、大講堂をライブ会場のような雰囲気に変えてしまった白草四葉という存在を、あらためて恐ろしく感じる。

 そして、これも重ねて感じることなのだけど――――――。

 竜司は、良く、こんな相手に告白しようと思ったな……。

 まあ、これは、親友と同じ日に身を挺した特攻を行い、華々しく玉砕した同学年の堂安や佐藤(と、あとひとりは誰だったっけ?)にも言えることだけど、自身の立ち場を(かえり)みて、

「自分と釣り合う相手じゃないだろ……」

と、冷静に考えることはなかったのだろうか?

 ボクなら、白草さんだけでなく、見事なパフォーマンスを披露したダンス部や宮野さんにすら気後れを感じてしまって、

「交際を申し込むことなんて、(おそ)れ多い」

と、二の足を踏んでしまうのだけど――――――。

「とっても、素敵なダンスと映像だったね〜。トップバッターは、白草さんと宮野さん、それにダンス部の有志、伊原さん、野中さん、石川さんでした〜。彼女たちに、もう一度、拍手を〜」

 いつの間にか、ステージ上に立っていた寿(ことぶき)生徒会長が、進行を行っている。
 この状況で、親友は、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか?

 次は、竜司たちの出番だ。


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 映像と舞台上のパフォーマンスがシンクロする演出の巧みさに目を奪われ、声を上げる間もないまま、ステージに向けたままの視線を釘付けにされている間、楽曲は2コーラス目に突入していた。
 ♪ Your my only shining star
 ♪ Your my shooting star
 ♪ たどり着いた感情 それが恋ならば
 ♪ どれほど 想い つのるのかな?
 ボクらから見て、ステージの左手側では楽曲のフレーズに合わせて、野中さんと石川さんが向かい合い、手をつなぎながら視線を交わす仕草をしている。
 竜司と一緒に、この曲がエンディング・テーマとして使われていたアニメを観ていたときには感じなかったことだけど……。
 切ない感情を呼び起こす歌詞の内容に、なぜが、胸を締め付けられる想いがする。
 ♪ 途絶えがちな視線に 戸惑うその瞳
 ♪ 乗り込む電車に かき消されて
 ステージのセンターでは、上級生の女生徒が切なげな表情で歌い上げるようなポーズを取る。
 素人のボクの見立てでも、彼女のダンスは、メンバーの中でも頭ひとつ抜けているようなキレがあった。
 今回の活動は、ダンス部から|選《え》りすぐりのメンバーが集まっているのだろうけど、この楽曲でセンターに近い立ち位置に居る理由が、彼女のダンスを見ていて良く理解できた。
 ♪ 振り向く勇気を捨てては 傷を重ねた
 ♪ 偽りばかりの世界 汚れていないわたしたち 眼の前に見えるはず
 ようやく、宮野さんと白草さんのパートに回ってきたようだ。
 前半は宮野さん、後半は白草さんが、揃ってキレのあるダンスを見せる。
 半分くらいプロのアーティストと言って良い白草さんはともかく、宮野さんが、ダンス部のメンバーと渡り合うくらいの動きを見せていることに、ボクは驚きを隠せなかった。
(こんなにダンス向きのスキルを持ってるなら、わざわざ、広報部に入部しなくても良いんじゃ……)
 万年、部員不足に悩む我が部の貴重な戦力になるかも知れない一年生に対して、そう思わせるくらい彼女は、見事なダンスを披露していた。
 そして、楽曲は二度目のサビの部分へと向かう。
 ♪ Love in your eyes 覚悟きめて ゆっくりと近づく
 ♪ 夕焼けに映る 希望へ 手を伸ばす
 この楽曲の最大の見せ場である、頭上で両手をプロペラのように回転させる動作と、少し前に流行った縄跳びを飛ぶような動作が、五人……いや、映像と合わせて十人分がシンクロして、迫力あるダンスに感じられる。
 ♪ Pure色に塗り替えた そらさない眼差し
 ♪ 目止めが合う度に 優しい鐘が鳴り渡る
 サビの部分が終了して間奏に入ると、大講堂は、歓声に包まれる。
 しかし、白草さんが、このまま、メロディーの余韻に浸らせるような演出を好むわけがなかった。
「みんなで行くよ〜! せ〜の!」
 ステージ上から声が上がると、客席の方から
「リッカ!」
と、コールの声が発せられて、オレンジのスカーフを右手の手首に巻いた上級生が、華麗なソロダンスを披露する。
「マヤ!」
 次のコールでは、野中さんが、先輩に代わってセンターに立つ。
「ナナコ!」
 続いて、石川さんが、素早く入れ替わって、両手を大きく動かすようなポーズで観客を盛り上げる。
「ユキノ!」
 生徒たちの歓声がさらに大きくなったのを待って登場した宮野さんも笑顔で観客に応え、さらに、最後は……
「ヨツバ!」
のコールとともに、白草さんが、少し長めのダンスを披露すると、拍手はさらに大きくなっていく。
 少し曲調がスローテンポになるラストのサビの部分で、ふたたびメンバー全員が息のあった動きを見せると、客席からは、指笛のような音まで聞こえてきた。
 そして、楽曲が終了し、五人が全力を出し切ったという晴れ晴れとした表情のまま、そろってお辞儀をすると、大講堂は、割れんばかりの拍手でいっぱいになった。
 トップを務めるプレゼンターが、ここまでの盛り上がりを引き出してしまうとは……。
 年末の漫才グランプリでもそうだけど、最初に出演する演者は、会場が暖まる前にステージに立つため、圧倒的に不利なことが多い。
 その不利な条件を覆して、わずか十分たらずの時間で、大講堂をライブ会場のような雰囲気に変えてしまった白草四葉という存在を、あらためて恐ろしく感じる。
 そして、これも重ねて感じることなのだけど――――――。
 竜司は、良く、こんな相手に告白しようと思ったな……。
 まあ、これは、親友と同じ日に身を挺した特攻を行い、華々しく玉砕した同学年の堂安や佐藤(と、あとひとりは誰だったっけ?)にも言えることだけど、自身の立ち場を|省《かえり》みて、
「自分と釣り合う相手じゃないだろ……」
と、冷静に考えることはなかったのだろうか?
 ボクなら、白草さんだけでなく、見事なパフォーマンスを披露したダンス部や宮野さんにすら気後れを感じてしまって、
「交際を申し込むことなんて、|畏《おそ》れ多い」
と、二の足を踏んでしまうのだけど――――――。
「とっても、素敵なダンスと映像だったね〜。トップバッターは、白草さんと宮野さん、それにダンス部の有志、伊原さん、野中さん、石川さんでした〜。彼女たちに、もう一度、拍手を〜」
 いつの間にか、ステージ上に立っていた|寿《ことぶき》生徒会長が、進行を行っている。
 この状況で、親友は、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか?
 次は、竜司たちの出番だ。