第31話 呪われた騎士と、賢者の愛 -1
ー/ー マフラーから解放されたルナは、安堵からか、それともカイへの想いからか、一気に感情が爆発してしまった。
「……ごめんなさい、カイ。私、あのマフラーのせいで、変なことを…」
言葉を詰まらせながら、ルナは俯いた。その声は震えていて、今にも泣き出してしまいそうだった。
カイは、そんなルナの頭を優しく撫でた。
「いいんだ。ルナは、何も悪くない」
その言葉に、ルナは驚いて顔を上げた。カイは、いつものように困ったような、それでも優しい笑顔を浮かべている。
「俺、ルナがどんな風に言ったとしても、ルナが俺にとって大切な仲間だってことに変わりはないから」
その言葉は、ルナの心の呪いを解き放つかのように、深く、温かく響いた。
「……っ、カイ……!」
ルナは、涙をこらえきれずに、カイの胸に飛び込んだ。カイは少し驚きながらも、ルナの背中を優しく抱きしめた。
その様子を、セレナは少し寂しそうな表情で見つめていた。しかし、すぐにいつもの穏やかな笑顔に戻り、その場をそっと離れた。
「……ふふ、これで一つ、脚本通りね」
物陰から様子を見ていたシスティナは、満足げに微笑んだ。
「お姉さま!そんなところで、何をしているんですか?」
背後から声がして、システィナはビクリと肩を震わせた。振り返ると、そこにはフィリアが、キラキラした瞳で立っていた。
「はっは〜ん、別に何もしていないわ。それより、フィリア。何かあったの?」
システィナは誤魔化すように笑うと、フィリアは首を傾げながら、焚き火を囲んでいるカイたちの元を指さした。
「みんなで、昔の話をしているんです!私も、聞いてもいいですか?」
フィリアの無邪気な一言に、システィナは「ええ、もちろんよ」と頷いた。彼女は、この物語が再び、自分の手から離れて動き出したことを、密かに喜んでいた。
夜の野営。焚き火の炎がパチパチと音を立てる中、フィリアは最後に、システィナとレオンの方へと視線を向けた。
「お姉さまとレオンさんは、どうやって出会ったんですか?もっと詳しく聞きたいです!」
その言葉に、ルナとセレナも興味津々で耳を傾けた。
レオンは、少し照れくさそうに頬をかいた。システィナもまた、得意げな顔で二人の馴れ初めを語ろうとしていたが、レオンは彼女を制して口を開いた。
「実は…これは誰にも話していないことなんだが…僕の『尻』への執着は、単なる趣味じゃないんだ」
ルナとセレナは顔を見合わせ、警戒したような表情を浮かべる。しかし、レオンの真剣なまなざしに、二人は静かに耳を傾けた。
「…僕は、幼い頃に魔物に襲われたことがある。その魔物は、僕の『弱点』を抉り出すような、奇妙な呪いをかけてきたんだ。その呪いのせいで、僕は…美しい『尻』を見ると、理性を失って追いかけてしまう…」
レオンは、そう言って、苦しそうに顔を歪めた。
「変態…って、みんなは言うだろうけど、僕にとっては、どうしようもない『呪い』なんだ」
ルナとセレナは、レオンの言葉に言葉を失った。今まで笑いのネタにしていたレオンの行動に、そんな深刻な背景があったとは、思いもしなかったのだ。
「そんな…レオンさん…」
セレナが震える声でつぶやいた。ルナもまた、目を丸くしてレオンを見つめている。
しかし、システィナだけは、いつものように冷静な表情を保っていた。
「そんなレオンを、私は騎士アカデミーで見つけたのよ」
システィナは、少し寂しそうな、それでも優しい声で語り始めた。
「彼は、訓練中に騎士の太ももに目を奪われて転倒したの。誰もが彼を笑い、蔑んだ。でも、私だけは…彼の瞳の奥に隠された、深い悲しみと苦しみを、見抜くことができたのよ」
システィナは、そう言って、レオンに優しく微笑みかけた。
「そして、私は、彼の『呪い』を解くために、彼に寄り添うことを決めたの。私の『賢者』としての力を使えば、きっと彼の呪いを解けるはずだわ」
レオンは、システィナの言葉に、安堵したような、そして感動したような表情を浮かべた。
「システィナ…」
「はっは~ん、これで私たち二人の『愛の形』が分かったでしょう?」
システィナは、そう言って、いつものように得意げな顔で笑った。
フィリアは、レオンとシスティナの馴れ初めを聞き、感動のあまり、瞳に涙を浮かべていた。
「レオンさん…素敵です!お姉さまを、どうか大切にしてあげてくださいね!」
フィリアは、そう言って、レオンの手を握りしめた。その純粋な言葉に、レオンは深く頷いた。
「さて、と。それじゃあ、そろそろ次の準備をしましょうか」
システィナは、そう言って立ち上がると、ルナとセレナの方を振り返った。
「あなたたち、少し特訓するわよ。魔王城は、もうすぐそこなのよ?」
彼女の言葉に、ルナとセレナは緊張した面持ちで頷いた。物語は、いよいよ最終章へと向かって動き出そうとしていた。
システィナは、ルナに魔法の特訓を申し出た。
「ルナ、あなたの魔法はまだまだ伸びしろがあるわ。特に、感情と魔力の連動。それをコントロールできるようになれば、今の三倍は強くなれる」
そう言って、システィナはルナに、自身の感情を精密に制御しながら魔法を発動させる訓練を施した。
ルナは、感情の起伏が激しい自分には難しいと音を上げたが、システィナは
「はっは~ん、ラブコメの主人公の成長には、厳しい指導者の存在が必要なのよ」
と笑い飛ばした。
一方、セレナは「私も何かお手伝いできることはありますか?」とシスティナに尋ねた。
「いいところに気がついたわね。セレナ。あなたは聖女としての能力を、もっと効率よく使えるようにするわ」
システィナは、セレナに聖女の力をさらに高める魔法陣を教えた。それは、自身の生命力を消費して魔力を増幅させる危険なものだったが、セレナは一瞬の躊躇もなくそれを受け入れた。
特訓の最中、一行の前に、魔王軍の幹部アールが立ちはだかった。
アールは、カイを見て冷笑した。
「ふん…また、新たな勇者か。ん? お前の顔、どこかで見た気がするな…」
アールの言葉に、システィナとレオンの顔から血の気が引いた。
「…アール…お前、本当に生きていたのか…」
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
マフラーから解放されたルナは、安堵からか、それともカイへの想いからか、一気に感情が爆発してしまった。
「……ごめんなさい、カイ。私、あのマフラーのせいで、変なことを…」
言葉を詰まらせながら、ルナは俯いた。その声は震えていて、今にも泣き出してしまいそうだった。
カイは、そんなルナの頭を優しく撫でた。
「いいんだ。ルナは、何も悪くない」
その言葉に、ルナは驚いて顔を上げた。カイは、いつものように困ったような、それでも優しい笑顔を浮かべている。
「俺、ルナがどんな風に言ったとしても、ルナが俺にとって大切な仲間だってことに変わりはないから」
その言葉は、ルナの心の呪いを解き放つかのように、深く、温かく響いた。
「……っ、カイ……!」
ルナは、涙をこらえきれずに、カイの胸に飛び込んだ。カイは少し驚きながらも、ルナの背中を優しく抱きしめた。
その様子を、セレナは少し寂しそうな表情で見つめていた。しかし、すぐにいつもの穏やかな笑顔に戻り、その場をそっと離れた。
「……ふふ、これで一つ、脚本通りね」
物陰から様子を見ていたシスティナは、満足げに微笑んだ。
「お姉さま!そんなところで、何をしているんですか?」
背後から声がして、システィナはビクリと肩を震わせた。振り返ると、そこにはフィリアが、キラキラした瞳で立っていた。
「はっは〜ん、別に何もしていないわ。それより、フィリア。何かあったの?」
システィナは誤魔化すように笑うと、フィリアは首を傾げながら、焚き火を囲んでいるカイたちの元を指さした。
「みんなで、昔の話をしているんです!私も、聞いてもいいですか?」
フィリアの無邪気な一言に、システィナは「ええ、もちろんよ」と頷いた。彼女は、この物語が再び、自分の手から離れて動き出したことを、密かに喜んでいた。
夜の野営。焚き火の炎がパチパチと音を立てる中、フィリアは最後に、システィナとレオンの方へと視線を向けた。
「お姉さまとレオンさんは、どうやって出会ったんですか?もっと詳しく聞きたいです!」
その言葉に、ルナとセレナも興味津々で耳を傾けた。
レオンは、少し照れくさそうに頬をかいた。システィナもまた、得意げな顔で二人の馴れ初めを語ろうとしていたが、レオンは彼女を制して口を開いた。
「実は…これは誰にも話していないことなんだが…僕の『尻』への執着は、単なる趣味じゃないんだ」
ルナとセレナは顔を見合わせ、警戒したような表情を浮かべる。しかし、レオンの真剣なまなざしに、二人は静かに耳を傾けた。
「…僕は、幼い頃に魔物に襲われたことがある。その魔物は、僕の『弱点』を抉り出すような、奇妙な呪いをかけてきたんだ。その呪いのせいで、僕は…美しい『尻』を見ると、理性を失って追いかけてしまう…」
レオンは、そう言って、苦しそうに顔を歪めた。
「変態…って、みんなは言うだろうけど、僕にとっては、どうしようもない『呪い』なんだ」
ルナとセレナは、レオンの言葉に言葉を失った。今まで笑いのネタにしていたレオンの行動に、そんな深刻な背景があったとは、思いもしなかったのだ。
「そんな…レオンさん…」
セレナが震える声でつぶやいた。ルナもまた、目を丸くしてレオンを見つめている。
しかし、システィナだけは、いつものように冷静な表情を保っていた。
「そんなレオンを、私は騎士アカデミーで見つけたのよ」
システィナは、少し寂しそうな、それでも優しい声で語り始めた。
「彼は、訓練中に騎士の太ももに目を奪われて転倒したの。誰もが彼を笑い、蔑んだ。でも、私だけは…彼の瞳の奥に隠された、深い悲しみと苦しみを、見抜くことができたのよ」
システィナは、そう言って、レオンに優しく微笑みかけた。
「そして、私は、彼の『呪い』を解くために、彼に寄り添うことを決めたの。私の『賢者』としての力を使えば、きっと彼の呪いを解けるはずだわ」
レオンは、システィナの言葉に、安堵したような、そして感動したような表情を浮かべた。
「システィナ…」
「はっは~ん、これで私たち二人の『愛の形』が分かったでしょう?」
システィナは、そう言って、いつものように得意げな顔で笑った。
フィリアは、レオンとシスティナの馴れ初めを聞き、感動のあまり、瞳に涙を浮かべていた。
「レオンさん…素敵です!お姉さまを、どうか大切にしてあげてくださいね!」
フィリアは、そう言って、レオンの手を握りしめた。その純粋な言葉に、レオンは深く頷いた。
「さて、と。それじゃあ、そろそろ次の準備をしましょうか」
システィナは、そう言って立ち上がると、ルナとセレナの方を振り返った。
「あなたたち、少し特訓するわよ。魔王城は、もうすぐそこなのよ?」
彼女の言葉に、ルナとセレナは緊張した面持ちで頷いた。物語は、いよいよ最終章へと向かって動き出そうとしていた。
システィナは、ルナに魔法の特訓を申し出た。
「ルナ、あなたの魔法はまだまだ伸びしろがあるわ。特に、感情と魔力の連動。それをコントロールできるようになれば、今の三倍は強くなれる」
そう言って、システィナはルナに、自身の感情を精密に制御しながら魔法を発動させる訓練を施した。
ルナは、感情の起伏が激しい自分には難しいと音を上げたが、システィナは
「はっは~ん、ラブコメの主人公の成長には、厳しい指導者の存在が必要なのよ」
と笑い飛ばした。
一方、セレナは「私も何かお手伝いできることはありますか?」とシスティナに尋ねた。
「いいところに気がついたわね。セレナ。あなたは聖女としての能力を、もっと効率よく使えるようにするわ」
システィナは、セレナに聖女の力をさらに高める魔法陣を教えた。それは、自身の生命力を消費して魔力を増幅させる危険なものだったが、セレナは一瞬の躊躇もなくそれを受け入れた。
特訓の最中、一行の前に、魔王軍の幹部アールが立ちはだかった。
アールは、カイを見て冷笑した。
「ふん…また、新たな勇者か。ん? お前の顔、どこかで見た気がするな…」
アールの言葉に、システィナとレオンの顔から血の気が引いた。
「…アール…お前、本当に生きていたのか…」